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ウクライナ東部の住民投票直前に軍が親ロシア派の制圧に乗りだし、多数の死者が出たドネツク州マリウポリ。今の政権に批判的な住民は11日、「自立」を求める住民投票に殺到した。治安機関が不在の混乱の中、表立って異議を唱えられない人たちはもどかしい思いを抱える。
建物は黒く焼け焦げ、煙が上がり続けていた。
親ロシア派に制圧されていたマリウポリの内務省軍施設に11日未明、火が放たれた。近隣の住民が押しかけて機材を略奪し、若者たちが戯れに投石で窓ガラスを割った後だった。
市内に住む元軍人のバレンティン・ゴンチャレンコさん(58)は、自転車で様子を見に来た。「今までいい目を見てこなかった下層の連中が徒党を組んで暴れ回っている。普通の人は怖くて声も上げられない」とつぶやいた。
「住民投票? 彼らの実態はこれだよ。クリミアが奪われ、次はここなのか」と親ロシア派を批判した。
人口46万人の街の中心部には、親ロシア派がバリケードを築く。トラックなどが横倒しにされている。そばには、火炎瓶が何本も用意されていた。
■言い争う住民
警官の姿は見あたらず、無法地帯だ。軍から奪ったヘルメットをかぶったり、目出し帽をかぶったりした若者たちが車を乗り回す。銃器店のガラスは割られ、銀行は焼け落ちていた。
9日の制圧作戦後、ウクライナ軍は郊外に一時撤退したが、検問所を置いて次の作戦に備える。兵士の一人は「命令が下れば、いつでもテロリストの制圧に入れる態勢になっている」と話し、緊張感が漂う。
ロシアとの国境に近いマリウポリでは、ロシアに親近感を持つ住民が多い。だが、一口に「親ロシア派」といっても、その素性や考え方はさまざまだ。
バリケードのそばで、迷彩服姿の女がこん棒を手に「ここから離れろ。写真を撮るな」と叫び続けていた。たまりかねた住民が「あなた、ドネツクの人じゃないでしょう」と言い返した。口論の末、迷彩服の女はロシア南部チェチェン地方から来たと認めた。
「人民の権利のために戦っている。何が悪い」と叫ぶ女に、親ロシア派とみられる住民でさえ「自分の土地のことは私たちが決める」と言い返した。
上半身裸で「独立だ。ドネツクに手を出すやつは皆殺しだ」と大声を出して威嚇しながら歩く若者たちもいた。手には飲みかけのビール瓶。市内に住むオルガ・プリツカヤさん(49)はたまらず「あなたたちはただの酔っぱらい。けんかを売りたいだけでしょう」と言い返した。彼女自身は、ドネツクがウクライナから独立すべきかどうか、迷っている。ただ「騒ぎに便乗する者は許せない」と話した。
■「投票意味ない」
11日の住民投票の投票所となった行政庁舎には市民が長い列をつくっていた。投票所の責任者を名乗るウラジーミル・バルタさんは「これほど多くの人が投票に来るのを見るのは初めてだ。これこそ民主主義だ」と自画自賛した。
しかし、町外れの波止場でハゼを釣っていた元建設作業員のリュドミラさん(56)は「何の意味もないから」と投票に行かなかった。「親ロシアとか反政府とか掲げているけど、野蛮な連中が暴れているだけ」
タクシー運転手のビクトル・セルゲイチュクさん(28)も「今回の投票には正当性がない」と言う。「ウクライナは今、政治も経済もひどい。でも、この国で生まれた以上、よい国にするよう考えるべきだ。別の国を作るとか別の国に入るとか言う方がおかしい」
(マリウポリ=石田博士)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11130145.html
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