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訪問先のキューバ・ハバナでフィデル・カストロ前国家評議会議長と会談した中国の習近平国家主席(左)=7月22日(AP)
【石平のChina Watch】ネット時代では嘲笑もの…「習近平崇拝」宣伝、もう一つの落とし穴
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140821/chn14082112330003-n1.htm
2014.8.21 12:33 産経新聞
中国共産党の宣伝部門は今、いわば「習近平(国家主席)崇拝」の国内世論を作り出すためのプロパガンダ工作に力を入れている。
共産党機関紙人民日報の場合、7月に習主席の写真や名前を朝刊1面に登場させたのは31日間中、実に27日。「習主席広報紙」となっている観がある。8月に入ってからも、雲南地震の関係報道では、人民日報は必ず1面で習主席の指示や講話を紹介し、震災の救助活動が習主席を中心に展開されているような印象を国民に与えようとしている。
報道の内容においても、人民日報などの宣伝機関はやはり、習主席が毎日国事のために奔走している「ご様子」をクローズアップして、「人民のために尽くしている非凡なる指導者」とのイメージを作り上げようとしている。
今から数十年前、中国の宣伝機関はまさにこのような手法を用いて国民に「毛沢東崇拝」を植え付けていたが、習政権になってから、それが見事に復活している。
こうしたプロパガンダ工作の極め付きは、今月4日に中国各メディアが転載した一通のブログ論文である。「老呉」というブログ名を持つネットユーザーが書いたとされるこの論文は、「習主席は人民の厚い信頼を勝ち取った」とのタイトルで、習主席に対する過剰な賛美が全文に満ちているものである。
論文は「中国夢の提唱」や「反腐敗運動の推進」「大国外交の展開」など9つの領域における習主席の業績を羅列してたたえながら、「強い指導力と卓越な知恵」を持つ「大国指導者」という最大限の賛辞をささげている。
かつて毛沢東時代を体験した筆者はそれを読んで噴飯するしかなかったが、執筆者の「老呉」はまったくの正体不明である。今の時代、宣伝機関が自らこのような論文を書くと逆に一般国民の反感を買うから、実在もしない一ネットユーザーとしての「老呉」をサクラとして使う必要があったのであろう。実際、どこの馬の骨とも知れないこの「老呉」の論文がネットに出回ると、全国のメディアが一斉転載したことから見て、背後にあるのは共産党の宣伝担当部門であることが明らかだ。
政権は一体何のために「習近平崇拝」の国内世論作りに躍起になっているのか? それは当然、習主席が権力基盤強化を図るために主導した宣伝工作の一環だと解釈すべきであろう。これといった業績も突出した指導力もなく、無理やり「偉大なる指導者」になろうとする彼は結局、実体の伴わない虚像作りに頼るしかない。つまり、宣伝部門のやっている「習近平崇拝宣伝キャンペーン」の背後にあるのは、むしろ習主席その人の自信の無さである。
しかしネットが発達して国民が多くの情報に接することができる今の時代、このような古色蒼然(そうぜん)たる「指導者崇拝キャンぺーン」をやってもどれほどの効果があるかは疑問である。実際、上述の「老呉論文」に対し、ネットにはむしろ嘲笑的な反応が数多く上がってきている。
しかも、今のような「習近平崇拝宣伝」の展開は、習主席自身にとっても政治的危険の伴うものである。「習主席は就任早々素晴らしい業績を上げた」「習主席は卓越な知恵をもつ指導者だ」との宣伝をやればやるほど、それは逆に、前任の胡錦濤主席の指導力と資質をおとしめることとなり、胡氏自身の不興と胡氏の率いる共青団派幹部の反発を買うこととなろう。
今、共通の敵である江沢民派勢力を政界から一掃するために共青団派が習主席をバックアップしているが、対江沢民派の政治闘争が終了してからは個人独裁志向を強める習主席と、権力の共有を主張する共青団派との熾烈(しれつ)な闘いが始まるであろう。習主席の今後はむしろ多難である。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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