02. 2014年12月22日 07:37:22
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ナッツ事件の大韓航空、オーナー支配の現況は? 韓国財閥オーナーファミリー、逆風直撃の2014年 2014年12月22日(Mon) 玉置 直司 韓国検察、大韓航空前副社長を聴取 「ナッツで激怒」問題で 12月17日、韓国ソウルの地検に出頭した大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョンア)前副社長〔AFPBB News〕 2014年12月5日未明(現地時間)にニューヨークのJFK空港を離陸する大韓航空86便で起きた「ナッツ・リターン事件」。大韓航空のオーナー会長の長女である前副社長が17日、ソウル西部地方検察の事情聴取を受けた。 検察当局は、事件後の証拠隠滅行為の有無なども含めて幅広く調べ、19日現在身柄の拘束なども検討中だ。 大韓航空の事件は、日本でも詳細に報じられている通りだ。12月12日には、大韓航空を傘下に置く韓進グループの趙亮鎬(チョ・ヤンホ=1949年生)会長が、本社に詰め掛けた記者団を前に「娘の教育を間違えた」と深々と頭を下げた。 韓国を代表する財閥の総帥が深々と頭を下げる姿も珍しいが、その内容が、65歳の父親が、40歳の娘について詫びるということで、韓国社会にも大きな衝撃を与えた。 不祥事に揺れる大韓航空、親会社は韓国最大の物流・輸送財閥 大韓航空を中核とする韓進グループは、韓国最大の物流・輸送財閥だ。創業者は、趙亮鎬会長の父親である趙重勲(チョ・ジュンフン=1920年〜2002年)氏。1945年、日本の植民地統治が終わるとすぐに韓進商事を仁川に設立した。トラックを手に入れて米軍関連の輸送事業で急成長し、朝鮮戦争を乗り切って韓国最大の物流・輸送業者になった。 ソウルと仁川を結ぶバス事業に進出したほか、ベトナム戦争中には韓国軍のベトナム派兵に合わせてベトナムでも輸送事業を手がけ、グループは急拡大する。 1969年には、大韓航空公社(KNA)を買収した。これが今の大韓航空(KAL)だ。ナショナルフラッグキャリアを抱える韓国を代表する財閥になった。 趙重勲氏は、朴正熙(パク・チョンヒ)政権時代にのし上がった産業人の代表格の1人だった。日本の政財界にも幅広い人脈を持ち、時に日韓間のパイプ役を果たした。 1988年のソウル五輪の誘致の際には、趙重勲会長も活躍したと言われる。 趙重勲氏が築いた韓進グループの中で、大韓航空や物流会社の韓進、ホテル、免税店など主力事業は長男の趙亮鎬氏が継承した。 韓進重工業は次男、韓進海運は3男がそれぞれ率いて独立した。3男が急死したため、韓進海運の経営を韓進グループが引き受けることに最近なった。 大韓航空会長、娘の「愚かな行動」を謝罪 大韓航空を傘下に置く韓進グループの趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長〔AFPBB News〕 2014年4月1日に韓国の公正取引委員会が発表した「大企業集団」の資産規模ランキングによると、韓進グループの資産規模は39兆5000億ウォン(1円=9ウォン)。 トップのサムスングループの資産規模(331兆4000億ウォン)には遠く及ばないが、ポスコ(7位)、現代重工業(8位)、GS(9位)に次いでちょうど10位の財閥だ。 趙亮鎬会長には3人の子供がいる。今回、事件を起こした趙顯娥(チョ・ヒョンア=1974年生)前副社長は長女。弟(1976年生)も大韓航空副社長、妹(1983年生)はグループ関連会社の専務だ。 趙顯娥氏は、芸術系の高校で音楽を勉強した後、米コーネル大でホテル観光学を学んだ。この分野で世界トップとの評判の大学に進んだことから、父親も本人も事業を継承するつもりだったのだろう。 3人の子供たちがそろって30代そこそこでグループ有力会社の役員に就任し、いろいろな意味で話題になった。 さすがオーナー、やはりオーナーと言うべきなのか・・・。オーナーと言うが、実際、どのくらい株を持っているのか。 今なお高いオーナー家の持ち株比率 大韓航空の筆頭株主は、「韓進カル(KAL)」だ。実は、韓進グループは、「韓進カル」という持ち株会社の下にグループ会社をぶら下げる支配構造の変更を進めているのだ。 大韓航空についても、趙亮鎬会長などが保有していた株式を2014年10月までにこの持ち株会社に譲渡している。現在、「韓進カル」は大韓航空の株式の32.24%を保有する。この他に、オーナー家関係者などが少数株主として残っており、「持ち株会社+オーナー家特殊関係人」を合わせると47.89%の株式を保有している。 