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「朴外交」は舵を切るときだ
若宮啓文 JUNE 05, 2014 東亜日報
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2014060514458
真夏を思わせるような暑さに見舞われた北京で先月末、「日中韓」のシンポジウムが相次いで行われた。一つは中国現代国際関係研究院と東亜日報、朝日新聞が共催した催し。もう一つは中国社会科学院と東西大学、慶応大学の共催。どちらも三か国の持ち回りで毎年行われているのだが、今年はたまたま一日違いの北京開催となった。
朝日新聞にいたころ10年にわたって前者に出席した私だが、昨年の退職後は後者に2度目の参加となった。おかげで連続12年も「日中韓」の議論に加わったことになる。
さて、こうした経験を通してみると、三国関係の大きな変化を実感せざるをえない。初めのころは多くの問題で日韓が中国を巻き込んで行こうという空気がただよった。ところが最近は日中と日韓に緊張が高まる一方で、中国と韓国の接近が何かにつけて話題になる。昨年の朴槿恵大統領の訪中で、それが際立った。
中国からすれば、安倍首相の靖国神社参拝など、問題なのは日本の歴史認識であり、韓国と歩調が合うのは自然のこと。ハルピン駅に安重根の記念館をつくったのもそれゆえだが、そこには韓国を取り込もうという意図が露骨に見える。
日本からすると、私などは安倍首相の目指すものが確かに心配だが、軍事力をどんどん延ばし、強引な海洋進出への野心を隠さない中国は、より大きな不安の種である。それに韓国が加担する形になってよいのか、と気になる。
韓国からすれば、膨大になった経済関係や、北朝鮮への影響力を考えると、中国を大事にせざるをえない。加えて安倍首相の言動がそうさせるのだろうが、それにしても米国との同盟も考えれば、日本より中国に偏りすぎるのもいかがなものか。そうした迷いの中にある。
そんな折に取りざたされるのが、近くありそうな習近平主席の訪韓だ。そうなれば日本はまたしらけた空気になるだろうが、それ以上に神経をとがらせるのは北朝鮮に違いない。中朝は同盟関係にありながら、金正恩体制になってから首脳の往来が全くない。朴大統領の訪中だけでも北朝鮮は不快だったろうが、習主席の訪韓となれば、いっそう神経は逆なでされよう。
さて、日中韓シンポジウムを終えて北京から東京に帰ると、間もなく発表されたのが日朝両国の合意だった。北朝鮮が日本人の拉致被害者らの再調査を約束し、日本はその実施を見極めて北に対する制裁を解除するという内容である。
さては、中韓にそでにされた日朝が、ここぞとばかり手を結んだのか。そんな思いもよぎる電撃的な発表である。拉致問題という難題だけに、これからの進展にはかなりの疑問もあるが、北朝鮮が合意を文書にしたうえ、国内のテレビでも発表したのは初めてのこと。画期的な進展だってありえなくはなかろう。
してみると、中韓接近は日本にとって悪いことばかりではなかったかもしれない。中国も韓国カードを使いながら北朝鮮を刺激し、改革の方向へ揺さぶっているのだろう。
だが、そんなゲームはまだよいとして、最近の中国にはやはり危険な行き過ぎが目につく。南シナ海ではフィリピンやベトナム沖で強引な行動に出て、ベトナムの艦船を沈没させた。尖閣諸島をめぐってもめる東シナ海では、中国の戦闘機が日本の自衛隊機に異常接近した。
これらをめぐって日米と中国が非難の応酬を演じるなか、韓国が中国の肩を持つようでは今後の韓国外交はなり立つまい。要はバランスをとることである。
それには米国のオバマ大統領も勧めるように、日本との関係を修復するのが一番だ。カギを握るのは従軍慰安婦の問題だから、これを互いの努力で打開すべく、安倍晋三首相に真剣に働きかけるしかあるまい。これを解決しなければ見通しが開けない点は日本も同じなのだから、互いに歩み寄るチャンスなのだ。
韓国はこのところ、セウォル号の沈没事件や地方選挙で、大きな外交戦略を考えるゆとりがなかったろ
う。だが、いつまでもそうは言っていられない。いまからダイナミックに外交のかじを切れなければ、朴外交が荒波を乗り越えていくことは期待できまい。
若宮啓文(日本国際交流センター・シニアフェロー、前朝日新聞主筆)
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