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焦点:中国が「内政不干渉」の原則転換、アフリカ権益保護強化で
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0EI07920140607
2014年 06月 7日 14:33 JST
[ジュバ 5日 ロイター] - 中国は南スーダンの石油産業への最大の出資国だが、その投資を脅かす政府軍と反政府勢力との5カ月以上にわたる戦闘を収束させるため、これまでにない外交アプローチに出ている。
その微妙な変化は、エチオピアの首都アディスアベバで数カ月間行われた和平交渉で顕著に表れている。複数の外交官は、中国が常に交渉に関与し、南スーダンの支援国である米国、英国、ノルウェーと協議している様子などに、中国のより積極的な姿勢が見て取れると話す。
戦闘開始から1カ月がたった今年1月23日に最初の停戦合意が成立した時、中国の解暁岩・駐エチオピア大使は各国代表団とともに署名の場でスピーチし、中国の関与を印象付けた。
こうした新しい方針は、中国がアフリカの内政に立ち入らないという従来の政策を放棄したというわけではなく、投資拡大とともに利害関係も増える中で、中国が政策を徐々に変更しつつあることを示している。
アフリカ最大の貿易相手国となった今、中国は経済的利益が増大する他のアフリカ地域にも、その新たなアプローチを広げる圧力に直面する可能性もある。
国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」のアナリスト、クレア・アレンソン氏は、中国が「こうした国々にかなり重要な資産を有し、それらを守る必要が出てきた」と指摘。「内政不干渉のスタンスは維持したいのはやまやまだろうが、思い通りにはいっていない」と分析する。
今のところ、南スーダンには中国が積極的外交を展開する例外的な状況がある。南スーダンの原油生産がフル稼働した場合、同国からの原油購入は中国の総輸入量の5%に上っていた。また、中国石油天然ガス集団(CNPC)は、ジョイントベンチャーで開発する南スーダンの油田に40%の権益を有している。
原油収入が南スーダンの歳入に占める割合は約98%。米英、ノルウェーは同国の最大の支援国でありながら、原油生産の権益は持っていない。
<平和維持活動>
こうした背景を受け、中国はキール大統領と反政府勢力を率いるマシャール前副大統領の双方に話し合いを要請。 さらに、駐南スーダン大使の馬強氏は双方が衝突した昨年12月15日の直後、政府軍であるスーダン人民解放軍(SPLA)の司令官に対し、武器交渉を中止すると通告した。
東アフリカ諸国の地域機構「政府間開発機構(IGAD)」を中心とした調停に関与した複数の西側高官は、中国が武器売却中止を決断したことは知らなかったとし、政策転換があったのは疑いないと見る。
ある外交関係者は、「中国は明らかに外交を強化しており、今やより積極的で対応も迅速だ」と話す。この関係者は、南スーダンがスーダンから独立した翌年の2012年に起きた両国間の衝突に、中国が政策を転換する最初の兆しがあったという。
15カ月続いた衝突を収束させるには、中国の役割が不可欠と見られていた。この問題で、南スーダンの原油生産はストップし、事態は戦争の瀬戸際にまで達した。
この外交関係者は、「この2年で明らかな進展があった」と語る。
南スーダンの原油生産は現在、政府側と反政府勢力が衝突する前の昨年12月の3分の1の水準で推移し、生産量は1日当たり約16万5000バレル。中国人労働者が避難した油田もある。
こうした状況が中国を動かした。中国は衝突当初から積極的な役割を担うと表明。ただ、その対応がどう変わるのかについてははっきりと示さなかった。
中国のアフリカ特使である鐘建華氏は2月、こうした政策が同国にとって新たなチャレンジだとし、「われわれにとって未知のことなので、物事は常に慎重に進めている。私たちは単に参加するだけでなく、学びもしている」と話した。
中国の新たな動きは他にもある。国連の平和維持活動(PKO)のエルベ・ラドゥス局長は、中国がスーダンのPKO活動に兵士を大規模派遣する計画だと明かす。国連によると、派遣されるのは約850人の歩兵大隊で、中国が同大隊をPKO活動に送るのは初めてとなる。
<直接介入>
南スーダンでは1月の停戦が合意直後に破られ、5月に再び停戦が成立。中国は、この2度目の停戦に違反がないかチェックするIGAD提唱の監視体制にも100万ドル以上拠出している。
馬・駐南スーダン大使は、首都ジュバの大使館で中国の役割についてパソコンを使ってプレゼンテーションしながらこう語る。「南スーダンには大きな利害関係を有していることから、戦闘停止と停戦合意に向けて双方を説得すべく、これまで以上の努力をする必要がある」。
中国による直接的な介入の一例としては、国連が1万5000人規模の避難民キャンプを移設することを、馬大使が南スーダン政府に受け入れさせたことが挙げられる。そこでは、ヌエル族の多くの避難民が洪水の危険に直面していた。
南スーダン政府は当初、移設に反対した上にキャンプを取り壊そうとしていた。しかし、馬大使との協議の結果、中国の国営石油会社がキャンプ新設に約200万ドルを拠出することになり、方針を変更した。
国連のヒルデ・ジョンソン南スーダン担当国連事務総長特別代表は、中国のこうした対応について「非常に大きな助けになった」と話す。
南スーダンの衝突では少なくとも1万人が死亡し、130万人以上が避難を余儀なくされている。戦闘の背景には、キール大統領が属するディンカ族とマシャール前副大統領のヌエル族との民族対立がある。
この対立は、中央アフリカ共和国やコンゴ民主共和国など、既に紛争を抱える周辺地域に新たな衝撃波をもたらした。中国のアプローチは、新たな衝突が難民流出や経済成長の妨げにつながるかもしれないと懸念する周辺諸国からも歓迎されている。
ケニヤのケニヤッタ大統領は、中国の李克強首相が5月にナイロビを訪れた際、「(中国は)政治的、外交的、財政的に大きな資産を有しており、うまく利用すれば、地域の平和と安全を変革させることになる」と持ち上げた。
李首相はアフリカ歴訪中、アフリカ諸国の内政に干渉するつもりはないという中国政府の原則を繰り返したが、一方で支援拡大を約束し、新たな開発計画の契約にも署名した。
中国が外交的に積極的になれば、これまで治安維持で欧米に依存してきたアフリカに、政治的な釣り合いが生まれると歓迎する声も一部にはある。
キール大統領派の部隊を支援するために南スーダンに部隊を派遣し、西側から非難を受けたウガンダ。その当局者は「中国がアフリカに関与している今、西側は中国の助けを借りてわれわれを人質に取ることはもはやできない」と話す。
南スーダンのベンジャミン外相は、中国がアフリカでけん引力を増していると認め、その背景として国連安全保障理事会における中国のアフリカ支援があると指摘。
「これにより、中国がアフリカで尊敬を得ている。そして、彼らが私たちのもとに来れば、こちらもその話を聞こうとする」と、そのつながりを強調した。
(Drazen Jorgic記者、翻訳:橋本俊樹、編集:野村宏之)
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