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『ニューズウィーク日本版』2014−4・22
P.33
「水面下で進むオバマのNATO防衛計画
視点:弱腰外交と批判されてきたオパマだがヨーロッパ防衛の布石を着々と打っていた
サミュエル・チャラップ(英国際戦略研究所上級研究員)
リー・ファインスタイン(前駐ポーランド米大使)
欧州東部のNATO(北大西洋条約機構)加盟国に軍隊を常駐させる―先月訪欧したバラク・オバマ米大統領は、こう明言した。
ロシアによるクリミア編入に不安を募らせる東欧のNATO加盟国は、アメリカに安全保障の確約を求めている。この発言はそれに対する回答であり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する強烈なメッセージでもある。実現すれば、99年に始まるNATOの東方拡大後で初めて、旧ソ連圏の同盟国に米軍が駐留することになる。
今年で大統領就任6年日を迎えたオバマは今回、EU本部で開かれる米EU首脳会談に初めて足を運んだ。
NATO加盟国はこの問、軍事戦略の軸をヨーロッパからアジアに移すというアメリカの方針に神経をとがらせてきた。だからこの段階で欧州防衛に対するアメリカの強い決意が表明された意味は大きい。しかし、実を言えばオバマは一貫して欧州防衛の強化に努めてきた。
派手な発言はなかったが、オバマは粛々と、NATOの防衛力強化に必要な各種のインフラ整備を進めてきた。
これまでオバマはヨーロッパを「見捨てた」と言われてきた。ブッシュ前政権が進めていたミサイル防衛(MD)計画の見直しを09年に決定したためだ。
しかし、その見直しによってNSTO加盟国を防衛するための新たな計画が加わったのも事実だ。MD計画も着実に実行に移されている。スペイン沖には海上配備型MDが配備されており、ルーマニアでは地上配備型MDが建設中で、ポーランドにも導入が予定されている。
「見捨てて」いなかった
当初のMD計画はアメリカと配備先の国の2国間合意に基づいていたため、NATO加盟国間で不和を生じる原因になっていた。オバマはこれを見直し、NATO加盟国すべての承認を取り付けてから実施することで、NATOの結束を強めた。MDによる欧州全域の防衛は、今やNATOの中核的任務の1つとなっている。
MD計画は、大西洋を挟んだ安保同盟に深く関与するというアメリカの意思を具現化したものだ。米兵が駐留することの重要性は、MD計画の想定するイランからの短・中距離ミサイルに対応できる技術的な能力に勝るとも劣らない。
オバマは09年の大統領就任の直後に、いざというとき旧ソ連圏のNATO加盟国を守る体制に不備があることに気付き、ポーランドとバルト3国の防衛計画策定をNATOに促している。先のオバマ発言は、こうした下準備を踏まえたものだ。
オバマ政権とNATOの首脳部は、ヨーロッパにおける兵力削減(それはオバマ政権の誕生以前に始まっていた)を埋め合わせる措置も講じてきた。12年にはヨーロッパに駐留する米陸軍4個旅団のうち2個を削減したが、代わりにアメリカ本土にいる即応部隊を送り出し、大西洋を渡って頻繁に合同演習に参加させることにした(現地に米軍を駐留させるより安上がりだし機動的だ)。
NATO加盟国に軍事力の増強が必要となった場合の備えもしてある。例えば11年の合意に基づき、ポーランドに配備された米空軍の分遣隊だ(旧東欧圏での米軍常駐は初)。分遣隊の基地は最新の設備を誇っており、今回のウクライナ危機に際しては、オバマの訪欧前にF16戦闘機12磯と空軍兵300人を追加派遣している。必要とあれば他のNATO加盟国の軍隊や米軍の追加部隊も加われるだろう。
オバマ政権が欧州防衛の強化を進めてきたおかげで、NATOはウクライナに対するロシアの挑発的な行動にも効果的に対応できそうだ。言うまでもなく、それはまたアメリカの長期的な安全保障戦略にもかなう。」
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