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これが中国4000年の権力闘争だ「粛清と陰謀」が日課あな恐ろしや、習近平
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40142
2014年08月20日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
超大物・周永康の逮捕で、歴史はまた繰り返される
まるで昨年末、北朝鮮の金正恩が大幹部の張成沢を処刑した時のような粛清劇が、中国で起こった。日々粛清を繰り返す習近平と、震え上がる幹部たち。この未成熟な巨大国家は、どこへ向かうのか?
■「天安門」以来の大事件
〈周永康の重大な規律違反容疑に関して、中国共産党中央委員会は決定した。「中国共産党章程」と「中国共産党規律検査機関案件検査工作条例」の関係規定に基づき、中国共産党中央規律検査委員会は本件の審査を立件する〉
7月29日午後5時59分、このわずか漢字69文字のそっけない記事が、中国国営新華社通信から配信されると、中国全土が震撼し、世界のトップニュースとなった。
周永康―わずか2年前の11月まで、世界最大の政党・中国共産党8668万人の序列9位に君臨した中央政治局常務委員である。担当は法務と公安で、全国250万の警察組織を牛耳っていた。1989年の天安門事件で、趙紫陽総書記が失脚して以降、中国政界で最大級の大物の失脚である。
産経新聞北京支局の矢板明夫特派員が語る。
「これまで、『刑不上常委』(刑は常務委員には及ばない)という不文律が中国政界にあったのですが、今回習近平主席は、このタブーを破りました。周永康は、江沢民元主席の忠実な僕として、石油利権と公安(警察)利権を握っていた大物政治家です」
この大物政治家に、いったい何が起こったのか?
本誌は、中国の公安当局が参考にしたと言われる「周永康人脈図」を入手した。そこには、「親族」8人、「石油系」11人、「法政系」4人、「四川系」15人、「その他」1人と、計39人の周永康に連なる「悪徳人脈」が記されている。
1942年に江蘇省無錫で生まれた周永康は、文化大革命が始まった'66年に、北京石油大学を卒業した。卒業後は、黒竜江省にある中国最大の大慶油田に、石油採掘の技術者として就職した。
北京在住ジャーナリストの李大音氏が解説する。
「周永康は青年時代、毛沢東が全国の若者や労働者を動員して、『造反有理』(造反には理がある)をスローガンにナンバー2の劉少奇以下、最高幹部たちを血祭りに上げた文化大革命を目の当たりにした。そしてそんな毛沢東主席に憧れ、自分も権力者となるべく、権謀術数を尽くして、一介の技術者から出世の階段を駆け上がっていった。具体的には、妻の叔母の夫だった江沢民の『汚れ役』を引き受け、巨大な石油利権を江沢民に捧げることで立身出世したのです」
前述の天安門事件の際、最高実力者のケ小平が、戦車部隊を天安門広場に突入させ、1000人以上の若者を虐殺。これに反対した趙紫陽総書記を直ちに粛清し、上海市党委書記(上海市トップ)だった江沢民を、3段跳びで共産党総書記に抜擢したのだった。李大音氏が続ける。
「北京に人脈もカネづるもない江沢民に近づいた周永康は、遠戚ということで中国最大の国有石油会社の中国石油天然気総公司の党書記兼社長にしてもらった。そして莫大な石油収入の中から裏金を作って、せっせと江沢民に違法献金をしたのです。
江沢民はそのカネを使って、当時最大の政敵だった『北京のドン』こと陳希同北京市党委書記を収賄罪で逮捕し、16年の刑で監獄にブチ込んだ。これに気をよくした江沢民主席は、全国の国土資源を統轄する国土資源部を創設し、周永康を初代国土資源部長(大臣)に抜擢。周と二人三脚で国土資源全体の利権が自分に転がり込むシステムを構築したわけです」
