01. 2014年6月11日 12:08:58
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急に豊かになれば、軍備を増強し、多くの場合、争いが発生する http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40920 JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] アジアの「パンドラの箱」を開けるな 激化する領有権争い、関係国は国際仲裁に委ねよ 2014年06月11日(Wed) Financial Times (2014年6月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 米国のアトランタ市は以前、ここは「忙しくて憎む暇もない」都市だというキャッチフレーズを創り出した。アジアの国々は過去30年間、このスローガンを非公式に採用して大陸全土に広めていった。1970年代の終わりからアジアの大きな国々は戦いを忘れ、豊かになるという重要な事業に没頭してきた。その成果は実に見事なものだった。 ところがここへ来て、東アジアのいくつかの大国は新しい危険な優先課題を追求し、怒れるナショナリズムや領土を巡る対立にエネルギーを注ぐという不穏な兆しが見受けられる。 この地域での緊張の高まりは非常に明白になっており、今では有力な政治家も警鐘を鳴らしている。筆者が数日前に参加した「平和と繁栄のための済州フォーラム」では、韓国のユン・ビョンセ(尹炳世)外相が、アジアでの緊張の高まりは「パンドラの箱が開けられつつあるように見える」ことを意味していると警告していた。 アジアの緊張の高まりを示す不穏なリスト 尹外相は自説を主張するために、ここ1カ月間に起きた不穏な出来事を列挙してみせた。 これによれば、中国の戦闘機と日本の偵察機が空中で衝突しそうになるという「近年なかった事態」が生じた。南シナ海ではベトナムの船と中国の船が実際にぶつかるという、1979年に両国が戦った時以来の出来事が起こっている。さらには北朝鮮が韓国の船を砲撃したり、4回目の核実験を「誰も想像したことのないやり方で」行うと脅迫したりしている。 米国防長官が中国批判、「安定を損なう行動」アジア安保会議 シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で講演する米国のチャック・ヘーゲル国防長官〔AFPBB News〕 確かにこのリストは見る者に不安を抱かせるが、すべての事例を網羅しているわけではない。ここ1カ月間には、ロシアと中国が海軍の合同演習を行っており、米国とフィリピンも海軍の合同演習を行っている。 また、韓国外相が上述の警告を発した数日後には、日本の首相と米国の国防長官、そして中国軍の副参謀総長がシンガポールで開催された「シャングリラ・ダイアログ」で演壇に立ち、対決姿勢を隠さない演説を行った。 米国のチャック・ヘーゲル国防長官は中国の「威嚇と威圧」を非難した。これを聞いた中国側は、米国と日本が「中国に対する挑発的な行動や挑戦」を行っていると返した。 日本の安倍晋三首相は国際法による支配の必要性を説いたが、あまりに力強い話しぶりだったため、ある参加者は「これほど攻撃的な調子で平和を擁護する人をみるのは初めてだ」ともらしていた。 岩礁やヤギの聖域を巡る「意味のない戦争」を避けるために 南シナ海でベトナムに強硬姿勢、中国の狙いは 専門家が分析 南シナ海でベトナムの船艇に放水する中国海警局船〔AFPBB News〕 では、アジアでパンドラの箱がきしんだ音をたてて開きそうになっているのはなぜなのか。最も根拠がありそうなのは、中国の急速な台頭から説き起こす説明である。 中国の経済規模は日本のそれを上回るに至り、計算方法によっては米国のそれよりも大きくなっている。豊かになって勢力も増した中国は軍事費を増額しており、昔から主張している領土・領海についてさらに強気になっている。 ベトナムやフィリピンなど比較的小さな国々は警報を発している。そして、この地域の大国である米国と日本は押し返し、米国は同盟システムの強化に、日本は軍事行動を取れる余地を大きくするための憲法改正にそれぞれ取り組んでいる。 