07. 2013年9月13日 12:45:27
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シリア国民のためにならない西側諸国の「即興」 2013年09月13日(Fri) Financial Times 場当たり的な即興の雲が、国際社会の対シリア政策に暗い影を落としている。アサド政権の化学兵器を国際監視下に置き、いずれ監視団が武器を廃棄するというロシアの提案も、影の払拭にほとんど役に立たなかった。 そんなことは、できるはずもなかった。何しろ現状では、ロシアの提案は、いささか突飛なジョン・ケリー米国務長官の即興の発言に乗じて作成され、次に、国連安全保障理事会でシリアを外交の盾で守るロシアのセルゲイ・ラブロフ外相によって、めったに姿を見せないシリアのワリード・ムアレム外相に打診、調整されたと見られるからだ。 説得力を欠く素人っぽい言動 ケリー長官の派手な言葉――アサド家は保有する化学兵器を放棄することで、ダマスカス東部での先月のガス攻撃を罰するための米国のミサイル攻撃から身を守れるという内容――が、過去にさかのぼる形で捻じ曲げられ、先週のサンクトペテルブルクでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議の片隅で発展した、考え抜かれた戦略として謳われているのかどうかは知る由もない。 化学兵器問題より人道支援を、赤十字トップが訴え シリア内戦 内戦で荒れ果てるシリアの街〔AFPBB News〕 いずれにせよ、一連の言動の素人っぽさは説得力を欠く。 10日のバラク・オバマ米大統領の国民向け演説も、この状況を変えるものではない。大統領は、米国はロシア主導の取り組みに機会を与えると述べた。だが、シリア攻撃への支持を求める米議会の投票は延期されたものの、軍事行動の威嚇は継続する。 また、オバマ大統領は自信たっぷりに「米軍はちまちました攻撃はしない」と述べた。「我々がやろうと話しているのは、信じ難いほど小規模で限定的な取り組みだ」というケリー長官の受け身の発言にもかかわらず、だ。 最後通告に関して言えば、「両手を上げて出てこい、さもないとお前を『信じがたいほど小さな』方法で攻撃するぞ」という言葉は、衝撃と畏怖の尺度では相当低いレベルに入るだろう。 ロシア提案が発行した2枚の「刑務所釈放カード」 これまでのところ、ロシアの外交手段は「刑務所釈放カード」を2枚発行したことになる。1枚はアサド家向けで、ムアレム外相の言葉を借りれば、アサド家は「米国の侵略を阻止する」ためにこの漠然とした提案を受け入れた。 もう1枚はオバマ大統領に与えられたものだ。何しろ大統領は屈辱的なほど、米議会下院で支持票を勝ち取れる兆しを見せていない。 常に中東で事態をぶち壊してきたロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、この議論全体が少なくともシリアに関する議論であるのと同程度に米国とオバマ大統領の信頼に関するものであり、それがロシアを強め、いまだ勢力を失いつつあるアサド政権を支えるかもしれないことを知って、安心して仲裁者を装うことができる。 周囲でこの外交ダンスが繰り広げられているシリアの悲劇の彼方では、残忍な独裁者とその権威主義的な庇護者が、世論という場で米国大統領を易々と打ち負かしている。 不信感を抱き、絶望する5つの理由 ロシアでG20開幕、夕食会でシリア問題討議も「分断を確認」 G20首脳会議のためにサンクトペテルブルクに到着したオバマ大統領を迎えるプーチン大統領〔AFPBB News〕 米国とその同盟国が即興で演じているように、ロシアがシリア問題で進展を遂げる道筋を描いたと考えるには、進んでというよりは意図的に疑念を棚上げする必要がある。 だが、不信感を抱く重大な理由が4つ、そして絶望する理由が1つある。 