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独立した社会運動のために!
自由なウクライナのために!
五月二日、黒海に面するウクライナの有名な、また若き日のトロツキーが左翼活動を始めた港町のオデッサで、親マイダン派と反マイダン派が衝突し、数十人の死者を出すという悲劇が起きた。東部におけるウクライナ暫定政府による反テロ作戦開始も含め、ウクライナでの内戦という憶測は、今や可能性というレベルを超えた重大な懸念を呼ぶ地点に達しようとしている。国際的影響も非常に大きいこの事態に対し、ウクライナの左翼勢力から声明が出されている。以下に紹介する。この声明のIV掲載に際しては編集部による「左翼反対派によるこの声明は、ウクライナ語から英訳されウェブサイト『オブザーバー・ウクライナ』に五月七日掲載された」とのことわりが付記されている。(「かけはし」編集部)
民族を二分する
内戦の瀬戸際に
五月二日のオデッサ民衆の大量殺害は、いかなる点でも正当化不可能だ。社会主義派連合の「左翼反対派」は、両陣営で死傷した人々が誰であれ、彼らの多数に対して使われた力は明確に、自衛のために必要とされた行使の程度すべてを超えていた、と確信している。これらのできごとに対しては、すべての関係者が参加する調査を行い、煽動者と殺害者を個人として明らかにすることが必要だ。それらの者たちは、おそらく、という程度以上に衝突の両陣営にいた。
われわれは現時点で、これらの殺人に責任のある者たち、その組織やグループの名を上げることはできない。しかしながらわれわれは、このオデッサの虐殺がはらむ政治的結末を知ることはでき、また、それに政治的責任を負う者たちの中には、左翼政治組織がいることを見ずに済ますことはできない。
一片の疑いもなくこの暴力はまず第一に、人々を完全に意識的に殺害した、そして暴力を伴う民族主義的病的興奮を社会に勢いづけるために、死傷者の血を利用しようと試みた、そのようなウルトラ民族主義者と排外主義者によって組織され方向付けられた。彼らのめざす社会は、彼らの考え方に沿って、「民族の敵」に対し「民族を動員」すべきものなのだ。それは実際、彼らが夢見るナチ独裁、つまり流血と民衆に対する脅迫を通してのみ確立され得る体制、それを達成するおそらく唯一の道だ。
これは、ウクライナにいるロシア人がすべてのウクライナ人の中にバンデラ主義者(西ウクライナのウクライナ民族主義運動指導者だったステパン・バンデラに由来する:訳者)の殺人者を見るのならば、その一方でウクライナ人がすべてのロシア人の中に潜在的な「ロシア軍諜報機関の破壊工作員」を見るならば、その時にのみあり得るものとなるだろう。不幸なことだがわれわれは、これがそれを超えれば本当に起き得る境界まで、まさにギリギリまで近づくことになってしまった。
ウクライナ国家
が最優先課題か
しかしながら五月二日のオデッサでバリケードの両側に現れた人々の中には、左翼諸組織の活動家たちが含まれていた。しかし彼らはほんの一年前、平和的に集会を行う自由への諸制限に反対する、また奴隷化的労働法令の導入に反対する抗議行動では、それを共にする一部を形成していたのだ。
「ボロトバ(闘争)」連合の活動家たちは、「オデッサ・ドゥルチナ(オデッサ防衛隊)」の右翼排外主義者に率いられた側に姿を現した。別のところでは、アナーキストと反ファシストたちが、実際は彼らの敵、特に右翼のサッカー過激ファンによって指揮されていた行動に参加した。この後者の集団は、敵に対する特別な残忍さによって自身を際立たせていた。
左翼諸組織は、独立した、別個の労働者階級の綱領を押し出すことができなかった。大衆運動の指導権をとることができなかったことについては何も言わないとしても、それらは、民族主義的スローガンの下での兄弟殺し的暴力から距離をとることもなく、また多くの人々をそこから何とか後退させることすらしなかった。これらの左翼は最後には、近頃ではほとんど完全に現代の社会・経済秩序から始まりつつも、それをある種の民族主義的主題に変えてしまう、そうした総体的に大規模な運動に対する無批判的支持という落とし穴にはまった。
その時点でオデッサの抗議行動参加者にとっては、結論的正義として、ウクライナ国家が存続できる能力あるいは無能力が、不幸なことだが、あらゆる民族性をもつウクライナ労働者階級の労働者の諸権利よりも大きな重みをもっている。ウクライナとロシアで権力から資本家新興財閥を取り除く戦略に代わって、ウクライナ国家の創出は「誤解」だったのかあるいは「歴史的失策」だったのか、に関する現在進行中の論争がある。
東部の武装急進
派には民衆不在
東部と中央部のウクライナにある大工場の労働者は全般的に大衆的抗議運動に参加してはいないが、それは少しも驚きではない。反マイダンと親マイダンの諸行動は概して参加者が少なく、それらは、今年一月と二月のユーロマイダン期間中の一〇万人に上る強力なキエフの決起とはまったく比べものにならない。スロビャンスク(ドネツク州)においてすら、武装急進派は、冒険主義者の小集団にとどまっている。彼らはそこでは権力を確保したが、明らかに、まったく論理的に政府の反テロ作戦の犠牲者とはなりたくないと思っている当地の住民を脅迫することによってのみ、その権力を今も保持し続けている。
