03. 2014年7月24日 01:47:09
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情報戦だから当然だろうhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41297 JBpress>日本再生>安全保障 [安全保障] ホノルル沖に出現した招かれざる客、中国海軍のスパイ艦「北極星」 国際信義を裏切る行為に米国で批判の声 2014年07月24日(Thu) 北村 淳 毎日6000人近くの日本人観光客が押し寄せているハワイ・ホノルルの観光の中心ワイキキビーチ、その沖合12海里のアメリカ領海南方周縁の外側海域に中国人民解放軍海軍情報収集艦「北極星」が姿を現した。 強力なスパイ艦「北極星」は、ワイキキを観察しにきたのではなく、ハワイ・パールハーバー海軍基地を本拠地に開催されている多国籍海軍合同訓練「リムパック2014」を監視しにきたのである。 リムパック2014は、初参加の中国海軍も含んだ22カ国の海軍や海兵隊が参加して、6月下旬から8月上旬まで実施されている(本コラム「リムパックで特等席を与えられた自衛隊『いせ』」参照)。中国海軍が初めて参加するということで例年に増して注目されているリムパック2014には、中国も含んだ16カ国50隻以上の軍艦と、13カ国200機以上の航空機が参加しているため、“電子情報のデパート”とも呼ばれている。 各国軍艦が停泊するパールハーバー(手前は海上自衛隊いせ) 中国海軍の“公式”参加軍艦は駆逐艦・フリゲート・補給艦・病院船それぞれ1隻ずつの4隻であり、「北極星」はリムパックに招待されていない“闖入艦”である。 海上自衛隊とは“顔馴染み” 情報収集艦というのは、各種電子信号を傍受して収集する「シギント」(SIGINT)と呼ばれる電子戦を担当する軍艦である。シギントは、「コミント」(COMINT)と呼ばれる人間同士の各種通信、「エリント」(ELINT)と呼ばれる各種装置間の電子情報伝達、それにコミントとエリントが複合された交信などの電子情報収集活動である。情報収集艦が傍受するエリントには、発射されたミサイルが軍艦や航空機に送るデータといったような「フィシント」(FISINT)と呼ばれる情報も含まれている。要するに、現代戦にとって不可欠な、ありとあらゆる電子情報を収集する任務を帯びている軍艦が情報収集艦であり、通常“スパイ艦”と呼ばれている。 東調級(815型)情報収集艦「北極星」(AGI-851)は中国人民解放軍海軍東海艦隊に所属している。AGI-851の船名は、かつては「東調」と露骨な名称であったが、その後「北極星」とソフトな艦名に変更された。 中国海軍情報収集艦「北極星」AGI-851(写真:防衛省) AGI-851の主たる情報収集担当海域は東シナ海ならびに日本周辺海域であり、自衛隊や米軍の電子情報をキャッチするために尖閣諸島周辺をはじめ南西諸島周辺海域にはしばしば姿を現す。海上自衛隊にとっては、いわば“顔馴染みの友人”である。 米海軍も情報収集活動を行っているが・・・ 極めて強力な電子情報収集能力を持ったAGI-851「北極星」が、ホノルル沖のアメリカ領海に近接しているアメリカ排他的経済水域内とはいえ、公海上で情報収集任務を遂行していても、「公海自由の原則」からは何の問題も生じない。 アメリカは、「公海自由の原則」が国際社会で遵守される状態を維持することを国策の1つとしている。アメリカ太平洋艦隊も、「中国に限らずどこの海軍のスパイ艦が、ホノルル南方沖の公海上でリムパック2014から電子情報を傍受していても一切干渉する立場にはない」とアメリカの基本姿勢を表明している。 もちろんアメリカ海軍は、リムパック2014をはじめ各種演習では他国スパイ艦やスパイ機などから軍事機密を奪取されないように万全の備えをしている。当然のことながら、現在アメリカ側も、各種電子戦装置を総動員して、AGI-851に対する徹底した対電子戦活動を実施中であることは言うまでもない。 