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ラブロフ露外相「国連安保理決議案においては、如何なる口実をもってしても軍事介入を認められない」 ロシアトゥデイ
http://www.asyura2.com/13/warb11/msg/814.html
投稿者 長間敏 日時 2013 年 9 月 30 日 06:45:48: 2ZipGG.4HfBgM
 

9月28日 ロシアトゥデイ
ラブロフ外相 安保理決議採択後のインタビュー
http://rt.com/news/syria-resolution-force-lavrov-485/

ロシアはシリア問題の国連安保理決議に関しては、あくまで化学禁止条約機関の専門家が主体となってその任務を遂行し、(第三者の)いかなる口実をもってしても軍事介入は許されない、とラブロフ外相はチャンネル1で述べた。

ロシアテレビのインタビューのなかで、ラブロフは、ロシアとアメリカの決議案への一致は簡単ではなかったと認めた。

しかし、安保理決議案は、化学兵器禁止条約機関(OPCW)による文書を踏襲したもので、9月14日の(ラブロフ・ケリー会談の)米ロの基本合意の枠内で決着させるというロシアの目指していた目標を達成した。

決議案を貫く原理原則は、国際管理の下、シリアが保有する化学兵器の廃棄の主導的役割を担うのは、あくまで化学兵器禁止条約機構の専門家であり、その使命は、国連の協力と保護の下で、達成されるべきである。とラブロフは述べた。

(採択された決議案)文書によると、シリア政府と反政府側の両方が、(化学兵器禁止条約機関の)査察官の安全の侵害に対して責任を負う、とラブロフは強調した。

ラブロフ外相は、決議案では、シリア政府か反政府軍のどちらかが違反した場合に採択されるべき「新たな決議」を経ずしてシリアに対して軍事行動を起こした場合は、決議違反となると繰り返した念をおした。

さらに、決議案ではいかなる「口実や抜け穴」をもってしても軍事介入は許されておらず、「リビアに起こったこと(*1)」と我々の交渉相手(米仏英)の安保理決議案への解釈の「範疇」を考慮に入れたものであると、ロシアは確認している。

決議案では国連憲章第7章に基づく軍事介入は許されていない。よって、決議案を根拠としたシリアへの軍事行動の可能性は言うまでも無く許されない。

西側諸国の主張とは逆に、ロシアは、反政府軍は、化学兵器を配備する能力を保持し、実際保有しているということを繰り返し主張してきた。

ラバロフによると、反政府軍が、化学兵器やその部品を彼らが入手しようとするいかなる手段も、将来彼らがそれを使用する可能性が大きく、決議違反であると、ロシアは主張してきた。

3月19日アレッポ市近郊での攻撃で使用されたサリン兵器は手製によるものであるということを、ロシアの専門的方法によって裏付けた。それについてのロシアの報告書は安保理理事国に配布され、公開され入手可能である、とラブロフは述べた。さらに8月21日にグータ市での攻撃に使用されたサリンの成分も(アレッポのものと)ほとんど同一成分であったという情報を入手していると付け加えた。

*1 国連決議を踏みはずしたNATOと米国によるリビアへの軍事介入
http://democracynow.jp/video/20110419-3
 

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コメント
 
01. 2013年9月30日 12:12:07 : eKez8SYcAU
如何なる口実をもってしても軍事介入は認められない。

口実→子どもたちの命を守る。
実際は子どもから母親から老人から無差別に殺戮しつくす。

口実→世界平和のために。
実際は世界中に恐怖と不安と憎悪をばらまいている。

口実→米国が力で巨悪を粉砕しなければ巨悪はなくならない。
実際は米国が力で小国に独裁者の虚像をつくりあげその虚像を壊しにゆくという大儀名分。
ほとんど精神病サイコの状態。


02. 2013年9月30日 18:50:56 : niiL5nr8dQ
2013年 9月 30日 17:50 JST
シリア内戦めぐる動画戦争−クリック1つで戦闘現場に

By MELIK KAYLAN
 ある動画では、ジーンズとフード付きのスエットシャツを着た2人の男がロケットチューブを屋根に持ち出し、点火している。別のアングルからは、シリア軍戦車が3台連なっているのが見える。真ん中の戦車に砲弾が命中し、一面オレンジ色の炎に包まれ、燃え上がっている。男がタンクから飛び出し、銃弾が地面を飛び交う中を走り回っている。

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Syria Baynetna/YouTube
9月にユーチューブに投稿された動画のスクリーンショット
 別の動画は、バスや歩行者でいっぱいのにぎやかな道路で始まっている。歩行者の中には兵士と見られる人物もいる。1台のバスが突然爆発し、数十人の人々が倒れている。動画の撮影者は「Allahu akbar(アッラーは偉大なり)」と繰り返し叫び、イスラム過激派ヌスラ戦線のメンバーだと主張している。

 携帯電話カメラとソーシャルメディアという、これまでにない2つのテクノロジーの融合で、動画を瞬時にネットに投稿できるようになり、新たな現象が生まれている。ユーチューブ戦争だ。史上初めて、世界の人々が自宅のソファに座りながらシリア内戦の映像をほぼリアルタイムで視聴できるようになっている。

 ユーチューブの公式な数字によると、2012年1月以降、100万を超える動画が投稿され、再生回数は現在までに数億回を超えている。同社は非常に生々しい映像でもニュース志向の動画は削除しない方針だが、時折注意書きを付けている。しかし、バスの爆破や銃撃戦、流血や惨劇の生々しい場面、尋問や処刑、戦車やスナイパーによる殺害などの凄惨(せいさん)なシーンに満ちた実際の戦闘現場の様子が、今やクリック1つで見ることができるようになっている。

 動画はシリア内戦にかかわるあらゆる勢力から投稿されている。それは出来事を記録し、それに影響を及ぼそうとするソーシャルメディアの一面を表している。徴兵されるのを避けるため、先月米国にいる家族のもとに移り住んだドキュメンタリー映画を制作する若きシリア人、ハッサンさん(身元が特定されないようここでは仮名を使用)は、「親アサド派も反アサド派も実質ほぼ全ての近隣住民が、起こった事を記録し、処理するメディアセンターを持っている。多くは外部からの資金援助や国の助成金で海外にトレーニングを受けに行っている」と話す。

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islamtv001/YouTube
7月にユーチューブに投稿された動画のスクリーンショット
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SNN Shaam English News/YouTube
2月にユーチューブに投稿された動画のスクリーンショット
 ユーチューブでは、アラビア語が分からない人でも映像のバイアスを読み取ることができる。反アサド派のコンテンツには往々にして英語でキャプションが付けられ、シリア自由軍の成果が大々的に宣伝されている。アサド政権軍の成果に関する動画は「Syrian Arab Army(シリアアラブ軍)」という見出しで分類されている。イランが支援する民兵組織ヒズボラを含むユニホーム姿の軍隊は多くの場合、親アサド派だ。ヌスラ戦線や「イラクとシャムのイスラム国家(ISIS)」をはじめとするアルカイダ系の反政府勢力は定型化されたアラビア書体のロゴを使用している(明らかに完成したグラフィックデザインを外注できるほど余裕があるということだ)。ハッサンさんらによると、どの戦闘勢力も今は専任のプロに近いカメラマンを帯同させているという。

