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中国外交部(外務省)の報道官は、6月10日の定例記者会見で、「南京事件」と「慰安婦問題」の歴史資料をユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界記憶遺産に登録申請したことを明らかにした。写真は長春解放。
<遠藤誉が斬る>自国民への虐殺は忘れていいのか?――中国、「南京事件」や「慰安婦」を世界記憶遺産に申請
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140613-00000001-rcdc-cn
Record China 6月13日(金)0時28分配信
中国外交部(外務省)の報道官は、6月10日の定例記者会見で、「南京事件」と「慰安婦問題」の歴史資料をユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界記憶遺産に登録申請したことを明らかにした。
この資料に関して、その裏で何が起きていたか、筆者は元森本防衛大臣や自民党の田村政務調査会調査役の田村重信氏との雑誌対談で明らかにしているので、まずそれをご紹介したい(月刊誌「WiLL」7月号、2014年5月26日発売)。
◆オバマ大統領と連携して発表した吉林省公文書館資料
まだ記憶に新しいと思うが、4月末に行われたアメリカのオバマ大統領のアジア歴訪で、
オバマ大統領は4月25日、韓国のパククネ(朴槿恵)大統領との共同記者会見で「慰安婦問題」に関して触れた。
その前日、あたかも安倍首相とは親密な関係にあるかのようなポーズを見せて日米同盟強化を確認したばかりなのに、今度はソウルで、「旧日本軍の従軍慰安婦問題」について「歴史を振り返るなら、実に甚だしい人権侵害と考えなければならない」と、堂々と日本を非難。
さらにオバマ大統領は「安倍晋三首相と日本国民も、過去はより正直かつ公正に理解されなければならないと認識しているだろう」と厳しい顔で続け、「従軍慰安婦制度への旧日本軍の関与を認め謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話を継承するとの約束を守るよう」念を押した。
日本では、「パククネ大統領に一定の理解を示した」とか「パククネへのリップサービス」といった報道が成されたが、筆者は、そう思っていない。
なぜなら、まさに同じ日の4月25日に、中国の新華網が一斉に「吉林省公文書館が、日本軍による慰安婦強制連行の記録を大量に公開した」と報じたからだ。
オバマ大統領が「慰安婦問題」に初めて触れた同じ「4月25日」に、まるで示し合わせたかのように、中国のネット空間に「慰安婦強制連行記録」が公開される。
もし、水面下で米中が情報交換をしていなかったとしたら、このような偶然性が、あり得るだろうか?
また、そうでなければ、オバマ大統領のこの言動は、あまりに奇異で、唐突で、整合性が無さ過ぎる。
吉林省公文書館が公開するには、それまでにかなりの長期にわたる前準備が必要だったはずだ。だとすれば、米中間にも、それなりの「準備」プロセスがあっただろう。偶然の一致と看過するには、あまりに符合性があり過ぎる。
こうした周到な準備をした上で、中国は、「天安門事件が過ぎるのを待って」、「自国民を虐殺したことを棚に上げて」、ユネスコの世界記憶遺産に登録したのではないのか。
◆中国はまず、自国民虐殺の歴史を直視せよ!
6月10日、中国の外交部報道官は、ユネスコ申請に当たって、「非常に貴重で真実性、重要な歴史価値がある資料だ」と強調した上で、申請の目的は「類似の非人道、反人類の犯罪行為が繰り返されることを防ぐためだ」と述べた。
その同じ言葉を、筆者は中国に対して言いたい。
日中戦争で何が起きたかは別として、少なくとも筆者が体験したのは中国建国の時の、中国共産党軍が行った「非人道的、反人類の犯罪行為」だ。
何度か本コラムでも書かせて頂いたので、繰り返しになることをお許しいただきたいが、「人民」の味方であるはずの「中国人民解放軍」は、中国の吉林省長春市を鉄条網で食糧封鎖した包囲網(チャーズ)の中で、無辜の人民が餓死していくのを見殺しにした。
包囲網の門を開けなかったのは中国人民解放軍(当時の八路軍)。
彼らは木の柵を鉄条網で結わいつけた封鎖網の目の前で、数十万に及ぶ「人民」が餓死し、生き残っている者はその餓死体の上で野宿し、そして中国人の中には餓死体を食する者まで出現するという地獄絵図を、黙って見ていた。
鉄条網を潜り抜けて脱出した者は銃殺される。
この事実を中国は公開させない。
天安門事件で無くなった多くの若者たちの命の尊厳とともに、「中国人民解放軍が殺した命」の尊厳は、その事実とともに、この世から抹消しなければならないのだ。
犠牲者は、まるで罪人扱いである。
この事実を残そうと努力する者は、「犯罪者扱い」なのだ。
このような中国のどこに「類似の非人道、反人類の犯罪行為が繰り返されることを防ぐためだ」と言う資格があるのだろうか?
中国が優先的に守らなければならないのは、自国民ではないのか?
中国共産党の統治を維持するために、真相を明らかにしようとする自国民の発言を規制し、犠牲者を逮捕するという、本末転倒のことがあっていいのだろうか?
筆者が書いた『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)中国建国の残火』は、それを問うためであり、犠牲者の墓標を建てるためだ。
日本人は、中国政府、特に中国共産党指導部と、中国の一般人民とを区別しなければならない。
一般人民の中には、今もなお命を賭けて、「党と政府」に抗議し、「正義」を求めている者たちが大勢いる。「どの命の尊厳も同じであることを認めよ」と、「事実を残すこと」に命がけなのだ。「党と政府」を信じていただけに、その勢いは怖い。
それを躱(かわ)すためにも、「党と政府」は「反日」で党の求心力を強化しようとしている。貧富の格差や腐敗により、人心が党から離れ、党の統治が危うくなっているからだ。
だから日本は直情的に相手の挑戦に乗らないようにしなければならない。同時に経済交流ばかり重視して、真の人権を叫ぶ中国人民への応援を控えるようなことはすべきではない。民主と自由を貫く者こそが、最後には生き残る。そのことを信じて、堂々としていなければならない。その方が強い。
その意味で、天安門事件も、このチャーズ事件も、日本と無関係ではないのである。
また日本は中国に26回も謝罪したことを堂々と言えるような政府であってほしい。中国を信じて中国のために尽くしてきた多くの日本の経済人、民間人のためにも、怨念の連鎖を断ち切らなくてはならない。
<遠藤誉が斬る>第38回
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』など多数。
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