04. 2014年10月26日 19:29:01
: jXbiWWJBCA
「タイでは軍の政治介入は普通」、スリン前ASEAN事務総長が講演 編集局 2014/10/26 アジア・オセアニア [トップ] 前の記事 「タイの政治情勢と展望」をテーマに23日、東南アジア諸国連合(ASEAN)前事務総長のスリン・ピッスワン元タイ外相が講演し「タイでは軍の政治介入は普通のこと」との認識を示しながらも「軍事政権は当初、地方分権化を公約しながら、最近はそれを語らなくなった」と述べ将来への懸念を示した。スリン氏の講演会は笹川平和財団(羽生次郎会長)が主催した。(池永達夫、写真も)軍政、相続税策定で地方取り込み 600 23日、日本財団で講演するスリン前ASEAN事務総長 王室と軍、政治家の3者が相互に牽制(けんせい)し合うパリティの関係で堅固な安定社会を構築してきたタイで5月22日、軍事クーデターが決行されインラック政権が崩壊した。軍政が制定した暫定憲法では、評議会議長の権限が立法、司法、行政の三権に及ぶと明記されている。 スリン氏は「軍の政治介入は普通のこと」と指摘する。確かにタイの政治史で20回以上を数えるクーデター政変は、タイ社会を安定させる安全装置とも言える政治風土があるのは事実だ。 さらにスリン氏は「今回、何が違ったか」と前置きし、過去20年間で、インドネシアに次ぐASEAN第2位に浮上した国内総生産を誇るタイは、バンコク一極集中型の発展ではなく、地方までも巻き込んだ成長を遂げたことを強調した。 しかし、政治体制は中央に集中し旧態依然だ。官僚機構も軍・警察も、教育機関も中央集権型のままだ。地方では新興富裕層が雨後のタケノコのように誕生したことから、バンコク以外でも透明性や法の支配が求められるようになった経緯がある。 その意味でスリン氏は「2001年が決定的な年になった」と指摘する。 同年の総選挙でタクシン氏率いる政党が大勝し、農村振興や貧困層向けのポピュリスト的な政策を打ち出した。 タクシン氏が取り組んだのは100バーツ(約310円)で医療を受けられる低額医療制度や借入金の返済繰り延べ、村落基金の創設といったものだ。また一村一品運動も導入し、地方経済に活力を吹き込んだ。ともあれ東北部や北部の貧しい農家向けの政策支援という“ガソリン”を入れ、その人気で選挙に圧勝し続けるという政治マシンを完成させたのだ。 一方、都市部の知識層は、タクシン氏のポピュリズム政治に反旗を翻し、「黄色と赤の対立」に見られる反タクシン派とタクシン派の国を二分する抜き差しならない分断が起きた。 「5月のクーデターは、これらの2者が正面衝突する直前に割って入り、国家そのものが崖から転落しかねないところを救った」とスリン氏は軍の政治介入を評価する。 もともとタクシン派の政治的台頭を許すことにつながった1997年憲法は、それまで少数政党の乱立で政権は与党連合の利害調整に追われるだけで、ダイナミックな政治が期待されないことから、二大政党を育むような小選挙区制を導入したことが眼目となったものだ。 だが結果は、タクシン派の独り勝ちとなり、巨大政党が誕生した。2006年のクーデターも14年のクーデターも、タクシン派政党に立ちはだかり、軍そのものが二大政党の一つに割り込んだ格好でもある。 その意味で、軍政が何をするか、どういう政治の枠組みを作るかでこの国の将来が決まる。 スリン氏が期待するのは、相続税と固定資産税の策定だ。 日本では、「土地は3代で消滅する」とよく言われる。資産家であっても3代相続すると、2回相続税を払わなくてはいけないため、土地を手放さなくてはいけなくなる、という意味で使われるものだ。 その点、タイには相続税がないため、資産相続するために手持ちの土地を売却する必要がない。さらに固定資産税もないため、土地をいくら放っておいても税金を納める必要がない。これでは不動産も動産も好循環をもらたす契機にはならない。 こうした資産家優遇の税システムが今日まで続いてきたのは、国会議員や高官の多くが庶民と懸け離れた富裕層だったからだ。 それが軍政トップのプラユット首相は施政方針演説の中で、年内の相続税と固定資産税導入を公約した。 プラユット首相は暫定国会の議員の過半数に及ぶ身内の軍人や警官を充てており、軍政パワーで押し切る構えだ。 プラユット首相が遠望しているのは、タクシン派をバックアップしている農村住民の取り込みだ。 なおタイの地方問題では、イスラム教徒が暮らすタイ南部の治安が悪化し、既に6000人以上が犠牲になっている問題がある。 ただスリン氏はこの問題で「インドネシアのアチェやフィリピンのミンダナオのように、政府から自治権を与えられることはないだろう」と悲観的な展望を述べた。 http://vpoint.jp/world/asia/29527.html |