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ヒラリー・クリントンも騙された…人権活動家ソマリー・マムの人助けは自作自演の行き過ぎた嘘だった
セレブな人権活動家ソマリー・マムの辞職騒動(前編)
2014.06.09 ウートピ
http://wotopi.jp/archives/5817
「あなたの仕事は仕事とは呼べない」、「自分で選んだ仕事だと思っていても、それはあなたが洗脳されているだけ」、「あなたは被害者なの」――そんなことを言われたら、頭にきませんか?
妻の家事労働を自分の仕事と同じ「労働」だと認めない夫、派遣の仕事を見つけて喜んでいるところに水を差す友人、「いつになったらまともな仕事に就くんだ」とプレッシャーをかける親など、私たちの周りには、特定の仕事を見下したり、哀れんだりする人たちがたくさんいます。そして今、そんな上から目線の哀れみの目を世界中から向けられているのが、性産業で働く人たち――特に発展途上国の女性たち――です。
約15年前から「人身取引 human trafficking」という言葉が急速に普及しました。人身取引とは、売春や強制労働、奴隷労働、臓器摘出を目的とし、脅迫や強制、拉致、詐欺、あるいは力関係によって人間を招集・移動・勾留・受入することです。この問題に対処するため多くの NGO や活動家が活動してきました。
その中でも世界中から注目され、支持を受けているのが、家族から切り離され売春宿に監禁されて売春を強要されているカンボジアの女性や少女を救出するため AFESIP(Acting for Women in Distressing Situations)という団体を立ち上げたソマリー・マム氏です。2007年には、自らの名前を冠したソマリー・マム財団も設立しています。そんなマム氏が先日5月28日自らの財団から離れたという報道がなされ、反人身取引運動関係者やセックスワーカー権利運動の関係者たちを驚かせました。
世界中から多くの賛同と多額の資金を得る
マム氏は自らも性人身取引の元被害者として、同じ境遇の女性たちを救いたいという思いから AFESIP を立ち上げ、活動してきました。その活動は、女性たちの救出、保護、教育、そして世界に向けてこの問題を訴えるメディア活動と多岐に渡ります。その活動を称えられ2008年にローランド・バーガー財団から受け取った100万ユーロ(約1億4千万円) をはじめ、マム氏は世界中から多くの賛同と多額の資金を得てきました。
また、自身の経験談や救出された女性たちの経験談を絡めて性人身取引という残酷な犯罪を語るマム氏は、欧米のキリスト教系団体や、ヒラリー・クリントン元米国国務長官、スペインのソフィア王妃、メグ・ライアン、 Facebook の COO シェリル・サンドバーグなど多くの著名人からの支持を受け、潘基文国連事務総長やローマ法王との面会も実現しました。 タイム誌やガーディアン紙はマム氏を「世界のトップ○○100人」の1人として称えています。こうした対外的な活動を通して、マム氏はその名を反人身取引運動のみならず人権運動の世界に広めてきました。
一見順風満帆に見えたマム氏ですが、いったいどうして財団を離れることになってしまったのでしょう。
マム氏自身の経験談に虚偽の疑い
今回マム氏が辞職に至った背景には詐欺の疑惑がありました。ひとつは、自身の人身取引被害について、子どもの頃の隣人や親戚、友人などの証言が本人の経験談と矛盾していることが報道されたことです。マム氏自身、9才から10才のときに被害に遭ったと言ったり、16才くらいで被害に遭ったと言ったりと、語りが一貫していませんでした。
次に、氏の娘が人身取引業者に誘拐されたと主張したマム氏ですが、元夫など周囲の証言から娘は彼氏と家出していたことが明らかになりました。更に、カンボジア軍によって AFESIP 内の女性8名が殺害されたという主張をしましたが、そのような事実はなかったとの調査結果が出ており、この件について国連に虚偽の情報を伝えた件でマム氏は謝罪しています。
本人だけではなく、 AFESIP に保護されたというロング・プロス氏、メアス・ラタ氏を米国や仏メディアに登場させ、虚偽の経験談を語らせたことも分かっています。実際にはこの2名は人身取引の被害者ではなく、プロス氏は職業訓練を受けるためだけに AFESIP にやってきたことが医師の証言で分かっており、ラタ氏は演技のオーディションを受けて合格したと本人が後に証言しています。
今年5月21日にジャーナリストのサイモン・マークスがニューズウィーク誌でマム氏のこうした数々の嘘を報じ、その1週間後にマム氏は自身の財団を去ることになったのです。
◇
「人助けは快感である」 反人身取引運動の活動家ソマリー・マムの辞職騒動から“正しい社会運動”を考える
セレブな人権活動家ソマリー・マムの辞職騒動(後編)
2014.06.09 ウートピ
http://wotopi.jp/archives/5824
マム氏と AFESIP の活動に対しては、以前から多くの批判が寄せられていました。反人身取引運動を牽引している団体が出す性人身取引被害者の女性の数や年齢の統計や事例報告には、実は統計上あり得ないようなものがいくつもあります。マム氏もカンボジアでは3才の子どもが売春宿に囚われていると発言していますが、別の活動家はその信憑性に疑問を挟んでいます。
「救出」ではなく「拉致」でしかない
更に、 AFESIP による「救出」の方法にも多くの活動家が批判を寄せています。この「救出」とは、警察による強制捜査に同行し、売春宿にいる女性を拉致するというものです。「救出」され「保護」された女性は、警察による尋問を受けます。警察が許可している強制保護期間が終わった後も、 AFESIP の判断で延長されることがあります。
保護について AFESIP は強制性を否定していますが、 AFESIP のシェルターから逃げ出した女性が多数いること、彼女らが不当に勾留されていたとして AFESIP に対して訴訟を起こしていること、 AFESIP を支持している米国政府に対し米国大使館前で抗議活動を行っていることなどから、 AFESIP にとっての「救出」と「保護」が女性らにとっては「拉致」と「監禁」でしかない可能性が高いことが、ジャーナリストやセックスワーカー、活動家たちから指摘されてきました。
また、 AFESIP と明言してはいませんが、リーラ・ニーナさんは「私は人身取引の被害者ではなく救出団体の被害者だった」と主張し、マム氏を名指しで批判しています。反人身取引運動のこうした「救出」「保護」のやり方については、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アムネスティー・インターナショナルなど人権団体も危惧を表明しています。
性産業にいる女性は全員被害者?