■本性を現した習近平
江沢民は、'02年秋の第16回共産党大会で総書記を、翌'03年春の全国人民代表大会(国会)で国家主席を、胡錦濤に委譲せざるをえなかった。そこで「置き土産」として、周永康を胡錦濤時代の公安部長(警察庁長官に相当)に就けた。
それまで周永康と共に、莫大な汚職に邁進した江沢民は、引退後に自分が逮捕されることを恐れて、当の周永康を公安部長に抜擢して保険をかけたというわけだった。周永康部長はさらに、'07年秋の第17回共産党大会で、最高幹部の常務委員(序列9位)に就いた。抜擢したのは、言うまでもなく江沢民である。
だが結局、この'07年の党大会で江沢民が「ポスト胡錦濤」に指名したのは、ダークホースと言われた習近平だった。
「江沢民にとって第1候補だった曽慶紅副主席は、1939年生まれで年を取り過ぎた。第2候補だった陳良宇上海市党委書記は、'06年に胡錦濤政権によって失脚。第3候補だった薄煕来商務部長は、あまりに有能で、自己のコントロールが利かなくなる懸念があった。それで習仲勲元副首相の息子の習近平に、『第4の候補』として白羽の矢を立てた。凡庸で無能な習近平なら、外から意のままにコントロールできると踏んだのです」(同・李氏)
こうして'12年11月の第18回共産党大会で、胡錦濤総書記が引退し、習近平が総書記を継いだ。
だが、それまで猫を被っていた習近平は、最高権力者の座に就いたとたん、牙を剥き出しにしたのだった。李氏が続ける。
「習近平の党総書記としての『初仕事』は、何と自分をトップに抜擢してくれた江沢民を、最高幹部の職住地である『中南海』から追い払うことだった。中国語で『狡賢いウサギを捕まえた犬は、用無しとなって煮られる』という諺があるが、習近平はまさに、この諺を地で行く荒技に出たのです。
習近平にしてみれば、それまで非力だった自分が権力基盤を確立するには、2大派閥の『団派』(中国共産主義青年団出身者=胡錦濤派)か『上海閥』(江沢民派)を切り崩していくしかなかった。両派を比較すると、団派は8000万人もいる上に、比較的従順なグループ。それに対し上海閥は、石油・鉄道・公安・水利など、巨大利権を山ほど抱えている上、高齢化が進んで脆弱になってきていた。そこで、一気呵成に江沢民一派に襲いかかった」
子飼いだと思っていた習近平新総書記に、いきなり北京から追い出されるとは思いもよらなかった江沢民は仕方なく上海に避難した。
■すでに5万人が消えた
だが、最高権力を握った習近平は容赦なかった。就任した翌月の12月、過度な接待など8項目を禁じた規定を発表。そのスローガンは、「トラ(幹部)もハエ(小役人)も同時に叩く」。だが実際に叩いたのは、主に江沢民派の幹部たちだった。
「犠牲者第1号」となったのは、李春城四川省党委副書記だった。「李春城は四川省に愛人を200人も囲っていた」「隠しマンションも100軒保有していた」などという報道を連日、官製メディアが行って失脚させたのだ。李春城は、周永康を通じて「四川省利権」を江沢民に献上していたキーパーソンだった。
続いて、中国の富の6割強を握る国有企業群を統轄する蒋潔敏国有資産監督管理委員会主任が、昨年9月、就任わずか5ヵ月余りで失脚した。蒋主任は元中国石油社長で、やはり「国有企業利権」を江沢民に献上するキーパーソンだった。
昨年11月には、習近平主席が公安・武装警察・国家安全部を統轄する国家安全委員会の設立を宣言し、自らが委員会主席に収まった。前年秋まで周永康の命令で公安の盗聴や尾行を受けていたため、武力機関の一新を画ったのである。
年が明けて今年に入ると、習近平主席は、人民解放軍の利権奪取に着手した。江沢民人脈である谷俊山軍総後勤部副部長を起訴したのに続いて、6月には「ミスター人民解放軍」として君臨した徐才厚前中央軍事委員会副主席まで党籍を剥奪し、失脚させてしまった。まさに容赦ない習近平による血の粛清だ。