スロビャンスク住民の多数が「一つの分割不可能なもの(ロシアのこと:英訳者)」を再興するという君主制論者の理念を、そしてそれはドネツク人民共和国「最高司令官」のロシア当局者であるステレルコフ・ヒルキンによって公然と宣言されたのだが、それを支持しているかどうかはまったくのところ大いに疑問だ。同時に、彼らがスロビャンスクでのステレルコフの「ちっぽけな緑服の男たち」も、どのような他の兵士たちも見たくないと思っていることもはっきりしている。結局のところ彼らは、反テロ作戦の戦闘継続が人が現に住む町の住宅地で遅かれ早かれ始まるということ、彼ら――平和な当地の住民たち――が苦しみを受ける最初の者になるということを、唯一十分すぎるほどに理解している。
スロビャンスクとクラマトルスクの労働者は全体として検問には参加していず、毎日チェックポイントを通って自動車で仕事に通い続けている。ここではゼネストの問題は提起すらされてこなかった。当地の下層の犯罪的ギャングと愚かしくも郷愁でソ連邦に思い焦がれている老人たちが、「スロビャンスク軍事独裁」の主な支持者だ。
労働者、自身の
マイダン形成へ
同時に、大衆的な組織された労働者運動はウクライナに疑いもなく存在している。それは、「ティツシュキ(当局と雇用主が雇ったならず者:英訳者)」による当地のマイダンを襲撃する試みに際し、その市内での暴力のエスカレーションを鉱山労働者の自衛部隊が阻止した時に、クリビイ市で姿を現した。労働者たちは、リビウ州のチェルボノフラードでも自身を見えるものとした。そこでは彼らが政治の進行に介入し、さらに事実上、当地の発電所、つまり新興財閥のリナト・アクメトフが掌握している発電所を国有化した。
労働者運動は、ルガンスク州のクラスノドンではもっと強力に自身を明らかにした。鉱山労働者はここでのゼネストを通して市を彼らの統制下に置いた。重要なこととして彼らは、ルガンスクの分離主義「反マイダン」と連携することを望まず、キエフマイダンの新興財閥ブルジョア指導者への支持を明らかにすることもなかった。
彼らは、社会的公正を求めるスローガンとこれらのスローガンを実現する真剣な意志に基づいて武装した、キエフマイダンとは異なる、労働者の、彼ら自身のマイダンを形成した。労働者は、賃金の引き上げだけではなく、鉱山の補助的労働の外部委託を取りやめることをも要求していた。こうしてそれは、狭い経済的ストライキだったのではなく、様々な職能を持つ労働者間の連帯の必要を提起した運動、市全体をその支配下に置くだけの十分な強さをもった運動だった。
さらにその行動の中では暴力はまったくなかった。一人の死傷者も、犠牲者もいなかった! 市の掌握には、たった一発の銃撃も必要としなかっただけではなく、気乗りのしない抵抗を示す者すらもいなかった。
最後のチャンス
握る労働者運動
理解できることだが、全国規模で組織された労働者運動はまだ非常に弱い。真に活動的で階級意識のある労働者の組合は、鉱業の二、三のセンターに集中している。しかしながら、排外主義の病的興奮を静め、大量の死傷者を避けることを可能としている事例が、労働者が衝突に実体的に介入しているところのみだ、というのもまた事実だ。
実際、今日のウクライナ国家の生き残り、そしてまさにわれわれの眼前で広がろうとしている内戦の阻止にとっては、独立した階級的労働者運動の政治領域への登場が、おそらく最後のチャンスとして残っている。
ウクライナ国家分割のシナリオがもし現実のものとなるならば、暴力の爆発と大量の死傷者をわれわれが避けることはできないだろう。それと共に、衝突は、階級的特性のまったくない、国家間、民族間という特性をさらにさらに帯びることとなるだろう。
ユーゴスラビアでの戦争がまだほんの始まりだったとき、極右勢力もまた極めて弱体で周辺化されていた。それらには、顕微鏡的支持率としてヤロシュ(極右の右翼セクターの指導者:訳者)やティアニュボク(スヴォボダ党の指導者:訳者)が今もつ以上の社会内部の支持は、まったくなかった。しかしながら、セルビアとクロアチアのナチは、戦争突入から一年も経たないうちに、ユーゴスラビアの政治舞台で優勢を占め始め、自身を大きな大衆組織へと変えた。
ルガンスク、ドネツク、リビウ、またドニプロペトロフスク地域の鉱山労働者が彼らの合同した努力によってこの戦争を止めることがもしできなければ、われわれすべては戦争という肉挽き機に引きずり込まれることになるだろう。そのような事態では、ウクライナの左翼運動は今後何年も本当に破壊されることになるだろう。それがロシアで生き残るかどうかも疑わしい。
クラスノドンとクリビイ市の労働者はみなさんの連帯と支持を必要としている! クラスノドンのストライキはまだ終わっていないが、交渉の中で保留されているに過ぎない。鉱山労働者はクリブジュ市で、彼らの諸要求が満たされない場合に向けストライキも準備中だ。
その下に彼らが決起している旗が何であれ、排外主義者を支持するな!
独立し統一した労働者のウクライナのために!
独立した労働者運動と社会運動のために!
(「インターナショナルビューポイント」二〇一四年五月号)
http://www.jrcl.net/frame140526f.html
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