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中韓の共闘
蒸し返される歴史問題
ウエッジ 2014年05月07日(Wed) 岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3822
米AEI研究所のオースリン日本研究部長が、3月27日付ウォールストリート・ジャーナル紙で、中国が先の大戦の古い記憶に基づく反日感情を日本の孤立化に用いようとし、韓国もそれに乗っており、北東アジアの安定は悲観的である、と指摘しています。
すなわち、オランダでの核安保サミットでの日米韓首脳会談がこれほど重要なものであったということは、最近の日韓関係の機能不全ぶりを表している。そして、このような状態から利益を得ているのは、勿論、中国である。
中国は、東シナ海、南シナ海の係争領域に侵入するだけでは飽き足らず、日本帝国の亡霊をよみがえらせ、中国の野心を覆し得る唯一の近隣国である今日の民主主義日本の正当性に疑問符をつけ、日本を孤立させることに力を集中させている。このアプローチは、同様に20世紀の日本帝国の犠牲者である、韓国においても支持されている。
1月には、中国は、1909年にハルビンで伊藤博文を暗殺した安重根に、記念をささげた。これは、安重根を国家的英雄と考えている韓国人を喜ばせた。暗殺事件を祝うことで、中国は、日韓間の溝を拡大させている。
そして、中国政府は、新たな反日的祝日を二つ設定し、次世代の反日感情を助長させようとしている。日本の連合軍への降伏を記念する日と、1937年の南京大虐殺を記念する日である。これらの祝日を、傷が生々しく、戦争からの回復途上にある数十年前に設定したのであれば理解できるが、75年以上も経って、日中が互いに最大の貿易相手国となり、国交回復から40年経ち、日本が中国に数十億ドルの開発援助を提供した後に、なぜこういうことをするのか。
習近平は、明らかに、反日感情を強化することが、政権の利益になると考えている。中国は意図的に、関係を悪化させ、責任ある外交を行うことを拒否している。習は、自分が煽っている反日感情をコントロールできると考えているのかもしれないし、あるいは、コントロールしようと思っていないのかもしれない。
中国政府の行為は、北東アジアの大国が、経済関係の重要さゆえに、最終的には関係改善をするであろう、と信じている人々への大きな警告となろう。北東アジアの三大国は、深い不信感を持っている。彼らは、定期的に貿易をし、国際的首脳会合の場で会談を持っているが、ナショナリストの熱情が協力を凌駕することを許している。
日本の安倍総理は、中国の「憎悪拡大装置」に有効な対応をしてこなかった。12月の靖国参拝は、北京とソウルにおける反日感情を強化させただけであった。「慰安婦」のような戦時の残虐行為を認めた、過去の政府見解を見直さない、と確約したことさえ、役に立っていない。しかし、近隣国の容赦ない抵抗を考えれば、実際には、日本にできることは殆ど無い。
結局のところ、各勢力の硬直化した態度が変化すると信じられる理由は殆どなく、それは、北東アジアの安定に関心がある全ての者にとって懸念材料である。早かれ遅かれ、無責任な政策に、代価を払わなければならなくなるであろう、と述べています。
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中韓が歴史問題で日本に対して共闘していることに危惧を示した論説です。米国の識者、それも日米同盟重視派の中にも、こと歴史問題では、中韓の言い分に共感を示す者が少なくない中で、オースリンの論説は日本にとって心強いと言ってよいでしょう。
中国は、全人代で、終戦の日と南京事件の日を記念日に指定した由であり、それは、中国が対日歴史問題を国家政策の中枢に取り入れたということを意味します。こうした状況において、オースリンは、日本としては出来ることはほとんどなく、関係諸国(この論説では日本も含む)は、このような無責任な行動にいずれは代価を支払わねばならないだろう、と言っています。
オースリンも指摘しているように、歴史問題は、数十年前、戦後間もなく起こったのであれば理解できますが、何十年もたって蒸し返された不思議な問題です。
ナポレオンはワーテルローで負けて,戦犯とし配流されてから、ちょうど一世代25年を経てアンヴァリッドに祀られて、ナポレオン批判も終わりました。日本の場合、終戦から一世代経った1970年代10年間は、日本内外で、今のような歴史問題が議論されたことは皆無でした。現在の問題は、すべて1980年代に、当初は日本人の手によって、外国に売り込まれ、それがその後中韓においては国民感情として定着しているものです。
歴史上例のない事態なので、これから先どうなるか見通しがつきません。日本の左派、進歩派が持ち出した問題ですから、日本国内でそうした自虐史観が終われば、自ずから終息するかと期待されましたが、今度は中韓で意図的なナショナリズム高揚の手段として使われているので、日本がどうすることもできなくなっています。ただ、ともに米国の同盟国である日韓間では、あるいは、思いがけない、ふとしたきっかけで風向きが変わる可能性はあるかもしれません。
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