 しかし、プロパガンダの専門知識を駆使しているにもかかわらず、動画は往々にして不可解なほど冷淡あるいは不快に見える。親アサド派のチャンネル「SyriaTube」は、反政府勢力メンバーが撃たれて倒れ、死んでいく場面をクローズアップした映像を、マカロニウエスタンののんきな音楽と「Bye Bye」という大きな文字付きで投稿している。制作者はその組み合わせに何の不自然さも残虐さも感じていないようだ。

 また、もとは反政府勢力メンバーが自分たちの仲間が撃たれた様子を撮影したとみられる動画もあり、それを親アサド派がどのように入手したかも疑問がわく。これについて、ハッサンさんは、それは捕虜や死亡した反政府勢力メンバーから入手したものだとし、「両サイドとも最初にするのが携帯電話やカメラを探すことだ」と説明した。

 反政府勢力側の動画も、「Allahu akbar」と繰り返し叫ぶ様子がやはり同じくらい野蛮な印象を与える。仲間の死や戦車の破壊、捕虜の処刑、無実の人々の殺害、敵に向けたロケットの発射など、あらゆる場面で見境なくその言葉を発している。まるで、死者の魂に慈悲を求める祈りと同様に、彼らの残虐行為も神が取り仕切りっていると言わんばかりだ。

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Truthloader/YouTube
ユーチューブに投稿された動画のスクリーンショット
 同地域で数年働く中東の衛星テレビ局アルジャジーラの編集者(本人の希望により匿名)は、内戦の初期の動画はそのような熱い信仰心を強調したものではなかったと話す。「ある時点から、戦闘員は特に湾岸やサウジアラビアの資金源にアピールする映像を制作し始めた」と述べ、今では「カメラのために任務を遂行するようになり、それを資金支援者に持ち帰っては『あなたの5万ドルで、これだけの成果があった。50万ドルあれば、基地全体をたたきのめすことができる』などと売り込むようになっている」と説明した。

 戦争現場の動画の使用や誤使用、ひいては制作者の手元を離れた2次的、3次的使用は、われわれが将来の戦争で必ず直面する問題だ。シリアの経験からわれわれはどのような手がかりを得られるのだろうか。中東諸国でコンサルタントとして働くアラブ系米国人、ハザミ・バルマダ氏は「動画の共有のされ方や動画を取り巻くソーシャルメディアのコメントもコンテンツと同じくらい重要だ。この地域の人々はそうしたことに全面的にかかわっている。そこには2種類の紛争がある。現実の戦争とデジタル戦争だ。デジタル戦争はそれをグローバル化する」と話す。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304827404579106683688391494.html?mod=WSJJP_hpp_LEFTTopStoriesFirst


03. 2013年10月02日 01:05:46 : niiL5nr8dQ
アルカイダの復活
大きく変わる国際テロの様相
2013年10月01日(Tue) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年9月28日号)

西側諸国は、聖戦主義者のテロとの戦いに勝利を収めつつあると考えていた。その考えは改めるべきだ。

シリア政府支持者を処刑する武装組織の映像、人権監視団が公開
アルカイダ系の聖戦主義者のテロリストは、減るどころか、むしろ増えている〔AFPBB News〕

 数カ月前、バラク・オバマ大統領は、アルカイダが「敗北への途上にある」と明言した。生き残っているメンバーは、西側諸国に対するテロ計画を練るよりも、自らの身の安全に気をとられていると、オバマ大統領は語った。

 今後のテロ攻撃は、1990年代のそれと似たものになる――すなわち、国際的ではなく地域的に限られたものになり、警備の甘いいわゆる「ソフトターゲット」を標的にするようになるだろう、というのが大統領の主張だ。

 その主張を要約すれば、ジョージ・ブッシュ前大統領が始めた国際テロとの戦いを、そろそろ縮小してもいいころだ、ということになる。

 ソマリアのアルカイダ系武装勢力シャバブが起こした、ケニアの首都ナイロビのウエストゲート・ショッピングモールの襲撃事件は、オバマ大統領の主張通りのテロと言えるかもしれない。多くの命が失われたショッキングな攻撃ではあるものの、米国からは遠く隔たっている。

 だが、そこには不都合な真実が存在する。アルカイダとその聖戦の同盟者たちは、徹底的に痛めつけられ、数々の敗北を喫してきたにもかかわらず、ここ1年半で、目覚ましい復活を見せているのだ。

 今やテロ組織のネットワークは、25年にわたる歴史の中で例を見ないほど支配地域を広げ、多くの戦闘員を集めるようになっている。オバマ大統領は考えを改めなければならない。

死に体からの復活

 状況は2年前と全く異なって見える。2011年のウサマ・ビンラディン殺害以前から、パキスタンの北ワジリスタン地域のアフガン国境近くに潜伏していたアルカイダの中央指導部は、絶体絶命の窮地に追いこまれていた。無人航空機の攻撃により空洞化され、テロ組織ネットワークに属するほかの組織と連絡を取るにも、大きなリスクと困難を伴うほどだった。

 西側諸国への攻撃という点で最も力のあった組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」は、無人機により激しく攻撃され、イエメン軍に苦しめられていた。シャバブもソマリアで同様に追いつめられ、西側が支援するアフリカ連合の部隊により主要都市から追い出されていた。

 そして何よりも、アラブの春により、欧米の援助を受ける腐敗した政権を倒せるのは暴力だけだ、というアルカイダの中心的な主張が覆されてしまった。

 今では、こうした欧米の勝利のすべてが疑わしいものになっている。シャバブには、これまでにないほどの多くの戦闘員が国外から流れこんでいる(その一部がウエストゲートの襲撃に関わったと見られている)。AQAPは、19に上る米国の在中東公館の閉鎖と世界的な渡航注意につながった8月初めのパニックに絡んでいた。

 その一方で、アルカイダの中枢は、2014年以降の西側の軍のアフガニスタン撤退を見据えて、既に荒野の広がるアフガン東部に戻り始めている。

 何より、アラブの春の挫折が、アルカイダとその同盟組織にかつてない好機を与えている。エジプトでは、選挙で選ばれた穏健派とされるイスラム政権に対するクーデターが、アルカイダのイデオロギー的な力の復活の追い風となった。

 リビアから流出した武器が中東全域にあふれ、シリアの内戦により、テロ組織ネットワークの中で最も暴力的な手に負えない分派であるイラクのアルカイダが復活している。イラクのアルカイダは今や、「イラク・アルシャム(シリア)イスラム国」という堂々たる名称を名乗るようになっている。

 シリアのバシャル・アル・アサド大統領を政権の座から追いやるための戦いは、イスラム世界の全域のみならず、欧州や北米のイスラムコミュニティーからも、多くの聖戦士志願者を磁石のように引きつけている。

 かつては概ね穏健で世俗主義的だった反政府側の自由シリア軍は、より組織的で資金も豊富な聖戦主義組織に徐々に押しのけられていった。これらの組織は、アルカイダと直接結びついている。西側の諜報機関の推定によれば、そうした組織は現在、実質的な反政府軍の80%を占めているという。

 仮に、反体制派の武装組織が、現在手中に収めているシリアの北部と東部から勢力を大きく広げられないとしても、いずれ、はるかに脆弱に見えるイラクと接する広大な地域を支配するようになるかもしれない。イラクでアルカイダが月に1000人もの市民を殺害していることを考えると、それは極めて恐ろしい展望だ。

