06. 2014年4月24日 02:06:15
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まあ、日中とも、まともな国民も多いのだが、B層などはメディアに踊らされるのだろうな http://diamond.jp/articles/-/52120 【第202回】 2014年4月17日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト] 一観光客として体験した 日本的サービス崩壊の予兆 わが家に重要な客が来ている。ドイツに住む従妹(いとこ)だ。1997年から日本語を学習する就学生として日本に1年間くらい滞在したことがある。当時、日本語の語学力はすでに2級試験に合格していた。しかし、婚約者が当時の西ドイツに留学することになったので、日本を離れ、ドイツへ赴いた。
西ヨーロッパに行ってしまった従妹の生活や学業を心配していたから、ヨーロッパの情報も注意深く読むようになった。そうこうしているうちに、天安門事件が終わって間もなかった中国から、同じ社会主義の道を歩んできたハンガリーに赴く中国人が異常に多いことに気付いた。この動きに関心をもった私は従妹たちの新しい生活を一目確認したいという気持ちもあり、当時の東ヨーロッパの主要国であるハンガリー、チェコスロバキア(現在はチェコとスロバキアという2つの国に分かれている)、ルーマニア、西ドイツ(現在は東ドイツと合併してドイツになった)、オーストリア、そしてロシアを駆け回り、数度も取材した。 その成果としては、拙著『新華僑』、『蛇頭』を生み出し、私のジャーナリストと作家としての人生の基礎を築いた。やがて、新華僑という私の造語は1970年代後半から海外に出た多くの中国人を指す専門用語として世に認知され、私もいつの間にか新華僑の名付け親と呼ばれるようになった。 数々のショッキングな出来事 こうした成果はもし従妹という触媒がなければ、生まれてこなかったかもしれない。その従妹が26年ぶりに日本を訪れてきた。わが家では当然、一大事だ。私も3日間を割(さ)いて自ら彼女を関西に案内した。 日本各地を講演や取材などで結構回っている。観光関連の仕事もかなり手伝っている。観光業を発展させるための地方自治体のおもてなし条例の制定などにもかかわっている。しかし、一観光客として、特に一外国人観光客として各地を回ることは、考えてみれば、ここ十数年はほとんどなかった。 現場に行くとき、地方の観光行政の関係者か業者が付き添っている場合がほとんどだ。だから、現場の実態に体をさらけ出して接していたとは言い難い。従妹の接待で、ショッキングな現場を見て、思わず日本がもっとも自慢すべきだと思っているサービスが崩壊し始めているという錯覚に陥るほど驚いた。あまりにも信じられないことなので、敢えてここで社名などを隠さずに読者の皆さんに報告したい。 まず、最初の一撃は東京・ミッドタウンにある5つ星ホテル「ザ・リッツ・カールトン」から受けた。ホスピタリティを極めた贅沢な時間を提供すると自慢する同ホテルの45階にある会席料理の「ひのきざか」に従妹を招待した。 しかし、和服の店員が飲み物を持ってきたとき、まるで大衆食堂の給仕のように、テーブルを通過した際、飲み物をぽんと置いて去って行った。同じ梅酒を注文したが、配合の方法が4人それぞれ違うのに、説明は一切なかった。最初は、これはこの店のスタイルだろうと思って、敢えて問題にしなかった。だが、次を運んできた別の店員がきちん対応してくれたので、前の店員は「アルバイトさんかも」、と思って確かめたら、店員たちを指導する立場にあるスーパーバイザーだそうだ。そこで私が受けたショックは大きかった。 翌日、大阪の心斎橋を散策しながら、ショッピングしていた。フランスのお菓子専門店・「ダロワイヨ(DALLOYAU)心斎橋店」で、マカロンを買った。購入したあと、領収書の発行を求めたところ、すでに渡していると言われた。レシートではなく、領収書だと再度頼んだら、無視された。3度目にお願いしてようやく出してくれた。うるさいと言いたげな表情を隠そうとしなかったのを目の当たりにしてまたショックを覚えた。 怒鳴り出す人々 さらに、その翌日、千日前にある5つ星のなんばオリエンタルホテルを出るとき、駐車サービス券の発行を頼んだ。