まず、バシャル・アル・アサド大統領――自身とその一族が存亡にかかわる戦いと見なし、ほぼ確実に勝てない戦争で膠着状態を打破するために自国民をガス攻撃する独裁者――が一体なぜ、主に備蓄として保有してきた武器を自発的に明け渡したりするだろうか? さらに言えば、シリアが、体制側がその存在を認めない化学兵器を保有する論理的根拠は、イスラエル政府がその存在を認めないイスラエルの核弾頭備蓄に対抗することだ。 また、シリアは化学兵器禁止条約(CWC)に1度も署名していないが、今では参加を望んでいると話している一方、イスラエルは署名したが、条約を1度も批准していない。イスラエルは今年既に、シリアを3回爆撃している。 次に、この構想の下でシリアが確実に化学兵器の引き渡しを強いられるのは、唯一、国連安保理が拘束力のある決議を可決した場合に限られる。フランスは国連憲章7章に基づく決議を求めている。この決議では、シリアは妥当な期間内に保有する武器をCWCの監視下に差し出すことを義務付けられ、シリアが従わなかった場合には武力行使が認められる。 これに対してプーチン大統領は、武力行使の脅しも、アサド家が先月の毒ガス攻撃で1000人以上を殺したことを示唆する言葉も一切拒否している。 第3に、戦線が100を数える内戦の最中にあってシリアの武器を廃棄する実行計画は、停戦なしには不可能だ。たとえ停戦があったとしても、一部の化学兵器は既に配備されている。そうした兵器を使用した政権が、果たして武器を申告するだろうか? 第4に、もし合意が成立し、それを実行に移すための停戦があったら、シリアは交渉による戦争終結が可能になる段階に達したことになるが、アサド家がダマスカスでその地位にとどまる限り、これは実現しない。ここで我々は振り出しに戻り、そもそも彼らがなぜガスを使用したのかという問題に立ち返ることになる。つまり、首都に対する脅威を消滅させることだ。 5番目の、絶望感を抱く理由は、これがどれも、アサド家がシリア国民と近隣諸国の市民に及ぼす致命的な脅威に対処するものではないことだ。何らかの地政学的な魔術により、この構想が発展したら、それはアサド家が、ガス攻撃を行わない限りはさらに10万人のシリア国民を殺す許可を得たことを意味するのだろうか? アサド家をまるでいたずらっ子のように扱う甘い構想 アサド家は危険な権力の学校で訓練されたが、ロシアの構想は一族をまるで、悪さを働いたところを見つかったいたずらっ子のように扱っている。これは昨年夏の国連のジュネーブ和平計画と一致している。 国連の計画は根本的に、アサド家が進んで早期退陣するという考えに依存している。ジュネーブの妄想は部分的に、ロシアを協議の舞台にとどめておくことを意図したものだった。この構想が出た今、ロシアは舞台を乗っ取っているように見える。 By David Gardner
シリア情勢で可視化された21世紀の新冷戦構造 スノーデン事件後の米露対立に日本はどう対応するのか 2013年09月13日(Fri) JBpress 9月8日に放送された『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)では緊張が高まるシリア情勢について取り上げたほか、「21世紀の新冷戦構造」などをテーマに語った。 シリアの化学兵器使用問題が記憶を呼び起こす地下鉄サリン事件 中山 シリアの首都・ダマスカス近郊で先月21日に化学兵器が使われたとされる問題で、オバマ米政権が上院での非公開会合で上映した現場映像を、CNNが入手したと報じられました。 会合では13の異なる映像が上映され、中にはタイルの床に横たわってけいれんする男性や、激しい震えが止まらない子どもの姿などが映し出されたほか、部屋の中に子どもや大人の遺体が並ぶ場面もあるそうです。 