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2014年05月06日
ウクライナ東部各地での騒乱は、南部にも広がり、内戦一歩手前に来ている。ドネツク州スラビャンスクでは、町中心部を支配する親ロ連邦制導入派市民とクーデターウクライナ軍の戦闘が続き、双方に死傷者が出ている。クーデターウクライナ軍はスラビャンスクを包囲している模様だが、多くが立て籠もり待ち受ける親ロ連邦制導入派市民の占拠する中心文には至っていない模様だ。クーデターウクライナ軍は中心部を包囲する形で、親ロ連邦制導入派市民を閉じ込め、兵糧戦術に出ているようだが、時間とともに、包囲網を、新たな親ロ連邦制導入派市民の強襲し、一部奪還との情報もある。
しかし、ウクライナ東部の街はスラビャンスクばかりではなく、ドネツク、ルハーンシク、クラスヌイリマン、クラスノアルメイスク、ドルシコフカなども、親ロ連邦制導入派市民に市庁舎や警察署などが占拠されている。クーデターウクライナ軍は25日の大統領選が正常に実施されるためには、治安の確保が必要との立場から、同国人への反暫定政府側に逆らう人々を排除しようとしている。 また、小競合いから内戦寸前に至っているウクライナ東部の各都市1か所以上のほか、南部でも親ロ連邦制導入派市民の蜂起が発生、クーデターウクライナ軍が動き出す前に、親NATO勢力の一部暴徒化した市民が、連邦制導入派市民らの運動の中心だった労働組合会館に火を放ち、多くの市民が犠牲になった。死者は40人以上となっている。
オデッサはウクライナの交通の要所であり、黒海に面する港湾の最重要拠点である。人口は100万人の港湾都市。歴史上様々な国の支配を受けてきたため、非常に国際色豊かなで、ソ連時代に発展を遂げたため、主に現地人の間で使用されている言語はロシア語だが、公用語はウクライナ語という厄介さだ。住民はウクライナ人、ロシア人、ユダヤ人、ギリシャ人、ルーマニア人、ブルガリア人、トルコ人と多種多彩で、歴史の複雑さを表し、且つ欧州やユーラシアの地続きの国家の攻防が21世紀にも起きようとしている。
オデッサと云う地名は、1792年、ロシア帝国の領土をポーランドやウクライナに拡大したロシア帝国のエカテリーナ二世が、この地を古代ギリシャ神話に出てくるオデッサスにちなみ、オデッサと名づけた。1854年には、オスマン帝国を支持、英仏軍と戦った地でもある。19世紀、ユダヤ人の支配が強まって、何度かのボグロム(ユダヤ人排斥運動)が起きた。ユダヤ人と云う人々の、世界中に廻らされた世界包囲網は、ここでも顔を出す。ナチス台頭の起点になった運動も、このボグロム(ユダヤ人排斥運動)であった。1917年にロシア革命が起こると、オデッサはウクライナ人民共和国の中央ラーダ軍を含めたいくつものグループ、フランス軍、赤軍、白軍による占領が繰り返されたが、1920年赤軍が支配権を得た。
第二次大戦中はドイツ・ルーマニア軍に占領されたが、1944年に赤軍が奪還した。オデッサは港湾の要衝であり、海軍の要衝でもある故の、常に戦地になる運命を感じさせる。1960年代から1970年代にかけて、造船を中心として製油、化学工業、金属精錬などの重工業が発展し街は飛躍的に発展した。1970年代以降にはソ連の政策もあり、多くのユダヤ人がイスラエルやアメリカ合衆国へと移住した。1991年にウクライナが独立すると、オデッサはウクライナ領となった。現在ではウクライナ海軍の基地や漁業拠点がおかれている。
歴史に興味がない人でも、『HONDA・ODYSSEY』なら聞いたことがあるだろう。この車の名前は、古代ギリシャの長編叙事詩オデッセイアの10年間の冒険旅物語に由来する。ロシア帝国のエカテリーナ二世も、この長編叙事詩オデッセイアの読者のひとりだったのかもしれない。以下は、ロイター(注:西側メディアであることを忘れてはならない)が伝える、ウクライナ情勢の最新記事だ。最新と云っても、西側諸国のメディアの情報は不確かで、且つ遅く伝えられるので、ライブ情報に接することは難しいし、ロシアや親ロシア連邦制支持の陣営からの情報は少なく、西側メディアの報道ばかり見聞きすることになる。
日本やアメリカに住んでいる人々にとって、既得権を有する勢力に迎合的で親和性に満ちたマスメディアの報道だけが流れるのだから、ロシア側の主張やウクライナ東部、南部の人々の考えなど、意識的に探しに行かなければ、見聞きする機会はゼロである。こう云う状況を言論空間の劣化というのだろうが、意識さえすれば入手できる以上、閉ざされた言論空間ではなく、真実を知りたくない症候群のようにも見える。見たいものしか見ない、聞きたいことしか聞かない。こういう状況にある国家や国民は、公正公平な、あらゆる状況において、正確なジャッジメントが出来ないことを意味する。それが、アメリカンデモクラシーであるなら、筆者は御免蒙りたい。
欧州諸国は、NATOのウクライナ介入に及び腰で、前のめりになっているのは、米国務省、CIA、FBIとウクライナ国内の右派勢力だけである。EUもロシアも“話し合いによる解決”を希求しているのだが、上述の米系勢力が、それを実現させない行動に出ている。それが、現在のスラビャンスクやオデッサ等々で行われている「テロ掃討作戦」の真実である。ロシア・プーチン大統領、ドイツ・メルケル首相も仏・オランド大統領も、これ以上のウクライナ騒乱は望んでいないと言明している。25日の大統領選が無事に行われる事が、騒乱の収束の一歩になる可能性もあるが、そのような結果は、米国務省、CIA、FBIの望みではないだろう。
