★阿修羅♪ > 戦争b11 > 749.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
Russia24:アサド大統領インタビュー「一方向の行為ではなく、最終的段階へ進むのは、アメリカの攻撃的政策の停止を確認
http://www.asyura2.com/13/warb11/msg/749.html
投稿者 stix 日時 2013 年 9 月 17 日 12:58:04: CWDPek5e8lCZQ
 

シリアのアサド大統領インタビュー 2013年9月12日 Russia24
http://www.youtube.com/watch?v=XZYXATvP_yQ&feature=c4-overview&list=UUe0cjGTQptjVZMwUUaLDPJQ

Russia24:
なぜ、シリアはこれほど早くロシアの提案、即ち化学兵器の国際管理を受け入れたのですか。

大統領:
シリアは、10年以上前に国連に中東から大量破壊兵器を除去する目的で1つの提案を出しました。この地域は不安定で、数十年前、あるい は何世紀も前から戦争の地域だからです。国際法に違反するすべての兵器を取り除く事は、地域の安定化に貢献するでしょう。
当時、アメリカはこの提案を妨害しました。私たちは安定と平和を求める限り大量破壊兵器の存在はマイナスであると考えます。

第二に、現在の状況を見れば、シリアが、新たな狂気じみた行為、アメリカで戦争支持者が望む中東での戦争から自国と周辺国家を免れ させたいと思うのは、明白なことです。
現在、我国はアフガニスタンやイラクでアメリカが行った戦争の代価を払っています。シリアに対する戦争は、どれも将来、そして、お そらく次世代にこの地域を騒乱と様々な問題へと導くことになるでしょう。

第三に、ロシアの率先的措置に関して、この提案は最も重要であり、これが私達をこの方向へ向かうよう動機付けました。ロシアから出 された提案でなければ、シリアがこの方向へ向かう事は困難だったでしょう。ロシアとの関係は信頼関係であり、この関係は2年半に及ぶ この危機を通じて強まりました。ロシアは中東の状況の理解能力を示し信用できる国家であり、私たちが信頼できる大国であることを証 明しました。

以上が、化学兵器禁止条約調印へ向けシリアが取り組むことを決めた理由です。

Russia24:
しかし、バラク・オバマ大統領とジョン・ケリー国務長官は、シリアがこの提案、則ち、化学兵器の国際管理を受け入れたのは、空爆の 威嚇があったからだと述べています。

大統領:
アメリカの威嚇は、非武装化が目的ではなく、ダマスカスのブータの化学兵器使用に関する主張の文脈でシリアを攻撃することが問題で した。したがって、アメリカが脅したためにシリアが化学兵器保有を諦めるという事は正しくありません。彼らがこの主題を取り上げた のは、モスクワでのG20の前ではありません。

先ほど述べたように、私達の決定を動機付けたのは、ロシアの率先的措置、そして、ロシアの責任者との話し合いです。ロシアからの提 案でなければ、この主題についていかなる国とも話し合う事は不可能だったでしょう。

全てはアメリカの望むプロパガンダです。ケリーもオバマも威嚇して何かを勝ち取る勝利者として自らを提示しようとします。しかし、 それは重要ではありません。この事件の最重要な点は、シリア側の確信とロシアの役割です。

Russia24:
ロシアは、アメリカに化学兵器国際管理の実施の必要な段階についての情報を与えたそうです。今後の手続きについて話していただけま すか。

大統領:
数日後にシリアは、条約調印に必要な技術的な資料に関する書簡を国連と化学兵器禁止のための機関に提出します。条約は、製造、保管 、使用の禁止など複数の要素を含みます。条約は調印後1ヶ月で有効になります。その後、シリアは保管中の化学兵器のリストを機関に 提出します。

とはいえ、一方向で物事がなされるわけではないことは明らかです。シリアが調印したので事件は終わったというのは問題外です。この 問題では何よりも両者が行動するべきであり、特にアメリカはシリアへの攻撃的な政策を止め、ロシアの率先的措置の条件に応じるべき です。
アメリカが地域の安定化の方向へ向かい、威嚇や戦争への工作を止め、テロリストの武器輸送を止めたと確認して、初めて、私達は合意 の最終的段階へ進むつもりです。一方向の行為ではないのです。

そして主要な役割を演じるのはロシアです。我々とアメリカの間にはいかなる信頼も接触もないのですから。ロシアだけが現在この役割 を演じる能力があります。

Russia24:
ロシアの提案が採用された場合、シリアはオブザーバーとしていかなる国際的な代表団を選びますか。

大統領:
化学兵器禁止機関がその役割を演じるでしょう。能力と専門家を持ち、世界各国で条約の適用を監査できるのは、この機関だけです。イ スラエルが化学兵器禁止条約に調印したとはいえ、これを批准しなかった事は皆が知っていることです。

Russia24:
シリアは、イスラエルもこのプロセスを遂行することを求めますか。

大統領:
私たちが大量破壊兵器除去案を提出した時、アメリカがこれを妨害した理由の1つが、イスラエルにこれらの兵器の保有を許したいという ことでした。

中東の安定を皆が望む以上、全ての国が条約に従うべきです。特にイスラエルは、核兵器、化学兵器、細菌兵器、あらゆる種類の大量破 壊兵器を保有しています。
いかなる国も大量破壊兵器を保有しないという方向で問題に取り組み続けるべきです。そうすることで、中東だけでなく世界全体に犠牲 を要する破壊的な戦争を避けられます。

Russia24:
シリアは化学兵器を国際管理下に置きますが、アレッポ付近で過激派が毒性の化学物質を使用したことをロシアの専門家が認めています 。この事をどう思いますか。これらの集団のこのような攻撃からシリア国民や隣国を守るために何を提案しますか。

大統領:
この事件は3月におきました。テロリストは毒性の化学物質を含むミサイルをカン・アル・アッサルの民間人に向けて発射し、数十人の犠 牲者が出ました。私たちは、この攻撃の責任者に関する国連の調査を要請しました。

この攻撃がテロリストの仕業であることが明らかであるため、アメリカは専門家の派遣を妨害しました。そのため私たちはロシアの専門 家と共に調査をしました。私たちは、すべての証拠をロシアの専門家にゆだねました。彼らは攻撃が確かにシリア北部で活動していたテ ロリストによって行われたことを証明しました。