このように昨年来、特に今年に入って連日、テレビニュースでは「今日摘発された腐敗幹部」が報道される。腐敗とは無縁の一般庶民は、報道を見るたびに拍手喝采である。すでに5万人を超える政治家や官僚たちが、習近平の手によって摘発されているのだ。
いや、政治家や官僚、軍人ばかりか、摘発の「魔の手」は、習近平政権に批判的なマスコミや芸能人などにも及んでいる。昨年秋からは、習近平政権にとって好ましくないメッセージをインターネット上に載せて、それが500回転送されるか、5000回閲覧された場合、公安は執筆者を逮捕してよいことになった。実際、この措置によって、フォロワーが1000万人を超える有名ブロガーたちが、次々に摘発されていった。
また、習近平路線をなかなか礼賛しない中国中央テレビの「第2チャンネル」(経済チャンネル)に対しては、この6月に「一斉手入れ」を行い、幹部たちを一網打尽にした。「経済チャンネルの顔」と呼ばれた有名キャスターまでもが拘束され、テレビ画面から消えてしまった。こうした様はまさに、「現代版文化大革命」そのものである。
そんな「腐敗撲滅運動」の大きな「ヤマ場」として、7月29日の周永康の粛清があったというわけだ。
■温家宝前首相も大ピンチ
それでは、今後の展開はどうなるのか。習近平研究の第一人者であるジャーナリストの相馬勝氏が語る。
「押収された周永康と親族らの資産は900億元(約1兆5000億円)という天文学的額で、習近平としては、周永康を起訴して裁判に持っていきたい。裁判になれば、15年~18年の実刑を受けるのは確実で、もしも薄煕来のように抵抗すれば無期懲役でしょう。
有罪判決が出れば北京郊外の『秦城監獄』にブチ込まれます。ここには幹部専用の部屋があり、毛沢東夫人の江青もここへ入れられ、自殺しました。
だが、周永康が起訴されて裁判になれば、周永康の悪行が表沙汰となるため、バックにいた江沢民としてはかなわない。その意味では、『北戴河会議』が、大きなポイントになるでしょう」
北戴河会議とは、毎年8月上旬に、北京の東300qにある河北省北戴河の浜辺の避暑地に、現役及び歴代の常務委員たちが集まり、中国の政務全般を話し合う会議だ。今年は、現役の7人と、周永康を除く健在なOB10人の計17人が参加すると言われる。中でも注目は、この8月で88歳になる江沢民元主席と、習近平主席との「ガチンコ対決」である。
前出の矢板特派員が予測する。
「北戴河会議では、3つのシナリオが考えられます。一つ目は現役の習近平が年老いた江沢民を圧倒する展開。二つ目は、逆に江沢民ら長老が習近平を吊し上げるパターンです。そして三つ目は、両者が手打ちするというものです。
しかし、第一のシナリオ以外は、習近平の敗北です。そのため習近平は、江沢民ばかりか、江沢民の一番弟子である曽慶紅元副主席、同じく江沢民派の重鎮・賈慶林元政協主席、胡錦濤時代の温家宝前首相らの粛清を画策するのではないでしょうか」
こうした血で血を洗う中南海の権力闘争のとばっちりが、今後日本を襲うリスクもあるという。北京の日本大使館関係者が危惧して語る。
「習近平主席は、今年8月1日の人民解放軍創建記念日を、3ヵ所同時の史上最大規模の軍事演習で祝いました。それは今年が、日清戦争勃発120周年だからです。
中国語では日清戦争は『甲午戦争』と呼び、今年は120年目の同じ甲午の年です。そのため習近平主席は『甲午戦争の怨念を忘れるな!』と全軍に発破をかけているのです。今後、中南海の権力闘争が激化したら、ちょうど2年前の尖閣国有化騒動の時のように、そのエネルギーを反日に向けることは十分考えられます」
自国のお家騒動≠日本に転嫁されてはたまらない。返す返すも物騒な政権が、隣国に誕生してしまったものだ。
「週刊現代」2014年8月16日・23日合併号より
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