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中国の報道機関への圧力露骨に 試験に名を借りた思想統制も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140409-00000002-pseven-cn
SAPIO 2014年4月号
人権派を投獄し、言論を弾圧──中国で習近平氏の人権弾圧が暴走している。昨年には香港で、民主化・自由化を求めるデモも発生。ジャーナリストの相馬勝氏が、中国の思想統制についてリポートする。
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習近平時代の中国の「硬直性」はあちこちに出ている。環境汚染や毒物混入食品など生活に関連した時事問題、幹部の腐敗、愛人疑惑など政府に都合の悪いニュースを題材にしたブログは直ちに閉鎖され、インターネットや中国版ツイッター「微博」に書き込まれる政府批判は当局によって監視、削除される。そのための「検閲官」の数は約200万人と伝えられる。
海外メディアも監視の対象だ。米紙ニューヨーク・タイムズのオースティン・ラムジー記者が1月末、ビザ更新の前提となる記者証の発行が認められず、国外退去に追い込まれた。同様の迫害を受けた同紙記者はこの1年間で3人目。同紙は2012年10月、当時の温家宝・首相の親族の不正蓄財をスクープしたため、それが原因とみられている。
同年6月、習近平ファミリーのビジネス活動や蓄財疑惑を報じた金融・経済専門の米ブルームバーグ通信社も、新たに赴任する記者全員のビザが認められなかった。胡錦濤政権下ではほとんどみられなかった問題である。
ブルームバーグの場合、党中央の指示により、定期購読を打ち切る政府系機関や金融機関が続出し、これに懲りたのか、同社のマシュー・ウィンクラー編集長は香港駐在記者がまとめた中国政府高官の親族によるビジネスに関する2本の記事を差し止めた。いわゆる自主規制である。この傾向は香港メディアにも顕著にみられるようになった。
当局に従わない場合、最悪のケースは不当逮捕である。香港の小さな出版社である晨鐘書局の姚文田・社長(72)が昨年11月、深センで当局に逮捕された。容疑は数回にわたって、合計130万元(約2200万円)もの化学薬品を密輸して中国で売りさばいていたというもの。
姚はもともとエンジニアだったが、8年前に引退し、第2の人生として出版社を経営。主に、中国の知識分子や反体制活動家の手になる反体制的な書籍を出版していた。近く、『中国の教父(ゴッドファーザー)習近平』と題する本を出版する予定だった。
同書の作者で米国在住の余傑は著名な反体制作家で、ノーベル平和賞受賞者で現在も服役中の劉暁波らと活動をともにし、民主改革を求めた「08憲章」にも署名している。姚の息子の姚勇戦は「この本は習近平ら指導部が民主化推進をいかに妨害しているかを中心に書いたもので、当局は同書出版の情報を得て父に圧力をかけたが、父が拒否したことで逮捕した。何とか助けたい」と語っている。
香港では昨夏、博訊出版社が習近平の女性遍歴を綴った『習近平情史大全』というタイトルの本を出版しようとしたことがある。同社は7月19日付で「1週間以内に香港で発売」とネット上で予告していたのだが、それから半年以上経った今も発行されていない。出版関係者によると、当局から圧力がかかり、出版社側が「自主的に出版を差し止めた」という。
中国本土ではもっと報道機関への圧力が露骨で、2月には記者証更新のための試験が行なわれ、25万人のジャーナリストが受験。この試験のために、昨年10月から会社ごとに研修が実施されており、「マルクス主義新聞観」といったイデオロギー色の強い分野も課題に入った。試験に名を借りた思想統制である。
そうした規制強化の動きにメディア以上に不満を募らせているのがソーシャルネット企業だ。IT企業家らは北京訪問中のジョン・ケリー米国務長官と対談した際、「米国は影響力を行使して中国政府にネットの規制緩和を呼びかけてほしい」と求めた。インターネットによって世界がボーダーレス、自由化に向かうなかで、習近平指導部が国際的な動きに逆行することは、彼らのビジネスにとって致命的なのだろう。
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