1週間前に去ったこれらの化学兵器専門家が、シリアに戻り、私たちが調印した合意に従い、カン・アル・アッサルを含めた複数の地域で 調査を続けるようにするべきです。いかなる性質の毒性物質が使われたのか、誰が使用したのか、いかなる国がこれをテロリストの手に 渡したのかを真面目に調査し、それらの国々に釈明を求める必要があります。

Russia24:
それらの毒性物質をテロリストから没収することは可能ですか。

大統領:
テロリストと関係を持つのはどこの国かを知る必要があります。全ての国がテロリストとは関係がないと主張しますが、西側諸国は非致 死的物質、あるいは、人道的物質の輸送に関する支援を行っていると述べています。
実際は、西側諸国と中東のトルコやサウジアラビアやカタールは、テロリストと直接的に関係を持ち、あらゆる種類の兵器を供給してい るのです。その国の1つが化学兵器を供給したと私たちは確信しています。

これらの国は武器供給を停止したと推定されますが、テロリストの中には誰にも従わない者があり、彼らは武器を与えられると武器や資 金を受けた相手にさえ借りがあるとは感じません。

Russia24:
アメリカのメディアは、シリア軍が化学兵器を反対派武装集団に対して使用する許可を求めたが、あなたは拒否した。彼らはそれにもか かわらず、個人的に毒物を使用したと言っています。

大統領:
これは、アメリカのプロパガンダの一部です。アメリカが戦争を正当化するため、進んであらゆる嘘を用いる事は有名です。今回の嘘は コリン・パウエルとジョージ・W・ブッシュ政権が用いた嘘を思い出させます。
彼らは、イラク侵攻を正当化するためにサダム・フセインが大量破壊兵器を製造する証拠を持つと主張しました。しかし、彼らは完全に 嘘をついたことが後で分かりました。

シリアで化学兵器を誰かが使用しようとした事はありません。この種の兵器は、歩兵などの軍隊には使えません。使用法を学んだ特別部 隊を必要とします。この嘘は論理を欠き、信用に値しません。

Russia24:
確実で疑いの余地のない証拠がアメリカの議会で提示されたそうです。シリア軍が東グータで化学兵器を使用したことを示すビデオだそ うです。

大統領:
彼らは、議会にも、メディアにも、国民にも、ロシアをはじめとした他の国にも、いかなる証拠も提示しませんでした。
彼らが言っていることは、すべてアメリカのプロパガンダの一部です。

論理的に見て、化学兵器を自分たちの軍隊や住宅地の近くで使用するということは、数万人の兵士と民間人を殺すことです。戦場で前進 している時に化学兵器を使う必要はありません。

これらの主張は説得力がありません。現在のアメリカの政権の状況の困難な状況は、そこから生じます。ジョージ・W・ブッシュ政権よ りも嘘が下手です。前の政権は嘘をついても、世界の一部を説得することに成功しました。現在の政権は、同盟国さえも説得できません 。これらの主張は、今後全く重要性を持ちません。

Russia24:
ロシアや他の国のメディアは、シリア政府の支配下にある地帯からテロリストが化学兵器攻撃をイスラエルに対して行う可能性を述べて います。シリア軍の総司令官として、あなたはこの情報の正しさを認めますか。

大統領:
毒性の化学物質がテロリストに与えられ、シリア軍兵士やシリアの民間人に対して使われた以上、それは正しいです。
しかし、他方でテロリスト集団がアメリカのシリア空爆を望んでいたことは知られています。彼らはイスラエルがシリア危機に介入する よう熱心に取り組んでいました。この言説が同じ目的を達するために流された可能性はあります。

中東で戦争が起これば、状況はますます混乱化し、混乱によりテロリストは一層破壊活動を行うでしょう。テロリストが毒物を保有して いる今、戦争の威嚇は、まさに挑戦的なことです。このテロリストに相変わらず化学兵器を供給している国が存在するのです。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2013年9月18日 01:26:53 : niiL5nr8dQ
2013年9月17日 橘玲
中東シリアの終わりなき殺し合い
[橘玲の日々刻々]

「あらゆる問題は解決されるべきだし、解決できる」と考えているひとがいますが、世の中には原理的に解決不可能な問題が存在します(というか、実はそれがほとんどです)。そしてここに暴力(とりわけ国家の暴力)がからむと、目を覆わんばかりの悲惨な事態を招きます。中東・シリアでいま起きていることはまさにその典型です。

 第一次世界大戦でオスマントルコが崩壊した後、中東はヨーロッパ列強の支配下に置かれ、歴史や文化、民族構成とは無関係に分割されました。この時期、フランスの委任統治領だった地域が現在のシリアで、アラブ人が人口の9割を占めるもののクルド人やアルメニア人もおり、国民の7割がイスラム教スンニ派ですが、2割はシーア派、1割はキリスト教徒です。

 シリアの政治権力を独占しているのはシーア派のなかでも少数派のアラウィー派に属するアサド一族で、空軍司令官だったハーフィズ・アル=アサドが1970年にクーデターで権力を掌握して以来、親子2代にわたって独裁政権を維持してきました。

 宗教的少数派であるアサド一族は、宗派を超えてアラブ民族の栄光を取り戻すことを目指す(汎アラブ主義の)バアス党を権力の基盤とし、イスラム主義による政教一致を求める多数派(スンニ派)のムスリム同胞団を徹底して弾圧してきました。シリアはエジプトに次ぐ中東の軍事大国ですが、アラウィー派のバアス党員で構成された最精鋭の共和国防衛隊や秘密警察は、“イスラム原理主義者”からアサド一族を守るための組織なのです。

 独裁政権による弾圧のなかで最大のものは1982年のハマー虐殺で、ムスリム同胞団の拠点であったハマーの町をシリア軍が攻撃し、多数の(犠牲者数の推計には1万人から4万人まで大きなばらつきがある)市民が殺されました。

