01. 2014年4月29日 17:07:04
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40562 JBpress>海外>アジア [アジア] 韓国船沈没事故、船会社の責任追及も急ピッチ なぞの実質的オーナーに捜査迫る 2014年04月29日(Tue) 玉置 直司 韓国南西部の珍島沖で沈没したフェリー「セウォル号」の救助作業が難航を重ねている。強風と高波など気象条件が悪く、軍民の潜水士を総動員した救助作業は当初の期待通りの成果が上がっていない。 政府発表の不手際も続き、2014年4月27日には首相が引責辞任することを発表した。その一方で検察など合同捜査本部は、船会社などへの捜査のスピードを上げている。 悲しみと怒りに包まれた韓国、米大統領訪問や国内経済にも影響 韓国の旅客船沈没、週末は暴風雨 急がれる不明者捜索 韓国全体が喪に服している(写真は韓国・安山市の体育館に設けられたセウォル号の犠牲者を追悼する献花台)〔AFPBB News〕 4月16日に起きた沈没事故。犠牲者、失踪者数が合わせて300人を超える大惨事となった。 犠牲者の大半が高校生の修学旅行生だったこと、船員などの対応が悪くこれが多くの犠牲者、失踪者を出す原因となったこと、政府の対応が後手後手に回った印象を与えたことなどで、韓国内は大きな悲しみと怒りに包まれている。 「これほど静かな米大統領の訪問も初めてだった」。4月25日から1泊2日の日程で韓国を訪問したバラク・オバマ大統領。米大統領の訪韓となれば歓迎ムード一色となるが、今回は、静かで話題になることもあまりなかった。 韓国全体が喪に服しているのだ。首脳会談でも、まず、両首脳が黙祷をした。 経済に目を転じると、消費にも少なからぬ影響が出ている。企業のイベントや大規模な会食などのキャンセルが相次いでいる。生活品以外の消費を手控える動きもある。また、海外からの旅行客にも悪影響が出ているという。 政府は、何よりも事故から1週間以上経過してもなお100人以上いる失踪者の捜索作業に全力を傾けている。その一方で、事故原因の究明作業も進んでいる。 その中で注目を集めているのが、問題のフェリー運航会社のことだ。メディアではさまざまな疑惑が連日大きく報じられている。 フェリー運航会社に数々の疑惑 事故が大惨事に発展した原因についてメディアは当初、真っ先に逃げた船長や船員の行動に強い批判を浴びせかけた。その後、日本から購入したフェリーを改造したことの妥当性、積荷をきちんと固定していなかったことへの疑問、フェリー船が故障していたにもかかわらず修理をしていなかったのではないかという疑問、船員教育の不備など数々の疑惑が出てきた。 これが「この会社はどんな会社なのか」という疑問に発展した。すると、次々と新たな疑惑が出てきたのだ。 韓国の旅客船沈没、死者6人 不明290人に 沈没したセウォル号(写真)の運航会社に捜査の手が迫っている〔AFPBB News〕 フェリー運航会社は清海鎮(チョンヘジン)海運だ。同社が韓国の金融監督院に提出した「監査報告書」を見てみた。1999年設立で、2013年の売上高は320億ウォン(1円=10ウォン)、営業損失が7億8599万ウォンとなっている。 売り上げ規模が30億円強の中堅旅客船輸送会社だ。 では、誰が保有する会社なのか。筆頭株主は、天海地(チョンヘジ)という船舶関連会社で39.4%を出資している。次いで代表理事が11.6%、アイワンアイホールディングスが7.1%をそれぞれ出資している。 これだけではさっぱり分からない。では、この天海地の「監査報告書」を見ると、この会社は船舶ブロックや造船プラントの製造を手がけており、売上高は1058億ウォン、営業利益は54億ウォンで、清海鎮海運よりもずっと大きい。 この天海地の株主構成を見ると、先ほどのアイワンアイホールディングスが42.81%だ。 韓国メディアによると、アイワンアイホールディングスが持ち株会社になって、清海鎮海運や天海地など数多くの傘下企業を抱えているという。このアイワンアイホールディングスは2人の大株主がいるが、この2人の父親が「実質的なオーナー」だという。 