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中南海に「夏の嵐」が吹き荒れる!? 習近平主席が進める汚職撲滅運動の本質とは
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39705
2014年06月30日(月) 近藤 大介 北京のランダム・ウォーカー 現代ビジネス
日本ではニュースにもなっていないが、中国のニュースによれば、6月26日は、国連が定めた「国際禁毒日」だそうである。1987年6月に、ウィーンで開いた麻薬濫用と違法販売問題に関する大臣級会議によって、この日を国際禁毒日に定め、同年12月に国連で認定されたのだという。
この日の中国公安部の発表によれば、今年4月までに摘発された「吸毒者」は258万人、うちアヘン中毒者が138万人、合成薬物中毒者が117万人、その他3万人で、毎年数千億元の「市場」が形成されているという。
これは狭義の「毒品」だが、習近平政権は、もっと広義の「毒品」---汚職の摘発にも余念がない。
中央官庁主管で総額約30億元の違反を公表
6月24日、中国の会計検査院にあたる審計署が、「審計報告」(会計検査報告)を行った。それによれば、2013年末までの予算執行において、13の中央官庁が主管する35の社会組織と61の所属事業単位で、規則違反が見つかり、その総額は29億7,500万元に上るという。具体的に公表されたのは次の通りだ。
○外交部が、5,000万元を超す未許可の購買を行った
○国家発展改革委員会が、43回も未許可の海外出張に出た
○清華大学など6組織が、8,366万元もの支出超過
○科学技術部所属の研究所が、711万元の資金を過剰請求
○工業情報部所属の応急センターが、2億3,000万元の未申告の購入を行った
○公安部傘下の組織が、洪水対策用資金643万元を流用
○民政部の4つの会議が、規定を超す18万3,200元を支出した
○財政部の所属組織が、研修費を550万元受け取った
○人力資源社会保障部の所属組織が、認可されていない4,000万元を支出した
○国土部とその所属組織が、1億7,000万元の予算を貯蓄した
○住宅都市農村建設部の所属組織が、2,700万元の理財産品を不当に購入した
○海事局が、指定ホテル以外で会議を開き。260万元支払った
○水利部が、水利規則総院の7人の幹部が、企業の兼職を行った
○農水部の所属組織が、違法の接待施設を作って1億2,000万元使った
○商務部とその所属組織が、8,200万元の予算の執行に問題があった
○文化部とその所属組織が、2,843万元の不当な購入を行った
○衛生計画委員会所属の5組織が、665万元の隠し金を持っていた
○中国造幣総公司など6組織が、社会保険などを1億8,000万元取り過ぎた
○国家資産管理監督委員会が、19の海外出張を国有企業に434万元負担させた
○税務総局が、公用車を20台不当に購入した
○品質検査総局が、接待費・出張費・公用車費を約160万元分、予算超過した
○広電総局と所属組織が、1.1億元の不当使用をやりくりした
○スポーツ総局が、北京で行うべき会議を他省へ出張して行った
○食品薬品監督局が、2,239万元の支出超過をした
○統計局が、予算に入れるべきでない8081人分を予算に入れた
○林業局が、13項目の規定額を超す物品購入を行った
○宗教局が、地方部門に向けて850万元の補助金を送った
○新華社が、15台の公用車と5つの海外出張が予算に入っておらず、4,120万元の予算の執行が不透明
○中国科学院物理研究所が、606万元の予算を二重申告した
○銀行管理監督委員会が、黒竜江省で公用車14台を不当に手配した
○証券管理監督委員会が、129万元の家賃手当を不当に請求した
○保険管理監督委員会が、海外出張費を、招待先に負担させた
○社会保障基金が、3年間の投資で70億元の損失を出した
○国家海洋局が、11日の南極視察のうち、6日間パリとチリにいた
○民用航空局が、3億元以上の基金を不当に請求した
○郵政局が、内部の独立していない会社に下請けを出した
○人民日報社が、新社屋の増築を、許可される前に行った
他にも、中華医学会は、2012年と2013年に開いた160回の学術会議で、医薬品会社から計8億2,000万元もの協賛金を取っていた。衛生部病院管理研究所も、2011年から2013年までで3,527万元の不当な収入を得ていた。まさに、中国版のノバルティス事件のようなことが起こっていたのだ。
国有企業に関しても、審計署は6月20日に、11社分の2012年度財務調査報告をまとめ、1194項目の制度を改め、幹部32人を含む190人を厳粛に処分したという。
天下りも深刻で、中国青年報の調査によれば、41人の高級官僚OBのうち、15人が金融機関に、10人がエネルギー関連企業に天下りしていたという。
■汚職撲滅に励む「習近平流」の功と罪
新華社通信によれば、こうした不当行為は、次の4種類に分類できるという。
<手法1 公私混同>