シリアの内戦は“宗教戦争”で、シーア派のアサド一族の背後にはイランとヒズボラ(レバノンのシーア派武装組織)がおり、それに対抗する反政府勢力はサウジアラビアなどスンニ派の大国と英米仏など“反イラン”の西欧諸国の支援を受けています。双方が容易に武器を入手できる以上いつまでたっても決着はつかず、このままでは戦闘がえんえんとつづくだけです。

 長年の圧制に苦しんできたスンニ派のひとびとのアサド一族とアラウィー派への憎悪は深く、いったん立場が逆転すれば旧体制への徹底した報復が行なわれるのは明らかです。現政権もそのことを熟知しており、“反乱軍”を皆殺しにする以外に生き延びる道はないと考えます。この状況を打開するには10万人規模の平和維持軍を送り込み、内戦終結後の治安維持を保障しなければなりませんが、イラクでの失敗の後、アメリカも含めどこもそんな火中の栗を拾おうとは思いません。

 首都ダマスカス近郊で化学兵器が使用され、サリンと見られる神経ガスで市民など1300人以上が死亡する悲劇が起こりました。現在はアメリカの主導で政府軍への空爆が検討されています。

 しかし中途半端な介入では、事態はなにひとつ変わらないでしょう。シリアの内戦による死者は10万人を超え、さらに悪化の一途を辿っていますが、終わりなき殺し合いを止めるための知恵は誰も持っていないのです。

『週刊プレイボーイ』2013年9月9日発売号に掲載


02. 2013年9月18日 02:05:45 : niiL5nr8dQ
【第24回】 2013年9月18日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
シリア問題から透けて見える「世界の構造変化」
米国の抑止力が低下するなか日本が目指すべき外交
オバマ米大統領が抱えたジレンマ
人道的介入と予算をめぐる議会対策

 後世の人々は、今日のシリア問題が世界の構造変化の1つの大きな節目であったと見るのではなかろうか。

 シリア問題はチュニジアに始まる「アラブの春」の一端であるが、結果的に民主化が達成される見通しが明るいわけではない。エジプトも似通った面があるが、軍事独裁体制を打破する行動が民主化を求めるよりも、結局は宗教色が強い闘争となり、多くの命が失われる。

 圧政を極めるアサド政権を崩壊させるべきであるとしても、アサド政権に対抗する勢力を支援することが民主化につながるとは限らない。シリア情勢が内戦という様相を濃くした8月21日、化学兵器が使用される。米国の推計によれば、子どもも含め1400人を超す犠牲者が出たという。

 国際法で禁止された大量破壊兵器の使用は、人道に対する罪である。このことにより、シリア問題は国際社会が具体的かつ迅速に行動せざるを得ない局面に至ったが、シリア問題を巡る各国の行動は世界の構造変化を如実に示すこととなる。そしてこれが、日本や東アジアを含め今後の世界に与える影響は極めて大きい。

 核兵器廃絶を唱えるオバマ大統領にとり、大量破壊兵器により多くの市民が殺生されることは断固許されるべきことではないという意識は強いのだろう。昨年の8月、後から考えれば不用意とも思われたが、「化学兵器の使用はレッドラインを超える」と発言する。もしレッドラインを超えれば、軍事力を行使するという意味である。

 オバマ大統領はこの1年前の発言に従い、軍事力の行使を決断する。米国が行動しなければ、大量破壊兵器の使用を野放しにすることになるのではないか。しかし、オバマ大統領はブッシュ前大統領のイラク戦争に反対し、イラク、アフガンからの撤兵を主張して大統領になったわけで、ブッシュ前大統領と同じ過ちをするわけにいかない。

 イラクにおいては大量破壊兵器があるとして攻撃を開始し、結果的に撤兵まで8年の歳月と多くの犠牲者を出し、膨大な軍費負担が現在の財政赤字の元凶となった。

 したがって地上軍は投入せず、空からの限定的な攻撃に限るという。本来軍事行動を始めることに議会の承認は必要としないが、たぶんここでオバマ大統領の頭に去来したのは内政、特に予算を巡る激しい議会との攻防への影響なのだろう。

 オバマ大統領は、あえて議会の承認を得るという行動に出る。しかし、大統領が自らの決意で軍事力行使の行動に出るのと違い、事前に議会に対して納得できる説明をするのは難しい。

 限定的である保証は何か。ずるずると兵力を投入していくことになるのではないか。米国の国益は何か。米国は軍事介入の結果より、安全になるのか。シリアに軍事介入することで、再び米国がテロのターゲットになるのではないか。

キャメロン英首相の誤算
330年ぶりの英国議会の否決

 米国議会での承認を一層困難にしたのは、英国議会が軍事行動につながる決議を否決したことである。キャメロン英国首相は、オバマ大統領以上にシリアへの軍事行動の必要性を感じていたのだろう。

 英国でもイラク戦争の後遺症は強いが、リビアでカダフィ追い落としの空爆作戦が英仏の主導により成功したことが、世論を多少とも変えたという見方があったのかもしれない。

 議会に提案された決議案は、「軍事行動の必要性が出てくるかもしれない」「その場合にはもう一度議会の承認を得る」という穏やかな二段階決議案であったが、議会はこれを否決する。重要な国家安全保障上の首相の判断が覆されたのは、330年前に植民地米国の反乱を抑圧するための軍事行動を継続する動議が否決されて以来という。

 1991年の第一次湾岸戦争、2003年のイラク戦争のいずれにあっても米国を真っ先に支持し、戦争の前線に出たのは英国であったが、この伝統的な米英特殊関係も過去の遺物となったのであろうか。

 このような状況の中で、シリア化学兵器の国際管理と廃棄のロシア提案は、オバマ大統領やキャメロン首相の窮地を救うという意味はあったのだろう。米国がこのまま議会での採決に至っていれば、否決された公算は大である。

 オバマ大統領は、英国が軍事行動に加わらないとした状況でも、議会の反対はあっても軍事行動に突き進んでいたのだろうか。オバマ大統領にとっては、危険な賭けとなっていたのだろう。

 ロシアの提案は、軍事行動の目的である化学兵器の使用を抑止し、これを廃棄させることを実現しようというものであり、米国も大義を失うことなく、当面の時間を得たということは言えるのだろう。

