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米国の「紛争鉱物開示規制」は、企業に対して、自社の取扱製品にスズ、タンタル、タングステン、金などの紛争鉱物が使用されているかどうかを調べ、開示することを義務付けている。これらの鉱物は紛争鉱物と呼ばれ、アフリカ各国の武装グループの資金源になっている。米国の経済団体などはこの規制に反対し、弱体化を働きかけてきた。
米国・コロンビア地区巡回裁判所は1月7日、業界団体による規制への異議申し立てを聞いた。アムネスティ・インターナショナルは規制を支持し、訴訟に加わった。
紛争鉱物開示規制に対する異議申し立ては、業界団体が、人道より利益を優先させようとする愚かな試みである。
この規制は2010年、コンゴ民主共和国など中部アフリカの鉱物資源国で、暗躍する武装グループへの資金流入を抑えることにより、人命を守り、人権侵害を減らしたいとする連邦議会の要請で出来たものだ。議会の対応は、2008年の金融危機以降のビジネス慣行を改革する取り組みの一環だった。
紛争地域からの鉱物は、携帯電話、コンピューター、電球、ブリキ缶など、広範な消費財に使用されている。
使用される鉱物の多くを産出するコンゴ民主共和国では、長年武力紛争が続いてきた。鉱物資源に恵まれている近隣の中央アフリカ共和国や南スーダンなどでも、最近新たに武力紛争が勃発している。
武装グループが鉱物取引に関わっていることは、国連任命の専門家が作成した公的な報告書などで、確認されている。
2010年、米国連邦議会は、透明性を高め、消費者と投資家が正しい情報に基づいた意思決定を行えるよう、金融規制改革法(ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法)を可決した。議会は、コンゴ民主共和国や周辺国における鉱物の取引と搾取を標的にしていた。企業によるこれらの国の鉱物利用は需要を喚起し、その結果、紛争に関わる武装グループに資金を供給することになると見たからである。
この法律が起草されたとき、米国商工会議所をはじめとした経済団体は「紛争鉱物開示規制」を無効にしようと働きかけた。土壇場では、「この法律は憲法修正第一条(「言論の自由」)に違反する」と誤った主張を展開し、廃案を訴えていた。彼らの論点は、企業に使用紛争鉱物の開示を要求するのは言論の自由に反するというものだった。結局、経済団体の申し立ては、失敗に終わった。
企業に情報開示が要求されるのは、ごく当然のことである。例えば、事故報告やタバコであったら環境への影響報告など、製品表示に関する法律がある。この規制もそれとなんら変わりはない。
背景情報
米国連邦議会は、2010年に成立した金融規制改革法の中で、証券取引委員会(SEC)が管轄する特定の企業に対して、取扱製品がコンゴ民主共和国や中央アフリカ、南スーダンなどからの紛争鉱物を使用しているか否かの開示を求めた。紛争鉱物は、これらの国々で活動する武装グループの重要な資金源になっていたためだ。同地域の平和と安全を進める手段として、同法の第1502条において開示が義務付けられた。開示に関する具体的な手続き等の規則はSECが策定し、2012年8月に採択された。
業界団体は、この採択に異議を申し立てた。団体側の言い分には、紛争鉱物開示規制により人道的状況がさらに悪化する、企業にとってメリットはない上に多大な経費がかかる、わずかな使用や外部委託企業への適用は不当だ、この規制は憲法に違反して開示を強要する、などだ。
2013年7月、連邦地方裁判所は業界団体の異議申し立てを退け、同規制を全面的に支持している。
アムネスティ国際ニュース
2014年1月6日
http://www.amnesty.or.jp/news/2014/0109_4396.html
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