国連調査団が活動を終了、シリア化学兵器疑惑 化学兵器が使用された疑いのあるシリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区でサンプルを採取する国連の専門家〔AFPBB News〕 オバマ政権はシリア政権が化学兵器を使用したとして軍事介入を主張し、議会への説得を進めていますが、このビデオからは攻撃したのがシリア政権側なのか、また軍事介入が適切な対応なのかどうか結論は出せないと伝えられています。 シリア政府側は化学兵器使用への関与を否定していますが、この映像を見るに私は神経ガスのサリンが使われた可能性は否定できないと思います。 またサリンといえば、1995年3月20日にオウム真理教が起こした「地下鉄サリン事件」を思い起こさずにはいられません。 当時、私は秘書官として永田町に勤務しており、その日は荷物があったため偶然車で出勤していました。首相官邸周辺に着くと、地下鉄通気口から大きなファンの音が鳴っていて、その前には体育座りでうずくまる人たちが見えました。 一体何事だろうと驚いていたところに秘書仲間から安否確認の連絡が入り、事件があったことを聞かされたのです。築地周辺は特に被害が大きく、道路が封鎖されて消防車による放水活動などが行われていました。私は事件の様子を目に焼き付けるべく、実際に現場に足を踏み入れたのを覚えています。 この事件は、大都市で一般市民に対してサリンが使用された史上初のテロ事件として世界中に大きな衝撃を与えました。事件後、都内の駅にある多くのゴミ箱が撤去されたり、中身が見える透明なゴミ箱が設置されるなどの対策が講じられています。 他にもオウム真理教は、同年11月の国会開院式に乗じ、教団所有の軍用ヘリを使って東京上空からサリンを散布する計画を企てていたことも明らかになっていますし、94年にはロシアから大型軍用ヘリコプター「ミル17」を購入し、上九一色村の教団施設に運び込んだという事実もあります。 世界中の誰もが考えもしなかった規模のテロが日本で計画され、現実に行われたのです。主犯格である教団幹部の多くは逮捕されていますが、今も未解決の部分は残されている。シリアの化学兵器使用をめぐる問題は、決して遠い国の話ではないと認識すべきです。 同盟国としての対応について米国から強く答えを求められる日本 こうしたシリアをめぐる問題は、20世紀の冷戦構造と深く関係していると私は感じています。 米ソが対立していた冷戦時代、日本は太平洋シーレーン防衛を担い、米国など西側諸国にとっての一番の防戦ラインだったわけです。そうした対立構造の中でベルリンの壁が崩壊し、ソ連ではペレストロイカによる民主化が起きた。 その後は東西の冷戦が終焉を迎え、もうこれからは右も左もないという、いわゆる中道主義の概念が台頭してきました。 しかし、それは違うのではないでしょうか。民主主義や自由主義と政治的イデオロギーの異なる社会主義・共産主義が融合することはまずあり得ないでしょうし、私は冷戦構造が逆に水面下に深く潜り込んだのだと思うのです。 スノーデン容疑者「米国恐れない記者選んだ」、インタビュー エドワード・スノーデン容疑者は、8月13日に公開されたニューヨーク・タイムズによるインタビューの中で、米国の大がかりな監視プログラムの詳細を明かす相手として、論争を呼ぶような問題も「恐れずに」報道する記者らを選んだと語った〔AFPBB News〕 実際に21世紀の今、エドワード・スノーデン中央情報局(CIA)元職員が米情報機関の機密情報をリークし、ロシアに一時亡命する事件が起きています。このスノーデン事件の前後で、世界の政治的バランスは大きく変化したはずです。 懸念されるのは、シリア内戦が今後、米国とロシアの代理戦争になるのではないかということ。そのくらいに大国同士のメンツを懸けた争いがシリアを舞台に起きつつある中で、「21世紀の新しい冷戦構造」をどう見ていくべきなのか。 日本にも喫緊の課題が2つあります。「集団的自衛権」と「秘密保全法」の問題です。米露が対立する21世紀の新冷戦構造下において、米国の同盟国である日本が、日米安全保障条約の下でどんな対応をするのか、その答えを米国は強く求めています。 