希望的観測は捨てよ

 こうしたアルカイダの目覚ましい復活に対して、自己満足に浸っていた西側諸国にはどの程度の責任があるのだろうか? 相当大きな責任がある。オバマ大統領はイラクからの撤退をあまりに急ぎすぎた。アフガニスタンでも同じ過ちを繰り返す恐れがある。

 米国はアルカイダ系組織の「首をはねる」ことに関して、無人機の攻撃に頼りすぎている。さらに愚かしいことに、米国のレオン・パネッタ前国防長官は、パキスタンとイエメン、ソマリアでわずか10〜20人ほどの指導者を殺害すればテロ組織ネットワークを倒せると語っていた。

 米国が中東に関与する意欲を失っていると広く認識されたことも事態を悪化させる要因になった。シリアの穏健な反政府運動を有効な形で支援しようとしなかったオバマ大統領の態度が、その認識を裏づけた。

 第2の疑問は、復活したアルカイダが西側にとってどの程度の脅威になっているかだ。最近では、欧米育ちの「一匹狼」のテロリストが自国で散発的なテロを起こすことはあるにせよ、現在の過激な聖戦主義組織は、本当は地域的な闘争にしか関心を持っていないとする考え方が主流になっていた。だが、どうやらその考えは間違っているようだ。

 国外からシリアに来て戦っている戦闘員たちは、一部は命を落とし、一部は欧州や米国に戻って静かな人生を送るだろう。だが、少なからぬ割合の者が訓練や経験を積み、自国でのコネクションを広げ、要請があればそれらすべてを喜んで活用するはずだ。そして、その要請は必ずあるだろう。

 また、聖戦主義が力を持つ地域で暮らしたり働いたりしている欧米人は、ほぼ確実に、これまで以上に大きなリスクにさらされることになる。

 最後の疑問は、この潮流を再び逆転させるために打つ手があるのかという点だ。その答えは、間違いなくイエスだ。ブッシュ大統領が「テロとの戦争」を宣言した時、その目標はテロを支援する政権の打倒だった。だが、現在の状況では、イエメン、ソマリア、イラク、リビア、マリ、ニジェールなどの、アルカイダと戦おうとしている不安定な(時に芳しくない)政権の支援に重点を置くべきだ。ケニアやナイジェリアにも支援が必要かもしれない。

 といっても、地上軍を本格的に派遣する必要はない。むしろ、諜報活動の支援や後方支援、場合によっては特殊部隊や航空支援が効果的だろう。西側からの支援は、何よりも地元の治安部隊の訓練、政権の現代化、そして多くの場合は脆弱な経済の安定化に向けて強めるべきなのだ。

西側諸国のソフトパワーを生かせ

 アルカイダの復活で最も懸念すべき点は、その悪質なイデオロギーが、アラブの春の挫折に後押しされ、イスラム神学校やモスク、聖戦主義者のウェブサイトやテレビ局を通じて広がり続けていることだ。欧米の友好国であるはずの豊かな湾岸アラブ諸国からいまだに資金が流れこみ、そうした思想的宣伝活動やさらにひどい活動の財源となっている。

 これらの国の政府にもっと強く圧力をかけ、資金の流れを止めさせるべきだ。西側諸国は、強大なソフトパワーを持っているはずにもかかわらず、最も重要な闘いである思想闘争において、イスラム穏健派を味方に引きこむだけの力強さを発揮できずにいる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38811


04. 2013年10月03日 03:39:03 : niiL5nr8dQ
【第11回】 2013年10月3日 田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
化学兵器の国際管理を受け入れ
急転するシリア情勢の次を読む
シリアの化学兵器問題は、同国が化学兵器禁止条約に加入し、廃棄を受け入れたことで、事態は急転した。これに救われたのは米国のオバマ大統領だ。絶体絶命のピンチを首尾よく脱することができた。この案を提案したと言われるロシアも、オバマ大統領に恩を売ることができた、もっとも得をしたのはシリアのアサド大統領だ。いまや反政府軍の主力はイスラム過激派が占める。イスラム過激派を「共通の敵」として、それが入手した化学兵器を押収するために米、露、シリアが連合して戦う、という構図も生じかねない情勢となりつつあるからだ。そうなれば、次の焦点はイスラエルがどう動くかだ。

化学兵器の国際管理はシリアの発案?

「急転直下」という表現がこれ程ぴたりと当てはまる事態が外交史上あったろうか。シリアの化学兵器問題は僅か1ヵ月で根本的な変換をとげた。シリアの首都ダマスカス近郊で化学兵器が使用された事件が8月21日に発生、28日にオバマ米大統領は「シリア政府が実行した」と断定、米軍は攻撃配置につき、2、3日中に開戦かと言われた。だが29日に英下院が軍事行動案を否決、31日にはオバマ大統領も「攻撃に議会の了承を求める」と発表した。米国世論には介入反対が多く、米下院でも反対多数の形成で、にわかに戦雲は遠のいた。

 米議会は休会開けの9月9日から攻撃の可否の審議に入るはずだったが、その日シリアのムアッリム外相がモスクワを訪れ、ロシアのラブロフ外相と会談、ラブロフ外相は「シリアに対し化学兵器の国際管理を提案した」と緊急声明を発表した。ムアッリム外相は会談後の共同記者会見で「その提案を歓迎する」と語った。

 アメリカでは9月9日にロンドンでの記者会見でケリー国務長官が「シリアが化学兵器をすべて国際管理に委ねれば米国の攻撃回避は可能。だがそんなことにはなるまい」と語ったのにロシア外相が飛び付き、ケリー長官に電話し米露外相会談が実現、シリアの化学兵器廃棄手順で合意した――との話が報じられる。だが、実際にはロシアとシリアの外相会談が9日に行われ、直後にシリア外相が化学兵器の国際管理案を「歓迎する」と記者会見で表明していたのだから、「ケリー国務長官の9日の発言にロシア外相が飛び付いて実現」とは全くのウソだ。ケリー長官は他人の手柄を横取りしたいのではないかと思われる。

 ロシアが化学兵器の国際管理を提案し、シリアが呑んだ、というロシア側の発表自体にも怪しい点がある。もしロシアが提案し、シリア側を説得するなら、ロシア外相がダマスカスを訪れ、決定権を持つアサド大統領らと会談する必要があったろう。また、もしモスクワを訪れたシリアの外相がロシアの提案を聞いたなら、本国に持ち帰り、アサド大統領や軍首脳らと共に検討して受諾するか否かを回答するというのが普通だ。外相が一存でその場でただちに受諾し、記者会見して「歓迎する」と言った、とは変だ。そう考えるとむしろこれはアサド大統領の発案かもしれない。シリアが単独で「化学兵器をすべて廃棄する」と発表しても「攻撃を免れるための一時的策略」と受け取られ、信頼性が低いから、ロシアが提案、シリアが受諾、の形にしてロシアを調停者か、保証人的な地位に置き、米国等と交渉してもらう方が効果がある。

 ロシアにとっては、シリアは武器輸出の得意先であり、黒海艦隊が地中海に出て行動する際、補給や修理の拠点としてタルトゥース港を使わせてもらう関係だ。かつての東欧の衛星国のように、その外相をモスクワに呼びつけて命令ができる立場にはない。シリアから「名義上の提案者になってほしい」と頼まれれば、ロシアは外交上の得点にもなり、米国に恩を売ることにもなるから喜んで「承知いたしました」と言うだろう。アサド大統領は9月29日のイタリア国営テレビのインタビューで「国連安保理決議を順守するか」と問われ、「もちろん順守する。我々が求めていたもので、自らの意志に基づくものだ」と答えた。「あれはそもそもウチの案だからね」と漏らしたように聞える。

