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欧州歴訪でファンロンパイEU大統領(右)と会談する中国の習近平国家主席 =3月31日、ベルギー(ロイター)
【石平のChina Watch】習近平主席、欧州歴訪の隠されたテーマ
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140418/frn1404181353004-n1.htm
2014.04.18 夕刊フジ
今月1日までの11日間、中国の習近平国家主席はオランダ、ドイツ、フランス、ベルギーの4カ国を訪問した。就任後初の欧州歴訪である。
訪問中の習主席の言動と中国内の報道を見ていると、どうやら中国側はこの欧州歴訪に「親善外交」とはかけ離れた別の意味合いを持たせようとしているように見える。
中国内の報道が強調していることの一つは、習主席が訪問先各国で「破格の最高格式の礼遇」を受けた点だ。報道だけみれば、あたかも、各国の王室や政府首脳が一斉に習主席の前でひれ伏し、この大国元首を恭しく迎えたかのような風情である。
習主席の振る舞いも尊大なものである。オランダとベルギーの国王が開いたそれぞれの歓迎晩餐(ばんさん)会で彼はわざと一般的外交儀礼を無視して中国式の黒い人民服を着用して臨んだ。
そして、フランス大統領との会談で習主席は「中国の夢はフランスにとってのチャンスだ」と語り、ドイツで行った講演の中では「ドイツは中国の市場を無くしてはいけない」と強調した。
あたかも中国が欧州の「救世主」にでもなったかのような言い方である。
ベルギーでの講演で習主席はまた、立憲君主制や議会制などの政治制度を取り上げ、そのいずれもが「中国の歩むべき道ではない」と語った。
つまり彼は、世界史上いち早く上述の政治制度を整えた欧州諸国の先進性を頭から否定した上で「中国はあなたたちから学ぶことはない」と宣したのである。
このように、歴訪の中で習主席が欧州への対抗意識と欧州に対する「優越感」を自らの言動に強くにじませていることは明らかだ。
問題は、欧州と対抗しなければならない現実の理由が何もない今の中国がなぜ、各国に対し、このような奇妙な意識をむき出しているのかである。考えてみれば、唯一の理由はやはり「歴史」である。
つまり、かつての西洋列強にさんざんいじめられ、屈辱の近代史を経験した中国としては、自国の国力が増大し欧州諸国を凌駕(りょうが)している今こそ、屈辱の歴史への意趣返しとして、欧州を上から見下ろしてやりたいのだ。
実際、訪問先のベルリンで習主席が「アヘン戦争以来列強によって奴隷扱いされた歴史の悲劇」に触れたのも、中国は決して「歴史の屈辱」を忘れていないことの証拠である。そしてフランスで行った講演の中で、主席は、かつてナポレオンが中国(清)のことを「眠れる獅子」と評したことを逆手にとって、「中国という獅子は既に目覚めた」と高らかに宣言した。
このとき、おそらく彼自身とその随員たちは、この度の欧州歴訪が、まさに歴史への清算を果たした「雪辱の旅」となったことを実感していたのであろう。
結局、経済面など実利の視点から中国と仲良くしようとする欧州諸国の外交志向とは一味違い、中国の方はむしろ歴史の怨念を心の中で引きずり、「歴史の清算」を外交政策の根底に置いている。
それはまた、習主席自身が提唱してやまない「民族の偉大なる復興」の政策理念の隠されたテーマの一つだ。
もちろんその際、中国にとっての清算すべき歴史は、欧州とのそれだけではない。
彼らからすれば、近代史上西洋列強よりも中国をひどい目に遭わせた国は「もう一つ」ある。そう、東洋の日本なのである。
だからこそ、習主席は訪問先のドイツで何の脈絡もなく日本との「歴史問題」に触れ、(何の根拠もない)「南京大虐殺30万人」を言い出したわけだ。
「欧州征服」を果たした後、彼らにとっての次の雪辱の対象は、やはりこの日本をおいて他にない、ということである。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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