では、韓進カルは誰が保有しているのか。趙亮鎬会長が15.49%、趙顯娥氏など3人の子供がそれぞれ2.48%ずつ株式を保有している。オーナー家とグループ会社を含めると31.69%を保有している。 韓国の財閥の中では、グループ企業が急成長したためオーナー家の持ち株がどんどん低下し、支配構造上は「オーナー」と呼ぶのが難しくなっている例も多い。 例えば、サムスン電子の場合、李健熙(イ・ゴンヒ=1942年生)会長の持ち株比率は3%強、長男である李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は1%にも満たない。オーナー家関係者、グループ企業などを合わせても15%強にすぎない。 これに対して、韓進グループは、オーナー家の持ち株比率が今なお高い。 こんな支配構造も、今回の事件の背景にはあるようだ。 もっともサムスン電子の時価総額は186兆ウォンで上場企業(KOSPI)で断トツ、大韓航空は2兆8000億ウォンで76位で、単純比較はできない。ちなみに、大韓航空の株価は前副社長が12日に韓国の国土交通部の調査を受けた日から18日までの間に5%弱下落した。この間、時価総額が1400億ウォン減少したことになる。 それにしても、韓国の財閥オーナー家にとって、2014年は、厳しい1年になった。 会長入院から獄中生活まで、苦難続きの財閥オーナー家 最大手のサムスングループは、李健熙会長が5月10日に自宅で倒れた。心筋梗塞だった。すぐに自宅近くの病院で応急措置を受け、一命を取り留めたが、今もサムスン病院に入院中だ。 意識は回復せず、「会長不在経営」が続いている。 サムスングループは、稼ぎ頭のサムスン電子のスマートフォン部門に一時の勢いがなく、「次の収益源」探しに必死だ。 さらに、グループ内の再編、会長の3人の子供への経営権の継承と、大きな課題が山積している。重大事項について絶対的な決定権を持っていた会長の不在は、大きな負担だろう。 SKグループは、オーナー会長である崔泰源(チェ・テウォン=1960年生)氏が、背任や横領で有罪となり、獄中生活が続いている。 2月27日に、大法院(最高裁に相当)で刑が確定し、実弟の副会長とともに服役中だ。ナンバー1とナンバー2がそろって不在という最悪の状態だ。 SKグループにとって幸いだったのは、半導体メモリーを手がけるSKハイニックスの業績が好調なこと。それでも、エネルギーなど他の事業は不振で、経営は安泰とは言えない。 現代自動車グループは、日本車との競争激化などで自動車事業に一時の勢いが見られない。 鄭夢九(チョン・モング=1938年生)氏は70代とは思えないほど精力的に世界中を駆け巡って陣頭指揮を取っている。相変わらずの統率力だが、2014年は思わぬ批判も浴びた。 10兆ウォンを投じて、ソウル中心部の韓国電力旧本社跡地の買収を決めた。サムスングループとの一騎打ちを制したまでは良かったが、「オーナーのごり押しではないか」との声が上がり、一時、有力グループ企業の株価が急落した。 「オーナーの決断」に対する高い評価、賞賛が続いてきた鄭夢九会長にとって久々の「苦い評価」になった。 このほかにも、体調不良、刑務所暮らし、兄弟の経営権紛争、子供を巻き込んだ親子間の紛争・・・。財閥オーナー家を巡って、芳しくないニュースが相次いだ2014年だった。 経済が好調な際には、「オーナーのトップダウン型意思決定のおかげ」という賞賛が相次いだ。多少の問題があっても、大きな批判を免れた。 ところが、低成長、経済格差の拡大など経済要件の悪化で、財閥を見る国民の視線は厳しい。政府も司法も「経済犯罪には断固として対処する」方針だ。 「2代目会長の時代の終焉」、3代目の力量は? サムスングループの李健熙会長が倒れたことは、国民の間に広く「2世(2代目)会長の時代の終焉」が近付いていることを印象付けた。 韓進グループもそうだが、創業者は、それこそゼロからスタートして必死の努力で運も味方に引き込み事業を成功させた。2代目は、創業者の厳しい「訓練」にさらされた。 では3代目はどうなのか? 経営者としての能力の検証過程を経ていない。不祥事も、資産を巡る争いも多い。未曾有の就職難、格差のさらなる拡大という憂鬱な話題が多い中で、「3代目の問題」もあちこちで耳にする。 そんな中で起きたのが、「大韓航空ナッツ・リターン劇」だった。 事件そのものは、捜査ととともに一段落するだろう。だが、「財閥のオーナー経営が今後どうなるのか」というより本質的な問題は、これからも事あるごとに問い返されるだろう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42505 |