アサド大統領の人物像

 ロンドンの眼科専門病院に勤務し、スンニ派のシリア系英国人女性(ロンドン大学キングスカレッジ卒業、父は心臓外科医)と結婚したバッシャール・アル・アサド(48)大統領は高校時代には温厚な優等生で、政治家になるのを避けてダマスカス大学の医学部に入り、医師の道に進んだという。だが父ハーフィズ・アル・アサド大統領(空軍大将)の後継者になるはずだった長兄(少佐)が交通事故で死亡したため呼び帰され、2000年の父の死去後、35歳で大統領に就任した。

 本来は親西欧的な開明派で柔軟な面があり、2011年「アラブの春」で反体制デモが始まった際にも非常事態法(戒厳令)を廃止して集会を許し、憲法改正で複数政党制、大統領任期制を導入する、などの譲歩で鎮静をはかった(大統領の任期7年は長すぎ、これまでの13年を合わせ計20年になるが、内乱の鎮圧、復興を考えれば7年は掛かるかもしれない)。だが妥協をはかっても、アサド家が属する少数派のイスラム「アラウィ派」(人口の12%)が多数派の「スンニ派」(同70%)に君臨する体制への不満は消えず、騒乱が拡大し、脱走兵が反政府の「自由シリア軍」を結成、内戦状態となった。内戦の死者はこれまで11万人とされる。

 米、西欧諸国は「アサドは多数の自国民を殺した」と非難するが、どの国も内乱が起きれば武力で制圧するのは当然で、日本の刑法にも「内乱罪」があり、「首謀者は死刑または無期禁錮」と定め、自衛隊法は「治安出動」時の武器使用を認めている。米国の南北戦争(1861〜65)では死者は北軍で約36万人、南軍で約26万人に達した。内乱鎮圧で自国民を殺したことを非難するならリンカーンも同罪だ。特に北軍のW・シャーマン将軍の部隊6.8万人はジョージア州アトランタから大西洋岸のサヴァンナまで、約480キロを幅約100キロの地帯に拡がって進み、計画的に民家、工場などを徹底的に焼却、破壊し、激しい掠奪を行って完全に荒廃させた。シャーマンは、「これにより南部の民衆の反抗心を挫いた」としていまでも米国で英雄視されている。

助かったのはオバマ大統領

 アサド大統領が自ら「化学兵器の国際管理」案を考えたのではなく、ロシアの発案だったとしても、アサド政権が即座にその案を歓迎し、わずか3日後の9月12日に化学兵器禁止条約に加盟する書類をそろえて国連事務総長に提出、14日に国連事務局が加盟手続きを完了した俊敏さ、柔軟さは驚嘆に値する。事前に準備していたのだろう。米露外相会談は12日から14日にかけて行われ、@シリアは1週間以内に保有する化学兵器のリストを提出する、A査察官が全ての場所を自由に査察することを認める、B2014年なかばまでにすべての化学兵器や関連設備を廃棄する、Cシリアが合意の履行に違反した場合、国連憲章第7章(軍事的措置も取りうる)に基づく措置を取るべきだ――で合意し、シリアは21日に化学兵器のリストをハーグ(オランダ)の化学兵器禁止機関に提出した。

 9月27日の国連安保理決議では「シリアでの化学兵器使用は国際法違反」としつつ、使用したのが政府軍か反政府側かを特定せず、また化学兵器の移転、使用などの決議違反に対して国連憲章第7章に基づく制裁措置を取るには別の決議採決が必要、としてロシアなどが拒否権を使って武力行使を抑えうるようにしたから、ロシア・シリアの勝ちとなった。

 だがオバマ大統領もこれで助かった。昨年8月に記者会見で「化学兵器が使われるならレッド・ライン(越えてはいけない線)を越える」と介入の姿勢を示していたから、今年8月21日のダマスカス郊外での化学兵器使用は「アサド政権側の行為」と米情報機関が言う以上、攻撃しないとタカ派やイスラエル寄りの議員、論客から「米国の威信を失わせた」と攻撃される。だが、爆撃やミサイル攻撃をするにしても@化学兵器の貯蔵所、工場を攻撃すれば汚染が拡がる、A中、短距離ミサイルを破壊しても、内戦での使用を防ぐ目的には役立たない、Bシリア軍の飛行場、駐屯地を叩いて軍事力を弱らせれば、アルカイダ系の「ヌスラ戦線」などイスラム過激派が多い反政府軍が勢力を拡大、化学兵器をさらに入手する機会を与える――など難点が多く、シリア内戦に巻き込まれては財政への負担、米国世論の反発が大きい。オバマ氏は攻撃してもしなくても激しい非難の的となる絶体絶命のピンチに立っていた。

 この「王手飛車」から免れるための奇策が8月31日に「議会にシリア攻撃の承認を求める」との発表で、難しい決定の責任を議会に押し付けた。議会で否決される公算は大きく、その場合大統領の威信は若干傷付くが、自分一人で決めればどちらにしても致命傷を負うところが軽傷ですむ妙手だった。ところが意外にもシリアが化学兵器禁止条約に加盟し、化学兵器廃棄に賛成してくれたから、オバマ氏は「軍事行動の姿勢を示したからシリアが折れた」(それも事実)と成果を誇る立場となった。「禍いを転じて福となす」とはこのことだ。ロシアとしてはオバマ大統領のピンチを救って恩を売ったことで、スノーデン氏亡命事件で険しくなった米露関係が好転する契機になりそうだし、外交界でのロシアの存在感も高まった

最も得をしたアサド大統領

 だが、最も得をしたのはアサド大統領かもしれない。国連の査察団が約50ヵ所と言われる化学兵器貯蔵庫や工場などを査察するにも、シリアは内戦中だから、全面的にシリア政府軍の支援を受ける必要があるだろう。シリア外相は9月30日「化学兵器の保管場所は19ヵ所、うち7ヵ所が反政府側の支配地域にある」と語った。英国の軍事雑誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」は反政府戦闘員は約10万人、うちアルカイダ系が約1万人、他のイスラム過激派が3万ないし3万5000人、と報じた。つまり約半数はイスラム過激派というわけだ。これは多分、英国情報当局の見積もりを伝えたと思われる。アフガン人、チェチェン人などゲリラ戦、テロ攻撃に熟練した連中が迫撃砲や対戦車ロケット、対空機銃などを持ってイラク、ヨルダンをへてシリアに入り込み、いまでは元シリア軍将兵主体の「自由シリア軍」をしのいで戦闘の主力となっている。

 反政府部隊のサリン製造施設がトルコとイラクで摘発されたことがあり、また彼等がシリア軍基地を一時的に占拠したことがあるから、そこで化学兵器を奪取した可能性もある。シリア軍の脱走兵(スンニ派の将校もいる)が持ち出したこともありうるから、米、露などにとってはシリア軍の化学兵器より、反政府側の化学兵器の方が危険だ。アルカイダ系の戦闘員が米本土やアフガニスタンなどの米軍基地で化学兵器を使ったり、チェチェン人がモスクワの地下鉄などで使えばきわめて危険だ。アルカイダ等イスラム過激派にとっては米、露、シリア政府のいずれもが敵だから、それらが合意した化学兵器の査察、廃棄に協力するとは思えない。すでにダマスカスではロシア、中国、イラクの大使館、領事館や化学兵器査察団が泊まるホテルに迫撃砲攻撃が行われている。

