05. 2013年9月12日 14:39:29
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コラム:シリアめぐる米議会採決は「無用の長物」 2013年 09月 12日 13:48 JST 9月10日、シリアの化学兵器使用疑惑をめぐるオバマ米政権の姿勢は刻一刻と変わっているようだだが、米議会の採決の行方はさほど重要とは言えない。写真はペロシ下院院内総務ら(2013年 ロイター) コラム:量的緩和の有効性めぐる日米の温度差=河野龍太郎氏 コラム:米アップルの指紋認証システムが秘める可能性 コラム:東京五輪は女神か罠か=熊野英生氏 コラム:米アップルの10日発表会、画期的新製品は期待薄 国際政治学者イアン・ブレマー シリアの化学兵器使用疑惑をめぐるオバマ米政権の姿勢は、刻一刻と変わっているようだ。当初は、国際社会の支持を得たうえで懲罰的な限定攻撃を行うつもりだったが、次第に単独攻撃も視野に入れ始めた。そして約10日前には、議会にシリア攻撃の承認を求めるようになった(その間、承認がなくても攻撃可能だと強調し続けてはいるのだが)。 だが最近、米国が外交でしくじった結果、シリアを攻撃しない可能性も出てきた。シリア化学兵器の国際管理をロシアが提案するなど、米政府も外交的解決を検討し始め、議会の採決を遅らせようとしている。このロシアの提案について、米国に攻撃を断念させる狙いがあるとの見方があるが、それは見当違いと言えるだろう。 この約1週間は、米国によるシリア攻撃の可能性がメディアを席巻し、米議会の採決は極めて重要だと思われていた。だが、こうした報道には欠けていたことがある。現時点では、米国が実際に軍事攻撃をしてもしなくても、それは大して重要なことではない。議会が対シリア軍事介入決議案を可決しても否決しても、もしくは採決すら実施されなくても、オバマ大統領やシリア、さらには米国にとって中東での最重要課題であるイランに多大な影響を与えることはない、ということだ。 もしシリアへの攻撃がオバマ大統領にとって極めて重要だったなら、そもそも議会に決断を委ねたりはしなかっただろう。この10年間で、外交政策が選挙を左右しないことをオバマ氏は心得ている。2012年の大統領選で、外交政策が最大の争点だと答えた有権者はわずか5%だった。今回のことで、大統領が目の前にある実際の問題よりも、議会という政治的大義名分を重んじていることははっきりした。もし議会で決議案が否決されても、大統領が国内で受けるダメージは限られたものになるだろう。また、採決が無期限に延期された場合には、ダメージはさらに緩和されることになる。 シリアにとっても、米議会の採決はさして重要ではない。もし米国がパワーバランスの変化を狙って介入しようとするなら話は全く別だが、米国は根本的にアサド政権の弱体化を意図してはいない。ケリー米国務長官は、攻撃について信じられないほど小規模になると述べていた。そして今、オバマ大統領も攻撃を回避すべく外交的手段を探ろうとしている。 シリアへの攻撃が、米国の信頼に関わる問題であることは明らかだ。オバマ大統領が議会に決断を委ねたとき、その信頼はほとんど失われた。 イランにとっても、米議会の採決の結果はあまり重要ではない。なぜならシリア問題に関する議会の審議は、イランが核兵器製造へと大きく近づいた場合とはかけ離れているからだ。イランにとって最大の関心事は、オバマ大統領が自身の設定したレッドライン(越えてはならない一線)を守るため、同盟諸国と自身の勇気を奮い立たせることができるかどうかにあった。だが、大統領はそれに失敗した。イランにしてみれば、軍事攻撃に関してオバマ政権の支持獲得能力の低さが明らかになったことが大きな収穫と言えるだろう。今後何が起きようとも、これは変わることのない事実だ。 一方、日本やイスラエルのような米国の主要同盟国は、対シリア攻撃をめぐる失態について、米国が安全保障上の重要問題を減らしているサインと捉える可能性もあるだろう。