02. 2014年4月24日 02:51:08
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男女とも、徐々に日本化しているが、もっと悪いなhttp://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140422/263335/?ST=print 「コネがないからこれ以上にはいけない」〜中国の格差拡大が生む自称「負け組」「The Economist」 2014年4月24日(木) The Economist 製品検査の仕事をしている25歳の若者、珠光さんはアディダスの赤いジャケットにスニーカーを身につけ、カジュアルながらクールに
決めている。まばらな口髭と山羊ひげを生やしており、ひげを伸ばそうとしたができなかった、という風情である。履歴書を見る限り、彼 は何百万人もの前途有望な中国経済の勝ち組の1人だ。上海の工場労働者の1人息子で、大学を卒業し、中国最大のコンピュ ーター・メーカーの一社、レノボに勤めている。 だが珠さん自身は自分を勝ち組ではなく、負け組と見なしている。税引き後で4000元(約6万6000円)の月給をもらっていても、 顔のない労働者の一人でしかないと感じると言う。会社の食堂で食事を取り、夜になると共同で借りている家に帰る。そして20平方 メートルほどの広さの自室でオンラインゲームをする。ガールフレンドはいないし、見つけられるとも思っていない。なぜ、そう思うのかと聞 かれる時は、「自信がない」と答える。 何百万人ものその他大勢と同様、彼は自分のことを自嘲気味に「屌絲(ディアオス)」と呼ぶ。「屌絲」というのは「負け組」を意味 する最近流行りのスラング。文字通りに解釈すれば、「陰毛」という意味だ。比喩的には、普通の人々が成功を収めるのが難しい社 会において、自らの無力さを宣言する意味合いを持つ言葉だ(いわゆる3Kの逆バージョン)。この嘲笑的な表現で自分を呼ぶことは 「ガンジーのように」社会に訴える方法の一つだと、珠さんは半ば本音で語る。「静かな抗議なんです」と。 屌絲を自称することは、堕落した金持ちとは違うという連帯意識を、大勢の人々と共有することでもある。屌絲は最近生まれた新 語で、中国全土、中でもIT業界で、サラリーマンの心を捉えている。ほとんどは男性。しばしば、社会的なスキルに乏しい、オンライン ゲームに取りつかれた夢想家というニュアンスを持つ。結婚に尻込みする日本の「草食系」男子とはちょっと違う。自らが選択した生き 方ではないからだ。不動産価格が値上がりし、手の届かないものになるにつれ、こうした生き方を社会が押しつけたという面が強い。 最近のいくつかの調査によれば、中国社会全体を通じて所得は上昇し続けているにもかかわらず、社会的流動性はむしろ低下し た。南京審計学院のイ・チェン氏とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのフランク・A・コーウェル氏の調査により、社会の最下層に生ま れた人々がそのまま最下層にとどまる確率は2000年以降、1990年代よりも高くなっていることが判明した。彼らは「中国社会は一 層硬直的になった」と結論付けている。 インターネット・サイトSohu.comが配信するオンライン・ビデオのバラエティ番組「屌絲マン」は、こうした人々を情け容赦なくお笑い の標的にしている。2012年の番組開始以来の配信回数は15億回を超える。例えば最近、こんな番組があった。一人の男性が 美女とディナー・デートをしている。彼は仕事でさも忙しい風を装い、相手に好印象を与えようとしている。そこに職場から電話がかか り、彼はオフィスに行かなければならないと詫びながら去っていく。やがてデートの相手が勘定書きを持ってきてと言うと、彼はウェイター の格好をして再び姿を現すのだ。場面が変わり、運転手が登場する。彼は苛立ち、隣の車線を走るランボルギーニに何度も罵声を 浴びせている。「俺に交通巡査の知り合いがいないと思って、なめるなよ」。次のシーンでは、彼の鼻はつぶされており、首にはギブスを はめている。 上には上がいて、自分はそうはなれない 珠さんによれば、工場労働者の息子に生まれたがゆえに屌絲にならざるを得なかった。彼は富二代でもなければ官二代 でもな い。富二代とは金持ちの2代目のことで、官二代とは政府高官の息子のことだ(これら2つのカテゴリーはしばしば重複することを、屌 絲はお見通しだ)。珠さんや同胞の屌絲は、コネかカネがあれば良い大学に行って、もっとましな職に就くことができたと感じている。 多くの中国人からすれば、税引き後で年8000ドル(約83万円)近い所得がある珠さんは、中間層に向かって順調に歩んでいると 見えるだろう。珠さんの給料は上海の張江ハイテクパークに勤める者の中では安いほうだ。しかし、彼よりもっと高給なのに、自らを屌 絲、あるいは「IT労働者」と呼ぶ者は多い。彼らの給与は上海市の平均を上回っているが、それでも成功したと見なされるためには 全然足りない(上海の1人当たり年間可処分所得は2012年に4万元=約66万円=に達し、中国第3位になった)。高級マンシ ョンやクールな乗用車にはまったく手が届かないのだ。彼らは高富師 ――背が高く金持ちなハンサム――になり、白富美――色白で金 持ちの美人――と結婚する望みなど持てないサラリーマンなのだ。 急速に発展している国なら、こんなことは至極当たり前のことなのかもしれない。だが、北京にある政府のシンクタンク、中国社会科 学院の社会学者である張翼氏は、自分を相対的に恵まれない屌絲だと感じるのは、中国における経済的な格差の拡大がもたら す懸念すべき現象だと語る。香港の衛星テレビ、フェニックス・テレビジョンのウェブサイトに掲載されたインタビューで、張翼氏は専らこ の問題を取り上げ、最下層の人々は完全に疎外されたと感じていると結論付けた。彼らは、人生の階段を上っていける望みは、以 前ほどにはないと感じている。 それでも、これらの人々がビジネスの機会を市場に提供していることに変わりはない。標的となる市場を定義するのは困難かもしれ ないが、結局のところ、金持ちよりも貧しい人々の方が多いのだ。レストランのレビューなど掲載する消費者向けサイト、大衆点評 を 運営するシューベルト・ヨウ氏は、小都市の極めて所得の低い労働者(月収150〜450ドル=1万5000〜4万6000円)をターゲ ットに、クーポンの販売や共同購入を行っている。彼は、上海や北京のIT労働者が本当の屌絲だとは見ていない。 だが調査によれば、彼ら自身はそう考えている。北京の調査会社アナリスツ・インターナショナルは昨年、幅広い層の会社員に自 分たちのことを屌絲と思うかどうかを聞いた。プログラマーとジャーナリストの9割以上、食品・サービス業界関係者及び販売従事者の ほぼ8割がイエスと答えた。負け組だと自認する回答者の比率が最も低かったのは、役人、政府関係者、共産党関係者だった。 ©2014 The Economist Newspaper LimitedApr. 19th, 2014 All rights reserved英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事は www.economist.comで読むことができます。 このコラムについて The Economist Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。 世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。 記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。 このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。 |