 このためイスラム過激派を「共通の敵」として、その化学兵器を押収するために米、露、シリアが連合して戦う、という構図も生じかねない情勢となり、もしそうなればアサドは世界の「善玉」となる。善玉と悪玉が入れ代ることはよく起きる。サダム・フセインは元来はソ連寄りの独裁者と欧米に見られたが、1980年イランに奇襲侵攻し、反撃を喰って攻め込まれ、88年までイランと戦っている間は米、西欧で英雄視され、イラン軍に対する化学兵器の使用も非難されなかった。だが停戦後、戦争で背負った債務に苦しんでクウェートに侵攻すると当然ながらまた悪玉となった。

国際政治は抽象的修辞でなく利害で動く

 オサマ・ビンラディンもソ連軍とアフガニスタンで戦って米国から称賛されたが、湾岸戦争後も米軍がサウジアラビアに駐留を続けるのに抵抗したころから悪玉となった。米国はベトナム戦争後、ベトナムが中国と対立してソ連寄りとなったため、ベトナムを再び敵視し、ベトナムがカンボジアの極左ポル・ポト政権がベトナム系住民を大量虐殺するのを座視できず、カンボジアに侵攻すると、中国と共にポル・ポトを支援、その代表者が米、中の支持をえて国連に座るに到った。国際政治は「共通の価値観」といった抽象的修辞ではなく、利害(それも多くは政権の目先の利害)で動くから、アメリカはシリアと争ってアルカイダを助けるよりは、シリアと組んでアルカイダから化学兵器を奪う方が得策とする可能性も十分に考えられる。

 1000トンにもおよぶとされるシリアの化学兵器処理には@内戦中であるため査察官の行動が危険。行けない場所もある、A搬出する際にも反政府部隊の襲撃で奪われたり、ドラム缶などの容器が被弾して漏出するおそれもある。どこに一時的に保管するかも難問、Bサリンは水を加えれば分解するが、イペリット(マスタード・ガス)などは高温の炉で焼却するのが一般的でその処理場をどこに造るのか、C処理費用は10億ドル(980億円)とアサド大統領は米FOXテレビとの会見(英国知識階層の語彙と話法の巧みな英語)で述べており、誰がそれを負担するのか――などの問題が多く、米露外相会議で合意された「来年半ばまでに廃棄完了」は難しそうだ。

 その場合にはイスラエル寄りのアメリカ人が「シリア政府が意図的に遅らせている」と非難したり、反政府側が化学兵器を使って、政府側がやったように見せかけることも起こりそうだ。8月21日の事件では、ロシア製ロケット弾が使われたことが、政府の仕業の物的証拠と米国は主張したが、アルカイダなどが政府軍基地に突入した際、政府軍のロケット弾が奪取されたり、脱走兵が持ち出したこともありうるから、安保理決議がどちらが化学兵器を使ったか特定しないのは妥当だろう。

 私は、8月18日からダマスカスにいた国連の化学兵器調査団は、反政府側の化学兵器使用を訴えるシリア政府が調査を求めて入れたものであり、それが到着し、調査を始めようとする矢先に、政府軍がダマスカスで化学兵器を使えば、政府に不利になるのは明白。全体的には戦局が有利になりつつある政府軍がそのようなことをする動機があるのか、と米、仏などの主張に懐疑的だった。CIAがこれまで反政府側を支援してきたことはまず確かで、一方の当事者になってしまった情報機関が客観的な情報収集、分析をし、政府に報告することは期待できない。

内戦は三つ巴の混戦に

 反政府側の内部では、米、英、仏、トルコ、サウジアラビアなどの支援を受ける「自由シリア軍」とアルカイダ系などイスラム過激派の対立抗争が起き、内戦は三つ巴の混戦になりつつある。もし自由シリア軍が強くて、過激派もシリア政府軍も圧倒すれば、米国等には理想的なのだが、現実には三者の中でもっとも弱い様子でスンニ派民衆がこぞってそれを支援する状況でもないようだ。国連安保理の決議には「アサド政権と反体制派がともに参加する国際会議を早急に開催し、双方が合意の上で暫定政権の発足をめざす」という内戦終結案が盛り込まれた。もしこれが実現すればアサドは弱体化した自由シリア軍に支えられた「シリア国民連合」(欧米が支持)からも少数の閣僚を入れるなどして連立暫定政権を作り、実権を握り続ける可能性もある。ただその場合、過激派がテロ活動に向う公算が大だ。

 シリアと長年友好関係にあるイランでも8月3日就任した穏健派のロウハニ大統領が、9月27日オバマ米大統領と1979年のイラン革命以来35年ぶりに電話会談し、核開発問題解決の兆しが見えた。シリアとイランが米国と和解の動きを見せ、シリアの化学兵器もイランの核兵器開発も放棄、となればオバマ大統領はさらに得点を稼ぐことになる。

 一方、化学兵器禁止条約を批准せず、核不拡散条約にも加わらず、大量破壊兵器を保有し続けるイスラエルにとっては苦しい事態だ。イスラエルも両条約に加盟すべきだ、との国際世論は強まるだろうし、経済、軍事援助だけでなく、安保理で拒否権を乱発して、非合理なほどイスラエルを支援してきたアメリカが、大量破壊兵器問題の解決の見返りにシリア、イランと外交、経済関係を復活することも起りうる。そうした和解は米国にとっても、中東、世界にとっても望ましいことなのだが、イスラエルはそれを妨げたいだろう。とは言え、アルカイダ等が化学兵器を入手するのはイスラエルにとっては直接の脅威でもある。事態が今後どう展開するか、まさに予断を許さない状況だ。


05. 2013年10月03日 03:50:20 : niiL5nr8dQ
JBpress>海外>ロシア [ロシア]
常にすれ違う米国とロシア、その原因を探る
政治家の軽い発言は北方領土問題をこじらせるだけ?
2013年10月03日(Thu) W.C 9月の中旬に、学会や報道・実務関係の方々による恒例の“草の根”訪露団に参加させて頂いた。1週間ほどモスクワに滞在し、今年も政治や経済の分野でロシアの専門家たちと意見交換を行い、彼の国のインテリ層の見方や考え方を改めて確認する機会を得た。

 多くの話題が中国に関係したものであったことは、昨年までと変わりはない。長大な国境を接する相手には、そこに異常がなくても観察の目を緩めなどしてはいない。中国との異常が消え去っていないのに、その問題が何となく風化しつつあるような日本とは大きな違いだ。

米国に対する呆れ、諦め、侮蔑

赤の広場を照らす壮麗な光のショー
今年9月、モスクワで開催された国際軍事音楽フェスティバルの花火〔AFPBB News〕

 しかし、今年はそれに並んで、米露関係へも話が多々及んだ。そうなるのも当然だろう。9月27日にシリアの化学兵器廃絶に関する国連安保理の決議が出るまで、米露は外交交渉の場で極度の神経戦を演じていた。