これらの批判に対して、マム氏は一貫して、 AFESIP に来るような女性たちは「壊れている broken」のだと弁明しています。2012年7月に開催され筆者も参加した国際基督教大学でのワークショップでも、ゲストとして参加していたマム氏は、性産業にいる女性は全員被害者であり、自分を被害者だと思わない女性はその自覚が生まれないほど「壊れている」のだ、と主張していました。この論理によれば、女性たちによる抗議の声や AFESIP を去りたいと感じる女性の声は「壊れている被害者」の声であり、そのような女性の自己決定は尊重しない、する必要はないのだという主張が可能になってしまいます。
では AFESIP にとっての「教育」は、女性たちにとって何なのでしょうか。
AFESIP では「職業訓練」プログラムがあり、そこで裁縫やヘアメイク、機織りを学ぶことができます。決算報告によれば、 AFESIP は職業訓練プログラムで生産された物を販売し、収入を得ています。しかし、報告のどこにも、実際に生産活動をしている女性たちへの給与の支払いがあるかどうかは明記されていません。更に、労働条件の悪い衣料産業での仕事を辞めて性産業にやってくる女性が多い現状では、裁縫を教えることは性産業から抜け出すきっかけにはならないという指摘もされています。
反人身取引運動は正しい運動なのか?
マム氏が財団を去ったことで、反人身取引運動の勢いは多少失速するかもしれません。しかしマム氏の失脚のきっかけは嘘が暴かれたことであり、長年抗議して来た女性たちの声が世間に届いたというわけではありません。性産業を汚らわしいものと考えたり、そこで働く女性を見下したりする私たちの強い既成概念がある限り、反人身取引運動はその過ちを振り返ることなく突き進んで行くでしょう。
私たちのほとんどは、人助けをすることに快感を覚えます。人助けしている団体を支持している自分も好きだったりします。ですが運動の中身をきちんと知り、背景に何があるのかをきちんと考えないと、人助けをしているつもりが逆につらい思いをしている人に追い打ちをかけることになってしまうこともあるのです。
そもそも人身取引という言葉が普及した背景には、米国の資本主義的かつ帝国主義的な利益があったという指摘があります(※)。強制移住や強制労働が「貧困や経済格差、グローバリズム、移民への不当な制限などを背景とする社会経済的な問題」だとしたら、政府は格差の解消や取り締まりの緩和をしなくてはなりません。
しかしそれが「薬物や武器の密輸と同じような国際犯罪事業」だとしたら、「解決のために政府がすべきことは警察権力の強化と拡張である」と政府に都合のいい主張ができます。トラフィッカーと呼ばれる人身取引加害者(業者や仲介人など)を「人々を売春に引きずり込む悪の根源」とみなすことで、自らの責任を逃れて得をしている人たちがいるということです。
発展途上国における人身取引の責任は、私たちにもあります。発展途上国に工場を建て低賃金で現地の人々を雇い、物価が上がり賃金水準が上がると別の地域に工場を移転して地域経済の破綻と貧困をもたらす日本企業や、その仕組みに支えられた日本経済とその恩恵を受けているのですから。自分の責任から目を背けて悪者に責任を押し付けたいという先進国の私たちの欲望を、反人身取引運動は満たしてくれているのでしょう。
(マサキチトセ)
参考サイト
カンボジアの反児童売春活動に潜む「秘密と嘘」?
http://timil.exblog.jp/20578617
メデイアがでっち上げたニセ”ヒーロー”
「性奴隷救済幻想のお値段は?」
http://swashweb.sakura.ne.jp/node/122
http://mobile.nytimes.com/2014/05/30/opinion/the-price-of-a-sex-slave-rescue-fantasy.html?_r=1&referrer
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