04. 2014年8月05日 10:58:03
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>韓国が核武装すれば、北朝鮮は行動を起こすそれ以前に、いつまで頑張れるかだな http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140804/269587/?ST=print 混迷する朝鮮半島 北朝鮮への原油輸出中断は続いている 2014年8月5日(火) 重村 智計 北朝鮮については、しばしば、虚偽の情報が意図的に流される。真実を隠す情報合戦を、南北の当事者が展開している。真実と偽情報を区別するのが専門家の仕事だが、これが難しい。最近、「中国は北朝鮮への原油供給を継続している」との情報が、広がった。検証してみると、誤った情報だった。 韓国の報道機関は、今年4月頃から「中国の貿易統計に、北朝鮮への原油輸出の記録がない。今年1月から3月まで連続して中断している」と報じた。これは、韓国の貿易機関が確認した事実だ。原油の輸出中断は6月も続いた。 平壌の現実 北朝鮮の状況は、どうなのか。7月に北朝鮮を訪問したある在日朝鮮人は、「大変な石油不足に直面している」と語った。平壌では、バイクなどの二輪車の使用が禁止されていたという。軍の中堅幹部も自動車出勤をやめ、自転車出勤を余儀なくされていたそうだ。やはり北朝鮮は、大変な石油不足に直面していた。 ところが、6月中旬頃から「中国は、北朝鮮への原油輸出を中断してはいない」といった情報が流れ出した。韓国の報道機関も「原油輸出は中断されていない」との情報を紹介した。明らかに、「北朝鮮の苦境」を報道させたくない意図が伺われた。 専門家はもとより、一般のビジネスマンまでがこの情報を真に受けて、「中国は、原油供給をこっそり続けているのでしょう」と語るほどになった。誤った情報が定説として定着するのは、日本の外交や政策を誤らせるので、「北朝鮮石油の真実」を説明したい。 北朝鮮の石油事情 朝鮮半島では、原油は生産されない。油田は発見されていない。北朝鮮の石油輸入量は、最近10年間は毎年70万トン程度で、アジア最低の輸入量だ。日本の原油輸入は約2億トン。韓国も1億トンを超えている。北朝鮮の石油量は、悲惨なほどに少ない。 70万トンの内訳は、原油輸入が50万トンで製品輸入が20万トン程度だ。50万トンの原油から精製されるガソリンや軽油などの軍事用の石油(軽質分)は20万トンでしかない。すべてのガソリンや軽油、灯油を軍事用に使うにしても、供給量は、製品輸入の20万トンと合わせて合計40万トンにしかならない。 これでは、通常、戦争は不可能だ。戦争をするなら、500万トンから1000万トンの石油が必要だ。北朝鮮の軍隊は、まともな訓練や演習ができないから、ミサイル発射実験で軍事力を糊塗するしかない。だから、特殊なゲリラ部隊と核開発に力を注いでいる。 中国が北朝鮮に供給してきた、50万トンの原油は、質の悪い大慶油田の原油だ。常温で固まってしまうので、ヒーティング装置のあるパイプラインで送油している。北朝鮮が原油代金を支払わないので、50万トンは事実上の援助であった。この原油供給が今年1月から中断されたというのだから、大変だ。 北朝鮮の石油精製能力は、年産350万トンしかない。日本海側に、旧ソ連の支援で建設した200万トン能力の製油所、中国との国境に近い黄海側に、中国の援助で建設した150万トン能力の製油所がある。日本海側のものは、現在は稼働していない。ロシアが北朝鮮に原油を供給しないからだ。北朝鮮が原油代金を支払わないので、ロシアは供給を中断した。黄海側の製油所も、半年も閉鎖したら再開には時間がかかる。 なぜ中断されたのか。公式の説明はない。だが、習近平政権が、北朝鮮への対応を変えたためであることは明らかだ。