党外交に乗り出し米国との情報共有を進める公明党 中山 泰秀(なかやま・やすひで)氏 衆議院議員(自由民主党所属)。1970年大阪市北区生まれ。電通勤務を経て政治の道へ入る。2003年衆議院総選挙で初当選、2007〜2008年8月まで外務大臣政務官を務める。自民党青年局長代理・国防部会長(撮影:前田せいめい) 先日は公明党の山口(那津男)代表が8日から米国を訪問し、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長やアメリカのバーンズ国務副長官らと会談するという報道がありました。 集団的自衛権の行使容認をめぐり日本の与党内でも意見が割れる中で、米国と日本の一政党である公明党が直接情報を共有しようとする動きが見て取れます。 米国は過去に、イラク戦争開始の根拠として「イラクが大量破壊兵器を保有している可能性がある」ことを挙げたものの、実際には存在せず、国際的な信頼を損ねた事例があります。その轍を踏んでいいのかという意見もありますが、私は米国を信じたい。 シリアで本当にサリンが使用されたのかどうかはまだ分かりませんが、その真相を突き止められる国は現実的に考えて米国をおいて他にないでしょう。 少なくとも、スパイ活動を行ったスノーデン容疑者を一時的であるにせよ亡命させたロシアを信用する気にはなれません。一連のシリア情勢は、同盟国の重要さを再認識する機会でもあると私は思います。 『中山泰秀のやすトラダムス』 9月8日 24:00-25:00放送
悪化した日米関係、米国が安倍政権に抱く強い疑念 シリア攻撃はアメリカのレゾンデートルに関わる問題 TPP参加&韓国との連携で対中国の防護壁に穴を開けるな〜佐藤優氏 2013年09月13日(Fri) JBpress マット安川 ゲストに佐藤優さんを迎え、日本の外交政策のほか、ロシアの最新情報から北方領土問題の展望まで、幅広くお聞きしました。 中国の脅威に立ち向かうため韓国に譲歩し連携せよ 「マット安川のずばり勝負」ゲスト:佐藤優/前田せいめい撮影佐藤 優(さとう・まさる)氏 元外交官、文筆家。インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、『獄中記』『国家の罠−外務省のラスプーチンと呼ばれて』『3.11 クライシス!』『世界インテリジェンス事件史』など著書多数。『超訳 小説日米戦争』が近日刊行予定(撮影:前田せいめい、以下同) 佐藤 日米関係を基軸にする、ロシアとの関係を調整する、中国の脅威にどう立ち向かうかを根本に外交を組み立てる、といった部分において、安倍政権はよくやっていると思います。ただ問題は、韓国との関係を改善できていないことです。 二正面、三正面作戦じゃダメなんです。ロシアは北方領土を、韓国は竹島を不法占拠していますが、両国がそれ以上の領土を追加的に奪取することは、少なくとも近未来にはありません。 しかし尖閣諸島に関しては、このまま放っておいたら本当に中国軍が出てきます。そうなると鍵になるのは韓国です。中国と韓国の関係にくさびを打つこと、両国を切り離すことが急務だと思います。 韓国と日本の間には確かに従軍慰安婦問題も竹島問題もある。最近では戦時中に働いた韓国人の補償問題とかも出てきていますけど、それらは根本的な問題じゃないんですね。少なくとも韓国と日本は、選挙で政治指導者を選ぶ民主主義体制の国です。 しかし中国は選挙もせずに権力者が勝手にやりたい放題のことをやる国ですから、根本的に違う。中国に立ち向かうには、まず韓国ときちんと連携しないといけません。 いろいろなことを先送りにする、脇に置いておく、妥協する、ということが今は必要だと思います。真の外交とは、仲の悪い相手と上手に付き合って我が方に有利な状況を作ることであり、そのためにはどこかで必ず譲歩しないといけないのです。 尖閣で衝突したら日本は勝つ。