確かに、公海上の中国海軍のスパイ艦に対してアメリカ側が公にはなんら批判めいたコメントを発さないのは「公海自由の原則」に照らして当然であるし、アメリカ軍自身も世界中でAGI-851に似通った情報収集活動を展開していることは事実である(ただし、現在アメリカ海軍は潜水艦の探知を目的とする音響測定艦は運用しているが、AGI-851タイプの情報収集艦は運用しておらず、電子情報収集は主として航空機で実施されている)。 中国にとっての「公海自由の原則」とは しかしながら、アメリカと中国には大きな違いがある。アメリカは「公海自由の原則」に基づいて自らも公海上(その上空)での情報収集活動を実施するとともに、他国による公海上での情報収集活動に対しても干渉しない。これに反して、中国は「公海自由の原則」に基づいて他国の排他的経済水域内での情報収集活動は実施するが、中国に対する情報収集活動には抗議するし、場合によっては実力で排除しようとする。 2001年4月1日、海南島の60海里沖合の公海上空で情報収集飛行中であったアメリカ海軍EP-3電子偵察機に対して、中国海軍J-8戦闘機2機がEP-3の針路を遮るために肉薄した。J-8戦闘機のうち1機がEP-3と接触して墜落、搭乗員は死亡した。ダメージを受けたEP-3は海南島に緊急着陸し、搭乗員が電子資機材を破壊したものの、機体は中国側の手に渡り、搭乗員たちは中国軍に拘束された。 また2009年3月4日、中国沿岸から100海里ほど沖合の黄海の公海(中国の排他的経済水域)上で活動中のアメリカ海軍音響測定艦ビクトリアスに対して、中国漁業局(漁政)巡視艇が接近して高出力照明を照射して活動を妨害した。そして翌日には中国海洋監視機がビクトリアスの上空120メートルまで接近して横断する危険行為(フライバイ)を12回も実施した。その後、5月に入ると、やはり黄海上の深い霧の中、中国船がビクトリアスに急接近し衝突距離にまで肉薄しビクトリアスに緊急停船を余儀なくさせた。 時を同じくして3月5日、南シナ海の海南島沖65海里の公海(中国の排他的経済水域)上で中国潜水艦の情報を収集中のアメリカ海軍音響測定艦インペッカブルに対して、中国海軍フリゲートが90メートルの至近距離まで突進した。それに引き続き、海洋監視機もインペッカブルに対して11回にわたってフライバイを実施するとともに、フリゲートも再度肉薄し脅かした。中国情報艦がインペッカブルに接近して海域より退去するよう警告を続け、3月8日になると、インペッカブルを中国海軍海洋調査艦を含む公船5隻で取り囲み、大型トロール船がインペッカブルに15メートルまで肉薄したり、海面に丸太を投げ込んだりしたため、インペッカブルは緊急停船を余儀なくされた。トロール船はインペッカブルが曳航していたソナーを奪い取ろうとまでした。 インペッカブルに肉薄する中国トロール船(写真:米海軍) 2013年12月5日、南シナ海の公海上で中国海軍の訓練を監視していたアメリカ海軍巡洋艦カウペンスに中国輸送揚陸艦が衝突危険距離まで急接近して、カウペンスに緊急回避行動を余儀なくさせた(本コラム2013年12月19日)。この事件は、中国の排他的経済水域どころか、中国沿岸より200海里以上離れた公海上での出来事であった。もっとも、中国に言わせると、南シナ海の90%を占める九段線内海域は「中国の海」であって公海ではない、ということになるのであろう。 いずれの事件も、公海上で調査活動や監視活動を実施していたアメリカ軍艦に対して、中国側が公船や軍艦それに航空機によって妨害した「公海自由の原則」を踏みにじった行為であった。要するに、中国にとっての「公海自由の原則」とは、中国が行使することはできても、中国に対しては行使されてはならない“中国にとって都合の良い範囲における”国際慣行というわけである。 怒り心頭のフォーブス議員 アメリカ下院軍事委員会海軍遠征軍小委員会委員長のランディー・フォーブス議員は、「スパイ艦を多国籍海軍による合同演習海域のど真ん中に送り込んだ中国海軍は、リムパック2014に参集した20カ国の仲間たちに対して侮辱的姿勢を示していることが明らかになった」と憤慨している。そして、「中国はいまだ信頼できるパートナーとなり得る準備ができていないことが明らかになった。中国海軍のリムパックへの参加は、今回が最初で最後になるに違いない」と強いメッセージを中国側に送った。 