最終的にこの地域で紛争が勃発すれば、歴史上最も意味のない紛争の1つとして記録されるかもしれない(しかも争いには事欠かない)。日本と中国が争っている尖閣諸島(中国名:釣魚島)には、野生のヤギと希少種のモグラしか棲んでいない。フィリピンと中国の緊張を高めている主因の1つである南シナ海のセカンド・トーマス礁は、普段は完全に水没している。 この場合、海の浅瀬やヤギの聖域を巡って戦争の危険を冒すのではなく、全当事者が国際的な仲裁機関にそれぞれの主張を持ち込むのが、最も理解しやすい解決策である。安倍首相も先日の講演で「法の支配は、我々すべてのために」と呼びかけ、同様なことを話していた。 中国は国際仲裁に全く関心を見せないが・・・ このアプローチの明白な問題は、中国がその悪名高い「九段線」――南シナ海に対する広範な領有権を定義したもの――を国際裁定にかける用意があることを示す兆候が全くないことだ。フィリピンは国連海洋法条約(UNCLOS)に基づいて中国側の主張を確かめようとしているが、中国政府は国際仲裁を受け入れることを拒んだ。 中国の丸一世代の子供は、九段線の内側の海は歴史的な権利で中国のものだという考えの下で育てられた。「中華民族の偉大な復興」を主たる任務として宣言した中国政府が、こうした主張を取り下げざるを得ないリスクを冒す可能性は極めて低い。 だが、地域の他の大国は国際仲裁の受け入れを拒む中国の態度にただ絶望するのではなく、ますます断固として国際法の適用を訴えるべきだ。そのためには、自らがより一貫した態度で国際法を受け入れる必要がある。米国は、どの領有権問題についても当事者ではないが、ようやくUNCLOSを批准することで事態の好転に一役買えるだろう。 日本の利益、アジアの利益のために日本がすべきこと 領土主権の問題を解決するためには、国際司法裁判所(ICJ)も利用できる。ICJは過去に、小さな島嶼を巡る英国とフランスの紛争や、カタールとバーレーンの紛争を裁定した。 問題は、ICJが関与するためには、紛争の双方の当事者がICJの管轄権を認めなければならないことだ。中国はこれに何の関心も示していない。また、日本は尖閣諸島に関する裁定をICJに委ねる考えを持ち出したことがあるが、正当な領土問題は存在せず、それゆえ議論することはないというのが日本側の出発点だ。 日本が、中国との争いにおいて一方的に譲歩することに慎重なのは無理もない。しかし今、アジアにおける領有権問題を国際仲裁を通じて文明的な方法で解決しようとする、これまでよりはるかに明確な努力をすることが、日本の利益、そして地域全体の利益にかなう。その原則を確立することが、パンドラの箱を閉じる唯一の方法かもしれない。 By Gideon Rachman
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40913 JBpress>海外>アジア [アジア] ベトナム外交の歴史的転換点:親中国から親米国へ 中国によるベトナム孤立化の動きに警戒感を強めるベトナム政府 2014年06月11日(Wed) 細野 恭平 南シナ海の西沙諸島の海域で、中国が石油掘削装置(オイルリグ)を設置してから約1カ月が経過した。依然として、両国による衝突が続いている。 中国への抗議のための焼身自殺 ベトナム政府は、「5月初め以来、中国船の体当たりなどで破壊されたベトナム船が24隻に上り、乗員12人が負傷した」と発表。一方、中国政府は、「これまでベトナム船が1416回体当たりしてきた(6月7日午後5時現在)。中国の自制的態度に付け込んで、ベトナムが緊張をエスカレートさせている」と非難した。 5月23日の早朝、ホーチミン市の中心部でベトナム人の67歳の女性が中国への抗議活動と思われる焼身自殺を行った。小雨の降る中、朝早い時間に統一会堂の前にタクシーで乗りつけたベトナム人女性がガソリンをかぶり、その数分後に死亡したと報道されている。 女性は5リットルの容器に入れた石油をかぶり、自らライターで火をつけた。直前、「中国はベトナムの海から出ていけ」など中国に抗議する言葉を書いた紙を掲げていたという。普段は国民国家意識のきわめて低いベトナム人が、こうした極端な行動に出るほど、ベトナム人の対中国感情は悪化している。 