しかし国際的に不利な立場に 中国は経済に変調をきたしていますし暴動も頻発していますが、権力はきちんと成立しています。上がこれをやると言えば末端まで浸透する。しかも核を保有しています。構造的問題を抱えているからといって軽視してはいけません。 中国が大国の地位から転がり落ちることはないし、自滅することもない。それを前提にこの国とどう対抗していくかを考える必要があります。 先の米中首脳会談で、習近平(中国国家主席)は尖閣問題をめぐる発言で失態を呈したと言われますが、私の評価は違います。 アメリカがこの問題について繰り返し言っているのは、尖閣諸島は日本の施政下にある、われわれは主権については中立の立場であるということです。日本にとって重要なのは主権なのですが、アメリカはそれを認めていない。中国にしてみれば、それを確認できただけで十分な成果を手にしたと言えるのです。 「マット安川のずばり勝負」スタジオ風景/マット安川、佐藤優、加藤知華/前田せいめい撮影 安倍(晋三、総理)さんは自民党の総裁選のときの、尖閣に船だまりを造って公務員を常駐させるという公約を守っていません。しかしそれは妥当だと思います。今そんなことをしたら武力衝突が起きますからね。 仮にそうなったら日本は勝ちますが、問題は戦後処理です。国際世論の中で日本は非常に不利な状況に置かれることになります。 今日本がすべきことは、中国との首脳会談です。中国には日本との接点がなくなっては困るという焦りがありますが、正式な首脳会談をして尖閣問題で正面からぶつかりたくはない。会談をするのは自国に不利だと考えているからです。うまく首に縄をつけて会談の場に引っ張り出さないといけません。 TPPの眼目は中国排除。日本に参加以外の選択肢はなかった 例えば中国が日本の資源や土地を買収するといった動きがあります。TPP交渉はそうしたことを防ぐためにも急ぐべきです。 TPPの眼目は自由貿易ではありません。自由貿易とは世界中に範囲が及ぶ普遍的な概念ですから、アジア・太平洋地域に限定するのは本来おかしい。ではTPPが目指すところは何かというと、アジア・太平洋地域に共通のルールを作って、そこに参加しない国を遠ざけることです。で、その国はどこかといえば中国にほかなりません。 そもそも日本には最初から、TPPに入らないという選択肢はなかったんです。アメリカの意図は軍事同盟を結んでいるオーストラリア、ニュージーランド、日本を束ねる形でアジア・太平洋地域の戦略的地図を再編することにある。したがって日米同盟を基軸とする日本が参加しないわけにいきません。無駄な時間を使ってしまったと思います。 沖縄の分離を阻止するために、自治権を認めた連邦制導入を 沖縄の基地問題をめぐる感覚は、東京にいる人と沖縄の人とではだいぶずれています。今のままでは普天間基地の辺野古移設など無理です。放っておいたら分離運動が起きます。それを阻止するには、日本の国家統合をどう維持するかを現実的に考えないといけません。自治権を担保した一種の連邦制にしたらどうかと、私は考えます。 日米和親条約が調印された1854年に琉米修好条約が、その後、琉仏修好条約、琉蘭修好条約が結ばれた。これは沖縄が琉球王国が、国際法の主体として認められたということです。沖縄は自己意識も言語も違う人が住む特別な地域だということを、念頭に置く必要がある。 アイヌもそうですが、日本のために団結しろと言っても、同じ日本人だというアイデンティティを持っていない。だから連邦制にするくらいのショック療法を施さないと持ちません。分離する可能性は本当にありますよ。 民族問題の難しさが日本人にはよく分からないのですが、こういう問題は世界のあちこちにあります。ベルギーは北部地域が分離するかもしれませんし、スコットランドだって似たような状況にあるんです。 アメリカは安倍政権の「価値観」に疑念を抱いている 「マット安川のずばり勝負」マット安川、佐藤優/前田せいめい撮影 安倍政権になって日米関係がよくなったと思っている人がいますが、それは違います。 