04. 2014年3月20日 01:53:35
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Martin Wolfもやけに熱いなhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40228 JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] プーチンの手からウクライナを取り戻せ ロシア自身のためにも、ロシアの失地回復主義を止めなければならない 2014年03月20日(Thu) Financial Times (2014年3月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) プーチン大統領、クリミアにいるのは「ロシア軍でなく自警団」 一気にクリミア編入に動いたウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News〕 「我々にとっては遠く離れた、よく知らない国」。英国のネビル・チェンバレン首相は、1938年のヒトラーのチェコスロバキア併合に際して何もしない理由をこう説明した。 領土の回復をもくろむナチス政権が、ドイツ系住民を守るためと称して行ったこの併合は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるクリミア併合に恐ろしいほど似ている。プーチン氏は、モスクワの旧帝国を復活させる際の言い訳にロシア系住民を利用しているのだ。 ウクライナの大統領職を解任されたビクトル・ヤヌコビッチ氏はこんな発言まで残している。「あの闇の勢力をかばっている西側の人たちにお聞きしたい。あなた方の目は節穴なのか? ファシズムがどんなものなのか忘れてしまったのか?」 忘れていないことを筆者は強く願っている。 先例にするには危険すぎるクリミア併合 西側には、核武装したロシアと戦争に突入するつもりはない。しかし、小国の一部をあからさまに併合したことは、第2次世界大戦後の欧州でなされた合意を根幹から揺るがすものだ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相はいみじくも、ロシアは「ジャングルの掟」を適用するに至ったと指摘した。この併合を見過ごすわけにはいかない。先例にするにはあまりに危険すぎる。 西側はセルビアからコソボを分離することで既に先例を作っているではないか、との指摘もある。しかし、あれはセルビアの残虐行為への対応だった。あのようなことはクリミアでは起こっていなかった。西側の大国がコソボを併合したわけでもない。セルビアがコソボで行ったことはむしろ、忘れ去られているがロシアがチェチェンで行った残虐行為の方にはるかによく似ている。 ロシアは、北大西洋条約機構(NATO)がその範囲を拡大してロシアの国境にまで伸びてくるのはとんでもないことだと不満をあらわにしている。しかし、NATOはいろいろな国々を併合しているわけではない。 ロシアがかつて領有していた国々がNATO加盟を望んだのは、ロシアの行動ゆえのことだ。ロシアによる支配から恩恵を享受してきた人々が、ロシアから我が身を守ってほしいと望むのはなぜなのか。ロシアは自分の胸に手を当てて考えてみるといいだろう。 プーチン氏が再建したロシアの専制政治体制は領土の回復を目指している。気が滅入る話だが、これが現実だ。西側諸国は一致団結して対応しなければならない。 今日の西側諸国とロシアとの関係で最も重要なポイントは、今のロシアは旧ソビエト連邦に比べれば弱く、西側との経済的な関係が深まっていることだ。この点は、ロシアが我々に向ける武器になるが、同時に弱さももたらしている。 最優先すべきはウクライナ経済の安定 では、ロシアとの関係はどう管理すればよいのだろうか。ずばり、アメとムチを使い分けるのだ。 まずウクライナから見ていこう。この国は、国民を食い物にするギャングを自力で排除した。それを主導したのは「ファシストたち」だったなどという嘘を西側諸国は受け入れるべきではない。しかし西側は、もしロシアがウクライナの領土の全体性を脅かさないのであれば、西側はウクライナをNATOには誘わないと明言すべきだろう。最も優先しなければならないのは、ウクライナの経済を安定させることだ。 そうすることが自分の利益にかなうとロシアが判断するか否かは、安定していて豊かで民主的なウクライナをロシアが望ましいと見なすように仕向けることができるか否かにかかっている。 ウクライナのオレクサンドル・トゥルチノフ暫定大統領はこう話している。