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16日に公表されたシリアに関する国連調査団の報告書は、内戦下の首都ダマスカス郊外で8月21日、神経ガス・サリンを使った攻撃があったことを確認した。「今世紀最悪の大量破壊兵器の使用」(潘基文(バンキムン)事務総長)の実態を、国連や米英仏政府の報告書、目撃証言などから再現した。【ニューヨーク草野和彦、カイロ秋山信一、ワシントン西田進一郎、ロンドン小倉孝保、パリ宮川裕章、モスクワ田中洋之】
◇攻撃前
シリアのアサド政権のシリア科学研究センター(SSRC)関係者ら化学兵器要員が、ダマスカス近郊のアドラで「活動」を始めたのは攻撃3日前の8月18日。米報告書によると、アドラではアサド政権がサリンを含む化学兵器を製造している。活動は21日早朝まで続き、要員たちはガスマスクを着用していた。
米情報機関は偵察衛星などで化学兵器の所在を掌握する一方、政権による使用を警戒。米ホワイトハウスは今年6月、アサド政権が昨年、サリンを含む少量の化学兵器を反政府勢力に使用したと発表し、英秘密情報機関も「計14回の使用をかなり高い確度」で把握していた。米英両政府は神経をとがらせていた。
反体制派は昨年秋以降、ダマスカス中心部に向けて東郊と南郊から迫っていた。主力は主要武装組織「自由シリア軍」で、国際テロ組織アルカイダ系のヌスラ戦線も共闘。一方、地元住民によると、政府軍は今春以降、反体制派の拠点を戦車で包囲し、首都北方のカシオン山から連日、砲撃していた。カシオン山にはアサド大統領直属の精鋭部隊「共和国護衛隊第104旅団」の軍事施設がある。
米報告書は、アサド政権について、ダマスカス近郊からの反体制派の排除に失敗し「いら立ち」を募らせていたと指摘。「反体制派によるダマスカスへの大規模攻撃を懸念していた」(仏報告書)との見方もあった。
◇最大限の被害
21日未明。ダマスカス郊外の反体制派支配地域にサリンを搭載した地対地ロケット弾が撃ち込まれた。国連報告書によると、東郊のエインタルマ、ザマルカ地区ではビルの屋根などに着弾、南部モアダミヤ地区ではアパート裏庭に落下した。米報告書によると、被害は東郊10カ所、南郊2カ所で発生した。
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ザマルカ地区に住む反体制派活動家、ムハンマド・サラハさん(24)が爆音で目覚めたのは同日午前2時20分ごろ。外に出ると、「化学兵器だ」と騒ぐ声が聞こえた。多くの人が口から泡を吹き呼吸困難で苦しんでいた。
約3キロ離れた病院には患者や死者が運ばれてきた。カメラマンのムハンマド・タイブさん(21)は友人の医師に「病院に来て撮影してほしい」と頼まれた。午前3時ごろには10人が死亡、約50人の患者がいた。重症者は呼吸困難で歩けず、軽症者も手足の震えが止まらなかった。
米報告書によると、午前2時半から4時間で、ダマスカス近郊の少なくとも計12カ所からのソーシャルメディアによる被害報告は数千件に上った。ダマスカス地域の3病院には3時間弱で、神経ガス被害の症状を示す患者約3600人が運ばれた。
国連報告書によると、当時の気温は低く、大気は上から下に向かって流れていた。そのためサリンも地表付近に滞留し、人的被害が最大限になる条件が整っていた。タイブさんは夜明け後、ザマルカ地区周辺だけで約500体の遺体を目撃した。
国連調査団は別の化学兵器使用疑惑の調査のため、ダマスカス入りしていた。米政府は、アサド政権高官が政府軍による化学兵器使用を確認したうえで、調査団がその証拠を入手することを懸念する通信を傍受。化学兵器要員に任務中止の指示が出されたのは、21日午後だった。
◇証拠隠滅?
米報告書によると、化学兵器攻撃終了後、政府軍は通常兵器による集中砲火を行った形跡がある。24時間で、それ以前の10日間の約4倍の規模だった。攻撃は、国連調査団が現地入りする26日朝まで続いた。
仏報告書は「証拠隠滅工作」との見方を示した。「(政府軍が)地上砲撃し、調査団の到着を数日間遅らせようとした」、「火災を発生させ、気流を巻き起こして大気を浄化する動きに出た」からだ。
米偵察衛星が確認したロケット弾の発射は「政権の支配地域から」で「反体制派の支配地域や紛争地域に着弾した」。
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国連の調査もそれを裏付けた。ロケット弾はエインタルマ地区には北西の方向、モアダミヤ地区には北東方向から飛んできたことを確認。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)がこの方角から推定した飛行経路上にはいずれも、カシオン山の第104旅団の軍事施設があった。自由シリア軍幹部によると、この山は政府軍が掌握しており、反体制派が入り込むのは難しいという。
モアダミヤ地区に撃ち込まれたのは、M14改良型でロシア語のキリル文字の刻印があった。エインタルマ地区など東郊に飛来した330ミリ砲弾の弾頭部には50〜62リットルのサリンを搭載できた。いずれも「政府軍のみが保有・使用していることで知られている」(HRW)武器だった。
「反体制派が化学兵器を所有しているという主張は根拠がない」(英報告書)など、「政権側による攻撃」説に同調するのは日本、ドイツ、イタリアなど30カ国を超える。
◇ ◇
一方、「化学兵器使用は反体制派による挑発行為」とみるロシアは、国連の調査は不十分と主張している。国連の報告書も「調査時間は限られ、部品が他から運ばれるなど操作された可能性もある」と指摘している。
リャプコフ露外務次官は18日、「アサド政権は国連調査団に反体制派の使用を示す証拠を提供したのに、必要な注意が払われなかった」と述べ、報告書の「公平性」に疑問を提示。8月21日のケース以外の化学兵器使用疑惑なども調査して最終的な結論を出すよう求めている。
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◇国連調査団の報告書の概要
・8月26日にモアダミヤ地区、28〜29日にエインタルマ、ザマルカ地区で調査
・50人以上の証言などによると、21日未明に地対地ロケット弾が着弾し、その破片からサリンを検出
・計30の試料の大半からサリンや副生成物、分解防止剤などを検出
・生存者36人に▽意識喪失▽息切れ▽視覚障害▽唾液の過剰分泌▽目の炎症▽嘔吐(おうと)−−など有機リン中毒特有の症状。うち34人の血液、尿検査で約9割がサリン反応で陽性
・子供を含む市民に、比較的大規模に化学兵器が使用されたと結論
http://mainichi.jp/select/news/20130921ddm007030127000c.html
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