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ナヌムの家の前庭に立ち並ぶ元慰安婦たちの胸像=韓国・広州市(阿比留瑠比撮影)(写真:産経新聞)
歴史戦 「反日」でひとくくり1面トップ 「日本びいき」ある元慰安婦の死
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140622-00000038-san-pol
産経新聞 6月22日(日)7時55分配信
慰安婦募集の強制性を認めた平成5年8月の官房長官、河野洋平の談話作成経緯と韓国の関与について、日本政府が20日に民間の有識者による検証結果を発表すると、韓国政府は早速反発し「深い遺憾」を表明した。大統領、朴槿恵(パククネ)が慰安婦問題に絡めて日本に「歴史の直視」を要求しているのと矛盾している。慰安婦問題をはじめとする歴史問題で冷え切った日韓関係に和解の糸口はあるのか。果たして問題解決は可能なのか。政治部編集委員、阿比留瑠比が今月9日から12日まで前ソウル特派員、水沼啓子とともに韓国を訪ねて各界の識者と意見を戦わせ、韓国側の本音と実情を探った。
◆到着後いきなり洗礼
韓国は慰安婦問題をどうとらえ、どう位置づけているのか−。
9日に韓国に着いて最初に受けた“洗礼”が大手紙、中央日報の同日付1面トップ記事だった。
「日本軍慰安婦被害者、●春姫(ペチュンヒ)さんが8日死去」
記事は、韓国政府に登録された237人の元慰安婦の一人で91歳の●が亡くなり、生存者は残り54人になったと報じていた。同紙は、これがこの日一番のニュースだと判断したことになる。
記事には、ソウルの駐韓日本大使館前に建てられた慰安婦の少女像の写真と、登録元慰安婦の生存者の名前と年齢も添えられていた。中には、現在80歳と記され、終戦時には10歳か11歳だった計算になる女性もいる。日本人から見れば信じ難いが、韓国では、それが受け入れられている。
◆強制的連行見てない
元慰安婦女性が共同生活を送る「ナヌムの家」で晩年を過ごした●は実は戦後、自ら韓国から日本に渡って約30年間、日本で暮らしており、日本の演歌や軍歌が上手だった。「日本びいきなので、ナヌムの家では少し浮いていた」(関係者)という。
●と以前から交友があり、葬儀にも参列してきたという人物に会った。
「彼女は『(朝鮮人女性を)強制的に連れて行ったなんて見てないよ』と言っていた。『日本を許したい』とも話していた」
だが、韓国のメディアではこうした●の一面は報じられない。中央日報のこの記事は、彼女の人となりには触れず、代わりにナヌムの家所長、安信権(アンシングォン)のこんなコメントを掲載していた。
◆女性として尊重せず
「一日も早く日本政府の公式的謝罪が行われ、元慰安婦の被害女性たちが人生の恨みを晴らし、心安らかに余生を送れるといい」
慰安婦となった経緯も考え方も生き方もそれぞれ違う女性たちを、「日本軍被害者」という観念的な枠組みでひとくくりにし、画一的に取り扱う。そんな韓国社会の姿勢は、それぞれの事情も複雑な心境もある元慰安婦を一人の女性として尊重しているのではなく、ただ「反日」のために利用しているのではないかとの疑問を禁じ得なかった。
そんなことを思いながらソウル市街から車で1時間余りの広州市にあるナヌムの家を訪れた。するとそこには、●の死去を悼む大統領、朴の名前を冠した白い花輪が飾られていた。 (敬称略)
●=褒の保を非に
◇
■「ナヌムの家」憎悪あおる日韓左派の展示 日常に 溶け込む反日
元慰安婦の女性が共同生活を送るソウル近郊、広州市の「ナヌムの家」に着くと、立ち並ぶ元慰安婦の胸像に圧倒される。顔のしわや髪のなでつけ方までリアルに再現されており、彼女らはまるで民族の英雄のように位置づけられている。
◆朝日新聞のコピー
「安倍昭恵首相夫人を施設に招待したい」
