01. 2013年9月24日 11:03:20
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コラム:プーチン大統領の「外交独り勝ち」は本当か 2013年 09月 23日 13:46 JST 国際政治学者イアン・ブレマーロシアのプーチン大統領は、最高に楽しい夏を過ごしたことだろう。米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン容疑者に一時亡命を認め、最大のライバルである米国に一泡吹かせた一方、シリアの化学兵器使用疑惑をめぐっては交渉の主導権を握った。プーチン大統領がニューヨーク・タイムズに寄稿し、シリア軍事介入に警鐘を鳴らしたことは大きな話題となった。 こうしたことから、プーチン大統領とロシアが外交で「独り勝ち」しているというのが一般的な見方だが、果たして本当にそうだろうか。ロシアが勝利して得たものは力ではない。むしろ、自分の首を絞める結果を招いた。 実際のところ、プーチン大統領は、シリア、スノーデン容疑者、ソチ五輪といった問題でさまざまな「合併症」を引き起こしている。国家としての最大限の利益よりも、自身のエゴや国際的な正当性を個人的に追求した結果、プーチン氏が得た勝利は表面的なものになったと言える。 シリア問題では、プーチン大統領がオバマ米大統領の顔をつぶしたことは明らかだ。ロシアが交渉を主導し、米国の軍事行動へのモチベーションを最小限に抑え、オバマ大統領の外交政策の評判を損なわせた。世界の政治力学という視点から見れば、これは全く申し分ないに違いない。結局、プーチン大統領ほどその力を強固なものにした人は他に誰もいないだろう。 しかし、このことはロシアという国家にとって何を意味するのか。ロシア政府は結果的に、戦争犯罪をやめず、民主的な全ての先進国から「ならず者国家」とみなされているシリアのアサド政権との結び付きをいっそう強めた。シリアを支援すれば同国での足がかりにつながるかもしれないが、アサド大統領は大きな賭けに値する人物ではない。ロシアは確かに勝利したが、ほとんどの国が望まないアサド政権との関係強化を手に入れただけだ。 スノーデン容疑者についても同じことが言える。同容疑者に一時亡命を認め、米国の面目をつぶしたことは、プーチン大統領の大勝利と映るかもしれない。しかしその結果、ロシアは米国との関係悪化と、新しい情報をこれ以上持たないであろう容疑者への亡命許可という代償を支払うことになった。 ロシアはスノーデン容疑者を受け入れたが、今ではその処遇に苦慮している。同容疑者が本当に「戦利品」であるなら、中国がだまっているはずはなかった。中国は有益な情報を聞き出すには十分と思われる期間、同容疑者をとどめ置き、その後ロシアへと渡るのを止めなかった。ロシアは貧乏くじを引かされた格好だ。 勝利から窮地へと追い込まれた例はすでにある。ソチ五輪が決まった時、ロシア金権政治の新たな幕開けと見られていたが、同性愛に対する厳格な法律や反プーチン政権の曲を演奏した女性バンド「プッシー・ライオット」をめぐる問題は五輪を政治化しかねない。抗議活動や国際社会の監視によって、ソチ五輪がロシアの政治的自由や人権を問う場へと一変する可能性を秘めている。もちろん、五輪が開催されるソチが、イスラム武装勢力が拠点とする北カフカス地方に隣接しているという治安リスクは言うまでもない。 五輪開催がロシアに経済的利益をもたらすことも言うまでもない。たとえそれが、プーチン大統領の友人たちに限られていたとしてもだ。ソチ五輪の費用は予算を500%上回っており、五輪史上最も高額な大会となる。だが、そうした費用は主に、五輪後もロシア国民の利益となり得るインフラ投資よりも汚職に使われている。ソチ五輪が開催されるころまでには、競技以外のことが世間を騒がせていることだろう。 勝利に酔いしれ、かつてないほど楽しかったであろうこの数週間で、プーチン大統領は国内外の権力強化に努めようとしただけでなく、ロシア国民の利益より個人の利益を追求した。その結果、ロシアが背負わされたのは、米国の激怒とシリア政府との関係強化、史上最も不明瞭な五輪予算という全く割に合わない代償だった。 [19日 ロイター] *筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。 焦点:米イラン首脳の「握手」なるか、国連総会に注目集まる 2013年 09月 23日 11:57 JST [ワシントン 19日 ロイター] - 8月に政権の座に就いたイランのロウハニ新大統領が、ニューヨークで開かれる国連総会に出席する。オバマ米大統領がロウハニ大統領とその場で文字通り握手を交わすかどうか、世界の注目が集まる。
