http://www.asyura2.com/13/warb11/msg/760.html
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8月21日、シリアの首都ダマスカスの近くの反政府軍の支配地区に対してロケットによる化学兵器(毒ガス)攻撃が行なわれ、多数の一般市民 が殺されました。死者数は初め約1300人と発表され、現在では数百人とされています。宣伝用に動画を含むおびただしい数の映像が流されました。シリア情 勢に関心のある人ならば、必ずその幾つかをご覧になったでしょう。今度アメリカが始める戦争はYouTubeの映像から立ち上げられた史上初の戦争として 記録されるだろうという声もあり、映像が示されているサイトは無数にあります。ワシントン・ポストの8月23日付けの記事もその一つです。
そのフォト・ギャラリーには、白布に包まれた幼い子供たちの死体が魚河岸の魚のように並べられた写真があります。他の写真の多くも子供の犠牲者の様子を撮ったものです。ご覧になって下さい。
この毒ガス使用がアサド政府の行為とは到底考えられない理由と具体的根拠はいくつもあります。第一、前回(3月、アレッポ近郊)の毒ガス使用事件の真相 解明のため国連調査団がダマスカスに到着したその8月21日に、わざわざ新しく政府側がダマスカス近郊で毒ガスを大々的に使用して多数の子供たちを殺傷す るとは全く考えられません。同じ8月21日、ダマスカス近郊で政府軍と共に戦っていたレバノンのヒズボラ派兵士三人が毒ガスにやられたことがベイルートか ら報じられています。アサド政府が、化学兵器を使用していないことを国連の調査を通じて立証し、米欧の直接軍事介入を何としても避けたいと思っている時 に、毒ガスを使用するわけがありません。
しかし、今回の毒ガス使用が米欧の直接軍事介入の口実として行なわれたと私が確信する理由は、別のところにあります。それは、今日までの歴史的推移とオ バマ大統領をはじめ、ケリー、スーザン・ライス、サマンサ・パワーなどの米政府高官、それに米政府の報道官たちの化学兵器使用に関する発言の“語り口”で す。“語り口”など最も脆弱な状況証拠に過ぎないと言わないで下さい。長く生きていると、嘘を吐いている顔は大抵の場合分かるものです。稀代のコンマン、 バラク・オバマのポーカーフェイスもちゃんと読めます。嘘つきの顔を読む練習をしたければ、手始めとして、事件直後の8月22日の米国務省報道官サキの顔をよく見て下さい。「反政府側には化学兵器を使うだけの能力が無い」と言い切る彼女の顔を。
http://rt.com/news/syria-chemical-attack-cooperation-841/
また、歴史的事実とは、外交評論誌FP(Foreign Policy)の8月26日付けの記事『Exclusive: CIA Files Prove America Helped Saddam as He Gassed Iran (特ダネ:CIA ファイルはサダム・フセインがイランを毒ガス攻撃した時アメリカが彼を助けたことを証明)』を指しています。この雑誌にこの記事、ちょっと意外な感じです が、裏を返せば記事内容の信憑性の保証でもあります。:
歴史的に見て、化学兵器あるいはそれに類似する効果を発揮する兵器を使用することにかけては、米国の右に出る国はありません。化学兵器や生物兵器が 嫌悪され、国際法で使用禁止となっているのは、それらが老若男女を問わず、人間を残忍無惨に殺傷するからで、二つを合わせて貧者の核兵器と呼ばれることも あります。米国は富者として本物の核兵器を使用した唯一の国であり、またAgent Orange や劣化ウラン弾を最も多量に使用してきた国でもあります。サリンを使って自国民を殺すアサド政権からシリアの老若男女を保護するために武力行使もやむを得 ないというアメリカの大嘘を、地獄の閻魔大王はどんな顔をして聞いていることでしょう。
今回の化学兵器使用に就いて、上のFP掲載の記事にあたる「シリアの毒ガスは、実はCIA(あるいはイスラエル)が用意した」という暴露記事が出るのは いつのことでしょうか。10年後? 20年後? 間もなく降り注ぐ米欧軍のミサイルの雨に打たれて死んで行くシリアの老若男女にとって、それこそ後の祭り というものです。
しかし、私の心に最も重くのしかかって来るのは、虚々実々の政治的暗闘への嫌悪感ではありません。今度の毒ガス使用のむごたらしい映像を見つめながら、 心の底に重く重く沈殿してくるのは、この宣伝映像が幼き者たちの苦悶と死に重点を置いて編集されているという事実に対する怒りです。こうした映像を利用す る政治的意図こそ、痛々しい幼き者たちの魂に対するこの上ない冒涜であります。つい二三日前のこと、あるテレビニュースでアメリカの慈善団体がシリア難民 キャンプで子供たちのために学校バスを運営していることが報じられていました。文字通りの“スクールバス”で、内部の各座席に一台のパソコンが付いてい て、子供たちは嬉々としてお勉強に励んでいました。What is this! と私は叫んでしまいました。なんと不必要に贅沢な学校、ここに明白にディスプレーされているのは米欧の毒々しい偽善の醜悪さであって、幼きものたちに対す る愛情とは何の関係もないどころか、彼らの喜ぶイメージを自己宣伝に利用する許し難い背信行為です。もしこんなことをする金があるのなら、例えば、ハイチ の子供たちにせめて安全な水道の水を飲ませてやって欲しい。川の泥水を飲んでコレラに罹って死なないように。私の脳裏には、またしても、例のマドレーン・ オルブライトの発言が浮かびます。以前にもこのブログで取り上げたことがありますが、今日はウィキペディアから少し引用します。:
■1996年、60 Minutesに出演して、レスリー・ストールから対イラク経済制裁について“これまでに50万人の子どもが死んだと聞いている、ヒロシマより多いと言わ れる。犠牲を払う価値がある行為なのか?”と問われた際「大変難しい選択だと私は思いますが、でも、その代償、思うに、それだけの値打ちはあるのです」 (“I think that is a very hard choice, but the price, we think, the price is worth it. ”)と答えた。なお、オルブライトのこの発言を腹に据え兼ねた国連の経済制裁担当要員3名(デニス・ハリデイ、ハンス・フォン・スポネック、ジュッタ・ バーガート)が辞任。このうちハリデイは「私はこれまで(対イラク経済制裁について)“ジェノサイド”という言葉を使ってきた。何故なら、これはイラクの 人々を殺戮することを意識的に目指した政策だからだ。私にはこれ以外の見方が出来ないのだ」とコメントを残している。■
そうなのです。幼い子供たちの苦しみを政治宣伝の具に供する狡猾さこそあれ、幼い命の尊重などは、米欧の支配権力にとって、極めて低いプライオリティしか与えられていません。彼らのプライオリティの真の序列を見据えることが我々にとって喫緊の要事です。
藤永 茂 (2013年8月30日)
もう二度と幼い命は尊いと言うな-私の闇の奥
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2013/08/post_4fe1.html
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