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真実の北朝鮮、A猪木が激白 生活やエンタメの水準が劇的向上?韓流ドラマも
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140814-00010003-bjournal-ent
Business Journal 8月14日(木)3時0分配信
「スポーツを通じた世界平和」を掲げ、8月30、31日の2日間、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の首都・平壌にある柳京・鄭周永(リュギョン・チョンジュヨン)体育館で『インターナショナル・プロレスリング・フェスティバルin平壌』を開催する、アントニオ猪木氏。今イベントは史上2回目となる「平壌プロレス」だ。
95年4月に2日間行われた「平和のための平壌国際体育・文化祝典」は、同時期に発生した地下鉄サリン事件などの陰に隠れ、国内報道では惜しくも注目度がいま一つだった。だが、会場を埋め尽くした延べ38万人の北朝鮮の人民たちは、悪役レスラーや女子プロレスラーの熱闘ぶりに驚愕し、惜しみない歓声と拍手を送った。
「あの日、会場にいる人々の心が一つになった気がしました。北朝鮮の人も初めてプロレスを目の当たりにしてびっくりしただろうけど、我々もその反応の大きさにびっくりした。まず拍手の大きさが違った。普段はパンパン、という程度の拍手だけど、本当に感情がむき出しになったときには、立ち上がって身を乗り出し、割れんばかりの拍手が起きるんだ」と当時を振り返り、猪木氏はそう語る。
猪木氏が闘った相手は、アメリカのプロレス団体・NWAの元チャンピオン、リック・フレアー。北朝鮮国内のテレビ視聴率は99%ともいわれ、猪木氏の名は人民の誰もが知るところとなった。ある政府高官曰く「一夜にして反日感情がなくなった」とも。
以降の20年間、約30回にも及ぶ北朝鮮訪問の原点ともなった猪木氏のプロレス興行。北朝鮮のエンターテインメント土壌に火をつけたともいわれるが、同国のエンタメ事情は、今どのような変化を遂げているのか。
「数万人規模の一糸乱れぬマスゲームのさなか、テコンドー選手や子どもたちが一斉に宙返りする様などは何度観ても圧巻です。徹底して統制された表現の仕方、規模の大きさ、その凄さは、我々にとっても勉強になる。彼らは世界の芸術を非常に熱心に勉強し、研究してもいる。
ただ、逆に成熟したエンタメの面白さというのは、脱線することだとも思うんです。緩急をつけたり、波をつくったり。そこの部分までは、まだ北朝鮮は到達していない。自由な表現方法を模索しているのではないか」(猪木氏)
●エンタメの意識が高まりつつある北朝鮮
猪木氏は何度も訪朝する中で、20年前に比べ、人民の意識はずいぶん変わってきていることを実感しているという。
政府公認の自由市場が多数開設され、庶民たちの“草の根経済”レベルでの市場経済化が進んでいる現在の北朝鮮。人々の商売に対する意欲は旺盛で、それを刺激しているのが、中国などから流入するさまざまな商品だ。
最近では、日用品や電子製品、自動車まであらゆる品目が中国から北朝鮮に輸入されているが、いまだに厳しく統制されているのが韓流ドラマのDVDなど、エンタメ商品。ヤミでの流入が続いているものの、当局の目から隠れて、こっそり楽しむしかないのが現状だ。
北朝鮮のエンタメ事情に詳しい韓国のインターネット新聞・デイリーNKの高英起氏は、次のように語る。
「韓流ドラマやK-POPなどの流入もあり、日本で考えられている以上に人民の目は肥えていると思います。表向きは厳しく統制されていますが、幹部などはパラボナアンテナを使って韓国内での放送翌日には視聴できていますし、実際に中朝国境付近で聞いたところ、およそ8割の人民が人気韓流ドラマの話の筋くらいは知っていた。情報感度はとても高い」
ドラマの影響は、女性たちのメイクやファッションにも如実に表れている。記者も昨秋渡朝した際、特に若年層は男女ともに垢抜けた服装をしている者が多く、髪型一つとっても規制のある中で各自が工夫している様が印象的だった。携帯電話の着信音が“絶対に見ていない”はずの韓流ドラマのメロディだったりもした。
近年、芸術分野以外のエンタメ、レジャーも盛んだ。昨年秋に竣工した、敷地面積10万9000平米に及ぶ平壌の紋繍(ムンス)プール、5000mのゲレンデがある馬息嶺(マシンリョン)スキー場、乗馬クラブなど。
18年に韓国・平昌(ピョンチャン)で開催する冬季五輪について「北朝鮮のスキー場と共同で開催できれば、人的交流が活発化することで統一に向けての足がかりになる」と猪木氏は期待する。また「平壌以外、地方都市にもほとんど行きました。白頭山、金剛山などの五大名山めぐり。それから猪鹿のハンティング。1日目に5頭、2日目で6頭、計11頭を撃ち、プルコギにした」と話す。
