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期限切れが問題になった「上海福喜食品有限公司」の鶏肉加工品の生産ライン=7月20日、中国上海市(共同)
【石平のChina Watch】中国で始まった外資叩きと人民日報に載った危険な論理
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140807/frn1408071830010-n1.htm
2014.08.07 夕刊フジ
先月23日、人民日報は共産党中央党校の韓慶祥副学長の論文を掲載した。「新しい闘争を深く理解せよ」と題するものである。
その中で韓氏は「イデオロギー闘争」「領土紛争」「反腐敗闘争」など共産党政権が直面する「8つの新しい闘争」を取り上げ、勝ち抜くために「国内外の敵」と徹底的に戦うことを党員幹部に呼びかけた。争いが好きな習近平政権の戦闘的姿勢を端的に示した一文である。
「8つの闘争」の1つとして、韓氏は「市場争奪戦」を挙げ、「わが国の巨大市場をめぐる西側諸国との争奪戦は一日もやんだことがない」と指摘した。
確かに彼の言う通り、中国に進出した西側の多くの企業は「13億の大市場」を狙って中国企業と熾烈(しれつ)な「争奪戦」を展開している。もちろんそれはあくまでも正常なビジネス活動で、普通の商業競争の範疇(はんちゅう)に属するものだ。
しかし、韓氏論文の論調は実に異様なものだ。彼は、中国市場における外資企業の通常のビジネス活動を「中国市場に対する争奪」だと捉えた上で、中国の政権党の立場から、それに対する「闘争」を宣した。
この論理からすれば、外資企業が中国市場で展開する競争・競合活動はすべて中国に対する「略奪行為」と見なされ、外資企業そのものが中国共産党の「闘争する」相手となるのである。
こう見ると、中央党校副学長の立場から書かれたこの論文は実質上、政権党から発された「外資企業叩(たた)き」の大号令となる。そして、まさにこの論文が掲載された先月下旬から中国当局による「外資企業叩き」が実際に始まった。
まずは同20日、上海テレビ局が米国系中国現地企業である上海福喜食品の「期限切れ鶏肉問題」を取り上げて大きく報じた。2日後には上海公安局が捜査を開始した。それに伴って国営メディアは問題の会社が米国企業の子会社であることを強調して、批判の矛先を「外資企業の品質管理問題」に向けた。
こうした中で、親会社の米企業だけでなく、最大の仕入れ先であるマクドナルドまでが謝罪に追い込まれた。マックの受けた経済的損失もさることながら、世界での信用失墜も深刻なものであった。
この一件において、上海福喜食品のやり方は当然許せるものではないが、多くの中国企業と比べれば特別に悪質というわけでもない。
にもかかわらず、国営テレビ局は異様な執念深さで丹念な潜入取材を行い、報道を受けて当局は間髪を入れず本格捜査を行った。その直後から国営メディアは「悪いのは外資だ」とのキャンペーンを一斉に始めた。同じ時期に発表された韓氏論文に照らしてみれば、どうやら中国当局は本気で、外資企業に対する「新しい闘争」を始めたようだ。
そして同28日、中国当局は突如、米マイクロソフトの中国各地の事務所に対する立ち入り調査を一斉に開始した。
マクドナルドとマイクロソフト、中国で絶大な人気を持つこの2つの代表的米企業がほぼ同時に捜査や調査の対象となったのを見れば、習政権の狙いが、外資企業の影響力を中国市場から一掃することが分かる。
次の問題は、中国はどうして米国系企業から一掃作戦を始めたのかであるが、答えは実に簡単だ。今や南シナ海紛争やサイバー攻撃の問題で中国批判を強めているオバマ政権に対して、習政権は別の側面からの反撃を行おうとしているのだ。
いずれにせよ、中国に進出している外資企業にとって、今後はまさに受難の時代の到来であるに違いない。
日本企業はこれから、「撤退」を本気で考えるべきではないか。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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