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9月30日、冷戦終結後に世界の大国は海軍の予算を大きく減らしてきたが、ここにきて、海軍力増強が再び熱を帯びている。写真は米国のミサイル駆逐艦。2010年12月撮影。米海軍提供(2013年 ロイター)
焦点:「海軍力増強」が世界的潮流に、中国台頭で加速
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20131005-00000036-biz_reut-nb
ロイター 2013/10/5 08:59
[ロンドン 30日 ロイター] - 冷戦終結後に世界の大国は海軍の予算を大きく減らしてきたが、ここにきて、海軍力増強が再び熱を帯びている。その背景には、海洋進出の動きを強める中国への警戒心や、シリアなど紛争地域への地上部隊派兵を渋る西側諸国の思惑がある。
海軍力への関心の高まりは、米政府内部やアフリカ沖の海賊掃討作戦の現場、アジアの造船所でも感じることができる。
ゲイリー・ラフヘッド元米海軍大将は「影響力を及ぼすための水上戦力の使用は一層重視されるようになる」と指摘。2011年に退役し、現在はスタンフォード大学フーバー研究所で客員研究員を務めるラフヘッド氏は「シリアがある地中海のほか、太平洋や中東でも(水上戦力重視は)みられる」と述べた。
インドは8月、同国初となる国産空母の進水式を行った。米国がジェラルド・R・フォード級空母2隻、英国も空母2隻の建造を進めているほか、中国も初の国産空母の完成を目指しており、向こう10年で世界の海には新たに10隻を超える空母が登場するとみられる。
米国を拠点とする調査会社AMIインターナショナルの推計によれば、今後20年間で海軍に使われる予算は、世界全体で総額8000億ドル(約78兆2500億円)前後になる見通し。そのうち4分の1を占めるのは、緊縮財政の欧州を抜き、海軍支出額で北米に次ぐ世界第2位の規模になったアジアだという。
米国防総省が4月に発表した2014年度の国防予算案では、海軍は陸軍と空軍より多い額を割り当てられた。国防総省が要求する海軍予算は1550億ドルで、国防費全体の約30%に相当する。
米軍は現在、中国人民解放軍(PLA)の海軍の動きをにらみつつ、艦船を大西洋から太平洋に移しつつある。中国海軍は、同国の国防費が毎年2ケタの伸びを続ける最大の要因とみられている。
中国国防省は昨年9月、ウクライナから購入して改修した空母「遼寧」を海軍部隊に正式配備したと発表。同空母以外にも、中国海軍は潜水艦や哨戒艇などの建造を進めている。
今年9月には、国有企業の中国船舶重工<601989.SS>が、私募形式での株式発行で14億ドルを調達する計画を発表した。資金は軍艦製造設備の購入などに使われる予定だが、中国が軍拡に向けて株式市場での資金調達に初めて踏み出すケースとなる。
<米歳出削減が落とす影>
中国の周辺国、とりわけ同国と領有権問題をめぐって対立している国は、こうした動きに神経をとがらせており、レーダーやミサイルなど防衛設備の性能向上を図っている。
尖閣諸島(中国名:釣魚島)問題で中国との緊張感が高まる日本の防衛費は来年、過去22年で最大の伸びとなる見通し。オーストラリアも新たな攻撃艦導入など海軍力増強を進めており、ベトナムはロシアから潜水艦を購入する。
南シナ海のスカボロー礁(中国名:黄岩島)の領有権をめぐり中国と対立するフィリピンも軍備増強に動いている。米沿岸警備隊で使われていた巡視船2隻を配備したほか、日本からは巡視艇10隻の供与を受け、フランスからは中古の哨戒艇を購入する。
西側諸国の多くで軍事予算の削減圧力が強まる中、欧米の防衛企業にとっては、こうしたアジアの軍拡が商機となっており、英BAEシステムズ<BAES.L>がタイと巡視船を建造しているほか、比較的小規模な軍需企業も電子機器などの納入で競っている。
海からの攻撃能力では、ニミッツ級原子力空母10隻を擁する米海軍が依然として他を寄せ付けない陣容を誇る。シリア沖では、同国の化学兵器廃棄をめぐる外交交渉が不備に終わった場合の軍事介入に備え、米海軍の駆逐艦5隻と潜水艦が待機している。
ただ、米政府の予算が自動的にカットされる「強制歳出削減」が今後10年にわたって続けば、米海軍の空母11隻のうち最大3隻が運航停止になる可能性があり、大幅な戦力縮小は避けられないとみられる。
複数の関係筋によると、歳出削減はすでに、空母建造プロジェクトの遅延などでハンティントン・インガルス<HI.N>など米造船大手に影響を及ぼしている。
ペルシャ湾では、米海軍が常駐空母を2隻から1隻に減らした一方、イランが高速小型船団の動きを活発化させており、それに神経をとがらせるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が巡視艇の購入や建造を急いでいる。サウジ政府は7月、米ミシシッピ州の非上場企業ハルター・マリーンに対し、特殊部隊用巡視艇30隻(12億ドル相当)の購入を打診した。
欧州各国の海軍も、艦船数こそ少ないが実力は維持している。スペイン、フランス、イタリアはいずれも2000年以降に空母を新たに建造しており、仏伊両国は2011年のリビア軍事介入でも空母を多用した。
英国は現在、同国海軍史上最大の空母「クイーン・エリザベス」を建造しており、2022年までに海軍予算は国防費全体の46%を占めるまでに増える見通し。英海軍を率いるジョージ・ザンベラス第1海軍卿は、ロンドンで開催された国際武器見本市で「海のルネサンスを意味することにほかならない。海軍は戻ってきた」と語った。
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