では、この「実質的なオーナー」とは何者か。 京都生まれの「実質的オーナー」、背任罪や裏金疑惑で捜査へ 京都生まれで73歳になったこの人物は、謎に包まれた経歴だ。 いろいろな事業にかかわった後、1979年にセモという海運会社を設立した。ソウルを東西に流れる漢江の遊覧船事業で一時は成功した。韓国のランドマークである漢江の遊覧船の就航権を獲得したということは、それだけ当時有力なコネを持っていたということだ。 だが、1990年に遊覧船が衝突事故を起こし、14人が死亡する惨事が起きた。会社の経営も振るわなくなり、1997年には事実上この会社が倒産している。 ところが、その後経営者として再起し、海運、船舶、食品関連などの企業を抱える「小財閥」の総帥になっていたようだ。おまけに、セモまで買い戻している。 一体どうやって再起を果たしたのか。資金源はどこだったのか。今はどのくらい資産があるのか。この人物の責任をどこまで問えるのか。捜査当局は、この点に関心を持っている。 「実質的なオーナー」だから、登記役員などにはなっていない。2人の子供が保有する会社に株式を持たせ、本人は「芸術、文化活動」をしている。 捜査当局は、まず、この芸術活動に目をつけた。その1つが、写真だ。趣味で写真を撮影しているだけなら問題はないが、自分が撮影した写真を使ったカレンダーや写真そのものを高額で、2人の子供が保有する持ち株会社の傘下企業に購入させていることが明らかになっている。写真1枚が5000万ウォンだとの報道も出てきた。 韓国メディアは、これを「背任罪」にあたるとして捜査し、近くこの人物を召喚すると報じている。これを契機に、グループ会社の経営状況や実質的な支配構造にメスを入れるという。 捜査当局は、海運会社がフェリーの改造や定期検査などの際に「公務員から目こぼしを得ていた疑いがある」とも見ている。「そのための裏金捜査も焦点の1つだ」(韓国紙デスク)という。 この人物には実は、もう1つの大きな「なぞ」もある。ある宗教団体との深い関係が指摘されているのだ。 1987年に「集団自殺事件」を起こした宗教団体との関係 1987年に、韓国を揺るがす宗教団体の「集団自殺事件」が発生した。信者と自称教祖の女性など32人が集団自殺したとされる事件だが、この人物は、宗教団体にも深くかかわっていた。 集団自殺の真相は今も謎の部分が多いが、1つは経済的な事情があったという見方もある。事件後、この人物は捜査当局の取り調べを受け、信者から金を借りて返さなかったとして詐欺罪で逮捕され、有罪判決も受けている。 この団体はその後も活動を続けている。 韓国メディアは、清海鎮海運や関係会社には、この団体の信者が多数いると報じている(この団体は報道を否定している)。 ある韓国紙デスクが話す。「沈没したフェリーは『セウォル号』と言うが、ふつうなら漢字表記は『歳月号』のはずだ。だが、実際には『世越号』だ。これはこの宗教団体の教えから来ている」 フェリー沈没事件を引き起こした運航会社は誰がどういう経営をしていたのか。船長などの無責任な行動の背景には、そもそもずさんな経営があったのか。特定の宗教団体との関係があるのか。 上述したように、実質的なオーナーとされる人物の経歴も謎だらけだ。 ただ、集団自殺事件と関連ある団体の信者への詐欺罪で有罪判決を受け、その後、遊覧船衝突事故で多数の死者を出している。今は、影のオーナーになって写真を売りつけるなどで高額の資金も得ている・・・。こんな、話が報じられるたびに、遺族や失踪者家族の悲しみと怒りは深まるばかりだ。 当局の捜査が進むと、さらにおどろおどろしい話が出てくることも必至だ。 お知らせ 本コラム著者の玉置直司氏によるJBpress Premium特別セミナー「韓国経済事情:朴槿恵政権の経済政策と財閥の行方」を開催いたします。詳しくはこちらから。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40561 JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 民主化への道のりで躓き続ける韓国 2014年04月29日(Tue) Financial Times (2014年4月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
