04. 2014年11月26日 07:12:23
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「日本と韓国の交差点」 米国の「ブラックフライデー」に沸く韓国消費者 韓国で買うとなぜ高い? 2014年11月26日(水) 趙 章恩 11月4週目の金曜日はブラックフライデーといって、米国ではショッピングセンターが一斉に大幅値下げセールを行う。米国の小売店や色々なブランドがブラックフライデー向けの目玉商品を発表している。ブラックフライデーの日は店の前に長蛇の列ができる。店がオープンすると同時に大勢の人が目当ての商品に向かって走り出す場面が日本のニュース番組にもよく登場する。 先日の木曜日は感謝祭。連休になることが多く、米国人はこの日に1年で最も多くの買い物をする。韓国メディアによると、米国の小売店の年間売上高の20%がこの1日に集中するという。赤字だった店がこの日を境に黒字になることが多いことから、ブラックフライデーという名前がついた。 今年は11月28日がブラックフライデーに当たる。アップルの新機種iPhone6やサムスン電子の大型テレビなど、発売されて間もない機種も30〜80%引きで売られるらしい。 韓国でよりも安く買える! 欲しかったものをブラックフライデーに安く買おうと、買い物リストを作ったりしてわくわくしながら待っているのは米国人だけではない。韓国の消費者もブラックフライデーを待ち遠しく思っている。 韓国のネット掲示板には既に10月から、ブラックフライデーの買い物を楽しむための数千件を超えるヒントが書き込まれている。セール期間中に韓国からネットで注文する方法、韓国税関での手続き方法、米国のどのサイトで何が安く買えるかの情報、去年のブラックフライデーに何をどれだけ安く買ったのか、などなどだ。 米国のイベントなのになぜ韓国でここまでブラックフライデーが話題になるのか。それは世界中から注文を受け付け、海外配送もしてくれるショッピングサイトが増えているからだ。 加えて、無料翻訳サイトの精度が良くなったことから、英語が全く読めない人でも商品説明を理解して注文できるようになった。また、海外配送を行っていない米国のショッピングサイトでの買い物を代行してくれる業者もたくさん登場している。代行業者の米国内の住所を入力して買い物すれば、代行業者が韓国まで商品を送ってくれる。 韓国メディアも連日「ブラックフライデーに米国ショッピングサイトで買い物する方法」を解説し、去年のブラックフライデーで安く買い物をした人の経験談を紹介している。「韓国で買うと15万円以上する55インチテレビが関税と配送料込みでも8万円しなかった」「ブランド品の衣類は韓国の3分の1以下の値段で買えてサイズも豊富だった」という具合だ。 韓国のショッピングサイト「Gマーケット」が11月初めに自社会員2489人を対象にアンケート調査を行ったところ、71%が「ブラックフライデーのセール期間中、米国のショッピングサイトで買い物をする計画がある」と答えた。このうち74%は今年初めてブラックフライデーに買い物をすると答えた。 ブラックフライデーに買う予定の商品は衣類・雑貨31%、家電19%、化粧品15%、生活用品12%、幼児・子供用品8%、健康食品7%、その他8%だった。ブラックフライデーに米国のショッピングサイトで買い物をする理由については、75%が「国際運送料や関税を払っても韓国で買うより安いから」と答えた。17%は「韓国では売っていないブランドやデザインの品物が多い」ことを理由に挙げている。 米国のショッピングサイトを利用する際の心配事については、30%が「配送期間と配送状態(配送途中で壊れたりしないか)」、27%が「海外からの注文なので返品・交換が難しいこと」、19%が「(値段が安いので)偽物かもしれないという不安」、18%が「配送費用や関税の負担」と答えた。 韓国のサイトもブラックフライデーに参加 韓国関税庁のデータによると、韓国人が海外のショッピングサイトに商品を注文した合計額は2013年に1兆1356億ウォン(約1200億円)に達した。2014年は上半期だけで727万件、7538億ウォン(約780億円)を突破。ブラックフライデー以降は1兆2500億ウォン(1300億円)が期待されており、通年で2兆ウォン(約2100億円)を超えると予想している。 大韓商工会議所によると、韓国における個人のインターネットショッピングの市場規模は2013年が20兆ウォン(約212兆円)で、2014年は22兆ウォン(約2.3兆円)になる見込みだ。海外ショッピングサイトの利用金額が2兆ウォンを超えれば、ネットショッピング市場全体の10%近くを失うことになるので、韓国のネットショッピング業界にとっては打撃が大きい。 「一度も経験していない人はいても、一度しか利用しない人はいない」というブラックフライデーの熱気に、韓国のネットショッピングサイトも参戦する構えだ。海外ショッピングサイトに顧客を取られまいとして、ブラックフライデーの日に70〜80%の値引きセールを行うサイトが多数ある。韓国の大手ショッピングサイトSSGドットコムや11番街などは米国ブランドの衣類と雑貨、小型家電を目玉商品として販売する予定で、「米Amazonに注文するより安い」と宣伝している。 韓国でも季節ごとに在庫を安く売るセールを行うが、値引き率はせいぜい20%前後にすぎない。企画商品といって、セール用に生産にした通常とは異なる商品を売るサイトも多い。ブラックフライデーのように昨日まで普通に売っていた商品を50〜90%引きするといった破格のセールはこれまでなかった。 インターネットさえ使えれば、買い物に国境はない。商品の品番で価格検索をして、もっとも安いショッピングサイトで注文する。販売しているのが韓国の事業者なのか海外の事業者なのかは関係なくなった。ブラックフライデーはもう海の向こう側のイベントではなくなったのだ。 韓国の流通構造に対する疑念が巻き起こる ブラックフライデーのネットショッピングを経験した人は、中国や日本のインターネットショッピングも利用するようになり、韓国にいながら海外で買い物を楽しむようになった。SNSには日本や中国のショッピングサイトで買ったものを自慢するつぶやきもよくみかける。日本の楽天は日本の商品を韓国語で買い物できるサイトも運営している。韓国語サイトから注文すると日本から国際配送してくれる。 ブラックフライデーが韓国に与えた最も大きな影響は、同じものが海外ではとても安く、関税や国際配送料を払っても韓国で買うより安いことを知ったことだ。韓国の小売流通構造に疑問を感じる消費者が増え始めた。韓国内では、「インターネットが普及してから消費者側もたくさんの情報を手に入れられるようになった。海外では安く手に入るものを韓国で高く買う人はいない。韓国ではなぜ安く売ってはならないのか疑問だ」という意見が広がっている。 韓国では10月、日本ではあまり考えられないような「安売り禁止」制度が始まった。携帯電話端末流通法なる新しい法律で、キャリアが一定期間解約できないことを条件に携帯電話を安く売ることを規制するものだ。この法律の影響で携帯電話・スマートフォンの価格は2万円近く高くなり、機種変更や乗り換えをする人が急減した。このため閉店する代理店が続出している。ブラックフライデーが近づくにつれ、韓国内では韓国の流通を見直すべきという不満が大きくなっている。 このコラムについて 日本と韓国の交差点 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか? http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20141125/274211/?ST=print
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