02. 2014年9月26日 05:32:11
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コストが上がり、企業が成熟すれば、当然、次は衰退ということになるhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41820 韓国で警察官の退職が急増中、背景に年金改革 もはや懐メロとなったチョルパプトン 2014年09月26日(Fri) アン・ヨンヒ 4月に沈没した韓国のセウォル号は韓国社会に様々な影響を及ぼした。その中でも、官フィア(官僚+マフィアの造語)がやり玉に挙げられ、官公庁に対する人々の不満が高まっている。 一般企業の“定年”は53歳 年金改革に反対する人たち だが、こうした世相と反比例するかのように最近の大学生たちは公務員試験を準備することが多い。
なぜなら、いまの韓国では就職そのものが非常に厳しいうえに、やっと企業に就職できたとしても定年までいられる確率がとても低いからだ。 韓国の一般企業では社員は平均53歳で辞めているので、60歳定年が保証されている公務員はとても安定した職業と言える。 給料は確かに企業に比べて少ない。階級によって異なるものの公務員で最下位の9級に当たる新卒者の給料は、手取りで150万ウォン(約15万円)。これに対し、サムスンなど大企業の手取りは2倍の約300万ウォンに達する。 しかし、定年保証に加えて、公務員には定年後の年金という魅力がある。 公務員のように安定的な職業のことを韓国では「チョルパプトン(鉄の飯櫃)」と言う。鉄のように硬い食い扶持という意味である。 しかし、その安定的な職業にも厳しい風が吹き始めている。これまで「チョルパプトン」と言われてきた公務員、教育公務員(公立学校の先生)、公的機関の職員などに政府が改革のメスを入れようとしているのだ。 先日、公立中学の教師だった親戚が定年を数年残して辞めてしまった。 理由を聞くと、公務員年金の改革によって定年まで働いた後で年金をもらうより、いま辞めてしまって年金を受け取る方が金額が高くなるのだとか。 年金は老後ずっと支給されるので、日本の流行語ではないが、「辞めるならいまでしょう」ということで辞めたという。「学校でチョークの粉を吸い込みながら教えるより、悠々自適の年金暮らしがよっぽどいい」と言っていた。 連日繰り広げられる公務員のデモ ついに安定の代名詞だった公務員社会にも暗雲が押し寄せ始めたのである。政府は「官フィア撲滅」を掲げ、退職官僚の就業制限を5年に延ばし、「出した分ももらえない」と揶揄される公務員年金改革が予告された。 9月21日に発表された公務員年金改革案によると、年金納入額を43%引き上げ、受領額を34%削るという厳しい内容だった。 韓国の一般国民が加入している国民年金も将来赤字になる可能性が高く、現在の国民年金は削られ、受領開始日も遅らせているので、公務員年金にもメスを入れて当然という論理である。 実際、2014年の公務員年金政府補填金は2兆4000億ウォン(約2400億円)を超えている。このように増え続ける公務員年金の政府補填金は結局国民の負担になる。そこで政府は改革に踏み切ったわけだが、当事者である公務員としては納得がいかないようだ。 現在、韓国では連日のように公務員年金改革案に反対する公務員たちのデモが続いている。 上述したように、公務員たちの給料は大雑把に言って大企業の半分に過ぎない。定年の安定と年金を頼りに低報酬で我慢してきたのに、それが断ち切られるというのでは、公務員のメリットがなくなってしまうばかりかプライドも傷つけられるというのが彼らの主張である。 しかし、セウォル号事件以降、公務員たちは「公共の敵」として認識されるようになってしまった。 そして、確かに大企業に比べれば安い給料で働いているかもしれないが、企業は大企業ばかりではない。低賃金の中小企業や零細企業で黙々と働く人もたくさんいる。 そのような人たちにすれば、どんなことをしてもほとんどお咎めなしの「チョルパプトン」に腹を立てずにいられない。 警察官の退職が2年前の8倍に膨れ上がる 公務員年金改革案に反対する公務員たちの主張は「年金は薄給に対する補償」であるという。長く働き、長く掛け金を払っているので、その分多めの年金をもらえるのだと主張する。 低賃金に甘んじながら、いまよりもっと掛け金を多く払ってそのうえで年金の受領額を減らされたのでは老後が不安になると言う。 公務員年金改革案が発表された韓国では、警察官の名誉退職が急増した。