車を停めていた提携駐車場である大昌タワーパーキングに車を取りに行った。駐車場の壁には一泊2400円と書いているのを見た。駐車場の担当者である若い男性から、料金は2000円だと言われた。ホテルからもらった駐車サービス券を見ると、2000円の金額と書いてあるので、ちょうどだと思って差し出した。 男性から、さらに現金2000円の支払いを求められた。2000円分の駐車サービス券を渡したよと言うと、あれとは別に2000円を払うんだと青年の語気が荒くなってきた。どうしてと思わず確かめると、肩をいきなり押された。男が怒鳴った。「もういい。料金は要らん。さっさと出て行け」と。本当に110番をかけようかと思った瞬間だった。たとえ、こちらに料金に対する誤解があったとしても、落ち着いて説明すればいい。このように短気かつ過激な行動をとる必要はまったくない。 その日の夜、麺でも食べようかと思って、京都の三条河原町にあるつけ麺の「麺屋 もり」に入った。人気のある店らしく何人かが椅子に座って待っていた。私たちもその後ろに座ってインターネットに接続してfacebookなどをチェックしながら、順番が来るのを待っていた。しかし、待っているのが私たち一組になっていても、一向に呼びに来ない。15分くらい経ってから、事情を確かめようと立ち上がり、店内を見たら、空いているテーブルがあるのを確認できた。 店員にあとどれぐらい待つのかと確かめると、もうすこし待ってくださいと言われた。そこで私があそこにテーブルが空いているではないか、と言うと、突然、中から店長らしい人が出て来て、怒鳴り出した。「あそこは待っている客がいるのだ」と言われた。あまりの剣幕にびっくりした私も、負けずに「ならばその待っているお客さんを見せてください」と返すと、胸元を掴まれんばかりにその店長らしき人物が迫ってきた。私もとうとう110番か、と観念した。幸い、彼は最後のところで理性を取り戻し、足を止めた。しかし、口では負けてはいない。「お客さんがいると言えば、いるんだ」と彼は強情を張った。私たちは無言で店を出た。 本当の原因を知りたい ここ数日の出来事を見てきた従妹から「私たちが中国語を話しているから、日中関係が悪くなったという問題がこういうところに影を落としているのでは」と聞かれた。普段、日本語を使って日本中を駆け回る私は、以上のようなトラブルにほとんど出合わなかった。しかし、中国語を使いだした瞬間、最高級のホテルのレストランから市井のレストランまでトラブルに巻き込まれた。 こうした事実を見ると、従妹の心配も一概にないとは言いきれないかもしれない。おそらく急増する観光客を迎える態勢が、日本のサービス業ではまだ完全に構築できていないのも一因だろう。きっと現場の従業員も疲労困憊し、つい短気になってしまうという同情できる一面もあるだろう。そして、日本のサービスレベルがこの頃、落ちているのがより根本的な原因ではないかとも思う。が、果たしてこれらのトラブルの根源がどこにあるのだろうか、読者の皆さんの分析と意見も聞きたい。 【第203回】 2014年4月24日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト] ネット上の成熟した意見に 心配が解消されて感激 先週のコラム記事「一観光客として体験した日本的サービス崩壊の予兆」はたいへんな反響を巻き起こしている。実際、このコラム記事を書く前に、私はかなり躊躇していた。コラム記事がアップされたあとに発表した「時事速報」のコラムのなかで、私は次のように述べている。 正直に言うと心配だった 『正直に言うと、今の日中間を流れる政治的な空気を考えると、この原稿を書くべきかどうかをかなり躊躇していた。一個人の体験でいくらショッキングなものであっても「以偏概全」(個別の実例をもって全体を説明する)の恐れはないのか、と自戒していた。 しかし、日本の習慣などを知っており、日本語も少なくとも不自由なく使える私でも、一外国人観光客になると、そこまでトラブルに巻き込まれる頻度が高くなってしまったのを見ると、ひょっとしたら、これこそ現場での日常的真実かも、とも思う。もし後者の方だと、ジャーナリストとしての私は発言すべきだ。こういろいろ考えた末、もともと予定していたテーマをあとまわしにして、関西の小旅行で体験したサービスの問題点を取り上げることに踏み切った』 原稿が掲載された翌日(4月17日)の反響は凄まじかった。