シリアの化学兵器廃棄への障害は大きい
内戦終結への取り組みと表裏一体であるべき

 14日に発表された米ロ外相合意が、1週間以内のシリアによる化学兵器の申告と、明年夏までの全面的廃棄などの時限性を持っていることは重要な点であるが、履行が十分でない際、安保理が国連憲章7章のもとでいかなる措置をとるかについては玉虫色である。

 さらに、この合意を実現していくことの障害は大きい。シリアが化学兵器の貯蔵場所について申告をしたにしても、これを内戦下で検証していくのには多大の困難が伴う。停戦の合意がなければ、検証に携わる人々の安全は担保されない。反政府勢力は米国の軍事介入を期待しており、停戦合意は簡単ではない。

 また、仮に貯蔵場所が確認されたとしても、これを無力化するには膨大な時間と膨大なコストがかかる。日本も中国に残した遺棄化学兵器の処理を行っているが、2000年に開始された事業も13年経った今でもまだ長い道のりを残している。

 したがって、シリアの化学兵器処理問題はシリアの内戦を終了させる国際会議と表裏一体でなければならないが、アサド政権は化学兵器問題を政権維持の道具とするであろうし、反政府勢力との溝は大きい。

 イラク問題も大量破壊兵器の査察検証を巡り、長い時間をかけた累次の安保理決議にもかかわらず、最終的にはサダム・フセインはこれに応じなかったことがイラク戦争に繋がっていったが、この悲劇を繰り返してはならない。

 この問題が国際関係に与える影響は極めて大きい。むしろ徐々に進んできた国際社会の大きな構造変化に、拍車をかけたと考えるべきかもしれない。世界の秩序を維持していく上での米国の指導的立場が揺らいでいる。

軍事力行使に対する世論はネガティブに
米国の力の信頼性と抑止力低下への危惧

 新興国の台頭により米国の求心力は陰りが見えてきたが、とりわけ今回のシリア問題が提起したのは、「米国の力の信頼性」(クレディビリティ)であったのかもしれない。すなわち、その政策が正しかったかどうかは別にして、米国はいざとなれば軍事力を行使することを示すことにより、国際秩序を乱す他国の行動を抑止してきたといえる。

 イラクのサダム・フセイン政権はこれに公然と挑戦をしたが、米国は二度にわたり軍事力を行使した。イラク戦争があまりに負担が重い戦争であったが故に、米国の世論はこのような形の軍事力行使には非常にネガティブになった。テロとの戦いについても、「米国が軍事力で抗していく結果が米国人に安全をもたらすものか」という疑問が根強い。

 米国の軍事力行使の敷居が極めて高くなったことは、米国の力の信頼性を下げ、米国の抑止力を下げるのではないかという危惧が生じている。とりわけ中国やロシアは、米国が主導する世界を是とはしない。シリア問題でもロシアと中国は結束し、アサド政権への制裁に反対してきた。

 軍事力ではなく外交による解決が望ましいことは論を俟たないが、大量破壊兵器を使用し自国民を虐殺する政権に対して、強制力を背景としないで外交が機能するとも思えない。

 欧州も割れている。英国でも米英特殊関係に影が落ち、仏は軍事力行使を支持するが、ドイツは米国との同盟関係よりもEUの連帯を重視する方向性が強い。

 アジアにはどういう影響があるのだろうか。

北朝鮮の大量破壊兵器の開発にも影響
中国は国際的発言力を高める契機と判断するか

 北朝鮮は、シリア問題の推移を息を凝らして眺めているのだろう。シリアとの間で化学兵器の製造技術を巡る関係が疑われているのみならず、北朝鮮自身が相当な化学兵器を保有していると推測される。

 大量破壊兵器の使用に対しても、米国が軍事力を行使する敷居が高まり、米国の力の信頼性が低下することは北朝鮮にとって有利な環境と判断し、さらなる大量破壊兵器の開発に進むという愚かな判断をする危険がある。

 逆に今後、国際社会が米ロ合意を安保理決議に移し替え、確実にシリアに履行を迫り、これを実現することができれば、北朝鮮に対しても大量破壊兵器の廃棄に向けての圧力が高まるのだろう。

 中国はどうだろう。中国はイラク、アフガンから撤兵後、米国が「ピボットないしリバランシング」としてアジアに軍事面でも展開を強化していることに警戒心を隠さなかったが、シリア問題で再び米国の軍事的集積が中東に移るのか、凝視しているのだろう。

 米国の権威に傷がつくことが、中国の国際的な発言力を高める結果になると考えるのかもしれない。シリアやイランといった中東情勢や北朝鮮情勢について、中国が自国の利益に基づく主張を強めていくであろうことは容易に想像がつく。

 日本も自国の立ち位置をしっかり見極めていく必要がある。日本ほど米国の軍事的抑止力に依存している国は少ない。核兵器を持たない以上、米国の抑止力に依存する以外の選択肢もない。したがって、日米同盟の効率性を高め東アジア地域で抑止力を維持するべく米国との信頼関係を強化するのは、当然であろう。

日本は東アジアの抑止力を維持すべく
日米関係の信頼の強化と外交力発揮を

 同時に、軍事力は抑止力として機能すべきものであり、そのような力の背景で大量破壊兵器やその他の脅威を除去するべく外交的力を発揮することを、心がけるべきであろう。

 シリア問題にしても、シリアに対する軍事行動に日本が参画していく余地はないが、化学兵器の廃棄について日本は経験を有しており、積極的に参画していくべきである。

 米国の抑止力に依存しなければならない国であればあるほど、軍事力によらない外交的問題解決に注力しなければならない。これは北朝鮮問題についてもあてはまるのだろうし、中国とどう向き合っていくのかについても、確固たる戦略の下で外交が機能しなければならない。


03. 2013年9月18日 02:51:01 : niiL5nr8dQ
JBpress>海外>USA [USA]
化学兵器を国際管理に置くことにしたシリアの欺瞞
アサド政権の延命で困窮する周辺国
2013年09月18日(Wed) 堀田 佳男
 これほどの欺瞞があるだろうか。