10月末基準で、2014年警察官名誉退職者が2200人を超えると予測されている。 昨年名誉退職した警察官は871人、一昨年は354人だった。つまり、2年前に比べて8倍ほどに膨れ上がったことになる。 こうした増加の原因はもちろん最近政府が打ち出した公務員年金改革案であることに間違いはない。そして他の公務員に比べ、現場の勤務が多い警察官がより強い影響を受けていると分析されている。同じことは教職員にも言える。 一方、長く働いていた教職員や警察官がどんどん辞めていくことで、新規の人たちを募ることができるので、組織を一新することになるというメリットもある。 しかし、公務員最大のメリットがなくなってしまった分、優秀な人材は集まらないのではないかという不安もある。 今のご時世、「チョルパプトン」のような安定した職業を望む方がおかしいのかもしれない。「チョルパプトン」という黄金時代は懐メロのように過去のものになってしまう気がする。 韓国で起きた「ピケティ・ブーム」 講演会は超満員、翻訳本も早くも出版 2014年09月26日(Fri) 玉置 直司 『21世紀の資本(論)』で欧米で論争を引き起こしているトマ・ピケティ(1971年生)パリ経済学校教授が韓国でちょっとしたブームになっている。雑誌や新聞の記事やセミナーが相次いでいる。9月12日には、日本よりも一足早く翻訳本も出版になった。 2014年9月19日午前9時前。ソウル中心部にあるホテル新羅の正面玄関には、続々と黒塗りの高級車が到着した。 「1%対99%」と題した講演会、韓国経済界を代表する名士が殺到 仏経済学者の格差論、アマゾン売れ筋ランキングの1位に 『21世紀の資本(論)』で欧米で論争を引き起こしているトマ・ピケティ教授〔AFPBB News〕 大企業CEO(最高経営責任者)、銀行トップ、著名大学教授、経済官庁の高官など韓国の産業界、経済界を代表する「名士たち」が次々と2階に向かう。国会議員の姿もある。 平日の午前中に開かれたのは、大手経済紙「毎日経済新聞」が主催したトマ・ピケティ教授の講演会だった。ホテル最大の宴会場には650の座席が準備されたがあっという間に満席になった。すごい人気ぶりだ。 この日の講演会と、大学教授などの質問に答える討論会は「1%対99%」という刺激的なタイトルが付いていた。 ピケティ教授の講演は約1時間弱。 内容は、ほとんどが本の説明で、特に1930年代以降の欧米、日本について、経済成長率を資本収益率が上回り、所得の不均衡が進んだことをデータを見せながら説明してみせた。 講演の冒頭でピケティ教授は、「今回の本は、執筆時点でデータがなく、韓国については分析できていない。改訂版には盛り込みたい」と語った。 「韓国も所得不均衡解消のために累進課税の強化を」 その上で、韓国については、「米国ほどではないが、所得の偏在が日本や欧州以上のペースで進んだ」と説明した。 「所得の不均衡」を解消するための処方箋としてピケティ教授は講演でも「累進課税の導入による高所得者への課税強化」とそれによって得た税収を教育投資に振り向けることの重要性を繰り返し強調した。 日本に先駆けて出版された翻訳本 日本に先駆けて翻訳本が出版された韓国語版『21世紀の資本』 この日の講演会の1週間前の9月12日には、『21世紀の資本』の韓国語訳が店頭に並んだ。800ページを超える大作で3万3000ウォン(1円=10ウォン)。
うんと重い枕のような本だが、講演会の会場に持参していた熱心な聴衆を何人も見かけたから、それなりに売れているのかもしれない。 韓国語訳ということについては、最近、少し気になることがある。 いつの頃までだったか。世界で最も翻訳本が出版されるタイミングが早い国は日本だった。1990年代半ば頃まで、韓国の大学や大企業でよくこんな話を聞いた。 「とにかく日本語を勉強しなければならない。世界中のどんな情報もいち早く日本語に翻訳される。日本の大手書店は、世界の知と情報の宝庫だ」 ところが、ここ数年、韓国語訳になった本を見て、「日本語で読もうか」と調べても、出版されていないことが増えてきた。 インターネットの発達もあって「日本語を学んで世界の知や情報を吸収しよう」という声もまったく聞かなくなった。 ピケティ教授の本は年内にも日本語訳が出るらしいが、ピケティ教授本人によれば、「韓国語版は世界で4番目」だという。 講演会の前から話題沸騰 翻訳本の出版と講演会の以前から、韓国の雑誌や新聞では、頻繁にピケティ教授や著書についての報道があった。 教授の訪韓を前に、あちこちでセミナーも開かれた。 