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ウクライナ南部のクリミア半島について、ロシアが併合を宣言してから18日で1カ月。9割以上が併合賛成とされた住民投票の熱狂の陰で、投票反対派への迫害が進んでいた。ロシアは相次いでクリミア優遇策を打ち出すが、半島から逃げ出す人は後を絶たない。
■年金2倍、橋やカジノ構想
ロシアは今、クリミア住民に対して盛んに振興策をアピールしている。
公立学校の教員の給与は約3倍、年金は2倍近くになる。クリミア対策省をつくり、経済特区をつくる。海峡に橋を架ける。クリミアに進出するロシア企業の法人税を減免する。リゾート地のヤルタにはカジノを設け、ラスベガスのように華やかにする――。
「世界中がクリミアに注目している。ロシア政府も振興に力を入れるだろう」とクリミア自治共和国の首都シンフェロポリのタクシー運転手は期待した。「ウクライナ政府よりも、ロシア政府の方が投資に力を入れてくれるはず」と国営ワイナリーの社員も語る。
だが、クリミアの主産業である観光業は、地中海や紅海沿岸にあるギリシャやエジプトなどのリゾート地に比べて値段が高く、サービスが悪いとされてきた。ロシア軍が展開したイメージも加わり、ロシア以外からの客は見込みにくい。
水や電気、食料の供給の大半はウクライナ本土に頼るが、互いに厳しい検問を敷いて流通網は狭まりつつある。シンフェロポリ市内ではガソリンや食料の物価が上昇。春以降の農業用水の不足も懸念される。
巨額の投資を要するクリミア振興策がロシア経済を圧迫するのは確実で、いつまで続けられるのかは見通せない。クリミア西部からウクライナの首都キエフに避難したウクライナ系女性(27)は「みんなロシアの宣伝に踊らされている」と話した。
■住民投票に反対、行方不明
今月15日、ジュネーブ。国連の人権高等弁務官事務所は、ロシアによるクリミア併合の前後に「正体不明の武装集団」が住民投票に反対する人々を誘拐し、不法逮捕した上で拷問を加えていたと発表した。いまだに7人が行方不明という。
バフチサライでウクライナ語の普及活動を続けてきたジャーナリスト、アンドレイ・シチェクンさん(40)もその1人。拘束されたのは住民投票1週間前の3月9日だった。
この日、シンフェロポリ市内で住民投票反対の集会が予定されていた。キエフからの参加者を迎えようと仲間と市内の駅にいたところ、親ロシア派の自警団に拘束された。ロシアの情報機関関係者とみられる男らに車に乗せられた。
目隠しをされて連れて行かれたのは、建物の地下室のようだった。男2人からナイフのようなものを突きつけられ、全裸にされた上で尋問が始まった。手には電極を付けられた。「資金源は誰だ」「武器はどこに隠している」。どの質問も覚えのないことだった。
「知らない」と答えると電気ショックを加えられ、発砲も受けた。「ファシストめ」などとなじられ、蹴り上げられもした。その後、服を着ることは許されたが、目隠しは解かれなかった。
解放されたのは住民投票後の3月20日だった。バスに乗せられ、ウクライナ本土側に少し入った地点で計13人が降ろされた。本土側からの迎えのバスに乗車。手のけががひどく、近くの病院に入院すると、左手の甲から銃弾が二つ摘出された。パソコンや身分証明書は奪われたままだ。
妻リュドミラさん(39)と子ども3人も、クリミアから逃げてきた。「夫が突然消えて、11日間も連絡が取れなかった。つらい思いはどんな言葉でも言い表せない」。シチェクンさんは悔やむ。「もっと声を上げるはずだった。でも私たちが捕らえられたことで、動きは阻まれた」
■先住民「併合認めるしかない」 タタール人、3千人が脱出か
クリミア半島には、先住民族のクリミア・タタール人約20万人が住む。ここにも、親ロシア派による抑圧がのぞく。
3月初め、シンフェロポリで反ロシア集会に参加したタタール人の建設作業員レシャト・アメトフ氏(39)が親ロシア派の自警団に拉致された。知人によると、アメトフ氏は住民投票前日の15日、約40キロ離れた町で遺体で見つかった。顔に粘着テープが巻かれ、足はひもでしばられていた。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチなどがこの事件を取り上げた。だが、ロシア側は「タブロイド的な報道」と一蹴。真相を追究しようとした知人らに、タタール系の民族団体幹部は「我々に一任するように」と制してきた。幹部の1人は「併合は違法だが、我々が安全に暮らしていくためには認めるしかない。選択肢はない」と苦しい胸の内を明かす。
アメトフ氏の妻ガリーナさんと5歳、2歳半、3カ月の子どもたちは今もクリミアで暮らす。
先月29日、タタール人は総会を開いた。ロシアによる併合という現実を踏まえて自治区づくりを求めることを決めた。アメトフ氏の事件が表だって取り上げられることはなかった。
身の危険などを感じて、クリミアから避難する人たちが出ている。キエフ市は住民投票後の3月19日に救援センターを設け、避難民の受け入れを始めた。今月5日までに登録者は1千人を突破。住居や仕事のあっせん、年金手続きなどを支援する。担当者は「日を追うごとにセンターに来る人が増えている」と話す。
国連の人権高等弁務官事務所の推計では、半島にいるタタール人のうち約3千人がクリミアを離れたとしている。(シンフェロポリ=石田博士)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11090426.html
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