 シリア政府は過去、何度となく化学兵器の使用と保有を否定してきた。

化学兵器を持っていないと言い張っていたはずだが・・・

シリア政府の秘密部隊、化学兵器分散し「米国の追跡妨害」 米紙
荒廃したシリア首都ダマスカスのヤルムク)パレスチナ難民キャンプ(9月12日撮影)〔AFPBB News〕

 今月6日、日本外国特派員協会の会見に現れたシリアのワリフ・ハラビ駐日代理大使にその点を質した。

 「自国民に対して化学兵器を使っていないと、神に誓って言えるか」

 同代理大使は微笑を浮かべてはっきりと次のように答えた。

 「神に誓って言えます。化学兵器は使っていません」

 「化学兵器の備蓄があると思う。ロシアから持ち込まれているはずだ」

 「そんな事実は一切ありません」

 だが9日、それが虚言であることが分かる。シリアのイターム・ムアレム外相がモスクワでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談。シリア政府として初めて、化学兵器の保持・備蓄を認めたのだ。12日にはバッシャール・アル=アサド大統領もこの事実を追認した。

 さらにシリア政府はロシア側の提案で、化学兵器を国際管理下に置くことに同意。14日にはジョン・ケリー米国務長官とラブロフ外相がシリアの化学兵器の廃棄に向けた枠組みで合意した。

 これで米国の軍事攻撃は一時的に回避されたが、これまで築き上げてきたシリア政府要人たちの言説は一瞬にして論拠を失った。

 米国も過去何度となく、さまざまな場面で大統領や政府高官が虚言を述べてきてはいる。しかし化学兵器の全面否定から認知へと180度の方向転換を見せる数日前に、よくも「神に誓って言えます」と言えたものである。

 しかもハラビ駐日代理大使は筆者の目をしっかりと見据えながら返答したのである。次の週には外務大臣と大統領が全く逆の内容を公表すると知らなかったとはいえ、自己嫌悪に陥らないのだろうか。

 政府の中枢にいる人間がこうした虚言を吐く限り、化学兵器をすべて国際管理下に置くという合意をシリアが履行するか疑わしい。

米国、ロシアに次いで3番目に多い所有量

米露、シリア化学兵器の廃棄で合意 2014年半ばまでに
シリアの化学兵器廃棄で合意した米国とロシア(左は米国のケリー国務長官、右がロシアのラブロフ外相)〔AFPBB News〕

 2014年半ばまでに、すべての化学兵器を廃棄する予定だという。国連常任理事国の5カ国は廃棄案に合意しているが、シリア政府が本当に廃棄に真剣だろうか。

 と言うのも、シリアは化学兵器の所有量においては米国、ロシアに次いで世界第3位とも言われており、廃棄は容易な作業ではないからだ。

 専門家の見立てでは、少なくともシリア国内には10カ所以上の製造所と備蓄所がある。廃棄に至るまでには長期間が必要になるし、国際組織の監視員がシリアに派遣されても、隠蔽してすべてを開示しない可能性が高い。廃棄作業を行える要員や国際監視員の数にも限度がある。

 イラクで大量破壊兵器の調査を主導したデービッド・ケイ元団長は米テレビに出演し、「この作業ができる要員は全世界でも数百人しかいないので、迅速に化学兵器の調査と廃棄を行うことは難しい」と現状を語っている。

 米国は冷戦時代に3万1000トン以上の化学兵器を製造したと伝えられる。1997年以降、廃棄を始めているが、16年経った今もまだ終了していない。

 今まで化学兵器の使用だけでなく所有すら明かしてこなかった国家が、米国からの軍事攻撃をかわす目的だけで簡単に化学兵器をすべて手放すとは思えない。それは北朝鮮が核兵器開発を全面的に破棄しなかったことに似ている。

 さらにシリアは1997年に発効した国際条約「化学兵器禁止条約」を批准していない。同条約には189カ国が署名しているが、シリアは北朝鮮、イラク、イスラエルなどと並んで参加を拒絶している。その国が全廃を真剣に模索すると、どうして信じられるだろうか。

 百歩譲って、シリアが今後化学兵器の使用を中止しても、反政府組織が化学兵器を入手して使っているとの情報もある。

 国連は16日、調査報告書を公表し、8月21日に使われた化学兵器を神経ガスのサリンと断定したが、シリア政府軍によるものなのか反政府組織によるものかはいまだに不明だ。シリア政府は化学兵器の使用を認めていないが、1400人以上が死傷した事実は否定できない。

 米露による会談が進んでも、米国の軍事攻撃が一時的に回避されるだけで、内戦の終結につながるわけではない。戦火が長引けば長引くほど反政府組織の活動は過激になる傾向さえある。

シリアの反政府組織は数百に上る

米大統領がシリア問題で演説、「外交努力を優先」
シリア問題でリーダーシップが問われている米国のオバマ大統領〔AFPBB News〕

 すでにアルカイダ系組織「ヌスラ戦線」の動きは活発化している。欧米諸国が支援する「自由シリア軍」をはじめ、セクト間、民族間の反政府組織は数百に上るとの情報もある。

 都内で先週、ランチを共にしたヨルダン人は、「できればバラク・オバマ大統領には軍事攻撃を行ってほしい」と切実に訴えた。

 「アサド政権を倒さずして中東の平和は訪れない。1999年にビル・クリントン政権が行ったセルビアの爆撃に似た軍事作戦を敢行すればアサド政権を倒せるはず」と説く。

 たしかにオバマ政権の高官は、米軍の戦略オプションの1つとしてコソボ空爆のモデルを挙げている。米軍が先導する北大西洋条約機構(NATO)軍は、セルビアに対して78日間の空爆を行った。米国は国連安保理の承認を得ずして空爆に踏み切り、地上軍は投入していない。

 当時、米連邦議会は空爆するかしないかで2つに割れていた。下院の採決は213対213。しかしクリントン大統領は「ゴーサイン」を出した。

 結果として独裁者スロボダン・ミロシェヴィッチ大統領を政権から引きずり下ろし、アルバニア系住民に対するジェノサイドの責任を追及して逮捕・収監している。

 米国にしてみると、空爆だけで自国の死傷者は出さず、地上軍を投入しなかったので戦費も格段に安かった。結果的にコソボ紛争による88万人の難民のうち、80万人が故郷に戻ることになった。