今回の南シナ海での紛争は、ベトナムの外交戦略上の歴史的な転換点のきっかけになるとする見方がある。すなわち、「親中国」から「親米国」への外交方針の大転換である。 ベトナムには、明確な同盟国がない。 「我々は、一人ぼっちだ。経済的には日本なども助けてくれるが、政治的には一人ぼっちのままだ。望んでいないが、中国と付き合うしかないんだ」と友人の政府高官はかつて嘆いていた。その彼が、「今回の事件は、ベトナムが米国陣営に接近する絶好の機会だ」と語る。 ラオス国防相の墜落死に関する中国関与疑惑 中国とベトナムが領有権を争う南シナ海の西沙諸島に中国が新設した三沙市の市庁舎 cAFP [AFPBB News] 前回の記事で、今回の南シナ海問題を多面的に見る切り口として、中国が南シナ海、中越国境、カンボジアの3方面からベトナムに政治的・経済的圧力をかけているという早稲田大学政治経済学部の坪井教授の見解を紹介した(「ベトナムに3方面から圧力をかける中国」)。
1つ目の南シナ海での軍事的圧力は、言うまでもない。 中国は、2つ目の中越国境ルートを通じて強い経済的な影響力をベトナムに行使している。中国は、ベトナムの輸出の9%、輸入の23%を占める最大の貿易国だ。中国からの大量の物資は、この国境ルートを通じて交易されている。 現在、中越国境を結ぶ国際道路が3本建設されているが、いずれも中国系企業が受注業者である。また、ベトナム国内の発電所建設等への投資も大きい。中国企業が撤退すれば、ベトナム国内で計画中・実施中の10カ所以上の発電所計画が止まると言われている。 3つ目のカンボジアについては、中国は過去20年間、巨額な投資を集中させて中国の影響力を増大させてきた。ベトナム政府関係者は、「カンボジアは中国にカネで買われた」と発言する。 この3方面に加えて、ラオス、台湾という親ベトナムの2カ国の影響力を排除することで、ベトナムを孤立させようとする動きが中国により実行されつつあるとの説がベトナム政府内にある。 ベトナムは中国、カンボジア、ラオスの3カ国と陸の国境が接している。このうち、ラオスは親ベトナム国である。ラオスの指導者層はベトナムでの大学教育を受けている人も多い。 このラオスにおいて、5月17日、政府要人18人の乗った軍用機が着陸直前に墜落するという事件が起きた。搭乗者のうち、ラオスのドゥアンチャイ・ピチット副首相兼国防相ら計5人が死亡した。墜落の原因は不明と報道されている。 ベトナム政府の高官に非常に近い筆者の友人によると、「ベトナム政府内では、ラオス国防相の墜落死を中国によるテロ行為だと考える説が流布している」そうだ。彼によれば、「ラオスの国防相を殺害することで、ベトナムと親しくすることは危ないという警告を中国がラオスに発した」ということらしい。 反中デモで台湾系企業が狙われたのには裏がある? さらに、ベトナムと台湾との関係を悪化させようとする中国の水面下の動きも噂される。台湾とベトナムは非常に良好な関係で、ベトナムに対する台湾からの投資は巨大である。台湾に対するベトナム人の感情も悪くはない。 今回、反中デモで多数の工場が被害に遭った。しかし、奇妙なことに、大きな被害を受けたほとんどの工場は台湾系の企業である。例えば、複数の死傷者を出すなど、最大の被害を受けた台湾プラスティックは、名前のとおり紛れもなく台湾の会社である。この点は、実はかねて疑問に思っていた。 これに対し、先日、あるベトナムの省政府の幹部と話をしたときに、「ベトナム国内の反中デモは、台湾とベトナムとの関係を悪化させるために中国が扇動したのではないか」という考えを、政府内の1つの説として共有してくれた。 同幹部の省内で発生したデモで襲撃されたのは台湾系の会社が中心で、しかも、デモ参加者たちは同省の出身者ではなく、別の省から動員された人が中心であったらしい。そのため、中国によるデモ扇動説という疑惑が省内でも起きているそうだ。 ラオスと台湾の2カ国の影響力を排除することに中国が関与しているかという点については、正直、真偽のほどは分からない。単なる噂ベースの可能性も十分にある。しかし、政府内でそういう意見がかなり強く出るほどに、中国への警戒感が高くなっていることは事実だ。 