中国化学技術産業化促進会は、2009年に企業から寄付された22万3,100元の車を、幹部の名義に個人登録して使っていた。また、オフィス用品を買ったとして、2010年に14万7,700元、2011年に11万3,400元のデパート券を購入し、幹部が使っていた。
<手法2 カネの無心>
中国先端技術産業開発区協会は、81の地方の同区協会から「年会費」と称して94万2,000元を吸い上げていた。
<手法3 企業の代行>
2013年、上海黄金宝飾品業界協会は、金や白金の販売を独占し、価格を操作するなどしていた。これにより、売上げの1%にあたる1,009万3,700元の罰金を喰らった。
<手法4 自己便宜>
2008年から2011年まで、公安部所属の中国消防協会は、出版社開設の許可もないまま試験教材などを販売し、825万3,200元の所得を得ていた。
書き連ねていて疲れてしまったが、これだけ調べ上げ、公表に踏み切った習近平主席は、たいしたものだと思う。中国の中央官庁は昨年、接待費が75%カットになったそうである。そればかりか、「紀委」と呼ばれる検査官が各省庁に入ったが、「紀委」はそれぞれ、「引っ捕らえる人数」をあらかじめ指定されて乗り込むのだそうだ。
例えば、「○○省では5人の幹部を吊し上げろ」などと、先に人数を決める。つまり、幹部の誰かがババを引かなければならないというわけだ。そのため、それまでふんぞり返っていた役人たちは誰もが戦々兢々。すっかり静まりかえってしまった。
こうした「習近平流」は、功罪半ばだ。功は、すっかり綱紀が正された上、汚職とは縁のない庶民から拍手喝采で、政権支持率は急上昇である。逆に罪は、「出る杭は打たれる」ことを恐れた官僚が、すっかり仕事をしなくなってしまったことだ。そのため、ただでさえ経済停滞の局面なのに、さらに萎縮してしまった。
■胡錦濤率いる「団派」に権力闘争を仕掛けた?
そんな中、習近平主席は、6月13日に、中央財経指導小グループのグループ長に就いていたことが判明した。同グループの第4回会議を開いたことを新華社が報じたのだ。副グループ長は、李克強首相と張高麗中央政治局常務委員だという。
習近平はこれで、国家主席、共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席、国家安全委員会主席、中央全面深化改革指導小グループ長、中央インターネット安全情報化指導小グループ長、中央軍事委員会国防軍隊深化改革指導小グループ長に続き、「8権」を手にしたことになる。
このように独裁化しつつある習近平主席は、6月19日、ついにルビコン川を渡った。山西省人民政治協商会議副主席の令政策を、重大な規律違反の容疑で捜査を始めたと発表したのだ。
幹部が次々に召し上げられているため、このようなニュースにはすっかり驚かなくなったが、今回は驚いた。なぜなら令政策は、令計画・中国人民政治協商会議副主席兼中国共産党中央統一戦線部長の実兄だからである。令計画は、胡錦濤前主席の最側近で、2年前まで胡錦濤政権の中央弁公室主任(官房長官に相当)を務めていた。つまり習近平政権による令政策拘束は、胡錦濤率いる「団派」(中国共産主義青年団)8000万人に権力闘争を仕掛けたに等しいからだ。
中国の主な政治派閥は、習近平主席を代表とする「太子党」、江沢民元主席を代表とする「上海閥」、そして胡錦濤前主席や李克己首相を代表とする「団派」である。これまでの構図は、ごくごく単純化して言えば、台頭する「太子党」が弱りだした「上海閥」を叩くというもので、この権力闘争が、習近平政権が進める汚職撲滅運動の本質だった。それがついに習近平は、「団派」にも闘いを挑んだのである。
これにはさすがに中南海の衝撃が大きかったようで、新華社通信は、翌20日に、「統一戦線部が座談会を開き、令計画が交流の場を持った」という、取ってつけたような記事を配信した。この記事の意味するところは、令政策拘束はあくまでも腐敗撲滅運動の一環であって、弟の令計画とは無関係で、令計画は健在だということを示すことだ。もしかしたら、兄の拘束に怒った令計画が仕掛けた記事かもしれない。
6月17日、訪英中の李克強首相が、エリザベス女王に会見した。李克強首相は、この会見が実現しなければ訪英しないとごねたとか、この会見を実現させるために2.5兆円もの中英間の商談を成立させたなどとゴシップ調で報じられた。だが察するに、「団派」にも粛清の波が及んできた現在、李克強首相としては、英国女王に謁見するほどの権威を中国国内で見せつける必要に迫られていたのではないだろうか。
実際、6月27日は、ポスト習近平の大本命で、李克強首相の弟分である「団派」のホープ、胡春華・広東省党委書記のお膝元にも火がついた。胡春華書記の愛弟子である同じ「団派」の万慶良・広州市党委書記が、「重大な規律違反」によって取り調べられたのだ。
ともあれ、こうした中南海の「夏の嵐」は、8月の「北戴河会議」へ向けてますます吹き荒れていくことだろう。
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