原油代金を支払わない、が理由だろう。中国は国内での原油生産が足りず、2億5000万トンもの原油を海外から輸入している。北朝鮮への長年の原油支援は、かなり無理をしてのものであった。ところが、北朝鮮は感謝しないどころか、中国の言うことを聞かず核開発を続けてきた。ついに堪忍袋の緒が切れた。この事情については、既に説明しているので参考にしてほしい(関連記事「中国と韓国が北朝鮮を崩壊させる戦略に転換〜石油の供給を停止」)。 石油製品は統制価格で売買される 実は、私は新聞記者になる前に、石油会社で原油輸入などの業務に携わっていた。そして、記者になって以降、1970年代から北朝鮮の石油事情を取材してきた。なので、普通の記者よりは石油の知識がある。 韓国の「中国の原油供給は続いている」との誤った情報は、次の根拠を挙げる――北朝鮮北部でのガソリンや軽油の市場価格は値上がりしていない。石油は不足していない。 この誤った情報は、「北朝鮮北部におけるガソリンと軽油の最近の市場価格は、中国国内の価格とほぼ同じ。1kg当たりガソリンが11元(約170円)、軽油7元で、2012年の価格と同じ。石油不足の兆候はない」と説明する。 まず、石油の単位は「kg(キログラム)」で表現しない。リットルかトンで量る。北朝鮮における石油は戦略物資なので、統制の対象になっている。市内のガソリンスタンドでは一定の統制価格で販売される。値上がりしていなくても、なんら不思議はない。 「市場」がヤミ市場を指すこともあり得ない。戦略物資である石油製品をヤミ市場で堂々と売るのは危険すぎる。 基礎知識と常識的判断が大切 勘違いしてはならないのは、中国は原油の供給を中断したのであって、北朝鮮への石油輸出を全面的に禁止したわけではない。北朝鮮が石油製品などを、現金で買っていくのなら自由である。北朝鮮はタンクローリーやドラム缶などを使い、現金支払いで中国からガソリンなどの石油製品を輸入している。しかし、中国が禁輸した50万トンもの多量の石油を賄うことはできない。外貨が不足しているからだ。少なくとも、3億ドル(約300億円)もの多額の資金が必要だが、それだけの資金力はない。 北朝鮮の状況は、単純な一片の情報から判断すると、危険だ。経済や産業に関する基本知識と、国際政治の動きなど総合的に判断しないとだまされる。最近の中国と北朝鮮の悪化した国際関係からすれば、中国が原油供給を中断したとの情報の方が、正しいだろう。 重村 智計(しげむら・としみつ) 早稲田大学大学院国際コミュニケーション研究科・教授 1969年早稲田大学法学部卒業。1976年に韓国高麗大学大学院研究生。1986年スタンフォードプロフェッショナルジャーナリズムプログラム修了。シェル石油勤務を経て、1971年毎日新聞社に入社。1979年〜1985年、毎日新聞社ソウル特派員。89年〜94年ワシントン特派員。毎日新聞論説委員をへて、2004年9月より現職。 主な著書に『北朝鮮はなぜ潰れないのか』 (2007年・ベスト新書)、『朝鮮半島「核」の外交−北朝鮮の戦術と経済力』(2006年・講談社新書)、『外交敗北−日朝首脳会談の真実』(2006年・講談社)など。 このコラムについて 混迷する朝鮮半島
朝鮮半島の動向から目が離せない。 金正恩政権は、事実上のミサイル実験と見られる「人工衛星打ち上げ」を計画。 この成否は、日本に対する核の脅威を変質させる可能性がある。 金正恩氏の政治基盤の安定にも影響する。 一方、韓国では4月に議会選挙が、12月に大統領選挙が予定されている。 現・李明博大統領は日米と緊密に連携している。 しかし、次期政権が同様とは限らない。 韓国の動きも、北朝鮮の変化も、日本の政治・経済・社会に直接の影響を及ぼす。 その変化をウォッチし、専門家の解説をお送りする。 |