サーカスや牡丹峰楽団(モランボン楽団)の演奏などは、世界にも引けをとらない高い技術力を誇る。
現在は北の小中学生の間で「ギターブーム」が起こっているそう。ギターは以前から大衆楽器として人気があったが、最近では軍隊や建設現場などで「宣伝隊」として活動できるとして、生活の糧として学ぶ者が増えているという。
このようにエンタメ土壌が固まりつつあるのは、ごく最近のことだと高氏は話す。
「猪木さんがプロレス興行をした95年当時は経済難の時代で、食べるものも満足になく、唯一の娯楽ともいえる試合を、人々は大きな期待と興奮に包まれて観たでしょう。徐々に経済事情が安定していく中、韓流の趨勢や携帯電話の普及も手伝い、2000年代半ばあたりから西側文化の影響を受け洗練された世代が目立つようになった。目が肥えてきた北朝鮮人民にとって、今回のイベントは以前とはまた違ったレベルの高い楽しみ方ができる格好の機会に違いない」
●今大会を日朝外交の起爆剤に
前回の会場となった綾羅島メーデー・スタジアムが修復工事中の関係で、今会場の収容人数は約1万5000人。マスコミを除けば、一般人民の動員は2日間で約2万5000〜6000人。エンタメ市場が盛り上がりを見せているとはいえ、このような大型の舞台設営を伴う音楽・スポーツ興行などは、政府公認でなければ100%開催不可能だ。
それだけに人民にとってこうしたイベントは垂涎の的。かつて北朝鮮の大規模イベントで会場を埋めたのはほとんどが動員された人々だったが、いまではなけなしの小遣いをはたいてでもチケットを購入する。まれにサッカーのワールドカップ・アジア予選の試合などが国内で行われると、観戦券がヤミで流通し、超高額な「プレミアチケット」まで登場するという。
注目の出場選手は、「身長230cmの“アマゾンの大巨人”モンターニャ・シウバ選手。北朝鮮の人はこんなに大きな人を見たことがないでしょうね。それにキックボクシングベースの格闘技・K-1のジェロム・レ・バンナや、バスを引っぱる筋肉マンなどが注目です」と日本以外にアメリカ・メキシコ・ブラジル・フランスなど、各国から20人ほど選手を招く予定だと猪木氏。今イベントは世界に生中継で放送される予定だ。
また、猪木氏は先の7月の訪朝で、姜錫柱(カン・ソクチュ)党書記とトータル5時間にも及ぶ話し合いをした。現在の日朝関係について、どうとらえているのか?
「今回も訪朝中にミサイルが発射されましたが、『これは南北の訓練であって、我々の訓練に対して、なぜ日本から批判されなければいけないのか』と言っていました。通常練習の一環という認識なのです。それに日本のメディアのインタビューでは、相変わらず飢餓の話が出ます。確かに90年代にはそういう時代もあり、日本は北朝鮮に圧力をかければ屈する、というあり方でしたが、今の北朝鮮は162カ国と交流があります。確実に人々の暮らしは良い方向へ変わってきています」
拉致問題について、「姜錫柱党書記しかり、日朝国交正常化交渉担当大使の宋日昊(ソン・イルホ)氏など、相当したたかな印象を受けますが、腹が据わっているし、前向きに取り組もうという姿勢を感じます。ただ拉致問題解決が最優先課題とする日本に対し、北朝鮮は立場が違うから、一筋縄ではいきません。その国のやり方、互いに複雑な事情はありますが、ともあれ『外交に勝利なし』です。両政府ともに自国の国民感情をふまえ、それぞれの立場の主張を展開します。お互いが納得できるような落としどころを追求していかないといけません。残念ながら日本の外務省は担当者も都度替わり、北朝鮮からすると本気の度合いが見えづらいと思います。外交がそんなに簡単に進むとは思っていないですが、勝ち負けではなく、本腰を入れて向かう姿勢はしっかり持っておかないといけません」
いろいろな条件を突きつけられたときに、尻尾を巻いて逃げるのか、あるいは一歩踏み込んでいくのか、覚悟の問題だと力説する猪木氏。
「我々のやっていることも、万一また制裁措置が取られると止まってしまう可能性が大きい。そうなると拉致問題は解決しませんし、膠着状態はまた何年も続くでしょう。そういう意味でも、今回のイベントは歴史的にも大変意義のあるイベントになると思います」(同)
「人、人、人、の人の渦
十九万人が見つめる男の闘い
平壌の夜空に
怒涛の喚声がこだまする
師匠・力道山の祖国
二度と帰れなかった故郷・・・」
(猪木詩集『馬鹿になれ』<角川文庫>収録『師匠』より)
先の7月の訪朝時にも金正恩第一書記に、闘魂を注入した赤いタオルを贈ったという猪木氏。正恩氏が表立って観戦することはないかもしれないが、猪木氏が師匠・力道山への思いを乗せて19年前の平壌を熱狂の渦に包んだ舞台は、大きな期待を込めて、今月末再び幕を開ける。
鄭美華
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