 前出のヨルダン人も難民についての憂慮は大きいと語る。

 「現在、シリアから国境を越えてヨルダンに入った難民数は70万人を超えました。毎日5000人ずつ増えています。もう財政的にも治安面でも限界です。それでなくとも我が国にはパレスチナ難民が大勢います。早くシリア内戦を終結させて、政情安定化を図って難民が母国シリアに帰国できる体制をつくる必要があります」

 米国がいまロシアとシリア問題で会談できる関係になったことで、シリア政府と反政府組織、さらに周辺国を含めた地域和平会議を開く必要があるだろう。

 化学兵器の使用禁止だけでなく、シリア国内での休戦協定を締結しなくてはいけないし、米国は反政府組織に提供している軍事的、金銭的支援も止めるべきである。

 国連の監視の下、新政府樹立に向けての段階的な準備も必要になる。セクト間を取りまとめることは容易ではないし、生やさしい作業ではない。

 何よりも、シリア人の中から民主化を推進する強剛な指導者の登場が望まれる。

 


 


 


 

 JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
ミサイルだけでは米国の信頼性を確立できない
2013年09月18日(Wed) Financial Times
(2013年9月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米大統領がシリア問題で演説、「外交努力を優先」
バラク・オバマ大統領はシリア危機を巡る対応で米国の信頼性を損ねたのか?〔AFPBB News〕

 米国政府にしてみれば、化学兵器の使用はシリア危機の1つの側面にすぎない。この危機ではもう1つ、非常に重要なものが危険にさらされている。それは米国の「信頼性」、すなわち、米国と世界の安全保障が頼りにしていると見なされることの多いあの神秘的な特性だ。

 ロシアの外交活動のおかげで、バラク・オバマ大統領はシリア問題を巡り米連邦議会で屈辱的な敗北を喫する恐れを免れた。

 だが、この一連の展開では、米国の大統領や政治家、そして国民は軍事力の使用にますます消極的になっており、米国の言う「レッドライン(越えてはならない一線)」が越えられた時でさえ軍事行動を渋るという印象が残ることになった。

 そのため、イランや中国などの米国の競合国は近いうちに米国の決意を試したくなるだろうとの懸念が浮上している。

様々な要素で構成される大国の「信頼性」

 その可能性は確かにある。しかし、米国の影響力はレッドラインが越えられたら必ず行動を起こすという意思があるか否かにかかっているというのは、大国にとっての「信頼性」の意味をあまりにも狭くとらえた見方だ。

 安全保障にかかわる約束を守ろうとすることは、信頼性の一要素でしかない。外交政策でとんでもない失敗をしないことや、強い経済と魅力ある社会を維持することも、信頼性の重要な要素だ。

 例えばここ10年間で、世界に対する米国の影響力や威信に最も大きな打撃をもたらしたのは、イラク戦争と2008年の金融危機だった。どちらも、レッドラインを守ることや巡航ミサイルを発射することに消極的な姿勢とは全く関係がない。

 それどころか、イラク戦争から得られた1つの教訓は、しっかりと計画を練らずに軍事介入を行うことは、軍事力の行使についてためらうことよりもはるかに大きなダメージを米国の影響力にもたらし得るということだった。

 実際、過去半世紀の間に見られた、米国の世界的な地位に対する最も大きな打撃を2つ挙げるとするなら、いずれも、ベトナムとイラクという誤った軍事介入によるものだったと言えるだろう(イラク戦争はベトナム戦争によるダメージの一部を再現している)。

 そしてこれとは対照的に、米国の外交政策による最大の勝利――ソビエト帝国の崩壊――は、大砲を1度も撃つことなく達成されているのだ。

レーガン元大統領も部隊の派遣には極めて慎重だった

「鉄の女」が拾ったレーガン大統領の落書き
ロナルド・レーガン元大統領(右)は「強い米国大統領」の象徴〔AFPBB News〕

 保守派から見れば、ジミー・カーターと今やオバマ氏が弱い大統領の典型であるように、ロナルド・レーガンが強い大統領の典型だ。

 しかし、レーガンは確かに軍事費を増やしたものの、実際に部隊を派遣することには非常に慎重だった。

 例えば、レーガン政権が米軍に課した最も大胆な任務は、人口9万人の小国グレナダへの侵攻だった。また1983年、レバノンに派遣されていた米軍兵士241人が爆弾攻撃を受けて命を落とした時には、米軍をレバノンから撤退させている。

 リビアへの空爆も行ったが、これは懲罰を目的とした短期間の攻撃で、当時のカダフィ政権を倒す意図はなかった(この点は、シリアに対するオバマ氏の計画にやや似ている)。

 結局のところ、レーガン時代に重要だった強さは国内経済の再興だった。米経済の再興は、折しもソビエト経済が崩壊していく時に米国が自信と威信を取り戻すのに役立った。

 オバマ氏は間違いなく、世界における米国の強さは究極的には経済の強さで決まるという要点を理解している。米国は「国内での国造り」に注力しなければならないと、ことあるごとに繰り返しているのがその証拠だ。

肝心なのは経済の強さ

 過去1世紀に見られた世界の覇権国の盛衰もこの要点を裏付けている。英国やフランスの衰退、そしてソビエト連邦の没落は、経済力が弱いために国際社会への関与を継続できないという事実によって引き起こされたものだった。

 この3つの事例ではいずれも、戦争の費用が国を傾かせた。ソ連では、アフガニスタンへの侵攻が自らのとどめを刺す原因の1つになり、英国の帝国を維持する能力は第2次世界大戦の戦費により事実上潰えた。そして戦後のフランスの強さは、アルジェリアとインドシナにおける不運な戦争によって蝕まれた。