例えば、橋下徹(大阪市長)さんの従軍慰安婦問題に関する発言、米海兵隊兵士への風俗利用発言がありましたが、特に後者への反発はものすごく激しいものでした。あれは安倍さんへの警告ですよね。あなたも同じようなことを考えているんじゃないですか、という。 あと麻生(太郎、副総理)さんのナチス発言がありました。必ずしもナチス肯定じゃないとご本人は言っていますけど、普通の言語感覚の持ち主なら発言の全体から明らかに肯定したと考えるでしょう。 戦後レジームから脱却しよう、日本人は自立心を取り戻そう、国のために戦った英霊に感謝しよう・・・そこまではアメリカも分かる。しかし、戦前のあの体制を肯定的に評価するということを、アメリカ人は絶対に受け入れません。そのへんの価値観のところでアメリカは安倍政権に疑念を抱いています。 シリア攻撃はアメリカのレゾンデートルに関わる問題 シリア問題の影の主役はイランです。アメリカは化学兵器はダメ、大量破壊兵器はダメというレッドラインを引きました。それをシリアは明らかに破っています。政府は反政府側がやったと言いますが、だれかがレッドラインを破ったのは事実です。 それに対してアメリカが制裁を加えられないとなると、もうこの国もたいしたことないなと思われる。核兵器くらい造っても何も言えないだろう・・・と、イランが動く可能性があります。それによって国際情勢が大きく変化することを、世界もアメリカも心配しているわけです。 シリアを攻撃しようというのは、戦争景気を期待してのことだと言う人がいますが、それは典型的な陰謀史観というものです。アメリカにしてみればレゾンデートル(存在理由)に関わる部分なのであって、経済的利益とは問題の位相が違います。
中国の「微妙な軟化」の背景を解く 2013年9月13日(金) 遠藤 誉 9月11日、尖閣諸島が国有化されて1年が過ぎた。問題解決の糸口は見えないが、9月5日から6日にかけて、ロシアのサンクトペテルブルグで開催されたG20(主要20カ国・地域)サミットで、開幕直前、中国の習近平国家主席は日本の安倍首相と、各国首脳が待機する貴賓室で会い、非常に短い時間だが言葉を交わした。 中国政府の発表によれば、習近平主席は中国の原則的立場を明らかにした上で、「このところ中日関係は深刻な困難に直面しており、これは私たちが目にしたくない状況である。中国側は中日間の4つの文書を基礎に、中日間の戦略的互恵関係を引き続き推進していく考えだ」と言ったという。さらに、習近平が「日本側は歴史を正視し、未来に向かうという精神に基づいて釣魚島や歴史などの敏感な問題を正確に処理し、この相違を適切に管理制御する方法と問題解決の方法を探るべきだ」と強調した。 中国側の報道は、安倍首相が「習近平主席とこの場で顔を合わせることを非常に望んでいたし、中日関係が改善されることを心から望んでいる」と表明したとしている。 それにしても中国の李保東・外交部副部長(外務副大臣)は、安倍首相が「G20で日中首脳の接触を持ちたい」と言ったのに対して、8月27日にはそれを一蹴したばかりだ。 同日の記者会見の席上で李保東は「もし日本が両国首脳の会談を望んでいるのなら、二度と再び減らず口をたたいたり偉そうなことを言わず、本気で一歩を踏み出し、きちんとした態度と実際の行動により、両国関係の健全な発展を妨害するものを取り除かねばならない」と強硬な発言をしている。「今のような状況下で、われわれはどうして日本側が望むような首脳会談などできるだろうか」とダメ押しもしたと、中国政府の通信社である新華網と中国共産党の機関紙「人民日報」傘下にある「環境網」は大々的に報じていた。 ここまで高圧的で礼を失した表現を用いて日中首脳会談の可能性を否定しておきながら、一転、中国は短時間ながら日中首脳の顔合わせを許した。この謎解きをしてみよう。 強面が軟化した理由 それを解く謎は中国の外交戦略と複雑な国内事情にある。 