韓国メディアは今年3月、ナヌムの家の所長、安信権(アン・シングォン)が外務省アジア大洋州局地域政策課長、山本恭司らと面会し、こんな意向を伝えたと報じた。外務省は「事実無根」と否定したが、こんな話が出るほど韓国ではナヌムの家は有名だ。今年1月には尹炳世(ユン・ビョンセ)も韓国外相として初めてここを訪れ、河野談話を認めず「過去の悪行を正当化している」と日本を批判した。
「彼女たちは慰安婦ではなく、性奴隷だったと訪問者にきちんと伝えるようにしている」
ナヌムの家で案内してくれた日本人ボランティアはこう淡々と語った。
日本人はここに行くとまず、共産党元参院議員、吉川春子が代表世話人を務める団体が企画し、反日団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会」が協力したビデオ「15のときは戻らない ナヌムの家のハルモニ(おばあさん)たちの証言」を見せられる。
例えば、李玉善(イ・オクソン)はこう訴える。
「15歳のときに養女となり、その家の手伝いをしていた。そこから他の家の養女に売られ、お使いに出たところを日本人に連れ去られた」
ナヌムの家の前庭に掲げられた李の紹介文(日本語)には、「朝鮮人と日本人の2人によって連れていかれた」と書いてあるのに、ビデオではなぜか「朝鮮人」は省かれている。
李はまた、「慰安所は人を殺すところです」「天皇は私たちの前に来て謝罪しなくてはならない」などと激高した様子で話す。これを日本から修学旅行で来た高校生らが見るのだ。
ビデオを見終わると、今度は「日本軍『慰安婦』歴史館」という展示場に案内される。
入り口には韓国で初めて元慰安婦だったと名乗り出て、朝日新聞が平成3年8月に大きく取り上げたことで慰安婦問題が日韓間の政治問題化するきっかけとなった金学順(キム・ハクスン)の次の言葉が記されている。
「私たちが無理強いされて抗(あらが)えずにしてしまったことを、歴史に残さなければならない」
もっとも、金は自ら「母親に40円でキーセン(芸妓(げいぎ)・娼婦)に売られた」と証言しており、無理強いの主体は誰だというのか。
場内には朝日新聞が4年1月に軍関与の証拠として“スクープ”した「軍慰安所従業婦募集に関する件」という文書も展示されているが、これは悪質な業者には気をつけろという内容にすぎない。
5年8月の河野談話発表を「慰安婦『強制』認め謝罪」と報じた朝日新聞のコピーや、共産党系の団体の寄せ書きもある。
ソウルの駐韓日本大使館前で毎週開かれる、慰安婦問題で日本を糾弾する「水曜デモ」に参加した民主党の元国家公安委員長、岡崎トミ子の写真パネルも掲げられていた。
「(慰安婦の)その数は5万から30万程度と推定されている」「日帝は特に朝鮮の女性たちを軍“慰安婦”として広範囲に動員」
日本語で書かれた解説文を読んでも、慰安婦問題が日韓両国の左派勢力による合作であることがよく分かる。彼らは日韓の和解のためだと言いつつ、逆に両国の対立をあおり離反させているのではないか−。
少なくとも、対日憎悪を増幅させるような展示がごく当たり前のものとされているうちは、日韓間のすれ違いは続くと感じた。
◆「感情の爆発ない」
夕食をともにした日本に詳しい韓国人歴史学者は次のような反応を示した。
「中国みたいに、ソウルの真ん中で反日団体が暴れていたり、日本人の悪口を言ったりとかは一つもない。日本の対韓ヘイトスピーチ(憎悪表現)のようなものは韓国にはない。韓国には、日本の嫌韓本みたいに日本を批判する本もない」
そのうえで「対立をあおるばかりのマスコミは悪いが…」と付け加えた。
国立外交院院長、尹徳敏(ユン・ドンミン)も「韓国の反日は日常的なもので、爆発するような感情ではない。実際に日本の観光客とか隣に住む日本人に対する嫌がらせはない」と指摘し、同様に「韓国に対日ヘイトスピーチのようなものはない」と語る。韓国では日本風居酒屋が流行するなど、日本そのものを排斥しようという動きは目立たない。
だが、反日が日常の中に当たり前のように溶け込んでいることこそが、問題の根の深さを表している。 (敬称略)
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