01. 2014年7月28日 14:18:24
: nJF6kGWndY
かと言って、あまりにも党関係者の既得権は巨大だから自分の存立基盤を叩くのにも、限界がある スムーズに民主化が進むのは、あまり期待できず どこかで天安門みたいに逆行するか、体制崩壊するかの確率の方が高そうだな http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41339 習近平の反腐敗キャンペーンは 「進むも地獄、退くも地獄」 2014年07月28日(Mon) 阿部 純一 「虎もハエも一緒に叩く」ことを大上段に掲げて始まった習近平の腐敗取り締まりキャンペーンは、現在までのところ、とどまることを知らない展開を見せている。 中国で腐敗汚職に手を染めていない党官僚はほとんどいない。その現実のもとで、党官僚の浄化を徹底するとなれば、取り締まりは際限なく続くことになろう。 だからといって、腐敗摘発を行わなければ中国はどうにもならないところまで来ていた。そのことは、2012年の第18回党大会から現在まで党中央紀律検査委員会(中紀委)によって摘発された腐敗幹部の顔ぶれを見れば一目瞭然である。 香港の「大公報」紙のインターネットサイト「大公網」にある「国家反腐大業: 18大後落馬官員全解」を見ると、摘発された党官僚は67名に上り(7月24日現在)、そのうち副部(次官)級幹部が41名、正部(閣僚)級幹部が4名、副国(国家指導者)級が2名いる。これは江沢民や胡錦濤の時代にも見られなかった未曾有の摘発状況である。現在の中国が、かくも深刻な腐敗状況にあるかが分かる。 人民解放軍もターゲットに とはいえ、反腐敗を徹底的に追求すれば、党を筆頭に政府機関の権力機構は瓦解しかねない。そうならないようにする匙加減があるとすれば、これは実態として政治闘争となり、腐敗取り締まりは選択的に行われることになる。その際は、習近平政権が排除したい勢力に与していた党官僚がターゲットになるはずだ。 ただし、摘発された顔ぶれを見ている限りは、特定のターゲットに絞り込まれているようには見えない。 政府の腐敗行政官僚が摘発の中心であることは、先の67名中37と過半数を占めていることで分かるが、政府が牛耳る石油等エネルギー、電力、金融などの関連部門が腐敗の温床であったことを示すものであり、そこで利権を恣にした人物(例えば後述する周永康に連なる「石油派」など)が摘発の対象となったのは、政治的に選択されたというよりも、いわば当然の帰結であった。 習近平が叩くといった「虎」のうち、前中央政治局常務委員の周永康がこれまで摘発された中で「最大の虎」ということになる。江沢民政権の時代に「中央政治局常務委員以上は摘発の対象とならない」という「潜規則」(不文律)ができたとされるが、習近平は周永康を摘発したことでこれを破ったことになる。それだけでも習近平の反腐敗に懸ける意気込みが窺える。ただし、周永康の場合は薄熙来事件との関わりがあるわけで、反腐敗もさることながら権力闘争との関わりで見るべきであろう。 周永康に続いて、彼に繋がる国営石油企業を中心とした「石油派」幹部が大量に失脚した。そこでキャンペーンの矛を収めなかったことが、特定のターゲットを定めていない反腐敗キャンペーンのダイナミズムを示すことになった。 そして「2匹目の虎」として、前政治局委員で中央軍事委副主席でもあった徐才厚上将が、今年6月30日、「党籍剥奪」され軍事法院に起訴された。これを機に人民解放軍にも粛清の嵐が吹き荒れることになった。 人民解放軍を掌握すること、すなわち「軍権」の確保は、習近平の権力固めに必須の要件であった。習近平は反腐敗キャンペーンで解放軍にも容赦することはなかった。 徐才厚摘発のきっかけは、軍総後勤部副部長であった谷俊山中将による、邦貨換算で3000億円にも上ると言われた「解放軍史上最大の汚職事件」の摘発であった。2012年に汚職の疑いで査問を受け、同年5月には正式にポストを更迭されていたところ、やっと2014年3月に軍事法院に起訴され、汚職の実態が公表された。この間、この汚職事件に関与していたとされる徐才厚も査問を受ける立場にあったと言われている。軍内部では、今後、徐才厚と同時期に中央軍事委副主席であった郭伯雄上将にも査問が及ぶ可能性がある。 なお、谷俊山の軍内における「後ろ盾」は、江沢民弁公室主任から軍籍に転じ、軍総政治部副主任を務めている賈廷安上将とされている。徐才厚も郭伯雄も江沢民によって引き上げられた軍人である。ただし、賈廷安にはまだ査問の噂はない。 人民解放軍は、2014年8月1日の「建軍節」を機に、7大軍区の司令員、政治委員など指導部を大幅に若返りさせる人事を断行すると報じられている。そうであるとすれば、それは習近平が軍内における実権を掌握したことを内外に示す人事であり、その意味において人民解放軍に対する反腐敗キャンペーンは「峠を越した」と言えるのかもしれない。 