化学兵器使用の防止に軍事介入が必要だとうまく説明できないホワイトハウスに、同盟国への軍事支援を議会に承認させることはできるのだろうか。 問題はそもそも、シリア内戦には変化を与えないであろう象徴的な意思表示をそれでもすべきかどうかだ。これが、米議会の採決の行方が重要ではないとするもう1つの理由だ。今回のことは、今後の行動に際し、先例とはならない。 オバマ大統領がロシアの提案に乗るなら、米議会も採決に向けて加速するだろう。あまり重要ではないけれど。 [10日 ロイター] *筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。 *筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 関連ニュース シリア軍事行動決議案、外交解決とん挫すれば米上院は来週にも採決の可能性 2013年9月12日 [ワシントン 11日 ロイター] - シリア問題の外交的解決への取り組みが失敗に終わった場合、米上院は来週にも対シリア軍事行動を認める決議案の採決に着手する可能性がある。
上院は当初、週内に本会議で決議案の採決を行う予定だったが、ロシアがシリアの化学兵器の国際管理を提案したことを受け、オバマ米大統領は結果が出るまで決議案の採決を見送るよう議会に要請している。 上院議員の間では、軍事行動の脅威継続がアサド政権への圧力になるため、必要なら来週にも採決を行うとの声がある。 上院外交委員会のベン・カーディン委員(民主党)は「上院の採決時期に関する戦略は、政府との間で決めることだ」とし、「来週の可能性がある。その可能性を排除しない」と述べた。 上院外交委員会の民主、共和党議員らはこの日、それぞれ個別に協議した。委員会指導部がシリア問題に関する各党の委員らの考えを探ることが目的だ。 12─13日にはケリー米国務長官とロシアのラブロフ外相による会談が予定されている。外交委員会のメンバーによると、上院は少なくとも今後数日間は会談の行方や国連安保理の動向を見極め、それを受けて次の段階でとる措置を決める見通し。 メネンデス上院外交委員長は「確かな軍事力行使(の脅威)を維持することが必要との強い確信がある」と述べた。 下院指導部は、決議案を下院として策定するのか、上院案を採決にかけるのか、それとも他のアプローチを模索するのか、方針を明らかにしていない。 シリア情勢の外交解決には「しばらく」かかる=米ホワイトハウス 2013年9月12日
[ワシントン 11日 ロイター] - 米ホワイトハウスのカーニー報道官は11日、シリア情勢をめぐる外交解決には「しばらく(some time)」かかるとの見通しを示した。議員からはシリアの化学兵器を国際監視下に置くとするロシア提案をシリア政府が実行することに懐疑的な見方も出ているが、協議を進めると表明した。 オバマ米大統領は前日、外交努力が実らなかった際にシリアへ軍事攻撃を仕掛けることに国民の支持を求めた。 ケリー米国務長官は12日に、スイス・ジュネーブでロシアのラブロフ外相とシリア問題について協議する予定となっている。米国務省によると、協議は2日間以上にわたって行われる予定。 カーニー報道官は記者会見で、外交努力について「われわれは責任を果たしていく。そこで成功の可能性が試されるだろう」と指摘。「それ(外交解決)にはしばらくかかるとみている」と述べた。 関連ニュース ケリー米国務長官、ブラヒミ国連シリア特使とジュネーブで会談へ=国務省 2013年9月12日 シリア軍事行動決議案、外交解決とん挫すれば米上院は来週にも採決の可能性 2013年9月12日 ロシア、シリア化学兵器の国際管理計画を米国に提示=インタファクス通信 2013年9月12日 米英仏首脳、シリア問題の外交的な解決望む=米政府報道官 2013年9月11日 米英仏中露がシリア化学兵器の国際管理案を協議、各方面で外交努力続く 2013年9月12日 シリア情勢めぐる外交努力が功を奏すか判断するのは時期尚早=オバマ米大統領 2013年9月11日 |