「クレムリンが最も恐れているのは、我々が今作りつつある民主的で、欧州的で、成功していて豊かなウクライナだ・・・彼らが攻撃してくる本当の理由はそこにある」 トゥルチノフ氏の言う通りだと筆者は思う。それでも、ウクライナを経済的に安定させることは、ロシアの協力を得られる場合の方が、得られない場合よりもはるかに容易になるだろう。2013年10月までの12カ月間において、ウクライナからの輸出のうちロシア向けは24%を占めていた。またウクライナへの輸入のうち、ロシアからのものは30%を占めていた。さらに、ロシアはウクライナにとって最大のエネルギー供給者でもある。 国際通貨基金(IMF)は、ウクライナのためのしっかりしたプログラムについて4月に合意できる可能性があると楽観的な見方を示している。クリミアがいかに政治的に重要だとしても、経済に占める割合は4%にすぎない。IMFは適切なことに、ウクライナの通貨フリブナの相場が高すぎることを懸念してきた。富裕層や権力者たちがその分だけ有利なレートで外国の資産を購入できるからだ。 ポーランドがやったことを成し遂げる3度目のチャンス しかし、経常赤字の国内総生産(GDP)比が昨年には9%に達したこと、外貨準備も急減していることから、フリブナ相場も必然的に修正が進んでいる。最大の問題は恐らく、どんなプログラムを作るにしても、それは次の政権に義務を負わせるものでなければならないということだ。明確な条件を付して、それがクリアされるたびに段階的に資金を出すという仕組みがベストだろう。 肝心なのは、緊急に必要なことと絶対不可欠なことを区別することだ。経済を安定させ、大きな価格の歪み――腐敗した人間が貧しい人よりずっと多くの利益を得る、負担しきれないほどの安いガス価格を含む――を是正することは、差し迫った問題だ。一方、抜本的な改革は絶対不可欠だ。ウクライナはポーランドがやったことを成し遂げる3度目の、もしかしたら最後のチャンスを手にしている(過去のチャンスは1991年の独立と2004年のオレンジ革命)。 ピーターソン国際経済研究所のアンダース・アスルンド氏が主張しているように、ウクライナはよりオープンで競争力のある経済と、より透明性が高く説明責任のある政府へと迅速に移行しなければならない。欧州連合(EU)との連合協定締結は役に立つだろう。蔓延する汚職の一掃が、必要な支援に対する条件でなければならない。 成功したウクライナは、ロシアの失地回復主義に対する断トツに効果的な反撃になる。これが実行不可能でなければならない論理的な理由は1つも見当たらない。だが、実行不可能になる偶発的な事態は2つあると筆者は考える。 1つ目は、ウクライナを分裂させたり征服しようとしたりすることで、ロシアがこのチャンスを潰すことに全力を傾ける事態だ。これに対する答えは、ロシアが除け者になること、それも西側だけで孤立するわけではない、ということでなければならない。そのような展開を冷静に検討しようとする国はほとんどない。軍事的な征服の世界への逆戻りを防ごうとする願望は強烈だ。 2つ目は、西側諸国、なかんずく欧州がロシア政府との交渉で過度に怖気づく事態だ。主たる理由は――もっとも唯一の理由ではないが――、ロシアが極めて重要なエネルギー供給国であることだ。 天然ガスは石油や石炭と比べると貿易が極端に難しいため、極めて重要なコモディティー(商品)だ。2011年には、EUの天然ガス輸入の30%をロシアが供給した。だが、国内のガス生産とエネルギーミックス内のガスの割合を考慮すれば、ロシアは恐らくEUのエネルギーの20分の1を供給した程度だ。 そうせざるを得なくなったら、EUはロシア産ガスなしで済ませられるだろうか? その答えはイエスでなければならない。ただしその場合、EUは原発廃止などの人気の政策を見直さねばならないかもしれないし、米国もEU向けのガス輸出を検討しなければならないだろう。 「今日はウクライナ、明日はEUそのもの」の恐れ 西側諸国は、ウクライナが自分たちの知らない遠い国であるふりをしてはならない。今日はウクライナだが、明日はEUそのものだという可能性もあるのだ。ロシア自身のためにも、ロシアの失地回復主義を止めなければならない。安定し、民主的なウクライナは、ロシアの真の長期的利益と敵対するものではない。 出発点はウクライナを助けることでなければならない。理想的にはロシアの協力を得られればいいが、必要とあらば、ロシアの協力なしでやらねばならない。それは容易なことではない。だが、やるだけの価値がある。 By Martin Wolf
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