リムパックに参加した国に対しては、次回(2年後)のリムパックで再会するように、主催者であるアメリカ海軍が非公式な招待を打診することが慣例になっている。その後、正式にアメリカ政府からの招待状が送られることになる。 しかし、フォーブス議員に類する意見を持つ政治家や軍関係者は少なくない。オバマ政権がリムパック2016の招待状を中国海軍に発するには、相当高いハードルを乗り越えなければならないであろう。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140722/269032/?ST=print 「米中新時代と日本の針路」 中南米歴訪で“非米の国際規範”作りを始めた習近平"両洋鉄路"はパナマ海峡の無力化が狙い 2014年7月24日(木) 加藤 嘉一 ベネズエラを訪問中の習近平国家主席は7月21日 、昨年3月に逝去 したウゴ・チャベス第53代大統領の陵墓を訪れた。中国とベネズエラの国旗を振る市民たちが沿道を埋め尽くした。以前はベネズエラの軍事基地だったこの陵墓は首都・カラカス市の山丘にある。1992年、チャベス前大統領はここで革命を指揮した。 「チャベス氏は魅力的なリーダーだった。中国人民の偉大なる友人であり、私にとっても良き友人であった。彼は中国の文化を愛し、中国共産党の歴史や執政理念に深い理解を示していた。中国=ベネズエラ関係の発展に卓越した貢献をした」 習近平国家主席は、過去に2度対面したことがあるというチャベス前大統領との思い出を振り返り、哀悼の意を表した。 ベネズエラを後にした習近平国家主席は今回の中南米訪問(7月15〜23日:ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、キューバ)における最後の目的地であるキューバの首都・ハバナへと飛んだ。国家副主席時代に訪れて以来、約3年ぶりのキューバ訪問である。前回と同様に、革命指導者であったフィデル・カストロ前国家評議会議長 の元を訪れている。 今回は、習近平国家主席にとって就任以来8回目の外遊である。中南米への訪問は2回目だ。前任者である胡錦濤・前国家主席が就任後1年8カ月経ってから初めて同地域を訪問したことを考えると、習近平国家主席の中南米重視は顕著だ。 中国共産党のある外交担当者は筆者にこう述べる。「習主席には“中南米はアメリカ合衆国の裏庭”という認識が強いようだ。左翼的、反米的に傾きやすい中南米のリーダーたちと個人的な信頼関係を作ろうという意識が見られる」。 本連載でもたびたび言及してきたように、習近平国家主席の言動には米国、あるいは米国主導で構築されてきた国際秩序・ルールへの“対抗心”が随所でにじみ出ている。中国が位置するアジア地域だけでなく、開発独裁的にインフラ建設を敢行しているアフリカ大陸や、地域全体として“反米”に傾きやすいアラブ中東や中南米地域との関係を強化して、“勢力範囲”を拡大しようとしている。言い換えれば、“お友達づくり”に外交資本を投入しているように見える。 ブラジル、ペルーと目指す“両洋鉄路” 習近平国家主席の“外への野心”の背景には、政治・外交面の要素だけでなく、国内の過剰な生産能力と約4兆ドルに及ぶ外貨準備高という経済要素も存在する。インフラ建設に従事する国有企業の仕事が縮小傾向にあるなかで、そのミッションを内から外へ向ける。同時に、使い道が疑問視されてきた外貨を戦略的に投入していくのだろう。 中国=中南米間の貿易規模は2013年に2616億ドルに達した(2000年時は126億ドル)。中国から同地域への累積直接投資は830億ドルに及んでいる(対アフリカの3.3倍)。 習近平国家主席が、“持続可能な発展”という観点から、最近とりわけ重視しているのがエネルギー・原材料だ。ブラジルの鉄鉱石、チリの銅、ベネズエラの石油など、いずれも中国のエネルギー戦略にとっては欠かせない存在であることに疑いない。中南米は東南アジア、アラブ中東、旧ソ連圏といった地域に比べて、「中国に直接的な利害衝突をもたらすような地政学リスクもほとんど見当たらない」(石油系の中国国有企業幹部)。 