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韓国船沈没事故、文化の問題浮き彫りに−年功重視の弊害
By ALASTAIR GALE
ウォール・ストリート・ジャーナル
2014年 5月 02日
韓国の朴槿恵大統領は、珍島沖の客船「セウォル号」沈没事故の背景には構造上の問題がある、と極めて率直に語った。
同大統領は4月29日、政府当局者が監督対象の業界団体に職を得る(いわゆる天下り)という慣行は国として矯正しなればならない「根深い悪」の一つだと述べた。大統領の指摘は、規制当局者と規制対象業界関係者との間の居心地の良い関係(癒着)が行政上の監督を甘くしているということだ。
しかしこの問題は、官僚と業界が癒着しているため、業界による違法行為を見逃そうとする官僚の気持ちが助長されるということ以上に深刻だ。
以前自ら監督していた民間部門の団体に退職後の職を得るという官僚たちは、古巣の政府機関でも最年長で最も上級の部類に入る連中だ。韓国の厳格な年齢ヒエラルキー(年功序列、年長者を敬う風潮)の下で、職務上の上下関係はほとんど常に、当局者の相対的な年齢に呼応している。とりわけ公共部門ではそうだ。
これが重要な意味を持つのは、現職官僚は、天下りして業界団体の役員になった自分の元上司を監督すべき立場になった時、この元上司より自分の年齢が下回っていて年齢ヒエラルキーで下位におかれるからだ。韓国の文化において年長者、とりわけ元上司に挑むことはタブーだ。これは、適切な監督遂行を職務とする人々が、実際に遂行が困難になることを意味する。また、命令を下すことは不可能とすらみなされかねない。
韓国の年齢ヒエラルキーに伴うもう一つの潜在的悪影響は、トップに到達した人々に係わる。下からのおう盛な権力チェックが欠如しているため、悪い政策決定が何の異議も受けずに下される可能性があるのだ。最悪のシナリオでは、ボスは前もって考えておいた悪事をそのまま実行してしまうかもしれない。
これは理論的な問題ではなく現実の問題だ。韓国最大級の企業集団の幾人かのトップは汚職や横領で有罪になっている。不明瞭な企業経営に対する見方から、「コリア・ディスカウント)」現象がある、つまり韓国企業の株価は比較的低く抑えられている。注目すべきは、韓国では不正行為に対する内部告発の文化がほとんど存在しないことだ。
現時点で、セウォル号の関係者たちが意識的に規制に違反して人命を危険にさらしたという証拠、あるいは規制当局者が同号の船会社に対する適切な監督を怠っていたという証拠はない。 何らかの罪が特定されて関係者が処罰されるまで捜査をこのまま進めるべきであるのは言うまでもない。しかし、朴大統領が特定した問題は、単に構造的であるだけでなく、文化的でもあるのだ。
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