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中国がベトナムを挑発し続ける理由
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140516-00035377/
2014年5月16日 11時55分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
中国とベトナムの関係が一触即発の状態になっています。というよりも、既に一線を越えているのかもしれません。
中国がベトナムの権益を侵しているのが悪いと考える人が圧倒的多数であると思いますが‥しかし、そうはいってもベトナム人たちがあまりにも過激な行動に出れば、ベトナムも批判の対象になってしまうでしょう。
いずれにしても、中国はそれでも南シナ海での石油掘削を止めないのだとか。
確かに今、暴動を起こしているのはベトナム人たちなのですが‥しかし、中国側が「「中国が自らの領海内で掘削活動に当たることは、至って正常な行為だ。掘削施設の安全を確保し、活動を継続できるようにしていく」なんてことを言っているのを聞くと、私もベトナムを応援したくなってしまうのです。
そうでしょう?
何故中国は、一旦石油掘削作業を中止して事態を収拾しようとしないのか?
これでは、敢てベトナムを挑発しているようなものではないですか!
しかし、これが中国の作戦なのです。
つまり、中国はロシアのような露骨な軍事行動にまでは出ない。しかし、だからと言って他国の権益を侵略することは止めない。つまり、それほど過激でない事実行為を少しずつ積み重ねることによって自国の権益を拡大していく作戦なのです。
このような方法なら、国際社会が制裁を課すまでには至らないと読んでいるからです。
いずれにしても、ベトナム人たちが暴動を止めなければ中国人の犠牲者が今後も増えることが分かっているのに、そんなことは構わないと言わんばかりの中国の振る舞い。
中国が嫌いな人々は、今こそ国際社会が一致団結して中国に経済制裁などを課すべきだと考えているのではないでしょうか? 私も、そうして国際社会が一致団結して中国に冷静な対応を求めることが何よりも肝要であると信じます。
しか〜し‥それは無理なのです。国際社会が一致団結して、中国に対抗することなど期待できないのです。そして、それが分かっていればこそ中国も強気の態度を取ることができるのです。もし、本当に国際社会が一致して中国に制裁を課す可能性があれば、中国もここまで露骨なことをする筈はないのです。
では、何故中国はそうして高を括ることができるのか?
米国については、これまで私が何度も言ってきた通りなのです。
それは、中国は世界一の米国債の保有国だからです。公式なデータによれば、百数十兆ドルにも上る米国債を保有している、と。つまり、中国はそれほど大量の米国債を保有しており、そして、それを好きな時にどれだけでも市場に売りに出すことができるので、米国としては首根っこを押さえられているようなものなのです。
もちろん、仮に中国が米国債を一気に売りに出せば返り血が中国にも及ぶのは必至。しかし、それを覚悟の上であれば、米国に一泡吹かせることができるのです。
つまり、よっぽど中国が過激な行動に出ればともかく、こうして石油掘削事業を続けるだけで米国が中国に制裁など課す筈はないと踏んでいるのです。
案の定、米国は、ケリー国務長官が懸念を表明した程度なのです。
では、米国以外の国はどうか?
先ずは英国。
英国も、最近中国寄りの姿勢を一層強めています。CHINA WELCOME というネーミングの中国人観光客を呼び込む作戦を展開しているのです。それにキャメロン首相は、昨年12月に中国の首相が訪れたとき、「英国は中国の領土主権を尊重する」なんて言わされたことがありました。それほど中国のご機嫌取りに熱心な英国が、どうしたら中国に対して説教などできるでしょう。
ドイツも似たようなものなのです。数日前、メルケル首相は次のように述べたのです。「中国はユーロ危機に際してドイツに強力な支援を与えてくれた。中国はユーロが長期にわたり存在すると堅く信じているからだ」
ECも中国との関係強化に熱心であり、今や「ワシントン、北京、ブリュッセル」なんてことが言われるほどなのです。
ワシントン、北京、ブリュッセルとはどういうことか? バブルの頃には、ニューヨーク、ロンドン、東京なんてことが言われた訳ですが‥
今、世界で政治的に重要な都市と言えば、それらの3つである、と。因みに、ブリュッセルにはEUの本部があるのです。
日本から世界を眺めると、如何にも中国が傍若無人に振る舞っているように見えるのですが‥そして、その見方はそれほど間違っているとは思えませんが‥しかし、欧米の観点から見れば少し違って見えるのです。
お金持ちの坊ちゃんが少し悪戯をしている程度にしか見えない、と。少なくてもお金持ちの坊ちゃんに説教などできない、と。
いいのでしょうか、このようなことで。
日本としては、欧米は中国の経済力に目がくらんでいるようだが、それでは世界平和が実現できないぞ、という位のことを言うべきだと思うのです。
かつてはあれだけ中国の人権を無視した政策に抗議をしていた欧米が、今や何も言わなくなっているばかりか、中国の肩を持っているのです。
欧米にはプライドはないのでしょうか?
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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