 世界最大の経済大国の座が中国に近々明け渡されることを考えれば、米国には、多額のコストをもたらす軍事面での過ちを今後も繰り返すゆとりなどない。

 だが、シリアの化学兵器使用を受けて、新たな外国紛争を避けようとするオバマ氏の決意が揺らいだ。

 大統領とホワイトハウスのチームは毒ガスの使用に心から震え上がり、米国のレッドラインに何らかの意味があることをはっきり示したいと思っていた。

 オバマ氏は軍事介入の計画がいかに限定的であるかを繰り返し強調することで、軍事行動を求める呼びかけと、自身が抱く反介入主義の本能に折り合いをつけようとした。ジョン・ケリー米国務長官の言葉を借りれば、軍事行動は「信じ難いほど小規模」なものになる計画だった。

 だが、懐疑的な向きは、それほど限定的な攻撃が一体どんな成果を上げるのか、また、介入が次の介入を呼ぶのではないかという当然の疑問を投げかけた。

効果的だった武力行使の威嚇

 シリア危機は扱いが難しい危機の典型例だ。何しろ、シリアへの軍事介入の是非を巡る議論では、双方の主張が説得力を持っている。また、オバマ氏の舵取りは不安定だったものの、軍事力を行使するという威嚇はなされ、実際にロシア、シリア両国は態度の変化を強いられた。

 というのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、これまで誰も気付かなかったオバマ氏への心の広さから外交イニシアチブに乗り出した可能性もあるとはいえ、ロシア政府が心底、中東での米国の軍事行動に危機感を募らせたために素早い行動に出た可能性の方が高そうだからだ。

 その意味で、不器用な対応にもかかわらず、オバマ氏の軍事行動の威嚇は効果的だった。

 米政府がシリアに向けて即座にミサイルを発射できなかったことは、国際問題において未来永劫、米国の軍事力が行使されないことを意味すると結論付ける国があったとすれば、それは間違いなく愚かな国だ。米国は今なお世界で傑出した軍事大国であり、軍事介入の長い歴史を持つ。

 オバマ氏が軍事行動を取る前により注意深く熟慮する決意を固めているという事実は、必ずしも米国の信頼性を損なうものではなく、むしろ信頼性を守る助けになるかもしれない。

By Gideon Rachman


 


 


 


 


 

 

 
JBpress>日本再生>国際激流と日本 [国際激流と日本]
北朝鮮はシリアの同志、
オバマ政権の「弱腰」でますます増長?
2013年09月18日(Wed) 古森 義久
 米国のシリアへの軍事攻撃宣言を巡る混迷の展開は、北朝鮮という意外な存在に意外なスポットライトを浴びせることとなった。「オバマ大統領の右往左往したシリアへの対応は、北朝鮮に自信を与える効果があった」という見解が語られるようになったのだ。そうなると北朝鮮はこれまでよりも強気な対外姿勢を取ると見られ、わが日本にも影響が及ぶことになる。

非人道的なアサド政権の行動が不問の形に

 オバマ大統領のシリア軍事攻撃の宣言は二転三転し、意外な結末を迎えた。結末といっても、まだ変転の可能性はある。だが、米国による軍事攻撃はまず起きないだろう。

 その意味ではこの駆け引きでの敗者は米国であり、勝者はシリアとロシアと言えそうだ。そしてその背後で北朝鮮がにんまりするという構図が浮かんでくるのである。

 まずオバマ大統領は、シリア政権軍が大量破壊兵器である化学兵器を使用したことは国際規範や人道主義に反する行為だとして軍事攻撃での懲罰を加えると宣言した。2013年夏、オバマ大統領はシリア情勢について、アサド政権が大量破壊兵器を使えば、米国はその行動を「レッドライン(赤い線)」を越えたと見なし、断固たる懲罰行動を取ると言い切っていた。その後にアサド政権軍が実際に化学兵器を使ったという情報を得て、その誓約を実行に移さざるを得ないと判断したのだろう。

 ところが同大統領はすぐに態度を変え、米国議会にその是非を諮ると言明した。米国の憲法上、この種の軍事力行使に際して、大統領は米軍の最高司令官として、また行政府の長として、特に議会の意向を問う必要はないのにもかかわらず、だ。

 だが、米国の議会も世論も軍事力行使には反対が多かった。米国のこの種の実力行動にはいつも同調するイギリスも議会も「ノー」の表決を下した。

 オバマ大統領は振り上げたこぶしをどうするかの判断に迫られた。そんな状況の中でロシアのプーチン大統領は米国の動きに反対し、「シリア政府が化学兵器を使った証拠もない」とまで明言した。G20という国際舞台で米国大統領の言葉を正面から否定してみせたのだ。

 そんなところに突然ロシア側から「シリアの化学兵器を国際管理下で廃棄する」という提案がなされた。シリアのアサド大統領もすぐに同意した。それまで化学兵器の保有さえ認めていなかったアサド大統領が、保有していることを前提に廃棄に応じたのである。

 米国の巡航ミサイルを自国の軍事拠点に撃ち込まれることを避けられるのなら、「廃棄」という姿勢を見せるのもそれほど高い代償ではない、という計算だろう。本当の廃棄かどうか、内戦下のシリアでの検証はとてつもない難作業となる。

 9月14日にはこのロシア提案に米国政府も同意して、シリアの化学兵器問題は外交交渉や国連の調停に委ねられることになった。

 これにより、今回の騒ぎのそもそもの原因であるシリア軍による化学兵器を使った自国民1400人の大量殺戮という蛮行は、当面、懲罰を受けないままとなった。オバマ大統領が「決して許さない」と断言した非人道的なアサド政権の行動は不問の形となってしまったのだ。

 アサド政権がいくら化学兵器を放棄するからといって、こうした事態の展開は、オバマ大統領の当初の誓約からすれば決して許容できる範囲ではないだろう。ピストルを使って殺人を犯した犯人が、そのピストルを放棄さえすれば殺人は責められない、という状況を考えれば、いまのシリアの事態のいびつさが分かる。

大量破壊兵器を開発する北朝鮮とシリア

 アメリカがこうした外交交渉に応じるのは、やはりオバマ大統領が最初から軍事力行使にためらいがちだったからだろう。

 「軍事忌避」「交渉優先」というのは、国際問題への対応としてそれ自体は褒められてよい姿勢である。だが大量破壊兵器を使った大量虐殺という事態が起きてもなお、その責任をめぐって外交交渉をするだけということになれば、国際秩序はどうなるのか。犯罪的な行為への懲罰も報復も制裁も取られず、その実行について外交的な交渉を始める、というのであれば、暴力を振るう側が野放しに近い常態となる。

