http://www.asyura2.com/13/warb11/msg/881.html
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「シリア化学兵器問題の裏」という見出しなので期待して読んだが、期待はずれだった。
今回のシリア化学兵器問題は、“非人道的な大量破壊兵器”である化学兵器をどの勢力が使ったのかであり、一般市民向けに化学兵器を使ったことを見過ごすことはできず“懲罰”を与えることであった。
シリア政府が化学兵器を保有していることはイスラエルが核兵器を保有していることと同じように“衆知の事実”である。保有が問題なら、行使の前に破棄を迫ることもできた。
“化学兵器使用懲罰”問題が、いつの間にか、シリア保有の化学兵器廃棄問題にすり替わってしまった。
イスラエルが核兵器を保有している事実に照らせば、それほどの対抗力になるとは思わないが、シリアの化学兵器保有は“自衛ないし対抗措置”と言えるだろう。
フランスや米国の支配層によって地位が保証されているシリアのアサド政権は、日本のメディアから醸成されるイメージと違い、反イスラエルでも反米でもない。ハマス支持やヒズボラ支持を表明するのは、反イスラエルの目的というより、アラブ世界のみならイランからの敵対的な対応を“予防”する(身を守る)ためである。
イスラエルのモサド元長官エフレイム・ハレヴィは、「ダマスカスのイスラエル人」と呼ぶほどアサド大統領を評価している。
イスラエルは、シリアを他の政治勢力が支配するよりアサド体制のほうがより少ない“悪”と受け止め、イスラエル国境の安全保障をともに担う勢力とみなしていた。
日経新聞の高坂編集委員が「ロシアとシリアがつくる事実上の「化学兵器共同体」を米国が締めあげ、遂に降参させたという構図」という説を持ち出すのなら、シリア内戦が始まる11年までアサド政権に化学兵器の原料を大量に売却していたのが、米国の重要な同盟国であるドイツの企業という事実も報じなければバランスが悪すぎるといえる。
(ドイツのZDFニュースは、この問題を二度ほど取り上げたが、企業名も輸出量も具体的には触れず、“肥料の原料”として使われると思い込んで輸出を続けたという言い訳を流していた)
「化学兵器廃棄」が行われても、米国などが化学兵器をネタにシリアの政権にイチャモンをつけることはいくらでも可能だが、アサド政権が化学兵器の放棄に同意した事態を受けて、アサド政権の寿命は、それほど長くないという思いを抱いた。
イスラエルにとって好ましい(よりましな)アサド政権が化学兵器を保有していることはぎりぎり認められても、スンニ派など他の政治勢力がシリアを支配するようになったとき化学兵器が残されていることはいやだからである。
シリアの化学兵器廃棄は、アサド政権崩壊の準備だと考えたほうが理に叶うと思う。
※ 参照投稿
「上院[条件付き容認]下院[反対]の可能性が高いオバマ政権の対アサド政権武力行使の選択肢:せいぜい限定空爆」
http://www.asyura2.com/13/warb11/msg/665.html
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敗れたのはロシア シリア化学兵器問題の裏
編集委員 高坂哲郎
2013/10/24 7:00
高坂哲郎(こうさか・てつろう) 90年日本経済新聞社入社。国際部、政治部、証券部、ウィーン支局を経て11年国際部編集委員。専門分野は安全保障、危機管理、インテリジェンスなど。
内戦化のシリアで化学兵器の解体作業が進んでいる。8月にシリア軍によるとされる大規模な化学兵器攻撃が確認され、米国のオバマ政権が制裁のため武力行使の構えを見せたが、シリアのアサド政権が化学兵器放棄を表明。武力衝突の回避は、仲介したロシアの外交的勝利ともいわれた。しかし、公開情報やインテリジェンス(情報)関係者らの証言をつなぎ合わせていくと、ロシアとシリアがつくる事実上の「化学兵器共同体」を米国が締めあげ、遂に降参させたという構図が見えてくる。
■事実上シリアに化学兵器開発を代行させたロシア
「シリアからロシア製の化学兵器が見つかっても私はまったく驚かない」――。昨年9月28日にネット上でこう語ったのは、旧ソ連とロシアの化学兵器研究機関で26年間働き、今は亡命先の米国で暮らすフィル・ミルザヤノフ氏だ。同氏によると、シリアは冷戦時代から自国軍人を旧ソ連の軍化学アカデミーなどに留学させて化学戦の技法を習得。冷戦後もロシアはシリアの化学兵器研究機関に物資や機材を提供していた。「1997年の化学兵器禁止条約の発効後、ロシアは事実上シリアに化学兵器開発を代行させてきた」(国際軍事情報筋)
米国のオバマ政権もそうした状況を熟知し、ロシアに対し、シリアとの化学兵器協力を手じまいするよう今年春ごろから強く迫っていたが、ロシアの腰は重かった。
オバマ政権は並行して、シリアの隣国ヨルダンなどに中央情報局(CIA)要員や海兵隊を送り、シリア軍の部隊の動向を探るなど攻撃準備を進めた。8月から9月初旬にかけて、米欧の一般紙や軍事専門誌に「米軍のシリア攻撃の規模は予想以上に大きそうだ」「米軍は化学兵器保管庫を攻撃しても有毒ガスの流出を抑えられるADWという新兵器を開発した」など、シリアやロシアを心理的に揺さぶる記事が相次いで出た。
シリアが化学兵器放棄を表明したのはその後間もなくだった。仮に攻撃があればシリアとの化学兵器協力が明らかになり、ロシアはメンツを失っていた。「今、ロシアはシリアでの活動の痕跡を消すため関連物資の運び出しを急いでいる」と別の国際情報筋は語る。
■オバマ流のステルス軍事作戦
長年続いてきたロシアとシリアの化学兵器共同体を一発のミサイルも撃たずに解体に追い込んだオバマ氏の手法はなかなかにしたたかだ。2011年に国際テロ組織アルカイダのビン・ラディン容疑者を発見・殺害したように、大規模な軍部隊は投入せず、情報機関や特殊部隊を静かに動かして目的を達成する「ステルス(見えにくい)軍事作戦」がオバマ流なのだ。
オバマ政権が先に武力行使断念を発表し、その後でシリアが化学兵器放棄を公表する順になったため「ロシアの仲介外交が成功した」という印象を与えた。オバマ氏がロシアとシリアの化学兵器協力の詳細を暴露せず、あえてロシアに花を持たせたのはなぜか。
実は2014年末のアフガニスタン撤退を控える米軍の最大の問題は、軍事作戦開始以降12年間に積み上がった膨大な軍の装備品(車両だけでも5万台以上)をいかに米国に戻すかなのだという。パキスタン経由の南ルートは問題が多く、中央アジア諸国とロシアを経由した北ルートを活用したい。「核なき世界」を掲げてノーベル平和賞を受賞し、任期8年間の集大成として2016年に米国で再度「核セキュリティー・サミット」の開催を目指すオバマ氏としては、ロシアとの新たな合意で戦術核兵器などの削減も達成したい。いずれにしても、米国嫌いで有名なプーチン大統領との関係を少しでも良くしておくに越したことはないのだ。
シリア化学兵器問題をめぐっては、ロシアは「勝者」からほど遠く、米国が「敗者」になったわけでもない。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2201U_S3A021C1000000/?n_cid=DSTPCS001
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