まず、シリア問題だ。 中国は、チベット自治区やイスラム教徒が多いウィグル自治区などの少数民族地帯を抱えている。同じく民族問題に端を発するシリアの内紛に武力介入が行われることは、安全保障や社会の不安定要素を刺激するかもしれないことから、中国はオバマの「懲罰攻撃」には絶対に反対だ。 中国がシリア攻撃を避けたい理由は、それだけではない。 習近平はG20に参加する前の9月3日、トルクメニスタンに到着し、中央アジア4カ国への公式訪問を開始した。最初の訪問国であるトルクメニスタンは天然ガス大国で、中国との間を結んだパイプラインが2009年に完成している。今回の訪問でも両国は、「天然ガスなどエネルギー分野での協力協定」に調印したという。中国の中央テレビ局CCTVは特集番組を組み、中国にとって中央アジア諸国がエネルギー提携と安全保障上、いかに重要であるかを報道。トルクメニスタンは今や中国の天然ガス輸入量の半分を占めると解説した。 またG20閉幕後の7日には、習近平はカザフスタンの首都アスタナにあるナザルバエフ大学で講演し、かねてからの中国の方針である「シルクロード経済ベルト」構想を提案した。これは北京からカザフスタンをはじめ、ロシアを含めた中央アジアの国々をつなぐ経済ベルトだ。エネルギー、安全保障、陸海空を結ぶ物流インフラなどの増強を指す。 このエリアに含まれる国々の総人口は約30億人。地球上の全人口の半分を占める。「シルクロード経済ベルト」は、エネルギー源の獲得先としても重要なのだ。 そもそも、シリアはアラブ諸国の中で最も早く中華人民共和国(中国)の誕生を承認し国交を結んでいる国だ。関係は決して浅くない。2004年6月22日、シリアのアサド大統領は中国を正式訪問し、北京の人民大会堂で胡錦濤(前国家主席)と会談した。胡錦濤はこのときにも既に「シルクロード」を持ち出し、両国の貿易交流の強化を始めとした経済関係の推進を強調した。 2012年7月18日、訪中していた潘基文・国連事務総長と人民大会堂で会い、シリア問題に関して話し合っている。また2012年3月28日、インドのニューデリーでBRICS5カ国の会談が行われた際、ロシアと中国は首脳会談を行い、北朝鮮問題とシリア問題を話し合っている。 中東情勢が不安定になれば、中国西端の少数民族の反抗を刺激するだけでなく、中国が構想するシルクロード経済ベルトの成長を脅かす。何よりも中国共産党の統治の正当性を「安定した社会における経済成長」に求めている中国は、アメリカ主導のシリアに対する軍事行動には絶対に反対なのだ。 シリア攻撃となったら、シリア側に立って戦うとさえ言って、シリアへの武力攻撃に反対していたロシアのプーチン大統領は、習近平に再び急接近。G20前の中ロ首脳会談でも、習近平と握手するときの「まなざし」が違っていた。 イラク攻撃抑制に寄与する、との判断か たしかに今年6月初旬の習近平・オバマ会談の際に、習近平は「新型大国関係」(G2)として、オバマと「大国間の熱い握手」をしたばかりだ。 しかし、3月の全人代で国家主席に選ばれると、習近平はイの一番にロシアを訪問しプーチン大統領に会っている。つまり、ロシアを優先した。 地政学上、そして歴史的な経緯から、「アメリカかロシアか」と問われれば、中国は断然「ロシア」を選ぶ。 9月5日、習近平と再会したオバマ大統領は、心なしか「へつらうような」笑顔を習近平に向けた。それを受けた習近平が米中首脳会談をする会議室を誘うように指し示すと、オバマは東洋風に頭を下げて習近平が指差す方向に向かった。 中国中央テレビCCTVは、まるで世界における上下が逆転したようなこの「瞬間」を、執拗に繰り返し放映した。 こういったパワーバランスの中、中国としては日本を完全に敵に回しているのは好ましくない。日米同盟があるからだ。習近平と会いたいと言った安倍首相のオファーを受け容れれば、少しはイラク攻撃の抑制になるだろうと、中国としては計算したのだろう。 