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【4月6日 AFP】ルワンダのフレデリック・カジグウェモ(Frederic Kazigwemo)さん宅の周辺には、同国農村部の典型的な風景が広がっている。粗末な日よけの下で牛が草をはみ、キャッサバが天日に干され、女性たちが籠を編むそばで子どもたちが遊んでいる。
しかし、20年前の大虐殺で80万人の命が奪われたこの国に暮らすカジグウェモさんには、典型とは外れる点が1つある。過去に近隣住民を殺害した経験があるということだ。「融和の村」に住むカジグウェモさんの妻は、隣に住むセシル・ムカガサナ(Cecile Mukagasana)さんと一緒に籠を編んでいる。カジグウェモさんが殺したのは、他でもないこのムカガサナさんの家族だった。この「和解の村」では、許すことさえできるなら無料で住宅提供を受けられる。
ムカガサナさんは軒先に腰掛け、草に色とりどりの糸を結び付けては、丸く編んで籠にしていく。珍しい物を好む観光客用の土産物だ。ムカガサナさんは語る。「ここに住むのは最初はつらかった、この女の人の夫が私の家族を殺す手助けをしたのだから」
■「罪の意識は感じなかった」
かつてルワンダでは、異なる民族同士も比較的平和に共存し、民族が異なる男女間の結婚も珍しくはなかった。しかしカジグウェモさんによると、「政府がフツ(Hutu)人に対し、ツチ(Tutsis)人が再びフツ人を支配しようともくろんでいるため、ツチ人を殺して財産を奪わなければならないと教えていた」という。「政府はわれわれに銃を与え、殺し方を教えた」が、カジグウェモさんの一団は銃ではなく「なたとやりを使って」7人を殺害した。
「罪の意識は感じなかった。政府の期待に沿ったのだから誇りに思った。だからもう一度やった」。「殺しがうまい者」もいたというカジグウェモさんの一団は、2度目の襲撃でムカガサナさんの家族2人をおので斬り殺した。
ルワンダ大虐殺の後、従来の裁判所では対応しきれず、伝統的な地域共同体での「ガチャチャ(Gacaca)」裁判が開かれ、10年以上かけて200万人が裁きを受けた。カジグウェモさんもその1人で、殺人行為を認めて謝罪したため減刑された。
「謝る前は心が落ち着かなかった。ふとした時に自分が殺した人たちの顔が目の前に浮かぶこともあった。でも今は見えなくなった」
■虐殺のトラウマ 次世代にも
レイプ被害者やその子どもたち、また殺人犯の子らへのカウンセリング活動を行う団体「ベスト・ホープ・ルワンダ(Best Hope Rwanda)」を設立したデュドネ・ガヒジガンザ(Dieudonne Gahizi-Ganza)氏は、ガチャチャ裁判の不十分さを指摘している。「確かにガチャチャは正義をもたらすことに寄与し、犯罪者を裁きにかけてきた。しかしわれわれには和解が必要だ」
政府の平和和解委員会(Peace and Reconciliation Commission)のジャンバティスト・ハビャリマナ(Jean-Baptiste Habyarimana)事務総長も、「大虐殺の後には、30万人の孤児と夫を失った50万人の女性が残された」として、「これらの人々が普通の生活を取り戻すのは容易ではない」と認めている。
ベスティン・ムカンダヒロ(Vestine Mukandahiro)さんは、首都キガリ(Kigali)郊外のバナナの木が立ち並ぶ路地に多数見られるれんが造りの家の1軒に暮らしている。性的暴行を受けて妊娠し生まれた娘について心の折り合いをつけるのに、何年もかかったという。
13歳でレイプされ妊娠が発覚。自殺することもおなかの子を殺すこともできないと覚悟したムカンダヒロさんだったが、「娘が生まれてみると、この子とは暮らせないと思った。顔を見るとレイプのことを思い出してしまうから」
その上近所の人たちからは、「いまわしい子」を連れてきたとして「売春婦のような」扱いを受けたという。
市民を対象にしグループカウンセリングに力を入れた和解プログラムを通じて、世間に広まった汚名こそすすがれてきたものの、自らの過去を告白することで、大虐殺の何年も後に生まれた人々が大虐殺の追体験を強いられるという問題が生じている。
ガヒジガンザ氏は、「トラウマが現世代から次の世代に受け継がれかねない」と警告している。
■今も残る悲しみ
ルワンダは100日間に及ぶ大虐殺が始まったあの日から、今月7日で20年を迎える。しかし人々の頭上には今も恐怖と悲しみの暗雲が垂れ込め、いつもどこか心を解放しきれずにいる。
今日では出身民族を問われることはなくなり、身分証明書にもその記載はない。
1994年のおぞましい出来事は「ツチ大虐殺」と呼ばれている。その呼称の陰で、フツ人の穏健派も殺されたことは忘れられ、当時反体制派だったポール・カガメ(Paul Kagame)現大統領が政権を掌握する際にどれほどおびただしい血が流されたかも曖昧になっている。
19歳のイベット(Yvette)さんは、「私たちは民族のことは話さない。話すのは昔の事実だけ」として、「私たちの世代は、過去に起こったことを絶対に二度と起こさないよう、多大な努力をしなければならない」と話している。(c)AFP/Hannah McNeish
http://www.afpbb.com/articles/-/3011861?pid=0
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