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北朝鮮の崩壊に備えよ、
米国の研究機関が警報
米中が北朝鮮で全面戦闘の可能性も
2013年10月16日(Wed) 古森 義久
北朝鮮の金政権の崩壊の確率が高くなってきた。このため米国と韓国は北朝鮮への軍事介入を前提とする人道的援助、北の大量破壊兵器の確保あるいは破棄、中国の軍事介入の可能性への対応などを、現実に起こり得る展望として準備し始めなければならない――。
このような予測と提言が米国の大手研究機関「ランド研究所」から発表された。北朝鮮政権が崩壊する過程では大規模な軍事衝突も予測され、日本も直接的な影響を受ける可能性があるというのだ。
金正恩が暗殺される可能性
カリフォルニア州に本部、ワシントンに支部を構えるランド研究所は、長年、国防総省から研究を委託されてきたことなどで知られ、軍事や戦略の調査、分析で高い評価を受けてきた。
そのランド研究所がこの10月に「北朝鮮崩壊の可能性に備える」と題する研究報告を公表した。合計340ページに上るこの報告は、朝鮮半島の安全保障などを専門とするブルース・ベネット研究員らを主体に作成された。
同報告でまず注視されるのは、「(北朝鮮の金正恩政権が)今後数カ月、あるいは数年のうちに崩壊する確率がかなり高い」という大前提を打ち出し、「その崩壊は実際に起きるか否かではなく、いつ起きるかを考えるべきだ」と断じている点だろう。より具体的には、同報告は「金正恩が暗殺され、党や軍が内部分裂して内戦となる可能性」を挙げていた。
ただし米国では、北朝鮮の国家や政府の崩壊は1990年代から何度も予測はされてきた。例えば1994年に北朝鮮の核兵器開発が確認され、その動きを阻止するための米朝枠組み合意が成立したときも、米側ではすでに「北朝鮮政権はやがて必ず崩壊するから、北への一時的な譲歩も問題はない」とする意見があった。
その点、今回のランド報告は、つい最近まで在韓米軍司令官を務めていたウォルター・シャープ将軍の公開の場での証言を指針の1つとして提示していた。その証言とは以下のようなものである。
「北朝鮮では破滅的な中央統制経済、老朽化した工業セクター、欠陥だらけの農業基盤、栄養不良の軍人や国民、そして核兵器開発プログラムを強行に推進することなどにより、最高指導部の突然の激変はいつ起きても不思議はない。またそうなった場合の混乱は想像を超えるだろう」
北朝鮮国民への人道的援助が必要に
今回のランド研究所の報告は、北朝鮮政権崩壊までの実際のシナリオを詳述することよりも、崩壊という事態が起きた際に、米国政府が韓国政府の協力を得てどのように対処すべきか、そのためにどんな準備をしておくべきかの考察に重点を置いていた。
米国や韓国が北朝鮮崩壊という非常事態に適切に対処しないと、朝鮮半島だけでなく中国や日本をも巻き込んで東アジア全体での重大な混乱が生じ、さらには危機を招くこととなる、という警告も強調していた。
同報告の骨子を紹介しよう。
【北朝鮮の独裁政権が、予見しうる将来、終焉を迎えるという展望はかなり確率が高い。その場合に起きうる事態は以下となる】
・北朝鮮がいくつかの派閥勢力に分かれ、内戦が起きる。その内戦は周辺諸国に飛び火しうる。日本や米国でさえも北朝鮮による大量破壊兵器の使用やテロ攻撃の標的になりうる。
・北朝鮮の既存の大量破壊兵器が実際に使われる。あるいは他の第三者に売られる。
・内戦による混乱の結果、食糧、医薬品、その他の必需品の不足が深刻となり、1990年代半ばの飢餓よりも大規模な人道的被害が生じる。
・大量の難民が北朝鮮から中国や韓国に流入し、非常に不安定な状況を引き起こす。
・以上のような事態は中国の北朝鮮への軍事介入をもたらし、韓国軍や米軍との偶発的な衝突を含む戦闘を起こしかねない。
【韓国や米国が北朝鮮に軍事介入し、やがては南北統一を目指す。その過程で起きる事態や配慮すべき点は以下となる】
・米韓軍が北朝鮮へ介入する際は、人道的援助を提供し、内戦を止め、北の軍隊や治安機関を非武装化することを当面の目標とすべきである。同時に北の核兵器など大量破壊兵器を確保し、政治犯を解放することも重要目的となる。
【米韓軍の北朝鮮への介入に必要な事前の計画や準備は以下となる】
・韓国軍は今後の規模縮小が決まっているが、その計画を再検討する。
・米韓両国政府は北朝鮮への大量の人道的援助が必要となるため、その事前の備蓄や組織編制が不可欠となる。
・他の諸国、特に中国との調整が必要となる。
【提案】
・韓国と米国の政府は、米韓を敵と断じる北朝鮮政府の長年のプロパガンダに洗脳された国民一般へ正しい情報を提供する。国民が統一の展望を受け入れやすいように再教育をする。
・米韓側は北朝鮮での人道的援助の供与、選別的な恩赦、財産権などについての一貫した政策を北朝鮮国民に敏速に提示する。
・米韓側は大量の人道的援助を北朝鮮全域に敏速かつ均等に与える。すべての介入は援助を伴うようにする。
・北朝鮮の政権崩壊後に北の内部で起きる軍事衝突は韓国や中国に波及する可能性が高い。そのため、米韓側はその北の内部での衝突の停戦を即時に実現させ、北の武装勢力との直接的な戦闘を極力避ける。
・米韓側は北朝鮮の治安当局とできるだけ速やかに折衝し、すべての政治犯を無事に解放することに努める。北の治安当局は、内戦のような混乱の中で政治犯を大量かつ一気に処刑してしまう危険もあるため、そうした惨事を避けることに全力を注ぐ。
以上がランド報告の枢要部分である。
政権崩壊時に拉致被害者はどうなるのか
ここでまず重大な懸念材料となるのは、中国の軍事行動だろう。
同報告は、北朝鮮政権崩壊の場合に中国が人民解放軍を送って軍事介入することの公算が大きいとしている。中国としては、自国領内への大量の北朝鮮難民の流入、自国領隣接地域での米軍の軍事行動、北の大量破壊兵器の帰趨などへの懸念があるためだ。
その場合、米韓軍が中国軍との正面衝突を避けるために、政治や外交のあらゆる手段を講じるべきだと強調している。
しかし同報告は同時に、北朝鮮を舞台とする米中両軍の全面戦闘も最悪のシナリオとして起こりうると述べていた。
北朝鮮政権の崩壊というのは、もちろん日本にとっても国家安全保障の基本を揺さぶる重大事件であり、同報告が特別の注意を向ける北朝鮮の政治犯の扱いに関連して、日本人拉致被害者への影響も当然気にかかるところである。
金政権の崩壊時に、日本人の拉致被害者はどうなるのか。政治犯の扱いをされていないことは確実だろうが、北の治安当局の監視下にあることは間違いない。その治安当局が自分たちの政権が倒れるとなった際、拉致被害者をどう扱うのか。日本側としては危機管理のシミュレーションをも含めて、取り組んでおくべき課題だろう。
長い東西冷戦の期間中、ソ連の共産党政権が完全に崩壊してしまうとは誰も予測できなかった。だが現実にはそんな予想外の出来事が起きてしまった。北朝鮮の金独裁政権の命運についても、最も控えめに見ても予断は許されないのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38931
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