騒乱は日増しに激しさを増している。誰が騒乱を炊きつけているかは自明だ。 このような動きは、911以降のブッシュ・ドクトリンに明示されている。このドクトリンにおいては、「世界はアメリカ側につくのか、テロ側につくかのいずれかだ」と絶叫したことが、その性格を端的に表している。このドクトリンは、当時のチェイニー国防長官、ウォルフォウィッツ国防次官、リビー国防次官補の“ネオコン3羽烏”によってつくられたもので、アメリカ一国主義を堂々と世界に宣言したドクトリンである。この他にも、ウォルフォウィッツはより過激なドクトリンでは、ロシアの力を削ぐことで、プーチンの影響力を消し去り、ロシアに傀儡政権を樹立させる事にまで言及している。
このロシアのアメリカ傀儡政権の樹立のプロセスとして、NATOの東方侵攻は必須の条件でもある。いま、その標的の一つ、ウクライナに火をつけたというのが真実だ。それにしても、ロシアがアメリカの脅威になると云う考えは、杞憂だろうと笑いたくもなるのだが、ウォルフォウィッツらが構想している一国主義の邪魔者は、中国なのだ。中国一国だけなら、制御出来る、と自信を持てるが、「中露の一体化」は、アメリカ一国主義にとって、まさに脅威になる。ここが、今回のウクライナ騒乱の意味するところである。当然、プーチンも習も、アメリカの意図は察している。
その証左ではないが、ロシア紙コメルサントは5日、ロシアが編入したウクライナ南部クリミア半島とロシアを結ぶ橋の建設を中国企業が受注すると報じた。 今月後半に予定されるプーチン大統領の中国訪問に合わせて覚書が結ばれるという。橋は黒海とアゾフ海をつなぐケルチ海峡にかけると報じている。このプロジェクトの発表とプーチン訪中は、中露の対アメリカ一国主義は認めないとするメッセージになることは確実だ。安倍も、メルケルも、オランドも、ロシアへの執着を捨てるには至っていない。米国務省、CIA、FBIはこの状況の打破に全精力を注ぐだろうが、力の衰えた覇権国が、どこまで新興勢力に対峙できるのか、世界史的には、非常に興味深い展開が、ウクライナで起きている。ゆえに、筆者は必要以上にウクライナ問題に言及するのだ。
≪ 流血回避へロシアが協議呼び掛け、ウクライナ東部で衝突相次ぐ
[オデッサ/スラビャンスク(ウクライナ) 5日 ロイター] - ウクライナ東部で5日もウクライナ軍と親ロシア派勢力の衝突が相次ぎ、ウクライナ政府は前週2日の衝突で多数の死傷者が出たオデッサに特殊部隊を派遣する意向を表明するなど混迷は深まっている。
ただロシア外務省がこの日、ウクライナ当局に対し、これ以上の流血の事態を避けるため話し合いの席に着くよう呼び掛ける声明を発表するなど若干の進展は見られた。
スラビャンスクでは前週2日、親ロシア派の攻撃でウクライナ軍のヘリコプター3機が撃墜されているが、この日も激しい戦闘が発生し、ウクライナ軍のヘリコプター1機が撃墜された。 ウクライナ国防省によると、ヘリコプターは機関銃による激しい銃撃を受け、川に墜落。乗組員は救助されたが、負傷しているかなどの情報は得られていないとしている。 また、ウクライナのアバコフ内相はこの日、親ロシア派と政権支持派の2日の衝突で40人以上の死傷者が出た南部オデッサに特殊部隊を派遣する意向を表明した。
ただこうしたなか、ロシア外務省はウクライナ当局に対し、同国東部でのこれ以上の流血の事態を避けるため、武力行使をやめ話し合いの席に着くよう呼び掛ける声明を発表。「良識を取り戻し、流血の事態を終わらせ、部隊を撤収させ、政治危機の解決に向け正常な協議を開始する」よう呼び掛けた。
ウクライナがクリミア半島につづきオデッサも失えば、同国は政治的、経済的に大きな痛手を被ることになる。 オデッサの人口は約100万人。石油ターミナルを含む2つの港湾設備があり、ウクライナの貨物輸送の中心地となっている。
米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は3日、ウクライナが領土をさらに失った場合、対外債務でデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高いと警告。 S&Pソブリン格付け委員会のジョン・チャンバース委員長は、カザフスタンの首都アスタナでロイターに対し、「ウクライナが領土の一体性を一部失った場合、債務返済ができなくなる公算が大きい」と指摘した。
S&Pは2月にウクライナの長期外貨建てソブリン債格付けを「CCC」に引き下げ、見通しは「ネガティブ」としている。 オデッサで混乱が広がれば、西側諸国の間でウクライナの崩壊に対する懸念が高まる可能性がある。
外交手段による解決に向けた動きは週末の間も続き、ドイツは4日、ウクライナ、ロシア、米国、欧州連合(EU)による外相級の4者協議を再度ジュネーブで開くよう準備を進めていることを明らかにした。 また、ドイツのザイベルト報道官は5日、ドイツは今月25日のウクライナ大統領選挙が予定通りに実施されるようあらゆる手段を尽くすと述べた。 ≫(ロイター)
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