親中国から親米国へ――米国でも進行する変化 高まる中国への警戒感を背景に、ベトナム政府はここ最近、急速に米国との距離を縮めている。 米国は、ベトナム戦争の経緯から、ベトナムとの外交関係の進展には、これまで慎重な姿勢を取ってきた。しかし、その状況は変わりつつある。2010年以降、米軍艦がベトナム中部のダナン港やカムラン港に寄港し、米越間の共同演習や軍事交流の実績が積み重ねられてきている。 一般にはほとんど報道されていないが、ベトナム政府関係者がとりわけ着目する米国との合意がある。5月6日、米越間で「2国間の原子力協力協定」に関する覚書が締結された。同覚書に基づき、5月8日、同協定(案)が米国議会による審議のために提出された。 米国には、米国が原子力関連の設備・技術を第三国に輸出するにあたって、輸出対象国との間で合意すべき核の不拡散に関する包括的措置を規定した原子力法第123条という法律がある。 うんと簡単に言えば、核を悪用するような信頼できない国への技術移転などを防止するための法律だと思えばよい。米国は、これまで日本や韓国をはじめとする二十数カ国と原子力法第123条に基づく協力協定に調印している。 ベトナムは、東南アジアで原子力発電所の計画を推進している唯一の国で、既に1号機はロシア、2号機は日本が受注することに内定している。 ベトナム政府関係者は、今回の「米国との原子力協力協定」は、「米国がベトナムを軍事的同盟国として見なす準備があるかどうか」を検討するものであり、「これまでの個別の原子力発電所の開発に関する協力協定とは全く重みが異なる」ものとして理解している。 HIS Jane's Defense Weekly のアジア・パシフィック担当編集者のジェームス・ハーディ(James Hardy)氏は、 「米国とベトナムの関係は、ベトナムに対する米国からの武器輸出が解禁される段階にまで発展してきていると分析している」とタイム誌の記事で語っている。 米越間での原子力協定が締結されたとき、歴史の駒が一つ動く可能性が高い。米国議会での審議を、ベトナム政府関係者は非常に注目している。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40734 ベトナムに3方面から圧力をかける中国 緊迫する南シナ海情勢と国内で鬱積する不満に難しい舵取りを迫られるベトナム政府
2014.05.21(水) 細野 恭平 南シナ海の西沙諸島の周辺海域に中国海洋石油が石油掘削基地を設置する動きを始めたことで、中越間の関係が緊迫化している(「中国とベトナムに大規模な軍事衝突はあるのか?」参照)。 ベトナム国内では、各地で反中国の大規模なデモが発生した。報道を見る限り(19日時点)、最も過激だったのが、台湾プラスティックグループの建設現場がある北中部ハティン省のようだ。 14日朝に始まったデモは、夕方にはベトナム人約5000人の規模にまで拡大し、約1000人の中国人と対峙。深夜には終息したが、この日の暴動で4人の死者が出たとされる。また、南部では、13〜15日にかけてビンズオン省を中心に反中デモが激化。日系も含めて近隣の工場は操業停止に追い込まれた。南部全体での逮捕者は約1000人にも上った。 反中デモを受け中国人3000人以上が出国、ベトナム ベトナム・ハノイの中国大使館近くの通りで、反中デモの参加者(中央)に退去するよう求める女性警察官。cAFP/HOANG DINH Nam〔AFPBB News〕 一連の動きに対して中国政府は、ベトナム国内の中国企業で働いている中国人ら約3000人を帰国させたと発表。 中国人4人が死亡したとされるハティン省にはチャーター機を派遣し、負傷した中国人らを本国に送還した。また、ベトナム在住の中国人を帰国させるため、さらに艦船5隻を現地に派遣することを決めたと報道されている。 こうしたデモは一部地域で限定的に発生したものであり、かつ現在は沈静化している。ベトナム政府の取り締まりも厳格で、ベトナム全土に反中国の炎が広がっているような状況では決してない。 国内はいつもの通り南国的な平和な日常に戻りつつある。このまま沈静化することを願いたい。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40673 |