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『京華時報』2014年9月3日
食だけでなく医薬品の安全も深刻な中国 年間40万人「医療事故」の多くを占める薬害犠牲者
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140910-00010001-wedge-cn
Wedge 9月10日(水)12時20分配信
賞味期限切れの食材再利用で日本のメディアを再度賑わした中国の「食の安全」を巡る問題。このほど中国赤十字社が公表した統計数字から、食に止まらず、中国の医療、特に医薬品にも注意が必要で、政府や世論による監督が不可欠なことが浮き彫りになった。
■交通事故死者数の4倍 医療を巡る「正常」ではない死者の多さ
中国では医療を巡り「正常」でない死者が年間40万人に上り、このうち薬の服用ミスが多くを占めるというのだ。医薬品のネット販売解禁是非が議論される日本だが、中国での医薬品販売、服用を巡って事故が多発していることは知っておいてしかるべきだ。
今月から中国全土で展開されている「安全な薬の服用月間」運動を前に注意喚起の意味で伝えられた報道である。確かに正規ルートで中国からの医薬品が入ってくることは考えにくいが、ネットでの商取引拡大によって隣国で起きていることに無関心ではいられないことから以下ではこの『京華時報』の記事を紹介しよう。
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【2014年9月3日『京華時報』(抄訳)】
中国赤十字社によると、中国で医療を巡る「非正常」な死者数は年間40万人に上り、これは交通事故での死者数の4倍だという。死亡原因の大部分は不正確な薬の処方によるものとされる。医者の処方を守らない、説明書の通りに服用していない、盲目的な服用など、それほど大ごとではないと思われる薬服用時のミスが健康を損なう可能性もあるのだ。
こうした市民に広く存在する薬の安全な処方に関する問題に対して、国家食品監督管理総局(中国の食品や医薬品の監督官庁:筆者)は9月1日から10月31日まで全国で「安全な薬の服用月間」を展開することにしている。
中国医薬学会の安全な医薬処方宣伝専門家で協和病院の主任薬剤師である張継春氏によると、統計では米国で毎年150万人が薬の服用ミスで健康被害を被っておりそのために10万人もの死者も出ているという。中国でも安全でない薬の服用が深刻な薬害事件を引き起こしており、中国赤十字社による統計では「非正常」な死亡者(寿命による自然死ではないという意味だろう:筆者)数は年間800万人に上り、そのうち医療事故によって40万人もの不慮の事故での死者が出ているという。そのうち多くを占めるのが安全でない薬の服用によるものである。
しかし、その一方で昨年の安全月間にネットを通じて行われた「医薬品安全に関する知識クイズ」に参加した170万人のうち10題全てに正解した人はわずか11%に過ぎず、9割の人が薬の服用や保存、禁止事項などについての常識が欠けており、新生児の抗生物質へのアレルギーによる聾唖を引き起こしうること、妊婦の抗生物質濫用が奇形児の原因になりうること、飲酒後の薬服用が死亡につながりうること、過度な薬による減量が深刻な意識障害を引き起こしうること、薬に服用時間を守らないことが消化器の疾病をもたらしうることなどの回答ミスが比較的多かった。
中国科学協会が中国27の省(自治区、直轄市)で行った都市住民の医薬品服用に関する調査では87%の回答者が自分で薬を買って服用した経験があり、説明書が良くわからなかったことがあると答えたひとが67%に上った。36%が自分で薬を買ったときに間違えた経験があると答え、うち26%が薬を間違えてちゃんと直せなかったことがあると答えた。
■高齢者、子どもは特に深刻な問題に
今年の「安全月間」で重点を置いているのは老人や児童という特別なグループだという。老人の医薬品の吸収、新陳代謝率は減退することから若者に比べ、2〜3倍も反応が悪いとされる。中国の老人は平均で3種以上の疾病を患ったことがあり、中には5、6種患った経験を持つ人もいる。病気一種で相応の薬が処方されることから、患者によっては20種以上も服用する人がいるという。多くの薬を服用すると互いに副作用を及ぼし合うから治療に影響するだけでなく、副作用も小さくない。中国は高齢化社会に直面しており、全国の高齢者人口は2億人を超えており、高齢者が安全に薬を服用する問題も顕著になりつつあるのだ。
児童の薬服用の問題はそれ以上に深刻だ。2013年の国の医薬品に対するアレルギー反応についてのデータでは、14歳以下の児童が全体の10.6%を占めた。児童の年齢が小さいほど、アレルギー反応も深刻である。南方医薬経済研究所の調査データによると、小児科での薬の服用がちゃんとしていないケースが12〜32%にも上り、児童がアレルギー反応を起こしたケースが12.9%あったという。これが新生児では24.4%に上ったという。また薬品を正しく服用しなかったため耳が聞こえなくなるケースも少なからずあり、抗生物質を正しく服用しなかったために聴覚障害になってしまったケースは30万件にも上り、聴覚に障害を持つ児童の30〜40%を占めるという。
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【解説】
日本において中国の食材を巡る安全については冷凍餃子や粉ミルクからはじまり、最近では鶏肉など枚挙にいとまがなく、残留農薬の問題もあって食の安全の問題は度々注目されてきた。中国社会ではあらゆる製品、商品に偽物が出回って、バッタモンというような品質は悪いが、値段が安いので消費者はそれを知りながら購入するという場合も少なくない。
しかし、食品のような人の口に入る物、特に医薬品のような病人の口に入る物はより重要で医薬品の問題は深刻である。記事で書かれているように年間40万人にも上る「医療事故」による死者数は驚くばかりだが、このうち正しくない医薬品の服用で死亡にいたるケースが多くを占めるということはそれほど知られていないかもしれない。特に医薬品の間違った服用で聴覚障害になる人が年間30万人に上るというのには驚愕する。それゆえこうした市民への注意喚起をキャンペーンとして実施しなければならないのだろう。
中国では2013年に国家食品薬品監督管理総局を設立させてそれまで分散していた食費や薬品市場への監督機能の強化を図っているがどれだけ効果があるのか、政府の本気度がいかばかりかは不明だ。
中国社会で偽薬が多く出回っていることは周知の事実だが、特に性機能不全を回復させるバイアグラはその単価が高い事からとりわけ偽薬が多く、監督官庁と偽薬の密造者、密売人とのいたちごっこが続いている。ネットでの商取引が増える今日、こうした偽薬が日本に入ってくる可能性にも注意が必要だろう。
弓野正宏 (早稲田大学現代中国研究所招聘研究員)
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