02. 2013年9月08日 15:23:59
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〖コラム〗シリア問題は米国覇権衰退の始まりか ☮http://www.chosunonline.com/svc/view.html?catid=82&contid=2013090800188 △朴斗植(パク・ドゥシク)論説委員
韓国国防部(省に相当)の金寛鎮(キム・グァンジン)長官は、北朝鮮が最も嫌う人物だ。北朝鮮は金長官を名指しする時はありとあらゆる侮辱的な言葉を使う。例えば韓国への脅迫的な言動が最高潮に達していた今年の春頃、北朝鮮は「(韓国を)攻撃する際、金寛鎮は最初の除草対象」などと公言していた。それでも北朝鮮は満足できなかったのか、朝鮮人民軍は金長官を標的に射撃訓練を行い、また軍用犬には金長官の写真を貼ったかかしに噛みつかせている。
このように北朝鮮から憎悪されている金長官が、先日また北朝鮮を刺激する発言を行った。米国のヘーゲル国防長官と会談した際、金長官は「シリアの化学兵器使用をこのまま放置すれば、北朝鮮に間違った行動を起こさせる恐れがある」と述べ、シリアに対して厳しい制裁を行うべきと主張したのだ。この韓米国防相会談以降、米国は連日「北朝鮮も誤った判断をする可能性がある」などと何度も主張するようになった。
シリアでは2年8カ月にわたり内戦が続いている影響で、すでに全人口の10%近くに相当する200万人がシリアから亡命し、死亡者数も10万人を超えた。先月21日未明には首都のダマスカス近郊で化学兵器を搭載したロケット弾攻撃が行われた。この攻撃で1300人以上が死亡し、そのうち約400人が子供だった。国連の調査団はこの攻撃にはサリンが使用されたものとにらんでいる。1995年に日本のオウム真理教が東京都心で引き起こした「地下鉄サリン事件」で使われたものと同じ毒ガスだ。
米国はちょうど1年前、シリアに対して「化学兵器の使用は絶対に超えてはならないライン」と警告した。ところが今回シリアが実際にこのラインを越えたにも関わらず、米国は今なお何の決定も下せないまま戸惑うばかりだ。オバマ大統領はシリアへの武力攻撃を行うに先立ち、議会の同意を得たいと考えているが、米国の大統領が軍事攻撃に際し議会に事前承認を求めるのは半世紀ぶりのことだという。米国と同じくシリアへの制裁を主張していた英国は、議会が攻撃に反対したためキャメロン首相は攻撃をあきらめた。これを受けて英国のメディア各社は「世界の問題に英国が関与するのを当然視してきた帝国の時代は終わった」と報じた。米国議会がシリアへの武力攻撃に反対した場合、化学兵器や核兵器など大量破壊兵器の使用を禁止してきた世界の秩序が崩壊する危機に直面するだろう。
化学兵器は核兵器にも劣らない恐るべき威力を持つ。ナチスの独裁者ヒトラーはユダヤ人を強制収容所のガス室で虐殺していた時も、戦場では化学兵器の使用を認めなかった。1992年に制定された国連の化学兵器禁止条約(CWC)に加入していない国は北朝鮮、シリア、アンゴラ、南スーダン、ソマリアの5カ国だけだ。
米国や国連はシリアが保有する化学兵器を1000トン前後とにらんでいる。ちなみに北朝鮮は2500トン以上の化学兵器を保有しているが、これは米国、ロシアに続き世界で3番目の量だ。化学兵器はミサイルがなくとも通常の大砲さえあれば使用可能で、北朝鮮は休戦ラインに沿って1100門の長射程砲を配備している。あるいは韓国国内の北朝鮮シンパが化学兵器の運搬を引き受けることも考えられるだろう。オウム真理教がばらまいたサリンはごく微量だが、これによって13人が死亡し、6000人近くが重軽傷を負った。化学兵器が核兵器以上に恐れられる理由はそのためだ。米国ランド研究所のブルース・ベネット博士は2004年に発表した報告書で、晴れた日の夜に北朝鮮が韓国の首都圏上空で10キロの炭疽菌をばらまいた場合、半径30キロ以内で90万人が死亡し、またサリン1トンなら半径7.8キロ以内で23万人が死亡するという分析結果を紹介している。
韓国がシリアによる化学兵器の使用を深刻に受け止めざるを得ないのは、その威力だけが理由ではない。いかなる共同体であれ法律と規範の順守を強制する際には、軍事力は武器であると同時に有効な道具にもなる。1991年のソ連崩壊以降、国際社会では米国がその役割を果たしてきた。米国は各国が好むと好まざるとに関わらず、文字通り世界の警察だったのだ。ところが米国は徐々にその仕事が手に負えなくなり、疲労感を隠せなくなった。そのため今回のシリアでの化学兵器使用をとりまく一連の流れは、米国の衰退を示す一種のシグナルとも受け止められている。
オバマ大統領が土壇場でシリアへの武力制裁を先送りしているのを受け、イスラエルのネタニヤフ首相は内閣の閣僚全員に箝口令(かんこうれい)を敷いた。イスラエルは自国と国境を接するシリアで起こった化学兵器の使用に対し、米国など世界が右往左往するのを見て独自の対策の必要性を痛感したのかも知れない。これまでいかなる武力行使もためらわず行ってきたイスラエルの不気味な沈黙だ。現在の世界情勢の流れの中で、シリア問題は決して見過ごすことのできない大きな変化を内側にはらんでいるのだ。
朴斗植(パク・ドゥシク)論説委員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 ☮http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/09/08/2013090800188.html ☮http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/09/08/2013090800188_2.html |