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韓国経済:膨れ上がる家計債務
JB Press 2014.06.05(木) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40872
韓国の家計は、膨らんでいく債務の下で四苦八苦している。
1997年のアジア通貨危機は、リーさんに大打撃を与えた。経営していたインテリアデザイン会社は倒産し、彼は公式に不良債務者の烙印を押された。しかし、その後に来た家計に対する信用ブームは、リーさんをもっと痛めつけた。
銀行は法人向け融資を手控えるようになり、代わりに個人向け融資に目を向けた。クレジットカードの販促活動がテレビや街角など至るところで行われ、リーさんの妻を含め、誰にでも発行された。リーさんの妻は700万ウォン(6900ドル)の債務を積み上げた。その大半は未払いの利息だ。妻がリーさんと離婚した時、無職のリーさんがその債務を負う羽目になった。
韓国経済の急成長は、巨大な工業コングロマリットである「財閥(チェボル)」の巨額債務の上に築かれた。ところが今、積み上がる家計債務が成長を妨げる恐れがある。
家計債務は昨年初めて1000兆ウォンを超えた。そして家計債務は韓国の国内総生産(GDP)および平均世帯収入よりもずっと速いスピードで増加している。2012年には、家計債務は韓国の年間可処分所得の1.6倍となった。これに対して先進国から成る経済協力開発機構(OECD)の平均は1.3倍だ。
2008年の金融危機以降、裕福な消費者が世界的に債務を削減してきたのに対し、韓国の債務の山は着実に大きくなってきた。
ノンバンクの融資の抑制に動く規制当局
その理由の一端は、2008年の金融危機は韓国を動揺させただけで、このため危機後の緊縮が限定的だったことにある。顧客の所得に対する債務上限の引き下げなど、銀行に課された段階的な制限は、ノンバンクのライバル機関からの精力的な競争へ門戸を開いた。
クレジットカード会社、相互貯蓄グループ、保険会社からの融資は、大手銀行による融資より急速に増加している。2013年にはノンバンクによる融資が540兆ウォンに達し、家計債務の半分以上を占めた。これは過去最高記録だ。
規制当局は状況を察知し、バブルめいたノンバンクの融資を抑制しようとしている。2012年には、協同組合が預貸率を80%まで引き下げさせられた(銀行の預貸率は97%前後で推移している)。保険会社は、家計向けの商品の過剰な宣伝広告を制限された。ノンバンクが課すことができる上限金利は、年率39%から35%まで切り下げられた。これが、最も信用力の低い人向けの融資の闇市場を後押ししている可能性がある。
そして今、新たな債務減免計画が、これらの信用力の低い低所得家計を銀行の世界に引き戻すことを目指している。
2013年3月に創設された国営の国民幸福基金(NHF)は、リーさんの膨大な利息と債務元本の半分を減免した。リーさんは今、残り半分の債務を10年かけて低金利で返済している。リーさんはこれまでまじめに返済してきたおかげで、17年ぶりに銀行口座を開設することができた。
18兆ウォン規模のNHFは、創設されてからの1年間で、リーさん以外にも24万9000人の人が債務を半分減免されるのを手助けしてきた。NHFは6カ月以上返済が滞っている1億ウォン未満のローンを金融機関から買い取り、元本を最大で70%減免する。このほか4万8000人の債務者が、高利を低利に切り替える「ドリームローン」を受けた。特に実直な債務者は、銀行がもっと信用力の高い人にしか提供しない金利で最大1000万ウォンまで融資を受けられる。
NHFは貧しい人の窮状を和らげることに焦点を置いてきた。しかし韓国の債務の大半は、まだ富裕層が抱えている。富裕層が融資を得ようとする際の最大の障害は、住宅ローンに対する制限だ。韓国では、住宅ローンは不動産価値の50%を超えてはならない。それでも、住宅ローンは中間所得世帯の債務の半分を占めている。
もっと自由度の高いノンバンクの融資に頼ったり、金利が上下した時(ほぼすべての住宅ローンは変動金利)の応急措置として、そうしたノンバンク融資を利用したりする住宅所有者が増えている。
厳しくなる中流家庭の懐事情
これが、以前なら万が一の場合に備えて、または定年退職後を考えて大事に貯蓄されていたお金を枯渇させた。韓国の家計貯蓄率は1988年の19%から2012年の4%まで急落し、OECDの中で最も低い部類に入る。しかし、韓国の年金基金は規模が小さく、社会福祉給付は限られている。
ローンの返済は、中流家庭の所得の4分の1を食いつぶす。マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)によると、住宅ローンを含めると、これらの家計の半数以上は銀行に預けるお金より出費が多い赤字状態と見なすことができ、その割合は1990年の15%から大きく上昇したという。
韓国の首都ソウルでは住宅価格が下がっており、韓国家計の財力が圧迫されつつある。韓国政府は今、明確に家計債務の削減に努めている。そのためには、急性の債務だけでなく慢性的な債務にも取り組む必要がある。
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