 米国が“決められない民主主義”の財政問題でこの問題から一時離れることになったものの、それに片がついたなら、またぞろ中東問題がホットになるのかもしれない。

 米国にしてみれば、国家安全保障局(NSA)のエドワード・スノーデン元局員の亡命騒ぎでロシアにカリカリきているところに、シリア問題でもそのロシアに鼻面を引き回されたようなものである。

 ロシアがシリアから化学兵器廃絶への同意を取りつけ、それに基づき米国は軍事行動取り止めに追い込まれた。その屈辱感や怒りは想像に余りある。

 それをメディアが「ロシア外交の勝利」と持て囃していた時期に、我々とロシアの専門家との面談が行われたのだが、総じて彼らからはそうしたメディアの報道に同調する高揚感は見て取れなかった。

 むしろ、米国の無茶で利口とはおよそ言えないやり方には、もうこれ以上つき合ってはいられない、といった呆れ、諦め、侮蔑のニュアンスを感じたものだ。

 米露の対立とはよく知られているように、バッシャール・アル=アサド政権を武力によってでも打倒すべしと米国が主張し、ロシアがこれに反対し、あくまで外交で問題を解決に当るべし、と頑張った、という構図である。

 今回日本側の一員として同行された、米国政治が専門の研究者の方は、この対立が、「内政不干渉」というものへの米露の見解の相違からもきている点を指摘されていた。

 従来の国際法上では、「内政不干渉」は順守すべき掟である。だが、人権侵害、大量破壊兵器の保有や使用、内戦、といった問題が生じた場合でも、掟を守ってそれに干渉しないことが本当に正しい選択なのか、と米国は詰め寄る。

 しかし、ロシアは「内政不干渉」の原則に固執する。その理由は、大きく分ければ2つだろう。

米国の行動は自国の利益追求にしか見えない

 1つは、何が人権侵害で、何が大量破壊兵器の保有や使用で、何が内戦かを、いったい誰が判断するのか、という問題であり、それを米国一国に委ねることはできない、という立場。そしていま1つは、仮に武力を行使しても、問題の解決にはならないという現実主義者としてのプラグマティックな見方だ。

シリア北部の町占拠、反体制派とアルカイダ系勢力 対立の背景
シリア北部アレッポで政府側部隊に発砲する反体制派の戦闘員〔AFPBB News〕

 前者は、冷戦終結後の一極支配とその崩壊、世界の多極化、という歴史観に支えられている。

 ロシアは復活し、中国は台頭し、途上国だってもはや米国の言いなりになるとは限らない。米国が勝手放題に振る舞える時代はもう終わったのだ。

 それに、米国に思うがままの内政干渉をやらせたなら、いつでも好き勝手な理屈をつけて、ロシアも含めた他国に攻め込むことを認める結果になってしまう。

 MGIMO(モスクワ国際関係大学)のトロイツキー准教授は、米国がどう民主主義・自由・人権・人道主義を喧伝しようと、これらは結局のところ、自国の具体的利益追求の言い訳に過ぎない、と切って捨てる。

 バラク・オバマ大統領が、「米国は例外的な国」を繰り返すごとに、ロシアの保守系メディアはこぞってその唯我独尊を攻撃する。ウラジーミル・プーチン大統領自らも、9月11日付ニューヨーク・タイムズに寄稿し、シリアへの軍事行動を思いとどまるよう米国民に訴えかけ、米国を例外視する危険性を指摘するに到った。

 一方、後者のプラグマティズムとは、煎じ詰めれば米国の中東政策での判断能力に対してロシアが疑問符をつけている、ということを意味するだろう。

 ロシア・米加研究所のクレメニュク副所長は言う。

 「アフガニスタンやイラクの例を見れば明らかなように、米国は自分の仕かけた戦いの後始末ができずにいる。今度はシリア、ときた。米国がシリアを攻撃すれば、イスラエルやイランがどう動くか予想がつかない。その結果の責任を誰が負えるのか。アサド政権を倒しても、その後にどのような政府がくるのか、これも予想がつかない。米国は、今度は始末をつけられるとでも言うのだろうか」

 こうした議論の根底には、ロシアの抜き難い対米不信感がある。その不信感とは、1つには米国に繰り返して裏切られてきたという気持である。

 ボリス・エリツィン大統領の時代に、米国は北大西洋条約機構(NATO)の東進は行わないと約束していたにもかかわらず、その歩を旧東欧諸国のみならず、旧ソ連のバルト3国にまで進めてきた。

同時多発テロではいち早く米国を支持したのに・・・

米同時多発テロから12年、新たに犠牲者1人の身元確認
世界貿易センタービル跡地で、テロ犠牲者の名前が刻まれたモニュメントに立てられた米国旗〔AFPBB News〕

 モスクワ・カーネギーセンターのトレーニン所長に言わせれば、

 「ウラジーミル・プーチン氏が大統領になりたての2000〜2003年には、米国の同盟国にすらなろうとした。だが、その後ロシアの反対を押し切ってイラク戦争を始め、ロシア本土内に進行するかのごとく、ホドルコフスキー事件や周辺国でのカラー革命(グルジア、ウクライナ、キルギス)を扇動した」

 ということになる。

 上述のプーチン大統領の寄稿分の掲載日付が9月11日であることに、注意を払う必要があるだろう。ちょうど13年前のその日、9.11事件の直後にプーチン大統領はどの国よりも早くテレビ放送を通じて、「我々は米国と共にある」という連帯のメッセージを米国に送っている。

 トレーニン所長は次のようにも言う、すなわち、

 「裏切られただけではなく、米国はロシアをアフガン問題でもイラン問題でも、自国に都合の良いように利用することしか考えていない。ロシアを全体として見ようともしない。ヒラリー・クリントン前国務長官のアジア回帰演説にも、ロシアは1行も登場しなかった。オバマであろうとジョン・マケインであろうと、どの米国の政治家もロシアとの対話で明確な目標を欠いてしまっている」

 親米派とも目されるこの所長が、ここまで米国を批判するのを耳にしたのは初めてだった。

 ラジオ放送局「エーホ・モスクヴイ(モスクワの木霊)」のベネディクトフ編集長は、こうした米国のやり方に対峙せざるを得ないロシアは、自らが十分に保守的ではなかったからこそこれまで多くが失われた、と解釈し、対米政策の基本は、既存権益を守るという姿勢になった、と論じる。

 さらに、前出・クレメニュク副所長は、「米議会では、米国が今ロシアを援助しても20年後のその結果を踏まえて彼らが米国に歯向かってこないと誰が言えるのか、といった議論が横行しており、対露警戒心を捨てきれていない」と指摘する。

 MGIMO(モスクワ国際関係大学)のトロイツキー准教授も、米国が同盟国以外の国に対しては長期的利益を与えようとはせず、そこからロシアは互恵関係を期待できない、と述べる。

単なる憂さ晴らしにしか見えないロシアの対応

米露、シリア化学兵器に関する安保理決議案で合意 27日にも採決
国連総会後に会談するジョン・ケリー米国務長官(左)とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(2013年9月24日)〔AFPBB News〕

 この対米不満、あるいは憤懣が、対米対等を要求する気分に昇華していくのだろうが、米国から見れば、主権国家、安保理、核弾頭ではそれが実現しているのに、それ以上の何をロシアが求めようとしているのか分からない、と前出の日本の米国政治研究者の方は米国の困惑を解説する。