韓国フェリー「セウォル号」の悲劇の凄惨な規模が明らかになると、被害者の家族がソウル行きのバスをチャーターし、朴槿恵(パク・クネ)大統領に直談判しようとした。彼らの行く手は、最終的に450人に膨れ上がった警官隊に阻まれた。 同じ日、障害を持つ人たちの集団が韓国の「障害者の日」を記念し、ソウル市内でバスに乗り込もうとした。障害者にとって韓国のバスのアクセシビリティーがいかに低いかを訴えるための行動だった。彼らも警察に阻止され、液体催涙ガスを顔に吹き付けられた。 1週間前の2つの出来事は、わずか27年前には軍事独裁体制だった韓国の民主的制度機構の強さに関する大きな懸念を映し出している。 朴槿恵政権の権威主義的傾向に懸念 当時の独裁体制を敷いたのが、朴槿恵大統領の父親の朴正熙(パク・チョンヒ)氏だった。韓国を一変させた彼の経済政策への郷愁は、朴槿恵氏の大統領選勝利に一役買った。だが、朴槿恵氏の反対勢力は嬉々として、朴正熙氏の人権侵害の過去に飛びついた。 反対勢力の言葉は時として辛辣で、不快なことさえある。ある国会議員は朴槿恵氏に対し、父親と同じ最期――つまり暗殺――を迎えてはならないから、その権威主義の先例に倣わない方がいいと警告した。 だが、朴槿恵政権下で講じられたいくつかの対策は、権威主義の批判を煽る一因になった。 4月20日の被害者家族に対する警察の対応はとりわけ疑わしく、市民団体の「人権弁護団」によれば「完全に違法」だったが、これはより大きなトレンドの一環だ。韓国では、小規模で平和的な抗議行動でさえ、一般的に大規模な警官隊が動員される。昨年12月には、鉄道従業員による非合法ストの首謀者を探すために、4600人もの警官が全国民主労働組合総連盟の本部に突入した。 一方、大統領選を巡っては、国の諜報機関の工作員がソーシャルメディア上の大量投稿で対立候補を誹謗中傷したことが暴露された一件が朴槿恵氏の勝利に影を落とした。 この告発を調査していた主任検察官は昨年、メディアの不倫疑惑報道で辞任を余儀なくされた。ところが、その後、問題の記事が出る前に、青瓦台(大統領府)の高官が違法に検察官の私生活を照会していたことが明らかになった。 こうした不正行為と朴槿恵氏を結び付ける証拠はないが、大統領の行動は、権威主義的な傾向への疑惑を払拭する助けにならなかった。朴槿恵氏は昨年8月、父親を事実上の終身大統領に据えた反民主的な1972年維新憲法の草案メンバーを秘書室長に任命した。 12月には、政党の解散請求を出した。政党解散が実現したら、1958年以来のことになる。青瓦台は、左派の統合進歩党の解散が必要なのは、同党の複数のメンバーが北朝鮮を支持して国家反逆的な声明を出しており、反乱を企てているとの嫌疑がかけられているからだとしている。ある国会議員はその後、20年間の懲役刑を言い渡された。 韓国の民間機関は1987年以降、非常に大きな進歩を遂げ、公の議論は以前と比べ物にならないほど自由になっている。最大手クラスの新聞は概ね、朴槿恵氏の率いる保守派セヌリ党に好意的だが、定期的に、時には厳しく政府を批判する。 前政権から言論の自由も後退 だが、朴槿恵氏の前任者である李明博(イ・ミョンバク)政権時代から後退が見られた。フリーダムハウスは2011年に、李政権下でオンライン検閲が強化され、160人のジャーナリストが政府を批判したか報道の自由のためにロビー活動を行ったことで罰せられたとし、韓国の言論の自由度を「自由」から「部分的に自由」へ格下げした。 物議を醸す1948年国家安全保障法――「反国家」活動を禁じる広義な文言を盛り込んでおり、昨年、人権に関する国連特別報告で非難された――に基づく立件は、2008年の31件から昨年の102件へと、着実に増えてきた。 フェリー沈没の大惨事は、国家的な内省を引き起こした。これを機に、韓国国民に相応しい民主主義へ至る、未完の旅を評価するといいだろう。 By Simon Mundy in Seoul
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