実体は政治闘争であり自らの権威づけ また反腐敗キャンペーンでは、政府や軍に限らず、不正蓄財に繋がりやすい利権の集中する部門だけが対象となっているわけではない。「大公網」の摘発リストには載っていないが、7月11日に中国中央テレビ(CCTV)の看板記者で人気キャスターであった芮成鋼が突然、検察に検挙されるという事件があった。CCTVの汚職摘発の一環と見られ、検挙されたのは芮成鋼にとどまらず、5月以来多数が連行されていた。リストに載っていないのは、中紀委ではなく検察の事案だからであろう。しかし、中国の新聞や放送メディアは「党の喉舌」であり、党や政府の宣伝を担う部門であることから、この事件が今後、党中央宣伝部に対する腐敗取り締まりに発展する蓋然性が高いと見られている。 現状を素直に見るならば、反腐敗キャンペーンのターゲットは不断に拡大しつつあり、摘発のペースは2013年に21名だったところ今年はすでに20名に達し、むしろ加速しつつある。こうした状況が、「脛に傷を持つ」者たちを戦々恐々とさせている。 「石油派」摘発の過程で、2014年5月に「石油派」最大の実力者と見られていた曾慶紅・元国家副主席が、上海市党委書記の韓正、江沢民・元国家主席の長男である江綿恒・前中国科学院副院長を伴って上海で姿を現し、さらに江沢民自身も同月下旬、訪中したプーチン・ロシア大統領と同じく上海で会談することで「健在ぶり」をアピールしたのも、習近平の反腐敗キャンペーンが自分の身辺に及ぶことへの抵抗であり、牽制であることは間違いないだろう。 しかし、子細に摘発リストを眺めれば分かることだが、中国の建国に功のあった党元老の子弟は含まれていない。米国在住の著名な経済社会学者である何清漣氏がいみじくも指摘しているように、これが習近平の反腐敗キャンペーンの限界なのだろう。正統な「太子党」には手を出さない反腐敗キャンペーンは、その意味で政治闘争にほかならない。 ところで、毛沢東の「文化大革命」は、民衆を扇動して劉少奇やケ小平といった「実権派」を追い落として権力を奪取するという「奪権闘争」であったが、運動の拡大に歯止めが利かず全国的な大混乱を引き起こした。習近平は、これまでのところ「上からの」反腐敗キャンペーンにとどめ、民衆に対しては言論の統制を強めることで「下からの」関与を防いでいる。 これは「文革」の失敗を教訓にした部分もあるかもしれないが、反腐敗キャンペーンを制御可能なものにしておく必要を自覚しているからだろう。別の側面としては、習近平自身のリーダーシップを強化する狙いが見て取れ、その意味から自らの政治実績が乏しいという弱点をカバーし、権威を確立するための方策と見なすことができるだろう。 習近平は、2013年11月に開催された党18期3中全会で設立が明示された党中央国家安全委員会や党中央全面深化改革領導小組のトップを占め、また最近では党中央財経領導小組をも率いることで、主要な権限を手中に収め、そのポストによって自らの権威を高めようとしている。その共通する目的から見て、反腐敗キャンペーンと表裏一体の関係にあると見られる。 反腐敗キャンペーンの限界 国務院総理である李克強の影が薄くなるほど、権力の個人集中を実現した習近平にとって、非常に重い課題となるのは、いつまでも続けるわけにはいかない反腐敗キャンペーンの「幕引き」をどうするかである。この「線引き」はなかなか難しい。 現在のところ、8月の北戴河会議で後述する周永康の起訴への党内コンセンサスを取り付け、秋の党18期4中全会で腐敗防止のためのスキームを決定するシナリオが想定されるが、そこには自ずと限界がある。習近平が、利権を独占する共産党の独裁体制に腐敗の根源があるという現実を直視し、民衆が党を監視し監督する「政治民主化」に舵を切ることができるかと言えば、それは絶対にできないからだ。それこそ共産党を解体に追いやる選択であり、「党の指導体制」という「国体護持」が習近平に課せられている絶対的使命だからである。結果として習近平は反腐敗に関して「対症療法」以上のことはできまい。 さらに言えば、反腐敗キャンペーンのターゲットが絞り込まれていなかったことによって、汚職腐敗の摘発範囲が異常なまでに拡大してしまい、4中全会で「幕引き」がおそらくできないだろうということだ。 習近平は一体どこまでやるつもりか──拡大する「疑心暗鬼」が中国の指導層に及ぼす影響が、行政の萎縮をもたらすことになればマイナスの効果しか生まないだろう。習近平に対する抵抗勢力の結集もあり得る。 また、反腐敗キャンペーンを中途半端なままで終わらせてしまえば、党官僚の目に余る腐敗ぶりや法外な不正蓄財に不満を募らせていた民衆にとって、習近平のリーダーシップの限界をそこに見てしまうことになり、彼に対する求心力が失われかねない。 「進むも地獄、退くも地獄」の現実に習近平は直面しつつある。 |