だから8月27日の李保東発言を覆し、対日姿勢をやや穏健なものにシフトしたのだと思われる。 かと言って、これを契機に日中の雪解けが進むわけではない。 それは中国のインターネット空間における若者たちのネットパワーだ。5.91億人の網民(ネット市民、ネットユーザー)の内、80%が愛国主義教育を受けている。習近平が少しでも日本に対して妥協的な姿勢に出ると、必ず「弱腰」と罵られて真っ赤に燃え上がることを中国は知っている。胡錦濤政権もそれで痛手を受けた。具体的には、こちらの記事を参照して頂きたい。 習近平は、この事態の再現を恐れている 習近平が総書記になったのは2012年11月15日。 少なくとも1年間は、じっとしていなければならない。日本に対して高圧的でなければ、網民は黙っていない。 2002年、網民の数はわずか5900万人。現在の10分の1だ。それでも胡錦濤政権のスタートは「人民の声」に圧倒された。 今は網民が5.9億人を越えただけでなく、80%ものユーザーが愛国主義教育を受けている。日本がいかに軍国主義国家で、どれだけ右傾化しているかを、これでもか、これでもかと教え込まれている。テレビでは抗日戦争(日中戦争)のドラマを放映しない日はない。 現状、中国政府にとって、日本に対して心を許す兆しを見せることは非常にリスキーだ。 しかし、その一方で水面下で手を結ぼうとしていたアメリカが、シリアを軍事攻撃しようとしている。 今度は「抗日」に代わって「抗美(美はアメリカ)」という言葉がネットに表れ始めた。 G20で習近平と安倍首相が短時間、顔を合わせたことに関して、次のような表現がネット空間に出始めたのだ。 「日中共同抗美抗動武」 「日中が共同して、アメリカに抵抗し、シリアに武力攻撃することに抗議しよう」という意味だ。 しかし一方では 「外交霊活、但対領土主権必為寸歩不譲!」 (外交ではフレキシブルでも、領土主権は一寸たりとも譲るな!) という書き込みもある。「軍国主義を復興させようという小日本を死滅させよ!」というのもある。「小日本」は「あのちっぽけな日本」という、日本への蔑視だ。 まるで網民の声を象徴するかのように、9月8日、中国軍の爆撃機2機が沖縄本島と宮古島の間を通過した。日本の航空自衛隊の戦闘機も緊急発進した。 東京五輪招致に祝福を送れない中国 おまけに「決して日本に弱腰ではない」証拠を重ねるように、9月9日にはハワイの真珠湾で米中合同軍事演習が行われた。「なぜ真珠湾を選んだのか」を中心としてCCTVは特集を組み繰り返し伝えている(真珠湾は言うまでもなく日本がアメリカを奇襲作戦により攻撃し、第二次世界大戦の幕開けを招いたことで有名)。中国人民、特に網民に対するメッセージである。と同時に、日本に対しても、釘を刺そうとしているのだろう。 そして尖閣諸島「国有化」1周年を翌日に控えた9月10日、中国の海警局の船舶8隻が尖閣諸島領海を侵犯した。中国の中央テレビ局CCTVはその状況を生中継し、詳細に伝えた。これにより、中国は決して日本に弱腰でないところを見せ付け、かつ尖閣諸島の「中国による実効支配」の実績を積み重ねようとしている。 それと同時に、ロシアはシリアの化学兵器を国際管理下に置くことにして武力攻撃をやめてはどうかという提案を出した。 G20でも、また自国の議会でも武力介入に関する賛同を得られそうにないオバマとしては、渡りに船だろう。「もし実行されるなら、それも悪い提案ではない」と苦しげだ。 この複雑に交錯する国際情勢の中で、日本は2020年のオリンピック開催を勝ち取った。それに対して中国は祝意を表してない。やはり網民の反発を恐れているからだ。政権1年目は民心の安定を最重要視する。だから尖閣国有化1周年は何とかやり過ごした。 第18回党大会の三中全会(第三次中共中央委員会全体会議)が、おそらく11月には開催される。その前後を見ながら、中国は日本への外交戦略を練っているものと思われる。慎重に考察を続けていきたい。 |