特筆に値するのが、習近平国家主席が発表した“両洋鉄路”構想である。ブラジリアで7月16日、中国、ブラジル、ペルー3国政府が共同で発表した。“両洋”とは太平洋と大西洋を指す。つまり「2つの海洋をつなぐ鉄道建設」だ。その長さは3500〜4000キロに及ぶ見込みだという。 “両洋鉄路”構想を巡り、習近平国家主席は「3国はワーキンググループを創設し、企画、設計、建設、運営を含めた全体的な協力関係を推し進めるべきだ。中国はペルー、ブラジルと密に連携していきたいと思っている」と述べた。ここにも習近平国家主席の“海洋観”、及び“お友達”と“経済力”を武器にした対外戦略観が表われていると筆者は見る。 中国の政府系シンクタンク中国社会科学院ラテンアメリカ研究所の蘇振興研究員は同構想を“陸上版パナマ”と名づけた。国営新華社通信は習近平国家主席の国家観・世界観に迎合して、“両洋鉄路”を次のように報道している。「中国が“両洋鉄路”を打ち出したのは、米国のコントロール下にあるパナマ運河が国際物流において占めている独占的地位を打破するためだ」。 中国としては、経済安全保障の観点からも、パナマ運河への依存度を減らし、自らの価値観と構想によって建設する“両洋鉄路”を通じて国内経済建設を推し進めたいのだろう。かつ、国際社会における勢力範囲と支配力を強化していく意向だと見られる。 BRICS開銀は米国不信の表れ 米国への対抗心だけでなく、不信感も滲み出ている。 前回コラム「米中戦略・経済対話〜計画通りに実施できたことは安定を示す」でも検証したように、米中関係は “新時代”に突入しているように見える。2カ国問題、国際政治経済秩序、非伝統的安全保障など、あらゆる分野で協力関係を推進してはいるものの、本質的には互いに互いを信用していない。それが“新型大国関係”を巡る立場と認識のギャップに凝縮されている。中国は「米国は中国を封じ込めようとしている」と疑い、米国は「中国は世界秩序を変更しようとしている」と警戒している。 米中間に横たわる相互不信構造は長期化する。 中国としては、唯一の与党である共産党がトップダウン型・開発独裁的に政策を立案・執行・評価できる間に可能な限り政治資本を投入し、勢力範囲を拡大し、米国の“封じ込め政策”を逆に封じ込めようとしているのであろう。筆者には、胡錦濤前国家主席に比べて、習近平国家主席はそういう認識が強いように映る。 北京で7月9〜10日に開催された第6回米中戦略・経済対話において300以上の“成果”を収め(合意・協定をまとめた)、協力関係を大々的にアピールしたわずか5日後に“米国の裏庭”を訪問。米国、そして米国が築いてきたルールや秩序に対する反発や不信を訴えるような政策・声明を立て続けに打ち出すあたりに、習近平国家主席の世界観を垣間見ることができる。米国と協調はしつつも、対等な立場で牽制していくというという世界観だ。 米ワシントンDC在住の中国問題専門家は筆者にこう語った。「習近平という男の野心は自国の主権と領土を死守するラインに留まらない。More than Thatだ。“中国の夢”を唱える習近平は独自の世界を創り上げようとしている」。 “独自の世界”という意味で象徴的なのが、“BRICS開発銀行”の設立で正式に合意したことだ。ブラジルのフォルタレザにて7月15日、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国が集まって決めた。 同銀行の設立決定を中国の台頭という観点から考えると、2つの背景が浮き彫りになってくる。1つは、世界経済の力構造や成長源が多様化する中で、欧米主導で運営されてきた世界銀行や国際通貨基金(IMF)に中国が満足していないこと。もう1つは、ルールメイキングにおいて自らがより強い発言権を持てる新しいプラットフォームを構築したいという中国の未来展望だ。 そして、この2つの背景に対して、ブラジル、ロシア、インド、南アフリカも、立場に差はあれ、一定程度、賛同していると見ていいだろう。「欧米主導で構築してきた世界銀行やIMFだけでは、複雑で多様なグローバル経済の問題に対処することはできない。BRICS開発銀行の設立は欧米主導によるルールや秩序の欠陥を補うものだ」(インドの証券アナリスト)。 