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求められるは 市民の保護と独立調査
2014年01月16日
(ナイロビ)−2013年12月15日に武力衝突が発生して以来、政府軍と反政府軍が掌握するそれぞれの地域で、特定の民族の市民を標的にした攻撃が行われており、その目撃証言が集まっている。南スーダン政府も反政府勢力も、一般市民に対する人権侵害を即時に停止すべきだ。
南スーダン政府やアフリカ連合(AU)、国連は、独立しかつ信頼にたる国際的な調査委員会の設立を支持し、武力衝突発生以後に起きたすべての犯罪疑惑に関する調査を促すべきだ。国連はまた、重大な人権侵害を犯し、国際人権法・人道法に抵触したことが確実とみられる個人に対し、渡航禁止・資産凍結の制裁措置を発動すべきである。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局局長ダニエル・ベケレは、「一般市民に対し、民族だけを理由として恐ろしい犯罪が続いている」と指摘する。「両陣営とも一般市民を争いに巻き込んではならない。そして助けが必要な人びとに人道支援団体の手が届くよう計らい、信頼にたる独立した犯罪の調査を受け入れる必要がある。」
南スーダンのヒューマン・ライツ・ウォッチ調査チームは昨年12月27日〜今年1月12日、ジュバとボルで起きた人権侵害について、200人超の被害者と目撃者から聞き取り調査を行った。調査員たちは特に、12月15日〜19日の間にジュバで起きた南スーダン政府軍による広範なヌエル民族男性の殺りくを調査して取りまとめた。これには、12月16日にジュバ市内のグデレ地区で200〜300人の男性が虐殺された事件も含まれる。調査員たちはまた、同国の他地域で反乱軍がディンカ民族の一般市民を標的とした殺りくについても、調査して取りまとめている。
南スーダン全土で起きている両陣営による一般市民を標的とした殺りく、略奪、民間財産の破壊は、先月だけで40万人超の避難民を生み出したことが国連の推計から分かっている。武力衝突発生後に起きた犯罪の大半は、国際人道法に対する重大な犯罪であり、戦争犯罪あるいは人道に対する罪に相当する可能性もある。
武力衝突は12月15日の午後10時半ごろに、南スーダン政府軍の大統領護衛本部で発生。南スーダン与党「スーダン人民解放運動(以下SPLM)」の会合から数時間後のことだった。会合では、ディンカ民族のサルバ・キール大統領とヌエル民族のリヤク・マシャール前副大統領との間でかなり緊張が高まっていた。キール大統領は昨年7月に、SPLM幹部でもあるマシャール前副大統領の任を解き、閣僚全員も併せて解任した。前副大統領は昨年前半に大統領選出馬の意向を表明していた。
政府はまた12月16日を皮切りに、SPLM政治部門の著名な政治家やメンバー11人を逮捕。彼らがクーデター計画にかかわっていたと主張した。ヒューマン・ライツ・ウォッチが確認できる限り、逮捕された政治家たちはこれまでの4週間、正式な起訴もないまま拘束されており、弁護士への接見も許されていない。
キール大統領は12月15日の戦闘を、マシャール前副大統領とその仲間によるクーデター未遂と主張する。前副大統領の所在は現在不明であるが、クーデターではないと主張している。その後数日の間に、南スーダンの主要地域で多数の軍幹部が政府に対して反乱を起こした。これがジョングレイ州州都ボルや周辺地域、ユニティ州州都ベンティウほか数地域、そして上ナイル州州都マラカルにおける緊迫した武力衝突へと繋がっていった。
マシャール前副大統領側と政府側の代表が、当該地域の政府間開発機構(IGAD)を介してエチオピアのアディスアベバで和平交渉にのぞみ、停戦合意ほか諸問題を協議している。が、いまだ停戦の合意には至っていない。
12月24日、国連安全保障理事会が国連南スーダン共和国ミッション(以下UNMISS)の平和維持軍を7,000人から1万2,500人規模へ、同ミッション警察部隊も900人から1,323人規模へ増派することに同意した。国連はこうした増派を速やかに行うとともに、一般市民の保護を改善するために、そのほかにも早急な措置も講じるべきだ。武力衝突によりおよそ6万6,500人もの人びとが避難しているUNMISS施設周辺の警備などに、改善が求められる。平和維持軍はまた、展開地域で立ち入りが可能な場所、助けを求める人びとがいる場所に対する独自パトロールを増やすべきだ。パトロールの場所や時間は、南スーダン政府の許可対象であるべきではない。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これまで医療/人道支援関係施設に対する略奪の報告や、人びとへの救援の必要性が極めて高い地域への飛行許可を政府が拒否したという報告を複数回受けている。政府も反体制派勢力も、救援や保護を必要とする避難民ほか一般市民のために、国連や独立した人道支援機関の障害なきアクセスを確保すべきだ。両陣営ともに、医療/人道支援施設や資材、人員を国際法に則して尊重せねばならない。独立した人道支援活動を妨げたり、あるいは協力しない個人は、その責任を問われるべきだ。
アフリカ連合は昨年12月30日に調査委員会の設置を決めた。同連合は国連の調査委員会経験を大いに利用すべきであり、12月15日以降起きている重大な犯罪を調査するために、速やかな人員提供と国際的な調査員・専門家団の支援を国連に要請することが望ましい。また調査委員会は、アフリカ連合のみならず国連事務総長にも報告を行うべきだ。加えて、UNMISSは人権部門の調査能力を強化し、両陣営による国際人権法・人道法違反を定期的・公的に報告すべきだ。
前出のベケレ アフリカ局長は「南スーダンと国際社会は、歴史の教訓から学ぶべきだ。重大な人権侵害による悲しみや恨みが消えない社会では、社会の亀裂を権力者が自らの権力闘争にいとも簡単に悪用してしまう」と述べる。「これを乗り越えるために必須なのは、法の裁きと和解だと歴史は示している。」
http://www.hrw.org/ja/news/2014/01/16
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