中国のSNSの「微博」にその内容を140字で紹介し、サイトのリンクを張ったが、わずか1日で11万9000人が読んだ。5日後はこのコラムを読んだ人は約20万人に上った。 日本語で書かれているコラムなのに、これほどの読者の関心を得られたことは、読み方によっては、中国には膨大な日本語読者層が存在していることを再認識させられた。日本語による情報のダイレクト発信も不可能ではないという副次的な発見に興奮を覚えた。 ダイヤモンド・オンラインでもコラム記事がアップされた翌日は、最も読まれている記事のランキングを意味するアクセスランキングにおいては、過去1時間枠で3位に食い込んだ。1週間経った時点で、その1週間枠でも4位を獲得した。ソーシャルランキングでは、facebookにおいてもtwitterにおいても1位になっている。しかも、ランキング上位5位までの評価ポイント数の平均を大きく上回っている。これらのデータからもわかるように、多くの読者がこの問題に大きな関心を払っている。その意味では、ジャーナリストとしては私の問題提起が社会の関心に合っていたと自負したい。 両国読者の大人的な対応を見て感激 実は中国国内と日本国内の読者の反響を見ると、非常に面白い現象に気付いた。中国の微博の読者の声を見ると、2つのグループに分かれている。ひとつは日本の観光業に見られるこうした問題点を糾弾する人たちで、もうひとつのグループの読者たちはむしろ日本のサービスレベルを称賛し、その批判を頑として受け付けようとしない拒絶反応を見せている人たちである。なかには、著者の人柄が悪いから相次いで問題に出合ったのでは、と疑う読者までいた。しかも、中国人観光客のマナーの悪さを批判する声が非常に目立った。 一方、日本の読者の反応を見ると、著者に対する理解をある程度もっているためでもあろうが、コラム記事に指摘されたような問題の存在に憤慨を覚え、その改善を強く求めている。東京五輪の開催を念頭に、こうした問題を放置せずに、迅速に改善してほしいという声がFacebookにもtwitterにも多かった。 日中関係が厳しいなか、問題を指摘するこのコラム記事の発表が時宜を得ているのかと先週、記事を書く前から心配していたが、読者の反応がその心配を見事に解消してくれた。中国人の読者が自国民のマナーなどに厳しいまなざしを注ぎ、日本の読者は逆に日本のサービスレベルの低下を深く反省している姿勢を見せている。国民感情にやや敏感な問題提起だったが、こうした両国読者の大人的な対応を見て、私は感激した。 インターネットを通して誰でも情報を発信できる時代になった。しかも、その発信した情報はネットに乗ると、あっという間に国境を超えてしまう。過激な情報発信によってネットが炎上するといった現象もよく見られる時代になった。しかし、情報公開によって、逆にネットユーザーが鍛えられ、多チャンネル的に情報を収集し、冷静に問題を見つめる成熟ぶりを見せ始めた。これも先週のコラム記事の発表によって私が得た最新の認識だ。 不愉快な出来事に出合った人の立場を考えよう 一方、日本のサービスの低下ぶりを改めて思い知らされた一面もある。特に在日中国人や中国と日本を行き来する日本人、中国人の配偶者をもつ日本人などが感じた日本のサービス現場の問題は、私が指摘したものと多くの共通点をもっている。両方の言語に通じ、双方の立場を知っている彼らから示された問題点とその感想に、胸痛む思いがするほど残念に思う。たとえば、次の事例を見てみよう。 「両親が来日の際に、ショッピング後銀座三越の鉄板焼きを三人で食べてると、やはり中国語を聞こえた瞬間、すぐ隣に座ってる60代の男性(家族三人で来てる)が私たちを軽蔑するような発言を連発して、とても不愉快な思いをしました。日本に5、6回も来てた両親がこんな体験が初めてでした、やはり中日関係の悪化したと痛感した瞬間でもあります。」(日本語は原文のまま) こうした光景がひょっとしたら、中国でも見られるかもしれない。いくら特殊でごくわずかな例外的な出来事だと言っても、こうした不愉快な出来事に出合った本人の立場に立って考えると、やはり受け入れ難い。日中関係の堤防を絶対崩壊させてはいけない気持ちを込めて、先週そして今週のコラム原稿を書かせてもらった。ご精読、ありがとうございました。 |