 分からないから、ことあるごとに米国の動きを邪魔しようとするロシアの対米対等要求は、単なる対米憂さ晴らしにしか見えてこない、ということになる。

 相手がそんな輩なら、それを相手に大統領は何をもたついているのか、という批判が米議会で湧き起こる。そして、米国の権威失墜などとメディアに叩かれれば、これは何としても我慢ならない。ロシアはそもそも冷戦の敗戦国である。その敗戦国が何を偉そうに勝者の米国に楯突くのか。

 そうした雰囲気を反映してか、ある著名な米国の国際情勢評論家などは、ロシアは今回のシリア問題で勝利したかもしれないが、得たものは誰も支持しないシリアという「ならず者国家」との絆を深めたことだけであり、汚職にまみれた今年の冬季ソチ五輪は、反体制弾圧や同性愛者差別といったロシアの政治姿勢を糾弾する場にもなりかねないだろう、とややヒステリー気味の論を張っている。

 よほど、プーチン大統領とセルゲイ・ラブロフ外相のコンビにしてやられたことが、腹に据えかねるのだろう。

 プーチン大統領の寄稿文に対抗するかのように、マケイン上院議員は自らの主張をロシア共産党機関紙のプラヴダに寄稿(9月19日付)した。

 何でプラヴダ?なのだが、その内容は自らをロシア支持派と称して、「だからロシア国民のためにもプーチン大統領を追い出すべし」といった批判一色であり、プーチン大統領の寄稿文に比べれば、どうにも品が欠けているようにしか見えない。

 前出のベネディクトフ編集長は、もしプーチン氏が米国に生まれていたなら、共和党右派に属してマケイン氏の隣に座っていただろう、と評する。寄稿文の出来の良し悪しはともかく、2人は政治家としては意外に近いタイプなのかもしれない。

 内政面で西側から批判されている同性愛者差別はさておいて、反体制弾圧については、9月7日に行われたモスクワの市長選で、政権与党を「詐欺師と泥棒の党」と激しく批判していたナヴァーリヌイ氏が、敗れたとはいえ予想を上回る善戦という結果になった。西側のメディアは、これをプーチン政権への打撃と喧伝する。

プーチン氏寄稿掲載は「ニュース性」重視のため、NYタイムズが釈明
ニューヨーク・タイムズ紙はプーチン大統領の寄稿を掲載したことに対する釈明文を9月12日に載せた〔AFPBB News〕

 だが、今回このナヴァーリヌイ氏について語ったロシアの複数の専門家は、口を揃えて彼が保守なのか革新なのかはまだ分からない、と述べている。

 政権打倒を彼が叫んでも、それを奪取した場合のプログラムには保守・革新の双方のメニューが取り込まれ、そのために訳のよく分からないものになっているという。

 モスクワ・カーネギーセンターのシェフツォーヴァ上級共同経営者(Senior Associate)は、彼は君主政治に反対はしておらず、プーチン大統領に反対しているのみであり、リベラルでも守旧派でも左派でもない、と素描する。

 聞けば聞くほど、ロシアが右から左に大きくひっくり返るといった話などではないようだ。日本に例えるなら、さしずめ旧来の左右分類には必ずしも当てはまらない「維新の会」に近い存在のようなものではないのだろうか。

プロ同士の話し合いができない日本の政治家

 その日本については、今回喋ってくれる向きは多くはなかった。領土問題にこちらからの質問が集中したためもあったろうが、会う相手が代わっても、プーチン大統領やロシア政府の姿勢は簡単には変わらないだろう、という異口同音の答えに少々めげてもくる。

 その中でシェフツォーヴァ氏は、「露中間でアムール河の島を巡る領土問題が解決したのは、交渉を秘密裏に運んだからであり、それに比べて北方領土問題はオープンになり過ぎてしまっている。従って、双方ともに譲歩が困難」と感想を漏らした。

 ふと思ったのだが、最近の日露間の交渉でロシア側が、「静かな落ち着いた雰囲気の中での交渉」と繰り返しているのは、このことを指しているのではないだろうか。

 今から、国民に知らしめずに政府間だけで交渉を進めて妥結に持ち込むことは、もちろん不可能であろう。特に日本においては、である。

 だが、ありとあらゆる感情が巻き込まれてくる国民一丸の運動が、実際に領土問題を解決できるのか、と問えば、少なくともこれまでは、半ば精神論とでも言うべき「粘り強い交渉」といった台詞しか残されてこなかったことも事実だろう。

 世の交渉事をすべて衆目に晒す形で行ったなら、恐らくまとまる話は万に一つになってしまう。交渉者が引くに引けなくなってしまうからだ。

 最近、ビザなし渡航で北方領土を訪問した日本の政治家が、領土返還要求を口にしたことをロシア外務省が問題視したのも、彼らが日本に対して、「もういい加減にして、本格的なプロ同士の話を始めようではないか」と要求している証しなのかもしれない。

これを受けて立つのか否か。ひょっとしたら尖閣問題への対処より難しい課題かもしれない。


 


 


 


 

JBpress>日本再生>国防 [国防]
尖閣の実効支配を急げ
そのときアメリカは助けてくれない
2013年10月03日(Thu) 北村 淳
 先日、アメリカのシンクタンク(ウィルソン・センター)で、中華人民共和国に関するシンポジウムが開かれた。テーマは、最近の東シナ海ならびに南シナ海での島嶼領有権をめぐっての中国の対日本、そして対フィリピン強硬姿勢をいかに解釈すべきか、というものであった。

 デンマークの学者(王立デンマーク国防大学教授)で現在ウィルソン研究所にも籍を置いているオドガード博士(中国=南アジア関係、南シナ海が専門)は、「中国の行動を否定的に捉えるのではなく、中国固有の伝統的な“平和的共存”戦略を推進しているという文脈で捉える必要がある」といった趣旨の持論を展開した。

対中ハト派の危険な議論

 彼女のような中国に寛容な学者の主張に対して、元アメリカ海軍少将で現在シンクタンク研究員(CNA:東アジア地域と中国海軍が専門)のマクダヴィット少将は、「中国の南シナ海や東シナ海での侵略的行動はとても何らかの戦略に基づいていると見なすことはできない。中国はかつては孫子のような大戦略思想家を生み出し、その戦略的伝統を受け継いでいると考えられていたが、とても現在の中国の政策決定者たちは素晴らしい戦略の伝統を引き継いでいると考えることができない」と真っ向から反対意見をぶつけた。


オドガード博士の著書『China and Coexistence』
 この「中国の平和的共存戦略」に関する議論は、中国による東シナ海と南シナ海での強硬な領域確定行動に関連して、中国の戦略(あるいは戦略らしきもの)をどのように評価すべきなのか? に関する議論であって、日本やフィリピンの対中対抗策や、アメリカによる日本やフィリピンへの支援策といった政策的な議論とは一線を画するものである。

 しかしながら、中国の東シナ海ならびに南シナ海での昨今の拡張主義的行動をどのように解釈するのかに関するアカデミックな議論は、アメリカ政府ならびに連邦議会が、対中戦略および対日・対フィリピン支援戦略を決定する際に、少なからぬ影響をおよぼすことになる。

 アメリカで強大な勢力を振るっている中国ロビイは、「平和的共存戦略」のような中国にとって好都合な一見“学術的”主張を、アメリカのメディア・連邦議会・政府諸機関など各方面に流布させるであろう。