15日の発表によれば、総額1000億ドルの外貨準備基金の中で、中国が410億ドル、ブラジル、ロシア、インドがそれぞれ180億ドルずつ、南アフリカが50億ドルを負担するという。また、同開発銀行の本部は上海に設置し、初代総裁はインドから選出されることを決めた。 「中華民族の偉大なる復興」を意味する“中国の夢”を提唱し、米国への対抗心を隠さない習近平国家主席であっても、中国一国のみで米国を牽制し、欧米主導とは異なる国際秩序を形成できるとは考えていない。中国と同様に新興国に属し、“弱者”であるがゆえに米国の“覇権的地位”をよく思わず、かつ中国が誇る開発独裁型の経済建設を必要としている国家を取り込んでいく――この過程が、米国の支配的地位を覆し、欧米主導の国際秩序・ルールを牽制する結果につながると踏んでいるのだろう。 前出の共産党外交担当者は筆者にこう語る。「我々はBRICSというメカニズムを重視している。構成国が別々の地域に散らばっていることをポジティブに捉えている。影響力を拡散させるのに役立つ。世界が多極的であればあるほど中国はその潜在力を発揮できる。習主席はBRICSを、前例にとらわれない、機動的な枠組みにしていくべきだと考えている」。 このコラムについて 米中新時代と日本の針路 「新型大国関係」(The New Type of Big Power Relationship)という言葉が飛び交っている。米国と中国の関係を修飾する際に用いられる。 「昨今の米中関係は冷戦時代の米ソ関係とは異なり、必ずしも対抗し合うわけではない。政治体制や価値観の違いを越えて、互いの核心的利益を尊重しつつ、グローバルイシューで協力しつつ、プラグマティックな関係を構築していける」 中国側は米国側にこう呼びかけている。 ただ米国側は慎重な姿勢を崩さない。 「台頭する大国」(Emerging Power)と「既存の大国」(Dominant Power)の力関係が均衡していけば、政治・経済・貿易・イデオロギーなどの分野で必然的に何らかの摩擦が起こり、場合によっては軍事衝突にまで発展しうる、というのは歴史が教える教訓だ。 米国が「中国はゲームチェンジャーとして既存の国際秩序を力の論理で変更しようとしている」と中国の戦略的意図を疑えば、中国は「米国はソ連にしたように、中国に対しても封じ込め政策(Containment Policy)を施すであろう」と米国の戦略的意図を疑う。 「米中戦略的相互不信」は当分の間消えそうにない。それはオバマ=習近平時代でも基本的には変わらないだろう。 中国の習近平国家主席は米カリフォルニア州サニーランドでオバマ米大統領と非公式に会談した際に「太平洋は米中2大国を収納できる」と語り、アジア太平洋地域を米中で共同統治しようと暗に持ちかけた。これに対してオバマサイドは慎重姿勢を崩さない。世界唯一の超大国としての地位を中国に譲るつもりも、分かち合うつもりもないからだ。 互いに探りあい、牽制し、競合しつつも、米中新時代が始まったことだけは確かだ。 本連載では、「いま米中の間で何が起こっているのか?」をフォローアップしつつ、「新型大国関係」がどういうカタチを成していくのか、米中関係はどこへ向かっていくのかを考察していく。その過程で、「日本は米中の狭間でどう生きるか」という戦略的課題にも真剣に取り組みたい。 筆者はこれまで、活動拠点と視点を変化させながら米中関係を現場ベースでウォッチしてきた――2003〜2012年まで中国・北京に滞在し、その後は米ボストンに拠点を移した。本連載では、筆者自身の実体験も踏まえて、米中の政策立案者や有識者が互いの存在や戦略をどう認識しているのかという相互認識の問題にも、日本人という第三者的な立場から切り込んでいきたいと考えている。政策や対策は現状そのものによって決まるわけではなく、当事者たちの現状に対する認識によって左右されるからだ。 日本も部外者ではいられない。どういう戦略観をもって、米中の狭間で国益を最大化し、特にアジア太平洋地域で国際的な利益を追求し、国際社会で確固たる地位と尊厳を獲得していくか。「日本の針路」という核心的利益について真剣に考えなければならない。 |