 アメリカのこうした態度の結果、どのような国が得をするのか。

 当のシリアや、その支援国のロシア、さらには米国が消極的かつ軟弱になると利益を受ける中国、という諸国の立場は割と分かりやすい。だが、意外なのは北朝鮮である。

 今回の外交展開で北朝鮮が利益を得る。そうした見解をオバマ政権の高官たちが述べている。

 ジョン・ケリー国務長官は「北朝鮮はシリア軍事攻撃を審議する米国議会の動きをじっと見つめ、同議会が曖昧な結果の審判を下すことを切望している」と語った。チャック・ヘーゲル国防長官も「北朝鮮は化学兵器の使用を禁じる国際規範が弱くなり、米国が消極的になると、より高圧的な対外姿勢を取るだろう」と述べた。

 他の米国政府高官たちも「シリアの大量破壊兵器使用に対して制裁を加えなければ、北朝鮮のように大量破壊兵器を開発する他の諸国にとって、軍事力で阻止されたり報復される恐れが減ることになる」と強調していた。オバマ政権は「北朝鮮を増長させないためにもシリアを攻撃せねばならない」と対外的に宣言していた。だから攻撃をしないとなると、北朝鮮が増長するというのは自然な理屈だろう。

 大量破壊兵器と言えば、核兵器を筆頭に化学兵器、細菌兵器である。現在、米国が問題視する大量破壊兵器の開発国家は、まず北朝鮮とイランである。両国とも核兵器の開発を急いでいることが明白となっているのだ。

 歴代の米国政府はオバマ政権も含めて、北朝鮮に対する「レッドライン」として、北が自国で完成させた核兵器そのもの、あるいは部品類を他国へ輸出することを挙げてきた。北朝鮮が核弾頭の小型化、軽量化に成功し、米国本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)に核弾頭を装備することを確実に達成したとなれば、これまたレッドラインを越えたこととする指針が最近では明確となっていた。

今後、自国の化学兵器を米国との交渉に利用?

 北朝鮮にとってシリアは同志だと言える。北朝鮮とシリアは、米国政府による「テロ支援国家」に共に長年指定されていた。北朝鮮はブッシュ前政権の最終段階でその指定を解除されたが、シリアはなお指定されたままである。

 そのうえ、北朝鮮とシリアは大量破壊兵器をめぐる協力も緊密だった。シリアは北朝鮮の支援を得て、明らかに核兵器製造用と見られる原子炉を自国内に建設していた。その原子炉は2007年9月、イスラエル空軍の奇襲で破壊された。翌年4月に米国政府が空爆の前と後の証拠写真を公表したところ、間違いなく軍事用の核爆弾製造のための原子炉だったという。

 北朝鮮とシリアは化学兵器でも共通点があった。まず両国とも化学兵器を開発し、保有していた。そして化学兵器の貯蔵や使用を禁じる化学兵器禁止条約に両国とも加盟していなかった。シリアの保有する化学兵器は、すでに伝えられるように、ロシアだけでなく北朝鮮からも調達されていたという情報もある。

 このように北朝鮮とシリアは共にテロ支援国家の軌跡を有し、しかも大量破壊兵器の開発や保有に協力し合ってきた。このつながりを見ると、シリアがサリンを使って1400人を殺しても、物理的な制裁を何ひとつ加えることができず国際的な外交交渉にその対応を委ねるという米国の対応が北朝鮮に一種の安堵感を与えることは、論理の帰結だろう。北朝鮮はオバマ政権の弱腰を見極めたことにもなる。

 北朝鮮の今後の動きについては、ロシア外交官として北朝鮮に駐在した経験を持つ北朝鮮研究者のゲオルギ・トロラヤ氏が、米国の外交雑誌のサイト(9月12日付)に興味ある論文を発表した。

 「シリア危機と北朝鮮」と題する同論文で、トロラヤ氏はこう述べていた。「北朝鮮は、シリアが化学兵器を外交取引の材料として使い非常に大きな報償を得られそうになってきた状況を見て、今後、自国の化学兵器を米国との交渉に利用してくる確率が高い」

 いずれにしても、今回のシリアの化学兵器使用と米国の軍事攻撃保留の動きが北朝鮮をこれまでよりも強気にさせるという展望は、日本としても認識しておくべきだろう。


04. 2013年9月18日 06:28:14 : qjrIfSe4Jc
アサドインタビューで化学兵器が使われたのが3月でのことだと聞いたとき、それまでつい9月の頭ぐらいに使われたのかと思い込んでいた自分も欧米の情報に毒されていたんだなと氷解した。
だから現段階でどちらが使ったのかどうか判然としないわけだ。
欧米の出してきた一次二次情報はその時点で古かった。
まあ酷いもんだ。

05. 2013年9月18日 12:58:21 : yslDFK16sw
アメリカという世界でもっとも凶暴な国家があるかぎり、敵対される国はそれなりの凶暴さを身につけなければアメリカに対抗できないだろう。
シリアの凶暴さをうんぬんするバカ(ダイナモ)がいるが、シリアを凶暴にさせたのは米国であることを忘れている。
この構図はシリアだけではない。遠くはインデアンからはじまり日本、チリ、ベトナム、アフガン、イラクと延々と続いている。
諸悪の根源であるアメリカをなんらかの方法で消滅させない限り、ワールドワイドでの残虐な戦争はなくならない。

06. 2013年9月18日 18:50:51 : EdoomsgQYE
バカ(ダイナモ)君は最近では自分の記事に反論してくるコメント陣をコテHN(ID)じゃない単発をみな荒らしだと決め付けてまるで2ちゃんスレみたいなやりとりで論点ずらしに躍起になっている。
語るに堕ちたダイナモ。
コテであろうがなかろうがおかしいものはおかしいに決まっている。
ただそれだけのことだ。

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト

 次へ  前へ

▲上へ      ★阿修羅♪ > 戦争b11掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

▲上へ      ★阿修羅♪ > 戦争b11掲示板
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