01. 2013年11月11日 10:29:12
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JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 米国は簡単には中東の炎から逃れられない 2013年11月11日(Mon) Financial Times (2013年11月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 中東が燃えており、米国が出ていこうとしている――。この見解には誇張の要素があるが、1つの要素にすぎない。激しさを増す紛争と米国の関与縮小の力学は、相互に補強し合うようになった。炎が高く燃え上がるほど、米国政府は背を向けることに熱心になるようだ。 アラブ世界と太いパイプを持つ欧州のある元首脳は、特に米国、そして西側全般に対する地域の「反乱」について語る。 国連安全保障理事会にそっぽを向くことにしたサウジアラビアの決断――国際社会というより米国に向けた対応――は、こうした風向きを示す材料だ。もう1つの材料は、米国がイスラエルとパレスチナの和平協定の仲介を目指すなかで、アラブ諸国がパレスチナへの資金援助を渋ったことだ。 幻滅感はトルコにも広がった。トルコのアブドラ・ギュル大統領は先日、米国の決意の欠如のせいで、シリアがジハード(聖戦)の戦士の避難所、いわば地中海沿岸のアフガニスタンになってしまったと述べた。 アラブで飛び交う陰謀論 世界のこの地域は突飛な陰謀論の本場だ。ペルシャ湾岸のある英字紙は最近、スンニ派とシーア派の宗派抗争の炎を煽ることでアラブ諸国を弱体化させようとする、米国とイランの陰謀なるものについて報じた。これは空想の域を超えているのではないか? もちろん、そうだ。 だが、スンニ派のアラブ人の多くにとっては、疑いの余地があるということを筆者はバーレーンにいた数日間で学んだ。ある政府高官から聞いたところでは、広く飛び交うもう1つの噂は、イスラエルとイランの共謀を想定しているという。 米国はイランの核開発計画について同国と新たに協議を始めた。シリアの化学兵器廃棄に関する米国とロシアの取り決めは、シリアのバシャル・アル・アサド大統領が多数派であるスンニ派の国民を殺せるままにした。 イラクのヌリ・アル・マリキ首相(シーア派)はホワイトハウスに迎え入れられた。バラク・オバマ大統領の率いる米政権が今、宗派間の溝のシーア派側に立っていることを示す証拠はこれ以上必要か――。あやふやな態度を取る米国が残した空白を埋めているのは、こうした話題だ。 ここにある一縷の真実は、米国が実際に手を引くことを決めたことだ。オバマ大統領は、自分は米国の戦争を終わらせるために選ばれたのであって、新たな戦争を始めるために選ばれたわけではないと言う。 アジアへのピボット(旋回)は、たとえアラブの反乱によりぼやけたとしても、方向転換を示す最初の合図だった。アフガニスタンでの敗北を認めたこともそうだ。 ほかのところでは、関与の撤回が繰り返された。リビアのムアマル・カダフィ大佐を倒すうえでは後方から先導し、シリアでは、さんざん躊躇した末に軍事的関与をやめた。 中東でのリーダーシップを放棄した米国 こうした決断が1つの戦略にある程度発展したとすれば、それは国連総会でのオバマ大統領の演説で示されていた。大統領の演説はシリアでの出来事とワシントンの政府機関閉鎖の大混乱のなかで見落とされたが、歴史はこれを、米国が半世紀以上にわたる中東でのリーダーシップを放棄した瞬間として記録するかもしれない。 オバマ大統領はもちろん、そんな言い方をしたわけではない。大統領は、米国は中東地域における自国の核心的利益を守るために、軍事力を含む力の手段をすべて使うと述べた。こうした利益には、同盟国を外部からの侵略から守ること、米国に対する攻撃を目論むテロリストに立ち向かうこと、そしてエネルギーの自由な流れを保つことが含まれる。 米国の外交政策は今後も、イランが核兵器を確保するのを防ぐことと、イスラエルとパレスチナの和平を追求することに焦点をはっきり合わせるという。 だが、オバマ大統領は優先順位をつけるうえで、厳しい境界線を引いた。民主主義を広めることは米国の利益にかなうが、民主主義を押しつけることはできない。米国は各国の主権を尊重する。エジプトでは特定の立場を取らないし、シリアでの合意の条件を決めようともしない。 米国は、宗派間の紛争を部外者が解決することはできないことを理解している。リベラルな干渉主義は、厳しい現実主義に取って代わられた。米国は中東随一の大国の役割を、均衡を保つ外国勢力のそれと交換した。 オバマ大統領がいかにしてここに至ったかはお分かりだろう。イラク、エジプトでの独裁体制の崩壊とシリア情勢は、スンニ派とシーア派の深い溝を露呈させた。米国によるイラク侵攻が成功だったと主張する人はほとんどいないだろう。 リビアへの「軽度の介入」は、ジハードの戦士のサヘル移住を煽った。米国はエジプト情勢の展開を形作ることができず、ロシアはシリア内戦を利用して、地域における力を再び行使している。 西側諸国は中東に関して誇れる実績がなく、常にダブルスタンダードの批判に弱かった。そして今、近年の戦争のために血と財産であがなわれた代償は、自国の市民を守るという差し迫った対応を超えて行動する米国の意思を奪った。心では介入を支持する人たちでさえ、ただ西側を炎に引きずり込む結果にならない戦略を見つけるのに苦労する。 米国の方針転換、実践は説明より難しい とはいえ、筆者は、オバマ大統領は新しい取り組みを明確に示す方が実践するより簡単なことに気づくと見ている。イランのハサン・ロウハニ大統領との核交渉の最初の動きは有望だったが、それ以上ではない。もし米国政府とイラン政府が、イランに民生用原子力の利用を許しながら核爆弾の製造能力を与えない合意をまとめることに失敗すれば、中東ではすべてが白紙に戻る。 中東の分裂の中心にあるのは、サウジアラビアとイランの根深い憎悪だ。米国の抑止力がなければ、事態が手に負えなくなる可能性が十分にある。最初はイラク、次にリビアでの経験が様々なタイプの介入の危険を示しているのだとすれば、シリアは何もしないことに伴う大変な危険を明らかにした。 先月、安全保障問題担当でオバマ大統領の補佐官を務めるスーザン・ライス氏はニューヨーク・タイムズ紙に対し、米国の政策転換をもたらしたのは、米国は「どれほど重要であろうとも、1つの地域に常時かかりきりになるわけにはいかない」という確信だと述べた。これは極めて妥当な意見に思える。また、筆者の見るところ、現実的な政治以上に希望に負うところが大きい意見でもある。 By Philip Stephens
[12削除理由]:無関係な長文多数 |