ホワイトハウスのカーニー報道官は19日、1979年のイラン革命により国交を断絶して以来初めて、米イラン首脳会談が開催される可能性を示唆した。同報道官は「(首脳会談は)可能だ。これまでも常に可能だった。オバマ大統領は就任直後から、手を差し伸べてきた」と述べた。 ただ会談が実現した場合でも、両首脳が突っ込んだ内容を話し合う公式会談ではなく、国連内で握手を交わし、儀礼上のあいさつをする程度にとどまる可能性の方が高いとみられる。 このところイラン指導部は融和的な姿勢を見せ始めており、対する米政権は硬軟のバランスをとるのに難しい対応が求められている。 オバマ大統領は焦点となっている核開発問題をめぐる交渉で、最終的にはイラン側の譲歩を引き出したい考えだ。しかし、イラン側が具体的な行動を示す前に米国が歩み寄りすぎれば、ただでさえシリアやエジプトでの対応で苦戦が続くオバマ政権に対し、また外交で失敗したとの批判が噴出しかねない。 <柔軟な姿勢で「攻勢」かける新生イラン> 8月にロウハニ大統領が就任して以来、イランが発するメッセージは驚くほど柔軟なものに変化した。ロウハニ大統領は、米NBCの番組に出演して核兵器を開発しないことを明言。ユダヤ教の新年にあたるロシュハシャナに際しては、祝福のメッセージをツイッター上で送り、著名な人権活動家で政治犯として服役していた弁護士のナスリン・ソトゥデ氏を釈放した。 さらに同大統領は、19日付のワシントン・ポスト紙に寄稿し、世界の指導者たちに対して「建設的な対話に向けたわが国の努力に対し、誠意をもって応じるべきだ」と呼びかけた。 これに対しホワイトハウスは、オバマ大統領からロウハニ大統領に対し、イランの核開発が平和利用に限るということが示されれば、核問題を解決する用意があるとする書簡を送ったことを明らかにした。 両首脳が握手するかどうかにかかわらず、より困難な問題は、直接対話に入る準備が両国にできているかどうかだ。 米国はイランが、民生用核プログラムを隠れ蓑に、原子力兵器の開発を進めているとの疑惑を抱いており、こうした兵器はイスラエルや地域の親米的な産油国にとって脅威になるとみている。一方、イランは核開発はあくまで平和利用に限ったものだとして、こうした疑惑を否定している。 イランと欧米諸国の交渉は10年に及んだが、いまだ解決の糸口を見いだせずにいる。米政府はイラン核問題の解決にあたり、あらゆる選択肢は排除しないとしており、武力行使の可能性も示唆してきた。 両首脳とも24日に国連総会での演説が予定されている。この中で両国の雪解けを感じさせるメッセージが含まれるのか、世界の注目が集まる。また、前回には爆弾の絵を使ってイラン核開発の危険性を説いたイスラエルのネタニヤフ首相の演説も、新生イランにどう応えるのか、関心を集めるだろう。 ロウハニ大統領は、ホロコーストに疑問を呈し、イスラエルの生存権を否定したことで欧米諸国の不興を買ったアハマディネジャド前大統領との違いを際立たせることで、国際社会に自らの魅力をアピールするとみられる。 一方、オバマ大統領の演説は、イランとの対話の用意があること示すと同時に、協議は無期限ではないとイランに釘をさすという微妙なバランスが求められるだろう。オバマ大統領は、イランとの対話のチャンネルを保ちながら、一方でそうした姿勢を「弱腰」だとみなす国内保守層からの批判に耐えなければならない。 ブッシュ前大統領の政策スタッフだったエリオット・エイブラムス氏は、オバマ大統領はイランが本当に対話を望んでいるかを見極めるにとどめ、ロウハニ大統領との接触は避けるべきだと語る。 その理由としてエイブラムス氏は、イランの最高指導者はハメネイ師であり、両首脳の立場が対等ではないことを挙げた。「オバマ大統領がロウハニ大統領に会えば、米国が交渉成立を焦っていると受け止められるかもしれない」と述べた。 さらにエイブラムス氏は、オバマ大統領がシリア問題をめぐり、武力行使ではなくロシアの提案に乗ったことで、イランに対する影響力が低下したと指摘する。「シリアへの武力行使を思いとどまったことで、米国がいかなる軍事力行使も望んでいないと思わせてしまった」という。 <当局者レベルの接触か> 国連で両首脳、または外相レベルの会談が実現するとの憶測はあるものの、米政府関係者は、当局者レベルでの接触にとどまる公算が高いと話す。ある関係者は「相手が本当に対話に応じるつもりなのか、確証が持てない段階では、その方が現実的だ」と指摘する。 カーネギー国際平和基金のイラン問題専門家、Karim Sadjadpour氏は、米国とイランの真の和解は難しいものの、両首脳による握手が雪解けへの足がかりになるかもしれないと語る。 また同氏は、ロウハニ大統領やザリフ外相が米国以外の諸外国に柔軟な姿勢を印象付けることに成功すれば、米国が対イラン経済制裁を維持するのは難しくなるだろうとも指摘。「彼らの姿勢は米国とイスラエルにとっては諸刃の剣だ。以前よりとっかかりやすくなったが、孤立させることは困難になった」と語った。 (Arshad Mohammed記者、Matt Spetalnick記者、翻訳:新倉由久、編集:宮井伸明)
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