筆者が3日前に参加した朝食会もテーマは「21世紀の資本」だった。 この朝食会で講演したある大学教授はこう話して、100人ほどの企業経営者を笑わせた。 「本のタイトルを見ると、ピケティ教授がマルクスの『資本論』を意識していることは間違いない。どちらも大作だが、全部読んだ人はほとんどいないから安心してください」 この教授によると、ピケティ教授の最大の功績はなんと言っても300年間にわたって税務データを集めて分析したことにあるという。 その結果、この間に、工場などで働いて稼いだ人よりも「金持ち」が資産を運用することではるかに多くの所得を得たことを明らかにしたことだという。 この富の偏在が、今の経済の最大の問題であり、これを解消するために累進課税の強化などを主張しているのだ。 行き過ぎた「新自由主義」的な考え方が、特にリーマン・ショック以降、米国で強い批判を浴び、これが米国でもピケティ教授の著書が注目を集めた一因となった。その意味では、韓国でもピケティ・ブームが起きたことは興味深い。 IMF危機の後遺症抱え、一部財閥に富が集中する韓国ならではの関心 別の大学教授はこう話す。 「韓国では、1997年の通貨経済危機(IMF危機)のあと、新自由主義的な政策が積極的に採用された。競争は過熱し、強い企業はさらに強くなって、結果的にIMF危機を早期に克服できたが、その後遺症は大きかった。李明博(イ・ミョンバク)政権でも、今の朴槿恵(パク・クネ)政権でも『経済両極化の解消』が最大の経済政策課題だ。そういう中で、ピケティ教授の主張が大きな注目を集めていると言える」 一部の財閥に富が集中して、庶民や中小企業はさらに苦しくなっている。自由競争の結果だから仕方がない、と黙ってきたが、あまりの格差の拡大にどうも納得がいかない。そんな中でピケティ教授の主張が出てきたのだ。 もちろん、だからと言って、ピケティ教授の提言をそのまま受け入れようというのでもない。 講演会を主催した「毎日経済新聞」は、経済学者などを集めて少人数のピケティ教授を囲む夕食会を開いた。 夕食会で繰り広げられた激論 同席した主筆が、この場の模様を「ピケティ講演が残したこと」(2014年9月24日付)と題したコラムで紹介している。 「夕食会の議論の核心は『富裕税を10%課すとすれば、グーグル、アリババ、サムスン、現代自動車などの大株主は5年も持たずに退場しなければならくなるが、資本主義体制でこんなことが可能なのか?』『不均衡を是正するために公教育の強化をピケティ教授は主張しているが、韓国のソウル大学、延世大学、高麗大学を公立化すれば、米国の名門大学と競争できるのか?』だった」 ただ、この議論でもピケティ教授は「一歩も譲らなかった」という。 韓国の学者が、「資本所得の伸び率が経済成長率よりも高いというのは、先進国の話で、韓国や途上国には当てはまらない」と話したのに対しても、ピケティ教授は「4〜5%もの高成長を持続させている国などない」と一蹴したという。 今の朴槿恵政権が「規制緩和」を成長戦略の目玉に掲げていることを意識してか、「韓国には規制緩和政策がより重要だ」との意見も出たが、「金融CEOたちの高い年俸、金融規制緩和が世の中をだめにする」とし、規制緩和に待ったをかけた。 韓国の労働組合のナショナルセンター代表の質問には「労働者は、路上にとどまらず、ドイツのように理事会に入り、主張を貫徹せよ」と忠告したという。 まさに、ピケティ教授節が鳴り響いたようだ。 この主筆は、議論を聞きながらも「ピケティ教授の著書が発刊になってから2年経過するが、その理論を採用して法人税、所得税、相続・贈与税などを増税した国はない。(略)ピケティ教授の処方箋はほとんどが韓国で実行することは難しい」と述べる。 その上で「ピケティ教授が訪韓した意味は、何よりも、韓国はいまだ統計インフラが劣悪で、それがゆえに政策代案作りを疎かにしているということを明らかにしたことだ」と主張した。 ピケティ・ブームが韓国に残したものは? 650人も詰め掛けた韓国産業界、経済界、学会、官界、政界の指導者が、ピケティ教授の講演会から何を感じたのか。 講演会に参加していた企業人は、「どうしてこれほど関心を集めたのか。経済両極化解消という処方箋が見当たらない難題が、政府にとっても企業にとっても最も頭の痛い問題だからだ。とは言っても、『ああこれだ!』と処方箋を見つけたわけではない。むしろ、財閥オーナーなどの金持ち批判や安易な増税論議だけが進むことが心配だ」と語ってくれた。 ピケティ・ブームは果たして何を残したのか。日本でも同じような現象が起きるのか。興味が尽きない講演会だった。 |