 そして、あたかも「平和的共存」を目指している中国に対して日本が頑なな態度で話し合いにも応ぜず、中国の言い分に対して全く聞く耳を持たない日本こそが日本と中国のそして東アジア諸国の平和的共存を阻害している、といったプロパガンダを推し進めることは目に見えている。

基本的に尖閣問題には無関心なアメリカ

 残念ながら、自らが日本防衛に関与している軍関係者や研究者、それにジャーナリストなどごくごく少数の人々を除いては、アメリカの一般国民はもちろんのこと政治家、軍関係者、政府関係者の大多数は尖閣諸島問題への関心もなければ知識もない。

 もちろん、連邦議会で尖閣諸島問題をはじめとして東シナ海や南シナ海での中国軍による目に余る覇権主義的な行動に対する非難決議がなされたり、政府高官が時折苦言を呈することはあっても、尖閣諸島問題に高い関心を持った上での決議であるわけでも真剣な懸念の表明であるわけでもない。

 アメリカ政府や連邦議会による尖閣問題に対するコメントは、世界中の“もめごと”に口出ししてきたアメリカが日常的に繰り返している「第三国間の“もめごと”に対して、アメリカは目を光らせているぞ」というポーズの1つにすぎないのである。

 そして、シリア内戦における化学兵器使用に対する軍事介入ができなかったオバマ政権の失態は、もはやアメリカがこのようなポーズを取っても実際に軍事力を投入することは極めて厳しい状態であることを国際社会に露呈してしまったのである。

国際常識では尖閣をめぐる領土紛争は存在している

 このように、もともと尖閣諸島をめぐる日本と中国の対立に関心も知識もないアメリカ政府や連邦議会、それに米国メディアにとっては、「日本が自国領土として施政権を行使していると主張している尖閣諸島に対して、中国共産党政府も台湾政府もそれぞれ自国領であると主張している」という客観的事実の存在だけで、「尖閣諸島は領土紛争地域である」と考えているのは無理からぬところである。


アメリカ・エネルギー情報局が作成した地図
 まして、日本が自国領としている尖閣諸島周辺海域に、やはり領有権を主張する中国の公船それも軽武装した沿岸警備隊艦艇までパトロールを名目にしてひっきりなしに侵入している、という現実に起きている状態を見て、「尖閣諸島に関する領土紛争が存在しない」と考えるアメリカ政府、連邦議会、そして軍関係者は存在しないであろう。実際に、アメリカのシンクタンクやメディアは当然のように尖閣諸島ならびに周辺海域を「日中間領域紛争地」として取り扱っている。


NewYorkTimesが用いる日本の領土紛争地図
拡大画像表示
 日本政府にとっては、国際慣習法的に見て全く合法的に日本領に組み込まれた尖閣諸島は何の疑念もなく日本領なのであるから、そもそもその領有権に関する難癖など相手にすべき対象ではなく、そのような無理難題に対して正面から取り組むことは「欠缺なき合法性」を自ら捨て去ってしまうと解釈されかねないために、「尖閣諸島をめぐって日中間に領土問題は存在しない」との立場を堅持しようとしている。だが、中国側の尖閣周辺海域での活動がこれだけ恒常的になってきてしまった現在、日本政府の立場こそ国際社会からは奇異に映ってしまっているのである。

 そして上記のように、中国ロビイや尖閣諸島や中国の本質を理解していない研究者やジャーナリストなどによって中国を利するような言説が(南京大虐殺のごとく)アメリカや国際社会で大手を振ってまかり通る状態になりかねない。

日本の施政権への疑義

 日本政府が“冷静な対応”という“言い訳”の陰に隠れて、「積極的に日本の平和を堅持する」努力を放棄し続けてきたために、中国公船が頻繁に我が物顔で尖閣諸島周辺海域の日本領海を遊弋するような事態になってしまった。そして、国際社会には通用しない日本独自の論理によって、領土紛争は存在しないと公言し続けており、その結果として、引き続き何ら“積極的”な対抗策を具体的には実施していない。

 (占領された島嶼奪還との触れ込みで、陸上自衛隊に水陸両用戦能力を構築しようとする動きが生じているが、残念ながら、この程度では島嶼奪還などまだまだ先の話であるし、尖閣諸島防衛は、そのような小手先の対処では不可能であり、防衛システムの抜本的修正が必要である)

 いつまでも、現状のように軽武装艦艇を含む中国公船が恒常的に尖閣諸島周辺海域を遊弋するような状況が続くと、国際社会の常識では「尖閣諸島は日本政府により“施政”あるいは実効支配されているのか?」という疑問が持たれても致し方ない。

 もちろん、尖閣諸島に何らかの日本政府機関や沖縄の官公庁施設あるいは民間の施設が存在しているにもかかわらず中国公船が日本領海に侵入を繰り返すという状況であるならば、いくら恒常的に中国船が領海侵入を繰り返しても、日本の施政権の存在そのものには疑義は持たれることはないであろう。

具体的な施政権の行使が必要

 第三国間の領有権には関与しないという伝統的な外交方針の鉄則が存在するため、アメリカ政府は尖閣諸島に関してもその領有権についての立場は明らかにしていないし、今後もしない。しかしながら現在までのところ、尖閣諸島に関するアメリカ政府高官のコメントや連邦議会決議などでは「尖閣諸島は日本の施政下にあるため、日米安全保障条約第5条適用の対象となりうる」とされている。

 現在、そして近い将来において万が一にも日中間に本格的戦争状態が引き起こされてしまった場合には、これまで効果的自主防衛能力構築を怠ってきた日本は、否が応でもアメリカの軍事力に頼らざるを得ない状況に置かれている。

 尖閣諸島領有問題が引き金となって日中軍事衝突が勃発した場合「尖閣諸島が日本の施政権下にある限りにおいては」アメリカが本格的軍事介入に踏み切る可能性が存在する(ただし、日米安保条約第5条に基づいて、日本に援軍を送るかどうかの意思決定は、自動的になされるわけではない)。

 ということは、尖閣諸島に対する日本の施政権行使、いわゆる実効支配に対して、国際常識から見て疑義が生じているような状況下においては、アメリカ政府や連邦議会が安保条約の適用そのものを見送ることはほぼ間違いない。

 本コラム(9月26日、9月5日、8月8日など)でも繰り返し指摘しているように、軍事予算が縮小して、とても第三国間の揉め事に軍隊を送り込めなくなりつつあるアメリカにとって、これまでになく大規模な支援が必要になるであろう日中戦争への軍事介入などは、最も手を出したくない紛争の1つである。

 尖閣諸島に対する日本による実効支配が目に見える形で堅持されていない場合、(現在直面している財政危機が続いている限りは)軍事介入に踏み切りたくないアメリカとしては、「日本の施政権が及んでいるとは認められない」という正当化事由を押し立てることによって、同盟国に対する義務の履行を回避したという国際的信用を低下させることなく、局外中立を維持することが可能になる。

 したがって、日本がアメリカの軍事的支援を期待するのならば、直ちに目に見える形での国際常識的な実効支配に必要な行動が必要である。

 日本独自の“ガラパゴス化した論理”によって「領土紛争は存在しない」と言い張って実効支配を明示する行動をためらっていると、日本による尖閣諸島に対する施政権の行使という主張は中国はもとよりアメリカからも国際社会からも相手にされなくなってしまう。

 集団的自衛権と同様に施政権は、「持っている」といっても行使しなければ実効支配とは言えないのである。
 
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38823


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