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イランとの核交渉:最善の取引vs悪くない取引
2013年10月24日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年10月19日号)
厳しい制限付きでイランにウラン濃縮を認める取引は、全く取引がないよりマシだ。
イラン核開発問題、11月に再協議 抜き打ち検査も容認
10月16日、スイス・ジュネーブで2日間の日程で行われたイランの核開発問題を巡る協議終了後の記者会見を終え、車椅子で記者会見場を後にするイランのモハマド・ジャバド・ザリフ外相〔AFPBB News〕
イランの核開発計画を巡る10月半ばの交渉に対する順当な反応は、軽い楽観主義だ。突破口は開かれなかったが、協議の雰囲気は、来年何らかの取引が成立するとの期待を抱かせるくらいに良好だった。
特に、信頼醸成措置から始まり、包括的な取り決めで終わる「ロードマップ」を作成するというイランのモハマド・ジャバド・ザリフ外相の提案は、予想以上に詳細に渡っていた。
交渉チーム――一方にイラン、他方に国連安保理常任理事国5カ国とドイツがいる――は今、他方が何を望み、超えてはならない一線がどこに引かれているのかを理解している。
彼らはまた、これが世界で最も危険な論争の1つに対する外交的解決の最後のチャンスかもしれないことも分かっている。問題は、イランが受け入れるような、行うだけの価値がある取引があるかどうかだ。
イランは「クリティカル・ケイパビリティー」――国際原子力機関(IAEA)の査察官に探知されることなく、少なくとも1個か2個の核兵器に相当する高濃縮ウランを製造できる段階――として知られるところに近づいている(一部の推定では3カ月から9カ月以内とされる)。
だからと言って、イランの指導者たちが必ず核兵器を保有するという重大な決断を下すわけではないが、極めて短期間で製造できるという事実が西側諸国と特にイスラエルを怖がらせている。
一方、過去2年間着実に強化されてきた西側の制裁措置は、すでに脆弱なイラン経済に大打撃を与えている。イラン経済は過去1年で約6%縮小し、通貨リアルは2012年1月から50%以上下落している。インフレ率は40%に上り、失業率は30%近い。
6月の大統領選でハサン・ロウハニ師(最も穏健派の候補)が圧勝したことや、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師がロウハニ大統領に与えたと見られる、取引を成立させよとの指令は、制裁による痛みがもたらした直接的な結果だ。
良い選択肢はない
だが、双方が今、取引を望んでいるという事実は、合意成立が容易であることを意味するわけではない。
イランの指導者たちが主張するように同国の核開発計画が完全に平和目的であるならば、ことは簡単だ。だが、たとえイランが核兵器を欲しがっていないとしても、間違いなく核兵器を製造する能力は得ようとしている。数十年に及ぶ努力と犠牲の後では、国の経済見通しがいかに厳しいものであれ、イランがそれを完全に廃棄することはないだろう。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相や米国議会の多くの議員は、行う価値のある唯一の取引は、ウラン濃縮の能力を含め、イランの核開発計画のあらゆる部分を永遠に廃棄するものだと主張している。だが、そのような取引は決して実現しない。
イランは、核拡散防止条約(イランは脱退していない)の条件の下で濃縮する「権利」と同国が呼ぶものを交渉の余地がないものと見なしている。西側6カ国はすでに、その権利を暗黙のうちに認めている。
イランにウラン濃縮の継続を認めるのは理想的ではない。だが、存在する選択肢は、良いものか悪いものではなく、悪いものとそれほど悪くないもののどちらかだ。1つの悪い選択肢は、協議を停止し、イランが核保有国あるいは核敷居国であることを受け入れ、封じ込めが奏功し、この不安定な地域での核兵器開発競争を防げると期待することだ。
イスラエルの多くの人が支持するもう1つの選択肢は、(効果という意味で)あらゆる不確実性と潜在的に悲惨な結末が考えられる中で、米国が軍事攻撃を実行することだ。
「さほど悪くない取引」
交渉は、少なくともそれよりマシな何かを期待させてくれる。イランは今ある濃縮能力の一部を保持するが、それにはイランの核開発計画に対する厳格な制限とはるかに厳しい査察体制が伴う。これによって、イランはすぐに、あるいは密かに核兵器を製造できないようになるはずだ。
このような選択肢であれば、イランに遠心分離機の数を民生核開発計画と同じ水準まで減らし、山中の地下深くに埋められたフォルドウのウラン濃縮施設を閉鎖し、民生原子炉を動かすのに必要な3.5%の水準を超える濃縮を停止し、今ある20%の濃縮ウランの備蓄を別の国に移すか原子炉燃料に転換するかし、近い将来プルトニウムを使った核爆弾への別のルートを提供するアラクの重水炉を稼働停止にする必要が出てくる。
条件の順守を確実にするためには、イランは、より踏み込んだ査察を可能にするIAEAの追加議定書を完全に実施することに同意しなければならない。その見返りに、イランは制裁を徐々に緩和してもらい、疲弊した経済を立て直せるようになる。
このような合意を得るのは難しく、完全と呼べるものにはまだ程遠い。これでは、イランが将来どこかの時点で、やはり核兵器が欲しいと決めるのを止めることができない。だが、そのような決断は今よりはるかにコストの高いものになり、実行するのが難しくなるだろう。
イランの核開発計画に関する「それほど悪くない取引」が成立すれば、長く苦しむイランの人々を少しだけ幸せにし、イスラエルを含む世界を少しだけ安全にするだろう。そのような取引を鼻であしらうべきではない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38997
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